黄色い家 の商品レビュー
読みながら常に感じていた感覚はどんなものだったのか?と、読み終えてからちょっと考えていた。総じて言えば、ライブ感だったのかもしれない。例えば、登場人物たちの置かれた環境、気持ちの揺れ動きや感情の起伏、なんでもない日常の幸せと健全ではない現実での達成感、たくさんたくさん考えても行動...
読みながら常に感じていた感覚はどんなものだったのか?と、読み終えてからちょっと考えていた。総じて言えば、ライブ感だったのかもしれない。例えば、登場人物たちの置かれた環境、気持ちの揺れ動きや感情の起伏、なんでもない日常の幸せと健全ではない現実での達成感、たくさんたくさん考えても行動できる選択肢の少なさ、など。それらのことが、敢えて平仮名を使う表記部分や会話の言葉選びなどと合わせて、臨場感あふれる感覚を覚えたように思う。あと、時代背景が2000年前後ということもあり、その当時の空気感を実体験で味わってきているからというのもあるように思う。 物語は、若い女性を監禁暴行により重症を負わせた罪に問われている吉川黄美子の初公判のニュースから始まる。その記事を見つけた伊藤花は20年ほど前に吉川黄美子と一緒に暮らしていた。同年代の欄と桃子も共にしており、当時の花たちのことを中心に描かれている。 黄美子と暮らす花はまだ未成年であり、幼少のころのことも描かれているので、花の人物像はほぼ出来上がる。頼らねば生きていけないが、頼るべきものや人はほぼない。拠り所はあるようでないようなあやふやな人生。まともに生きることを知らず、どうしたらいいのかも自分ではわからない。自分で目標を見つけても、周りの人たちに振り回されるがその周りの人たちがいないと詰んでしまう現実。そんな、感情も思考も行動も現実も起伏の激しい状況だが、その中でお金は良くも悪くも常に付きまとってくる。こう書いてしまうと、ある程度この物語の内容を推測できる方もいるかもしれないがそこは些末なことで、花の人生を追体験されてこそ、ここに描かれていることを深く意識するのではないかと思う。自分の存在意義を何に見出して、どうしてそこに至ったのかなどもなんだか分かる。自分と他者の距離感は、気持ちや意識によって双方に接し方や伝わり方が違うし変化する。不安定な現実とその時々の感情はずっしりと重く、年齢を重ねて変わることと変わらないこともなんだか分かる気がする。自分では選ぶことができない世界で、選ばざるを得なかった生き方は苦しい。そして、切っても切れないお金と人の関係を突きつけられたようで、ずっと心の中で未消化のまま残っていく気がする。
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詐欺に手を染めるまでがダラダラと長くてストーリーに引き込まれず面白味を感じなかった。黄美子さんもよく分からない人だし、誰にも感情移入出来ずで最後の方は流し読み。私には合わなかった。
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中学三年の時に黄美子と出会った花。 底辺の生活ながらマジメにコツコツと働いて貯めた虎の子を母の愛人に持ち去られる。 40才になった花が偶然見つけた黄美子が起こした傷害事件の記事。 高校を中退してから黄美子を頼り、二人の同い年の女の子も同居しながらカード詐欺で生きていた、花の半生を...
中学三年の時に黄美子と出会った花。 底辺の生活ながらマジメにコツコツと働いて貯めた虎の子を母の愛人に持ち去られる。 40才になった花が偶然見つけた黄美子が起こした傷害事件の記事。 高校を中退してから黄美子を頼り、二人の同い年の女の子も同居しながらカード詐欺で生きていた、花の半生を思い出で語る物語。 どうしようもない生活の中、どうしようもなくだらしのない母親の元で、彼女はなぜそれほどまじめに周りの人のために生きられるのか。 どこか人としてはおかしい黄美子に救ってもらったと信じる花。捨てられたと思っていた母の愛を知った花。彼女に幸せな未来がありますように。
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読了後、どっしり。気分がどっしり、ずっしりした。 やっぱりどうやったって、環境が人を育てて変えるんだと思う。自分ではどうしようもないことがあるんだと思う。もちろん、だからと言って罪を犯していいということではないけれども…。花は決してお金に狂ったから罪を犯したのではなく、不安が積...
