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ともぐい の商品レビュー

3.9

223件のお客様レビュー

  1. 5つ

    49

  2. 4つ

    94

  3. 3つ

    57

  4. 2つ

    8

  5. 1つ

    1

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2024/07/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読ませる力はすごくてグイグイ読み進めたけど、結局のところがよくわからなかった。 直木賞とも山の本とも知らずに読んだ。 前半は山に暮らす話で、『黒部の山賊』を思い起こし好きなジャンルだと思ったんだけど、途中毛色が違ってきた。 小さい頃から色々あった女が素朴な山男についてきた、と読むと何で最後ああなるのかと思うし、女が「山男は山でしか生きられない」と引導を渡したと読むには、何故そう思ったかもそこまでする理由も特になかったように思う。 私の読解力不足かな。 (追記) もうちょっと考えてみた。一緒に暮らすことで熊爪を理解し、山で死ぬべき人だと思った、てことなのかな。

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2024/07/31

 久しぶりに肉感的な小説を読んだ。動物的な本能を前面に出しているようだが、猟師、熊爪が考えていることの独白で進む点で非常に理性的である。動物がこんなことを考えて獲物を捕らえ食しているか?自分の死を自分で選ぼうとする熊爪の思考は人間のエゴそのものに感じた。陽子の選択や良輔についての...

 久しぶりに肉感的な小説を読んだ。動物的な本能を前面に出しているようだが、猟師、熊爪が考えていることの独白で進む点で非常に理性的である。動物がこんなことを考えて獲物を捕らえ食しているか?自分の死を自分で選ぼうとする熊爪の思考は人間のエゴそのものに感じた。陽子の選択や良輔についての描写が今ひとつはっきりしなくてもやもやが残った。

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2024/07/30

面白かった! 通常、面白い小説は一気読みしてしまうのだがこの物語がいずれ終わってしまうのが勿体無くて毎日決められたページ数をじっくり読んた。 なんて言うか生き様見たいのを教わったような気がする。

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2024/07/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2023年直木賞受賞作 序盤は山の中でたった1人、猟をして生きる熊爪(←主人公の名前)のみの話だが、 とにかく五感に強烈にうったえかけてくる描写が多く、 特に獲物を解体してる時や、熊に襲われた人の応急処置なんかの場面は、匂いや感触・音なんかもリアルに側で感じられるくらいで、自分の食事前後に読むもんじゃないなと思った(笑)。 それくらい、特に匂いに関しての描写は群を抜いて強烈。 動物の描写も、綺麗な表面的な部分ではなく、習性に基づく動物の冥い一面を鮮やかに描いており、人間の人物描写はそこまでではないのに、とにかく動物についての表現がリアルで非常に生々しい。 題名にもなっている「ともぐい」は、ざっくりわけると、 自然界で起こる同族動物の本能によるものと、 人間界で起こる「ともぐい」(こちらは実際に食べるわけじゃない)に分かれるが、 対比でもあり類似でもあるような気がした。 町一番の栄華を誇った良輔(熊爪が世話になった商店)の家が、嵐のような明治後期の時運に乗り切れず、周囲に喰われて没落していく様や、 良輔の子を産み、さらに熊爪の子を宿した状態で陽子が熊爪を刺し、死にかけている熊爪の元から泣きながら支度をして去っていく様子は「ともぐい」の象徴的シーンだった。 ところで、熊爪が猟犬として飼っていた犬、名前さえつけてもらえてなく、現代の我々からすると可愛がっているとは程遠い扱いだが、 この犬の存在が作品においてひとときの安らぎというか、 犬なんだけど、この犬が一番まともな人間らしい感情や常識があるように思えた(笑) こういう犬とじっと一緒にいたら、そのうち熊爪もちょっとは一般的な感情持つようになるかな?ってチラッと期待したけど、そのままだったw

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2024/08/26

主人公と熊との関わりの描写が、壮絶で生々しく現実離れしていた。今まで読んだことのない世界だった。 ラストはかなり強烈で、人間の心の奥に潜む闇をみせつけられたような気がした。主人公、熊爪と熊の純粋な部分が印象に残り、悲しみが募った。

