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すべての、白いものたちの の商品レビュー

4.2

49件のお客様レビュー

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2024/11/14

短文で構成された、詩のような、随筆のような、また短編小説のような、生と死の恢復の物語。 産着、雪、灰、おくるみ、骨、塩、氷、月、波... あらゆる白いものたち。 白いものについて読み、白いものを思い浮かべる。 生後すぐに亡くなった姉の死と自らの生。 ホロコースト後に再建されたワ...

短文で構成された、詩のような、随筆のような、また短編小説のような、生と死の恢復の物語。 産着、雪、灰、おくるみ、骨、塩、氷、月、波... あらゆる白いものたち。 白いものについて読み、白いものを思い浮かべる。 生後すぐに亡くなった姉の死と自らの生。 ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、 朝鮮半島の記憶の交差。 静かな雪のように、悲しみや祈りが降り積もるようだった。 この本の感想を言語化することはとても難しいのだけど、静かで儚く美しいことばに圧倒され、独特の世界に引き込まれる。 読み終えたあと、巻末にある著書のことばと訳者の補足文を読むと、もう一度最初から読み返したくなる。何度も読み返して味わいたい、大切な一冊になった。 この本は、"装置であり回廊であり、読むというよりその中を歩く本であり、通過する本" と語る訳者の一文が沁みる。

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2024/11/14

SNSでみかけたこの本に添えられていた言葉がとても素敵だった。雪の日にそんなきっかけで手に取った本を改めて開いたのは快晴で暖かい日の午後で、そんなタイミングもちょっと良いなと思った。 冬に雪、私と彼女、命と死。静かに深くなっていく美しい文章、なめらかな翻訳。そこには...

SNSでみかけたこの本に添えられていた言葉がとても素敵だった。雪の日にそんなきっかけで手に取った本を改めて開いたのは快晴で暖かい日の午後で、そんなタイミングもちょっと良いなと思った。 冬に雪、私と彼女、命と死。静かに深くなっていく美しい文章、なめらかな翻訳。そこには寂しさや哀しさに寒さがあるのだけど、少しづつ体温のようなぬくもりも感じていた。白いものたちの小さい話。小説。 移動中に幾つも付箋を立てる。落ち着いて何回も読み返したいセンテンス。ああ、これはずっと読み続ける本になるかもしれないし、もしかしたら冬が来るたびに開くことになるのかもしれない。とそんなことも思った。 本を閉じて歩き出しながら、父親の死んだ日のことを思い出していた。看取ったあとに入院していた病院を出て、道を挟んだ向かいにあるコンビニの喫煙所で空を見上げると、その日もとても晴れていて。タバコに火をつけると、白い煙が青い空の方に登っていった。それを見ながら父親の死を少しづつ実感していた。そのときの喫煙所はもうないのだけど、たまにその道を通るとその日のことと父親のことを思い出していた。これからはこの本を開くときにも、そのことを思い出すことになるかもしれない。その日の話は前にも少し書き出したことがあるのだけど、もし改めて書くとしたら、数年後に読んだこの本の話も加えて“目録”にならった「けむり」というタイトルをつけてみたいと思う。 「古い苦痛はまだすっかり収束しておらず、新たな苦痛はまだ始まってもいない。日々は完全な光にも完全な闇にもなれずに、過去の記憶に揺さぶられている。反芻できないのは未来の記憶だけだ。」 雪の日に素敵な言葉をきっかけに手に取ったことや読み始めたタイミングにそこから思い出したこと。そこにもSNSでの言葉を使わせて貰うなら「祝福」と言っても良い何かがあったような気もしています。

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2024/11/13

ノーベル文学賞受賞ハン・ガンさんの著書。 静謐で哀しみも漂うけれど、救いもあった。白いものを集めたとのことだが、なぜこんなにも心を打つのか。『彼女』からの展開に急に迷子になる感覚があり戸惑うが、意図がわかった時、読み返して静かな気持ちになった。それはまるで雪の降る寒い、とても白い...

ノーベル文学賞受賞ハン・ガンさんの著書。 静謐で哀しみも漂うけれど、救いもあった。白いものを集めたとのことだが、なぜこんなにも心を打つのか。『彼女』からの展開に急に迷子になる感覚があり戸惑うが、意図がわかった時、読み返して静かな気持ちになった。それはまるで雪の降る寒い、とても白い情景が広がるりを見るような感じを得た。何か大切なものを受け取った。

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2024/11/13

『すべての、白いものたちの』の「白い」は、韓国語ではヒンという言葉だそうです。ヒンとは生と死の寂しさを、こもごもたたえた白さです。 表紙の赤ん坊用の白い肌着のようなものが表すように、この本にはハン・ガンさんの生後二時間で亡くなった姉への思いが根底に流れているように思えました。し...

『すべての、白いものたちの』の「白い」は、韓国語ではヒンという言葉だそうです。ヒンとは生と死の寂しさを、こもごもたたえた白さです。 表紙の赤ん坊用の白い肌着のようなものが表すように、この本にはハン・ガンさんの生後二時間で亡くなった姉への思いが根底に流れているように思えました。しんしんと雪が降り、真っ白におおわれた場所の冷たさを味わうような感じがしました。白いものの表現は、姉への思いだけではなく、ワルシャワでの戦争がもたらした破壊や、人の死への鎮魂の思いも感じました。また、姉の存在と自分の存在意義の意味を考えているようにも思えました。 うまく表現できないけれど、感覚に訴えるものがありました。ハン・ガンさんの文章は、じっくりと読んで理解したくなる不思議さがあるように思いました。

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2024/11/14

図書館で単行本を借りて読みました。文庫には「平野啓一郎による解説」というものも収録されているようなので、是非、これも読んでみたい! 日本だったら「芥川賞」モノ、、、な味わいなんでしょうね。全編にわたって、静かで、深く、やや危うい感触。 ストーリー性のある小説の類いだと出来の良...

