ことばの白地図を歩く の商品レビュー
奈倉有里さんの新刊。同時に、創元社が企画する「10代以上すべての人のための人文書シリーズ」~あいだで考える刊行の一刊でもある。 遠くて近い、近くて遠いロシア。 子供のころはただ、「怖い国、人種」と言うような感覚で見ていた。 歳をとり、時間が出来てくると、世界の中に占めるスラブ民...
奈倉有里さんの新刊。同時に、創元社が企画する「10代以上すべての人のための人文書シリーズ」~あいだで考える刊行の一刊でもある。 遠くて近い、近くて遠いロシア。 子供のころはただ、「怖い国、人種」と言うような感覚で見ていた。 歳をとり、時間が出来てくると、世界の中に占めるスラブ民族が培ってきた文化、芸術、そのほか生活に根差した諸々に興味が出てきた。 手始めに始めたのが Eテレのロシア語講座~があえなく、瓦解。 折からのロシアによるウクライナ侵攻でフェイドアウト。 録画していたストックも見る樹、聞く気が失せ削除した。 時を同じくして関心が募ったスヴェトラーナ、フィリペンコの作品群、片っ端から読み、奈倉さんを知る。 10代で読む~個人的に言えば12,3歳のころ、春の曙時?むくむく湧いてくる知的好奇心、そして学業に物足らなさを感じ、理系?文系?あるいは学際的なジャンル?乱読乱聴時間である。 内容は分かりやすく、紐をたどるように次の場面が展開していく仕組み・・1日もあれば読める。そして指針も用意されており 愉しい。 神西さんの名前が懐かしく、その誤訳?も紹介されていたが・・明治大正昭和、まして世界中がネットで一瞬につながる現時点で(あの時)を語れないのは自明の理。よくぞ、先人はここまで歩んできたと感嘆するばかり。ツルゲーネフ、プーシキンはいまいち肌が合わなかったが、語学講座で番組内紹介でいろいろ教えられた料理,エセーニンは脳裏に焼き付いている・・出来れば彼の子興味にも足を踏み入れたかった。 奈倉さんは文字を通しての【間をつなぐ】職人・・してみると音楽、料理、手工業・・みな同類の匂いがした。 米倉さんの夭逝が哀しい。
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この春創刊した人文書の新シリーズ「あいだで考える」、文庫よりひと回り大きい判型で手触りよく軽く、「10代以上すべての人に」と銘打って、ふりがなたっぷり、イラストあり、二色刷り150ページ。巻末には芋づるの元(参考文献&おすすめリスト)。「岩波ジュニア新書」「ちくまプリマー新書」「...
この春創刊した人文書の新シリーズ「あいだで考える」、文庫よりひと回り大きい判型で手触りよく軽く、「10代以上すべての人に」と銘打って、ふりがなたっぷり、イラストあり、二色刷り150ページ。巻末には芋づるの元(参考文献&おすすめリスト)。「岩波ジュニア新書」「ちくまプリマー新書」「14歳からの世渡り術」といった中高生向けノンフィクションへの呼び水として相次いで創刊した「岩波ジュニスタ」「ちくまQブックス」と同じような狙い(読みやすい仕様での本格読書へのスモールステップ)を感じる。 シリーズ3冊目は私にとっての本命(このシリーズを知るきっかけともなった)。ロシア語ロシア文学にどっぷりひたって生きてきた著者による語学指南から読書のすすめを経た翻訳入門はRPG仕立てにもなっていて、読んだ勢いであたらしい言葉に挑戦するか英語や古語などを学び直したくなること必至。 目標があってもなくても語学はできるし、「異文化と自国文化」のような雑な分断をあおる考えかたは徹底的に疑いたい。自分の感覚をとぎすまして言葉や生活を経験しながら、本の世界の魔法にかかりその体験を他の人にも伝えるべく翻訳にたずさわっている著者の流儀を知ることで、「翻訳」は言語をただ横から縦にするだけじゃない複雑な営みだということがよくわかるし、たとえば小説の映画化やアニメ化なども、仕事や教育もみな「翻訳」だなあと思った。 それにしてもスラヴ語界隈は米原万里、黒田龍之助、そして奈倉有里と、定期的にとんでもない逸材(語学力はもとより話術が巧みな個性派)がでてくるのがすごい。亀山郁夫とかヌマヌマもいるし…。
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