イラク水滸伝 の商品レビュー
砂漠のイメージがあるイラクにこんなところがあるなんて。どんな場所にも、そこで生まれ育った人の生活があるということが伝わってくる。水滸伝を読もうと思った。
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実は長年高野秀行さんの熱烈なファンで、妊娠中もトークショーに行き、その時にお腹にいた子はもう中、そうもう中学生である。 イラクといえば、テレビで観た戦地のイメージしかなかったが、何と大湿地帯があるという。 作者はその地で幻の舟「タラーデ」を作ってもらい、湿地帯を舟で旅する計画を...
実は長年高野秀行さんの熱烈なファンで、妊娠中もトークショーに行き、その時にお腹にいた子はもう中、そうもう中学生である。 イラクといえば、テレビで観た戦地のイメージしかなかったが、何と大湿地帯があるという。 作者はその地で幻の舟「タラーデ」を作ってもらい、湿地帯を舟で旅する計画を立てる。 高野さんにいつも感心するのは、現地のことばをいち早く覚え、コミュニケーションをとり、現地の人が食べるものを食べてすぐに仲良くなる事。さらに、ただ楽しかった、だけではなく、その土地の伝統や風習、そこに住む人の人物像までを細かく描写していること。 溢れるほどある旅行記や探検記とは全く別物の次元の作品を描く。今回も、イラクという国の人々と暮らしが生き生きと描かれていた。
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あまり肌に合わないのは分厚い本に文章がやたら長いからか?大変な場所で知り合いが現地にいないと自由に動けないし、人をもてなすのが文化でいく先々で食事会。繋がりを大切にするのに何故戦争するのか、と考えてしまう。 行くことができない国を読むのは楽しいが軽快な文章が好きだなぁ。
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イラク水滸伝 著者:高野秀行 発行:2023年7月30日 文藝春秋 初出:「オール讀物」2019年3・4月合併号~2019年12月号、2023年1月号~6月号 474ページもある本だけど、売れているようである。高野秀行は、中身は面白くても基本的に素人文章だなどという人もいるが、僕はそうは思わない。上手いと思う。とにかくやっていることがすごくて危険極まりないのに、椎名誠の「怪しい探検隊」風に書き進めるから、その危険度や深刻さがあまり優先して伝わってこない。楽しさばかりが聞こえてくる。あれを、同じ早稲田大学探検部出身の角幡唯介のように硬派に書いたら、もう読者は何度も死にそうになってしまうかもしれない。実際、角幡作品はそうなる傾向がある。 ただし、あれこれと無駄な部分は多く、一見、洗練はされていないかもしれない。だから長い。長くても面白いからいいけれど、図書館で借りて読むと返却期限までに読み切れないことがあるかも。今回も、あしたの朝に返却しないといけないため、読書メモは書けず。 イラクはメソポタミア文明の地。ティグリス川とユーフラテス川の間(メソポタミア)は人類初のものを生み出した偉大な地であり、シュメール人はどこから来てどこへ消えたのか分からない謎の地域でもある。世界史授業の初期に習うから、結構、覚えていたりする。 著者は、そんなティグリス川とユーフラテス川の合流地点付近にある湿地帯について、朝日新聞の記事を読み、俄然生きたくなった。調べると、かつては四国の面積を上回るほどの広がりがあったが、最も小さくなった時には徳島県ぐらい。平均で徳島県と愛媛県を足したぐらいだったという。ところが、フセイン政権の政策により、なんと徳島県の20分の1程度まで縮小してしまった(フセイン後に復興させて徳島県の7割程度に)。 では、なぜフセインがその湿地帯をつぶそうとしたのか?そこが水滸伝さながら、いわば「イラン水滸伝」の地と化していたからである。 ここは、昔から戦争に負けた者や迫害されたマイノリティ、山賊や犯罪者などが逃げ込む場所だった。なぜなら、湿地帯は馬もラクダも象も戦車も使えないし、迷路のような水路には巨大な軍勢が押し寄せることもできないから。あたかも水滸伝の舞台となった梁山泊のある湿地帯。1990年代までそれが続き、反フセイン勢力が逃げ込んで抵抗していた。怒ったフセインは、堰を築いて水が流れ込まないようにした(実は水路を作って水が流れ込まないようにした)。水がなければ生活できない。水の民は都市部や多の地域に移住した。 アフワールと呼ばれる地。そこに暮らす「マアダン」と呼ばれる人たちは、定住せず、移動しながら生活をしているが、水牛を飼っている。