本売る日々 の商品レビュー
この時代の本の位置づけがよく分かります。 今のような印刷技術もないし、紙も貴重、そして何より本屋が少なかったから、本をたくさん背負って売り歩くというその当時の本を取り巻く文化や生活模様が垣間見えます。 ある書店を営む男性を中心に3話からなる連作短編です。 得意先の主が遊郭から女郎...
この時代の本の位置づけがよく分かります。 今のような印刷技術もないし、紙も貴重、そして何より本屋が少なかったから、本をたくさん背負って売り歩くというその当時の本を取り巻く文化や生活模様が垣間見えます。 ある書店を営む男性を中心に3話からなる連作短編です。 得意先の主が遊郭から女郎上がりの孫ほど歳が離れた娘を後添えに迎えた話、人魚の肉を食べそれ以来歳を取らなくなるという伝説の女性の復讐劇、常にオドオドして自信がなさそうだった医者がある時を境に評判の良い医者になった謎、どの話にも優しい思いやりが隠されていました。 派手さはないけれど、なんだか引き込まれてしまう、そんな本でした。
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絶妙な語り口。 派手さはないけど、 ドキドキして、 最後どうなるのか知りたくて、 どんどんページめくってました。 この当時の本の在り方も分かって面白い。
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江戸時代の話。本を行商する平助の上得意の客・惣兵衛が七十一歳で十七の娘を嫁にもらったという表題作「本売る日々」。人魚の肉を食べたことで不老長寿を得たという八百比丘尼伝説のように、いつまでもほとんど歳を取らないという女の話「鬼に喰われた女」。姪が病でかかった医者・西島晴順は町で指折...
江戸時代の話。本を行商する平助の上得意の客・惣兵衛が七十一歳で十七の娘を嫁にもらったという表題作「本売る日々」。人魚の肉を食べたことで不老長寿を得たという八百比丘尼伝説のように、いつまでもほとんど歳を取らないという女の話「鬼に喰われた女」。姪が病でかかった医者・西島晴順は町で指折りの医者だといわれるが、過去に診てもらった者は信用ならない医者だという「初めての開板」。江戸時代の本の行商というものを知ることができ、ちょっとした謎解きも楽しみながら、利他の心の素晴らしさを改めて考えさせられた物語でした。
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江戸時代の本屋さんと本を愛する人 の話。 凛とした文体で 本を愛する人々の切々とした思いは 今よりずっと豊だったと思う。 シリーズ化してほしいな!
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幕末近くの地方?で本屋を営む主人公。 本が取り持つ交流が描かれる。 中編3篇のテーマは老いらくの恋、怪異、医師の志と幅広い。 それぞれ調子を使い分けているのは老練の技か。 主人公の控えめながら筋の通った佇まいが好もしい。 冒頭で大枚をはたいて購った板木は結局使わなかったのだ...
幕末近くの地方?で本屋を営む主人公。 本が取り持つ交流が描かれる。 中編3篇のテーマは老いらくの恋、怪異、医師の志と幅広い。 それぞれ調子を使い分けているのは老練の技か。 主人公の控えめながら筋の通った佇まいが好もしい。 冒頭で大枚をはたいて購った板木は結局使わなかったのだろうか?
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松月平助はひっそり閑とした村から村へと本を売り歩く行商人である。お得意先で難事に巻き込まれるが、彼の人柄と才智で穏便に説く。読書を愛する人へ熱の籠もった一冊だ。
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“ついでに寄るのでは『群書類従』に失礼にあたる”。ここ好きだわ〜。 ラストの佐野先生が素晴らしすぎる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
【収録作品】本売る日々/鬼に喰われた女/初めての開板 江戸時代の本屋を主人公とした連作。 今とは違う「本」の重みが感じられる。 真にその価値を知る人たちの開かれた目が好もしい。「知」とは万人に開かれているものであるべきだが、いくら本を読んでも皆がそれに気づき、そのために尽力するわけではない。 だからこそ、村名主の惣兵衛や藤助(トウスケ)、医師の佐野淇一(キイツ)、そして主人公の松月堂・平助のあり方に心惹かれる。
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大山文平子の時代小説は何冊も読み続けているが、今回もなかなかの秀作で読み進めた。 本能を持つ力、本の持つ影響力、本を読む楽しみ、読書家の一端に入ると自認している。私にとって青山氏の本に対する愛着、本の力に対する思いがひしひしと伝わってきた。
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星4.5 丁寧すぎるほど丁寧に心情を語るので、苦手な人もいるかもしれないが、さすがだと思った。これは、「底惚れ」も読まないと。 最後の「初めての開板」が好み。
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