読了後、どっしり。気分がどっしり、ずっしりした。 やっぱりどうやったって、環境が人を育てて変えるんだと思う。自分ではどうしようもないことがあるんだと思う。もちろん、だからと言って罪を犯していいということではないけれども…。花は決してお金に狂ったから罪を犯したのではなく、不安が積もりすぎてその手段しか選べないような心理になっていた気がする。 花は責任感が強くて、人との繋がりに飢えていて、だからこそお母さん、黄美子さんとの繋がりも割り切れなくて自分で全てを抱え込もうとしていたんだと思う。お金への執着。ちょっと先の未来でさえ不安になるほどお金に困った過去があるからこそ、ここまで執着してしまうんだと思うし、そうするしか手立てがないと感じていることもひしひしと伝わった。 桃子の花への言葉、しんどかったなあ。 自分が一人になりたくないからでしょって、花にはきっとその節もあったと思う。 お母さんも自分に関心がなさそうで、友達もいなくて、そんな時自分がいなかったら生活ができない人たちがいるんだと思ったら頑張る糧にもなっただろうし、頑張って一緒に楽しく仲良く暮らして、そんな生活を続けたいと思っただろうなあ。 誰もそんなこと頼んでいない、勝手に巻き込んできたというのはいくらなんでも桃子は都合が良すぎると思ったけど、人間みんな自分中心になるから仕方なくもあるんだろうか…。 悲劇のヒロインとか、どうしても人と比べて大変って思うこともあるけど、一人一人大変さとかしんどいと思うことも違って、もちろん程度が違って自分の方がしんどいのになんでこんな事言ってるのって思うこともあるけど、比較すること自体がフェアじゃなかったりもするのかもしれない。 子どもだったから。子どもだったから正しい判断ができないし、だからこそ大人が正しい道を教えてあげなければいけないけど、もうそっち側への行き方も戻り方もみんな分からなくなっていて、最後は蘭も桃子も、花も自分たちを正当化しないと残りの人生を生きていけなかったんだろうなと思う。 最初に読んだ時には黄美子さんは子どもたちを相当こき使うような悪い人だったんだろうと思ったけど、そんな事はなく、どちらかというと花がどんどん1人で抱えてしんどくなって、疑心暗鬼になって変わっていく姿を見ているのが辛かった。 きっと花ちゃんは黄美子さんのことお母さんのようにお姉さんのように感じていたんだろうな。黄美子さんが救い出してくれたという感謝がきっと深く心に残っていたから、何もしていなくても蘭と桃子に対するような行き場のない怒りを感じてはいなかったんだろう。 うーん、感想がまとまらないくらいには感情が揺さぶられる作品でした。週末一気に読んで感情ごちゃごちゃなので、噛み砕いてまた改めてゆっくり感想書きたいな。
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※このレビューにはネタバレを含みます
私には少し難しい小説だった。 帯に"人はなぜ金に狂い罪を犯すのか"とあったが、その部分にたどり着くまでがとにかく長く感じた。長く感じる前半ではあったが、所々で感じふ違和感(特に黄美子)が、これから何が起こるのだろうと気になり読み進められた。現実であれば、花の母親やトロスケの件などは酷いし不憫な主人公なのだが、かといって読んでいて感傷的になる程に描かれていたわけでもなく主人公も打ちひしがれている感じもなかった。それは黄美子がいたからだとは思うが、情に訴えるでもなく淡々と描かれているのがなんだか不思議だった。 花と蘭と桃子とのやりとりは若々しさがあってよかった。しかし、「れもん」や四人の共同生活がうまく行っていたことも不思議だし、でも食事はまともに摂ってなかったりどこかで"ちょっと普通じゃない"違和感があった。花も相当辛くてグレたっておかしくないのに真面目だし、黄美子のキャラクターが最後まで全く掴めなくて不思議だった。 そんな感じで前半は読んでいたのだが、後半になってからやっとストーリーが進む。追い詰められた花がカードを使った犯罪に手を出すのだが、そのあっさりとそっちの世界に行ってしまえるほど切羽詰まってた、というかそういう性格の花が不憫というかヴィヴの言う「頭がおかしい」ってやつだったのかな。この辺りのお金に関する話は色々考えさせられた。 "自分で稼いだ金だけが自分の金で、自分を守ってくれるのは誰かの金ではない。自分で稼いだ自分の金だけなのだ。"、"幸せな人間は確かにいる。でも金や仕事があるからではない。考えないから幸せなのだ。普通に生きていく分には金はわかりやすい力。知恵絞って体使って自分で掴んだ金を持つと、最初からなんの苦労もなしに金を持っている奴の醜さがよくわかる。"など。ヴィヴが言ってた金の向こうが何なのかよくわからなかった。 その後ズブズブと罪にハマっていき追い詰められる花と、蘭と桃子と黄美子への不満や支配していく部分は面白かった。お金や闇の世界にどんどん狂わされていく。"今日を生きて明日もその続きを生きることのできる人たちはどうやって生活しているのだろう。その人たちがどうやって、そのまともな世界でまともに生きていく資格のようなものを手に入れたのか。どうやってそっちの世界の人間になれたのか。どうしていいかわかんないんだよ。"