なお、マアダンは侮蔑する呼び方だから使ってはいけないというが、現地へ行くと使っていたようである。 著者は自らの川や植物などの知識不足を考え、大学探検部としては先輩にあたる東京農大探検部出身の山田高司を誘うことにした。山田は世界中の川を旅してきたレジェンド探検家にして環境活動家。著者が彼に現地の資料として動画などを見せると、彼は舟の素晴らしさを指摘した。現地の人々が素晴らしい舟に乗っているということは、そこには素晴らしい舟大工がいるはずだという。 著者はひらめいた。舟大工に舟を造ってもらい、舟旅をしようと。そんな土地柄なら、すぐれた舟大工に造ってもらえば、舟がどんどん地縁を広げていき、人的ネットワークができて旅が出来るのではないか、と。 現地で舟大工を探し、タラーデと呼ばれる豪華ボートを造ってもらうことになる。タラーデは1970年代までシェイフ(氏族長)が乗っていたボートで、4000年の歴史がある。本書の表紙に写真がある舟である。本体6メートルのMサイズで、費用は900ドル。10日間ほどでできた。 ところが、ビザが1ヶ月しか出ずに、結局、3回に分けての旅となった。2018年、2019年春、そして2019年秋に舟旅をしようとしたら、コロナで渡航禁止となり、3年空いてしまった。 2018年に行った時は、まだ治安がかなり悪かったが、いまは全然違うという。舟に乗ったのは、結局、3年空いた2022年だったが、舟で旅をするのは不可能だと判明したため、最後に試乗めいた乗り方をして締めくくったのであった。 地元の有力者などを頼みにしつつ、イラクや湿地帯がたどった歴史や文化、人々を探る旅が繰り広げられる。 さすがに高野秀行という一冊だった。
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湿地帯=アフワール。 イラクにこのような地域があるとは、恥ずかしながらついぞ知らなかった。 読了するとその違いは歴然ではあるが、かつてティティカカ湖に旅した時に見たトトラで作られたウロス島を思い出した。 「ザリガニの鳴くところ」で主人公が暮らす場も湿地帯であった。 人が行かないところに行き、やらないことをやって、それを物す。 まさしく高野秀行氏の原点とも言えるポイントに立脚した最新作である。 でありながら、当然変化というか進化を遂げているところもあって、歴史等にまつわる周辺事情の記述量が格段に増えている。 特に中盤以降は、まるで学術論文かと思うような理路整然とした解説が綴られるパートも多く、学者が著したものを読んでいるかのような気分がしたり。 高野氏が言う、「年を取ると書く技術は上がってくる」というところだろう。 もちろん作品の核を成す本質は、例えば「巨流アマゾンを遡れ」や「ミャンマーの柳生一族」や「アヘン王国潜入紀」といった過去の紀行名作群と何ら変わらない。 どう考えても危険地帯としか思われないような地域を、「語学の天才まで1億光年」で明らかになった学習法を駆使し短期間で身に付けた現地の言語を武器に、そこに住まう人たちの伝手を巧みに繋ぎ手繰り寄せ、まるで危険など微塵も存在しないかのように軽やかに渡り歩いて、いつの間にやら"内側"にするすると潜り込んでいく。 出てくるエピソードの数々はどこまでもリアルで生々しく、そのシーンの情景が浮かぶのみならず高野氏や同席している人たちの息遣いまで聞こえてきそうなほど。 まさしく「地球の歩き方 イラク アフワール」であり、これ以上ないアフワールのガイドブックだ。 そもそも、イラクへの旅行情報を紹介しているガイドブックなど皆無か…。 それと同時に、アフワール全体を俯瞰して分析した描写や、マアダンの生活習慣等の紹介、アザールにまつわる調査と考察等、実は学術的な価値も高いのではないか。 他の人たちがやらない、やろうと試みない、やろうとしてもできないことを、こともなげに(もちろんそんなことはなく、実際には挫折や煩悶や焦燥が多々あるだろうし高野氏もそう書かれてはいるが、少なくとも見え方として)やってのけ、ご本人がまたそれをまるで大層なことではないかのように著されているのが、高野秀行氏の真髄である。 誰よりも"ブリコラージュ"を体現している。 「この人たちは、みんな、目に見える範囲のもので生活してるよな。」
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面白かった!文化人類学、風俗、言語学、スーパーサバイバル術(対人)などなど、多岐にわたって軽快に語られる。 現地のテロやコロナ禍、体調不良など様々な困難に見舞われるけど、凄まじいポジティブさを見せてくれる。タフだなぁ、と思う。 マーシュアラブ布の解明は、ほんとにエキサイティングだ...