Posted byブクログ

2024/07/26

なるほどの読み応え 熊との格闘の描写、、 そこからの下界と人間社会への逡巡、 得体の知れない生きることへの諦念、、 思いがけない終着点 物語の運びが見事、良かった

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2024/07/22

明治時代、北海道の山でひっそりと暮らす漁師。獣の様な嗅覚で、熊や鹿などを狩る。生々しい血の匂いが漂ってきそうな描写が怖くて、読む人を選びそうです。タイトルが全てを表していました。救いだったのは、犬。最後まで彼だけは、熊爪の事を想っていたのがわかって良かったです。

Posted byブクログ

2024/07/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 新たな熊文学。冬眠しない熊、“穴持たず”との対決。  惹句を見るに、温暖化の影響と人間の生活環境と自然との境界のせめぎあいで、昨今、熊被害の報道が後を絶たないので、なかなか時宜を得たテーマの作品だなと思ったが、予想を超えて、人間の本性、自然界と人間社会をひっくるめた世の摂理の非情さを、腑分けするかのように露わにさせる、生々しい、いやむしろ、血生臭い作品で驚いた。  熊との対決の話に終始するのかと読み進むが、二転も三転もする展開と、“穴持たず”をも凌駕する赤毛という若い個体の登場、それとの対決を超えて続く、人間としての足掻き、連綿たる命の継承といった壮大な背景も見せる。  そうなのだ、比較的、序盤にこんなくだりがあった; 「獣は笑わない。だから熊爪は人間の笑顔を直感的に恐れる。人の笑いの種類を見分けられない。良輔の笑いが何に向けられたものか分からず、背筋が妙に冷える。不快だった。」  だから、主人公の熊爪は、人間界を嫌い、大自然の中で熊をはじめとする野生の命とだけ対峙して生きていくのかと思っていた。  だが、彼は、直感的に恐れる人間の笑顔、その裏に隠された内面とも向き合っていくことになる。恐れていた通り、猟師の直感に、狂いはなかった?! 「もし熊爪がここで力尽き、ただの肉と骨と脂の塊となったなら、獣と鳥がその身をたちまち自分らの糧とするだろう。」  自然の中で体得したこの感覚、諦観は、大きな意味での自然の摂理の中にある人間社会にあっても通用する道理であると我々は知ることになる。どちらに納得感があるか、己の制御下での人生における諦観を得られるかとなると自明。  ただ、どちらも、「ともぐい」される、冷徹かつ残酷な世界なのである。

Posted byブクログ

2024/07/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「羆嵐」のような人と熊との戦いの話か、「羆撃ち」のような犬と共に猟をする話か、と思って読みましたが、どっちとも全然違いました。熊の共喰いの話が中盤で終わってしまい、おや?これは人間の話なのか?と読み続けると、やはり人間の欲についての話なのかもと思いました。 「清浄島」もそうでしたが、人間の暗い部分を隠さず描くのが本当に上手い作家さんだなと思います。

Posted byブクログ

2024/07/14

明治時代の北海道。熊爪という森深くに犬一匹と暮らす寡黙な猟師と、穴持たずという冬眠をせず凶暴化した熊との闘いを描いている。 真冬の雪山で鹿や熊を撃ち解体して食べるという想像し難い世界であるが、的確で生々しい表現によって人が自然のなかで生きていること、動物を殺して食べているというこ...

明治時代の北海道。熊爪という森深くに犬一匹と暮らす寡黙な猟師と、穴持たずという冬眠をせず凶暴化した熊との闘いを描いている。 真冬の雪山で鹿や熊を撃ち解体して食べるという想像し難い世界であるが、的確で生々しい表現によって人が自然のなかで生きていること、動物を殺して食べているということを改めて考えさせられます。 そして闘いだけでなく、生きるとは、人生とは、についても考えるきっかけとなりました。 熊爪の無骨で冷たくて優しくないが、ときどき見せる一面がとても人間らしく好きです。

Posted byブクログ