まとも(と言っていいかわからないが)な家庭で育って学校を出て社会に出ていけば、少なくともその資格を教えてくれるんだけど花にはそんな環境はなかった。そんな花が哀れで可哀想で、でもそういう子が少なからずいるのが悲しい。 そしていよいよ狂った挙句の桃子の発言は痛々しいほどに突き刺さる。"金を山分けできないのは、金のこともあるけど、基本あんたが一人じゃ生きていけない人間だからだよ。一人で何もできなくて、人を金で支配して周りに置いておこうとするんだよ。"こんな事言われたらキツイよ。真理かどうかわからないが、桃子のママの毒親分析にしても、桃子は鋭くみているなと思った。そして大人の本音はわからんが花達も知らず知らずのうちに大人に利用されてたのかと思うと切ない。映水も利用されんなと花に警告していたのに結局利用していた所に怖さを感じる。 そうして皆散り散りになりラストとならり、黄美子への依存は無くなったのかと思いきやまだ離れられずにいるよくわからない終わりだった。 てかトロスケに70万、母に200万とられ、シノギで貯めたお金にも手をつけずにいた花ちゃんすごすぎ笑。けど黄美子含めた黄色へや家へ執着していて、そうでないとやっていけない花の育ってきた環境が悲しく、ただ黄美子が救いですれにしかしがみつけなかった花が切なくて悲しかった。 私にはやや不思議で何を描きたかったのかよく分からない小説でしたが、あとからあとからじわじわときています。読んで損はない本でした。
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「よーく考えよ、お金は大事だよ」というCMが頭を駆け巡る。金は死なない。財産だろうが借金だろうが生き続けて人間を翻弄する。ヘビーな物語にガツンとぶちかまされた。生きていく為にお金に執着せざるを得なかった花。気の合う人だけどふわふわしてて頼りない家族や仲間たち。私が頑張らなくては、...
「よーく考えよ、お金は大事だよ」というCMが頭を駆け巡る。金は死なない。財産だろうが借金だろうが生き続けて人間を翻弄する。ヘビーな物語にガツンとぶちかまされた。生きていく為にお金に執着せざるを得なかった花。気の合う人だけどふわふわしてて頼りない家族や仲間たち。私が頑張らなくては、私が稼がなくては。そのしゃかりきな思いが花に重圧を与えていく。ストレートな性格で責任感のある花には好感が持てたぶん、後半の展開は痛々しかった。ラストはあの形で気持ちに決着がつけたと思いたい。緊張感と臨場感のある描写も良かった。
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すごい読書体験でした。 きっと何年先も印象に残っている本は?と 聞かれると名前をあげる事でしょう。 何度も泣きそうになりながら、また泣きながら 読みました。 印象に残っている言葉もたくさんあります。 是非是非、読んでみて下さい。
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出だしが気になって、図書室にリクエストして借りて読んだ。 出てくる地名も馴染みがあって、何か色々想像できることも相まって、始終重苦さを感じて、途中、読むのがしんどかった。 一番キツかったのは桃子が、花に言い返すシーン。 あれって人間関係において、誰もが経験あるようなことの気が...
出だしが気になって、図書室にリクエストして借りて読んだ。 出てくる地名も馴染みがあって、何か色々想像できることも相まって、始終重苦さを感じて、途中、読むのがしんどかった。 一番キツかったのは桃子が、花に言い返すシーン。 あれって人間関係において、誰もが経験あるようなことの気がする。自分の見ている景色と他人が見ている景色は、同じ様で全然違うというか。 人のためにも必死のつもりが、相手にとっては恩着せがましく、自分の非をずーっと言われてマウント取りたいだけじゃん?って言われると、分かる気もするし、一体何のためなんだろうって虚しくなるのも、何か凄くわかる。 ちょっとね、報われない話なので、人に薦めるかって言ったら困っちゃうけど、読んで良かったとは思ってる。
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テンポは速すぎず遅すぎずでちょうど良かったので、ボリュームの割には読み進めやすかったです。 ストーリーがエスカレートしていくので、読むペースに拍車がかかり、クライマックスの所で盛り上がり最後まで一気に貪るように読みましたが、まさかのエンディングがつまらなかったのでがっかりしました。 お金が主題のストーリーだと思うので、何かしらお金と繋がりのあるオチだったら、読後の納得感を得られたのだろうなと思います。
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途中で読むの辞めそうなくらい長かったので無事読み切れて嬉しい笑。お話自体は言いたいことがよくわからないというか何がテーマだったんだろう、、、?あんまり印象には残らなかった、、、。
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