イスラエル 人類史上最もやっかいな問題 の商品レビュー
著者は、アメリカで生まれ育ったユダヤ系アメリカ人である。”あらゆる”イスラエル人に民主主義と平等をもらたすために活動する「新イスラエル基金」のCEOでもあり、同基金は、パレスチナやイスラエルの平和で公正な社会の構築と維持を目標に掲げている。 本書の構成は大きく2部に分かれており...
著者は、アメリカで生まれ育ったユダヤ系アメリカ人である。”あらゆる”イスラエル人に民主主義と平等をもらたすために活動する「新イスラエル基金」のCEOでもあり、同基金は、パレスチナやイスラエルの平和で公正な社会の構築と維持を目標に掲げている。 本書の構成は大きく2部に分かれており、第1部で旧約聖書の時代から現代に至るまでのイスラエルの歴史を概観し、その土地で今なお続くアラブ人とユダヤ人の争いについて説明する。地理、歴史、紛争の概略を詳細に紐解くことで、この問題について語る「準備」をすることが目的だ。 第2部ではイスラエルをめぐるやっかいな論争のいくつかを検討していく。イスラエルと民主主義について、イスラエル人とパレスチナ人の未来について、イスラエルとアメリカの関係性とその変化について、それらややこしく、迂闊に語れば論争に火が付く問題を出来る限りフラットな目線で概説してくれる。 その他、著者の経験がコラムとして書かれていたり、挿絵も豊富なので、情報の密度は高いものの言葉は平易だし、じっくり読めば決して難しくはないだろう。 こうしてその全体像を見ていくと、例えばイスラエルの建国の父であるベン=グリオンが提唱した「ベン=グリオンの三角形」というこの国のアイデンティティについての考え方や、あるいは1993年のオスロ合意など、歴史を良い方向に変える可能性はどこかに残っていたのだと感じてしまう。歴史にイフは無いと言うけれど、ならばなおさら、和平のプロセスがどこで、なぜ、終了し崩壊してしまったのか。それを知ることに価値はあるはずだ。 ネット上にはこの問題について概略をまとめた記事が多くあり、簡易的に知る際には役に立つだろう。それでも事態の混迷度は本書副題にある通り、まさに「人類史上最もやっかいな問題」なほど込み入っており、より深く理解するために書籍という媒体はやはり強い。 私はイスラエル問題に関する本を読んだのはこれが初めてで、上記したように作者はアメリカのリベラルな社会活動家なわけだが、それを踏まえても、本書はイスラエルーパレスチナ紛争について出来るかぎり「中立的」で偏りのないポジショニングがとれていると感じた。それは本書の基本的な姿勢として、「イスラエルが正しい」という主張と「イスラエルは間違っている」という白黒はっきりさせた論説には与しないことからスタートしているからだ。イスラエルとは要するに「グレー」なのだと。 いまガザ地区で何が起こっているのか、なぜそうなってしまったのか、この問題についてどのような人がどうアプローチしているのか。これですべてが理解出来たとも、網羅されているとも思わないが、フラットな意識を持って知ろうとすることは重要なことだろう。 読めば読むほど解決方法など無さそうに見えて暗澹たる気持ちにはなるが、本書の最後の章に書かれているイスラエル人とパレスチナ人の問題を解決し、共存の道を探っている人たちの言葉には勇気をもらえる。
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他の方々と同様にハマスへのイスラエルによる報復のニュースをみて、パレスチナ問題への問題意識と関心を持つきっかけなり本書を手に取る。 今までの歴史的背景をつぶさに解説し、多角的にこの問題の紛糾する理由、非常にナイーブな立場の軋轢を提示されている。今までのあいまいな理解を整理するこ...