面白かった!文化人類学、風俗、言語学、スーパーサバイバル術(対人)などなど、多岐にわたって軽快に語られる。 現地のテロやコロナ禍、体調不良など様々な困難に見舞われるけど、凄まじいポジティブさを見せてくれる。タフだなぁ、と思う。 マーシュアラブ布の解明は、ほんとにエキサイティングだったし作者の興奮も伝わってくる。 イラクと日本じゃ完全にアウェーだと思うのに、身内に入ってしまうとすっかり仲良くなるのが筆者の人間力を感じた。 正直イスラム社会の女性への扱いが酷すぎて、特にアフワールでのゲッサブゲッサには到底着いて行けそうにない。それは筆者もそう思っているのだけど、それとその他の考え方は切り離して公平に見ているところが成熟した大人を感じさせる。相手の懐に入った以上、自分たちの価値観は自分の身のうちに収めて相手の世界を先入観なしで公正な目で見ることはなかなかできない。 ノンフィクションなのに、めちゃめちゃ中世ファンタジー読んだ気分にもなる訳のわからない本。(めっちゃ褒めてる。)
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知らない世界の話しを、丁寧にユーモアを交えながら描写しており、厚い本であるが一気に読み切る魅力がある。 アフワールに一度は行ってみたくなった。
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若宮總氏の『イランの地下世界』がめちゃくちゃ面白くてもっとこういうの読みたいなと思ったところ、あとがきというか身元保証人として高野秀行氏が現れて本書を紹介されていたのでまんまと買ってしまった。そしてまんまと楽しませていただいた。 ちなみに購入して表紙をじっと見てからクレイジージャ...
若宮總氏の『イランの地下世界』がめちゃくちゃ面白くてもっとこういうの読みたいなと思ったところ、あとがきというか身元保証人として高野秀行氏が現れて本書を紹介されていたのでまんまと買ってしまった。そしてまんまと楽しませていただいた。 ちなみに購入して表紙をじっと見てからクレイジージャーニーの高野さんだと気づいた。笑 イラクという国だけでもよく知られていないのに、その中のアウトローが集まる南部湿地帯に行くというのは変態中の変態。数多の障害に阻まれながらも、高野氏と山田隊長は驚異的な行動力とコミュニケーション能力を発揮して問題を解決し、達観した視点でわけのわからない経験を面白く提供してくれた。 多角的な視点なのは良いが、話があっちこっちぶっ飛ぶのは読みづらかった。でも面白かったから問題なし。 そしてイラク人(特に湿地帯の人たち)のノリがとにかく愉快。私は船頭のアブー・ハイダル推し。 さらには情勢が不安定なせいで学術的な希少価値まで生じてしまっている。南部湿地帯の不滅をただただ願うのみ。
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サイコーです。 読んでいて、イラクがすきになります。 料理は美味しそうですし、人々は親切ですし、ほんとーに行きたくなりました。 世界最古の一神教、マンダ教や、イラクに湿地帯があるなど、知らない事ばかりです。 戦争がなければ、高度な文明なんで素晴らしい国になっていると思うと本当に...
サイコーです。 読んでいて、イラクがすきになります。 料理は美味しそうですし、人々は親切ですし、ほんとーに行きたくなりました。 世界最古の一神教、マンダ教や、イラクに湿地帯があるなど、知らない事ばかりです。 戦争がなければ、高度な文明なんで素晴らしい国になっていると思うと本当に残念です。 こういうワクワクできるのは作者さんの力もあるかと思います。 ただ、トイレとシャワー事情を考えるとちょっと行くには勇気がいりますね。
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書店で表に一目惚れし購入、絶対に面白い本だと思った。表紙の写真がめちゃくちゃ良かった。 世の中の大概の冒険譚が私が産まれる前の話なのに対し、これはつい最近(な気がする)コロナ禍の時の本というのも親近感がありよかった。 全く検討がつかない土地で何とかしていくのが面白かった、そ...
書店で表に一目惚れし購入、絶対に面白い本だと思った。表紙の写真がめちゃくちゃ良かった。 世の中の大概の冒険譚が私が産まれる前の話なのに対し、これはつい最近(な気がする)コロナ禍の時の本というのも親近感がありよかった。 全く検討がつかない土地で何とかしていくのが面白かった、それにより現地の人に対して怒ったり、イラついたしているのも、最初こそなんか嫌だったが、慣れると、その場の臨場感や人々が居る感じ鮮明にし、この物語を面白くしている1つの要素なんだろうなと思った。
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