しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
ミステリーというジャンルは、殺人事件が発生するものが圧倒的多数である。ろくでもない人間が、ろくでもない理由で人を殺す。殺人という行為をあまりにも軽く描くきらいはあるし、少なくとも「良書」とは言えないよなあ。 と、『殺人犯 対 殺人鬼』の感想に書いたのだが、早坂吝はまたまたろくでもない作品を世に送り出した。冒頭の殺人事件から胸糞が悪いし、下劣な犯人像が腹立たしい。早坂作品と承知していなければ、壁に投げつけただろう。 場面は飛び、迷路牢で目覚めた女名探偵を含む7人。ゲームマスター曰く、6つの未解決事件の犯人が集められたという。殺し合って生き残った1人だけを開放するというのだが、誰一人自身の犯行を認めない。もちろん女名探偵も。 さらっと書いているが、6つの未解決事件の内容が酷い。中には現実の事件を彷彿とさせるものもある。ゲーム的な設定といい、ふざけすぎだ。クローズド・サークルのお約束として、集められた面々がどんどん死んでいくのだが、展開が雑すぎる。6人+1の人物描写は薄っぺらいし、序盤は早坂吝の意図が読めない。 残り人数が少なくなり、いよいよ解決編という段階に至っても、益々雑になっていくではないか。根拠としては弱すぎる。迷路牢の平面図を確認するのも面倒になってくる。そんな聞いてねえ情報を唐突に出しても、辻褄合わせになっていない。 ところが、この雑さは、構成上計算された雑さであることが、最後の最後に明らかになる。本作は、いつもの早坂吝らしいふざけた作風ながら、緻密さも持ち合わせていたのだった。帯によれば、有栖川有栖氏さえも騙されたのだ。 というか、犯人が実はそんな症状だったなんて、わかるわけないだろうがっ! あまりにご都合主義すぎる。だが、ご都合主義を楽しむのが早坂流ミステリーなのだ。本作はまさに、曲者作家・早坂吝の神髄が詰まった作品と言えるだろう。 正直、賞賛するのが癪な早坂吝に敬意を表し、星5つを捧げよう。
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「あれだけ警戒しながら読んだのに完全に騙された。まさか、そうくるとは。」ーー有栖川有栖 女名探偵の死宮遊歩は迷宮牢で目を覚ます。姿を見せないゲームマスターは「六つの迷宮入り凶悪事件の犯人を集めた。各人に与えられた武器で殺し合い、生き残った一人のみが解放される」と言うが、ここ...
「あれだけ警戒しながら読んだのに完全に騙された。まさか、そうくるとは。」ーー有栖川有栖 女名探偵の死宮遊歩は迷宮牢で目を覚ます。姿を見せないゲームマスターは「六つの迷宮入り凶悪事件の犯人を集めた。各人に与えられた武器で殺し合い、生き残った一人のみが解放される」と言うが、ここにいるのは七人の男女。全員が「自分は潔白だ」と言い張るなか、一人また一人と殺害されてゆく。生きてここを出られるのは誰なのか? そしてゲームマスターの目的は?
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