他の方々と同様にハマスへのイスラエルによる報復のニュースをみて、パレスチナ問題への問題意識と関心を持つきっかけなり本書を手に取る。 今までの歴史的背景をつぶさに解説し、多角的にこの問題の紛糾する理由、非常にナイーブな立場の軋轢を提示されている。今までのあいまいな理解を整理することができた。
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イスラエルの問題は複雑で根が深くて本当に難しい。最新のニュースから得た断片的な表層の情報だけでは分からない事も時系列で詳しく説明されている。最後に掲載されているインタビューはイスラエルの希望だった。こういう人達の活動にももっとスポットが当たって欲しい。
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著者はアメリカのリベラルなユダヤ人コミュニティ出身とのことですが、ユダヤ系イスラエル人側の主張に偏ることなく、パレスチナ人側の主張や、歴史的背景を丁寧に解説してくれていると感じました。 ハマスとイスラエルの紛争のニュースを見て、イスラエル問題を知りたいと思い書店で手に取った本でし...
著者はアメリカのリベラルなユダヤ人コミュニティ出身とのことですが、ユダヤ系イスラエル人側の主張に偏ることなく、パレスチナ人側の主張や、歴史的背景を丁寧に解説してくれていると感じました。 ハマスとイスラエルの紛争のニュースを見て、イスラエル問題を知りたいと思い書店で手に取った本でした。 どちらかの主張に偏ったものではなく、フラットな目線でこの問題を知ることができる本、という点で非常に素晴らしい本でと感じました。
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聖書にあるようなユダヤ人の歴史、反ユダヤ主義、ホロコースト、シオニズム、イスラエル建国みたいな話しが書いてあるのかなと思って、読んだ。 実際、そうしたことも書いてあるが、それは前提知識くらいで簡単にまとめてあって、メインは建国以降の歴史。 なんとなくぼんやり知っているような気...
聖書にあるようなユダヤ人の歴史、反ユダヤ主義、ホロコースト、シオニズム、イスラエル建国みたいな話しが書いてあるのかなと思って、読んだ。 実際、そうしたことも書いてあるが、それは前提知識くらいで簡単にまとめてあって、メインは建国以降の歴史。 なんとなくぼんやり知っているような気になっていたことが、全く理解が足りなかったことがわかった。 そして、現代、アメリカなどで論点化するイシューもコンパクトにまとめてある。 この問題に限らず、政治問題をニュートラルに語るというのは困難なことなのだが、できるだけニュートラルに書こうという努力はよく伝わってくる。 一番、勉強になったのは、トランプ政権の時のアメリカの親イスラエル的な立場、その背景にあるキリスト教福音派の考え。そうだったんだ〜という感じ。
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やっぱり、複雑。 読みやすく書かれているのだろうけど、 事情が既に複雑。 国家や政治と人種・民俗、文化は、別ものであることを、 痛感。
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在米ユダヤ人によるイスラエル・パレスチナ問題に関する解説書。5月に日経の書評欄に取り上げられていて気になっていたが、買うのを先延ばしにしているうちに事態がだいぶ変わってしまった。 歴史の記述などが豊富なのは当然として、興味深かった記述は、 - 原題"Can we tal...
在米ユダヤ人によるイスラエル・パレスチナ問題に関する解説書。5月に日経の書評欄に取り上げられていて気になっていたが、買うのを先延ばしにしているうちに事態がだいぶ変わってしまった。 歴史の記述などが豊富なのは当然として、興味深かった記述は、 - 原題"Can we talk about Israel?"に表されているように、イスラエル・パレスチナに関する問題になると他のトピックとはうってかわって冷静な議論が難しくなるケースが多い - イスラエルの入植や攻撃の批判とanti-semitismは明らかに違うのに、意図的にそこを混ぜた反論がされやすい(現時点でもこれはかなり見られると思う) - ベン=グリオンの三角形の概念。恥ずかしながらこの言葉を知らなかったが、つまりイスラエルが(1)ユダヤ人国家であること、(2)民主主義国家であること、(3)占領や入植をすること、にはトリレンマがある。(3)を諦めるのではなく(2)を捨てる方向に行きつつある懸念は以前からなされている通り - アメリカにおけるイスラエルの扱い。在米ユダヤ人とイスラエルには乖離があり、トランプ登場がそれに拍車をかけた。むしろ(非ユダヤ人である)共和党の福音派がイスラエルに共鳴している - イスラエルにも多くの非ユダヤ人がいて、第三党はアラブ人政党(知らなかった) などなど。 二国間対立が二か国共存の形で解決に向かうことを望まない勢力(過激派政党や民衆)が常に立ちはだかってきた事実を思うと気持ちが重くなる。今の日韓関係のムードはいつまで続くだろうか、など思わず自国のことも考えてしまった。 読めば読むほど打ちひしがれる1冊であったが、だからこそ、最後の章で思わず目頭が熱くなった。
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アメリカのキリスト教福音派がイスラエルを支持する理由。第三神殿、赤い班牛の生贄、キリスト復活、ハルマゲドン。訳わからん。 アメリカ在住ユダヤ人の解説、分かり易かった。
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2023年10月にイスラエル問題が再び激化した事によって、この本を読み始めた。 この本を読んでいる間はイスラエルに関する、日本のニュース、YouTubeの動画、Xの情報は見ないようにしていた。偏った情報を入れない為に。 著者はユダヤ系のアメリカ人のようだが、読んだ限りでは、あ...
2023年10月にイスラエル問題が再び激化した事によって、この本を読み始めた。 この本を読んでいる間はイスラエルに関する、日本のニュース、YouTubeの動画、Xの情報は見ないようにしていた。偏った情報を入れない為に。 著者はユダヤ系のアメリカ人のようだが、読んだ限りでは、あまり知識の無い自分でも、イスラエル、パレスチナ、両者の目線に立った公平な視点で書かれている気がした。 この他にも関する本を読みたい。 色々なメディアの取り上げ方にも触れ、またこの本に戻ってみようかなと思う。
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イスラエル問題について詳細にかつ公平に(と感じる)書かれた一冊。もうね、こういうの以外は信じちゃダメだなと思った。どれだけ長く現地で記者をやってようが、どれだけ国際情勢に精通してようが、日本人がこの問題をどれだけ分析してみたところでこの著者からしたら「むちゃくちゃ浅い」のよ絶対。...
イスラエル問題について詳細にかつ公平に(と感じる)書かれた一冊。もうね、こういうの以外は信じちゃダメだなと思った。どれだけ長く現地で記者をやってようが、どれだけ国際情勢に精通してようが、日本人がこの問題をどれだけ分析してみたところでこの著者からしたら「むちゃくちゃ浅い」のよ絶対。両国の間に起きた数々の事実は時系列順に並べればそれなりに歴史っぽくはなるんだけど、それぞれの事実の経緯を説明するに足る宗教観や感性はさ、もうこんなの当事者にしかわからないじゃん。自分がこの問題について全て分かってるわけじゃないけど、イスラエル問題について軽々しく書いてあるメディアに触れるのはほんと良くない。「日本の現在の人口は何万人ですか?」という問いに対して政府系のデータを参照しないで、まとめサイトにある「約1.2億人と言われています!」をそのまま引っ張ってきて理解した気になってるーみたいな。うまく伝わらないと思うけど、問題を考える上であたるデータソースって本当に大事なのよってことを言いたかった。 あとこの問題は解決するの無理でしょ。問題解決を望まない層の勢力が強すぎる。ちょっとでも強硬なことを考えてる人間を双方で根絶やしにして初めてスタートラインなのでは?あと個人的に興味深かったのは、アメリカのユダヤコミュニティとイスラエルの関係性の変化。アメリカの若いユダヤ人がユダヤ人としてのアイデンティティを持たずアメリカというコミュニティに埋もれようとする中で、イスラエルがそれを阻止する手立てとして機能してたってのは面白かった。トランプ政権がアメリカのユダヤ人からしたらいかに狂っていたかってのも、他の立場から書かせたらきっと違うんだろうけど、1回の表に7点は入ってますね。後攻チームがこれ跳ね返せるのか?そんぐらい狂ってる。
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