図書館で単行本を借りて読みました。文庫には「平野啓一郎による解説」というものも収録されているようなので、是非、これも読んでみたい! 日本だったら「芥川賞」モノ、、、な味わいなんでしょうね。全編にわたって、静かで、深く、やや危うい感触。 ストーリー性のある小説の類いだと出来の良し悪しはどの言語の作品でも比較的判断しやすいと思うのですが、こういった詩とか散文といったものはオリジナル言語での意図やテイストが他言語でも適切に表現されうるか、という問題が常に存在するような。。(この本の翻訳は素晴らしかった) ノーベル賞はそのあたりをどう解決しているのだろうか。 今回の受賞理由が「歴史的なトラウマと対峙し、人間の生命の儚さを露呈した、迫力のある詩的な散文に対して」とされているので、この本はど真ん中なはず。 そもそも、この手の文学/散文をきちんと味わう能力に欠如しており、薄っぺらいコメントでゴメンナサイ。

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2024/11/12

遅ればせながらノーベル賞受賞で話題となり初めて知ったハン・ガン氏の、初めて手に取った作品。 言葉にするとあらゆる感情や意味がこぼれ落ちてしまいそうでうまく言えないのだが、「祈り」というワードが一番に思い浮かんだ。生きている者と死んでいる者、起きてしまった過去、その過去ゆえに存在...

遅ればせながらノーベル賞受賞で話題となり初めて知ったハン・ガン氏の、初めて手に取った作品。 言葉にするとあらゆる感情や意味がこぼれ落ちてしまいそうでうまく言えないのだが、「祈り」というワードが一番に思い浮かんだ。生きている者と死んでいる者、起きてしまった過去、その過去ゆえに存在している現在、存在しない未来への祈り。 今まで全く読んだことのないタイプの小説だった。解説まで読んでようやく背景文脈を少し理解できたが、そうでなくても一文一文に心が揺さぶられた。どういうこと?って一行一行声に出して読みたくなる。 訳者の斎藤真理子さんの、淡々としつつも心に訴えかけるような文章も素晴らしかった。 ★時間とお金のムダ ★★普通〜微妙 ★★★よかった ★★★★心が動いた(感動した、意表をつかれた、ショックだった) ★★★★★人生の本棚に入れたい

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2024/11/12

白いものを沢山集めた、詩のようなエッセイのような小説。 一見散文的だけど、ハンガンが生まれる前にわずか2時間で亡くなった妹のことがずっと意識されている。 「彼女」という代名詞を用いることで、あえて生と死、姉と妹の境目があやふやにされ、最後に「白い」息で主人公が生きることの決意が示...

白いものを沢山集めた、詩のようなエッセイのような小説。 一見散文的だけど、ハンガンが生まれる前にわずか2時間で亡くなった妹のことがずっと意識されている。 「彼女」という代名詞を用いることで、あえて生と死、姉と妹の境目があやふやにされ、最後に「白い」息で主人公が生きることの決意が示されるというのは素晴らしい。 129,142頁あたりの話は、傷つきと死の寂しさを胸が痛くなるほどの的確な言葉で描いており、是非読んでいただきたい。 後ろの平野啓一郎の解説の、妹が代理表象ではないというのには納得したものの、それが空虚であってはならないとは思わなかった。むしろ作者は自分がいなかったかもしれないことを意識しているからこそ、姉に自分の身体を貸与できたのだ。そこには白さと結びつく空虚性が内包されているのではないだろうか。

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2024/11/10

読者に「感覚」のみを与えてくれる作品。物語を追いかけながら刺激を求める心が勝手にスイッチオフになる感じ。白という色がもつ性格、力のようなものも細かに味わえる。さまざまなものと事象を通じて生きること、死ぬことの肌ざわりがひたひたと伝わってくるのもよかった。

Posted byブクログ

2024/11/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ノーベル文学賞受賞の報をきっかけに手に取った小説。敢えてちいさな書店で予約していた。一昨日連絡があり、ようやく迎えることができた。 『すべての、白いものたちの』は、韓国語で『白い』という形容詞を、日本語に訳したもの。『白い』に続く言葉を、読者自身が完成させるという意図があるそうだ。 この小説を読み進めるうちに、降り積もった雪の上をひとりでただ歩いてゆくような感覚になった。作者自身が内面を見つめ、過去の傷を癒やし、恢復してゆくプロセスを著した小説をとも言えると思う。 作者がみた白いものたちに、命をみる。 静まり返った夜に、フラスコの中で、過去の悲しい記憶の鈴が響くような、物悲しい世界観。余韻を残す文体。詩的な表現が、かえって悲しさを際立たせる。 解説が平野啓一郎さん。 今後もずっとそばにある小説の一冊となった。

Posted byブクログ

2024/11/08

『自分には全く理解できなかった作品(笑)』 「アジア人女性初のノーベル文学賞受賞作家」でつい最近話題になっていたので手に取った本作。 恥を恐れずに素直に書くと…自分には正直全く良さが(というか内容すら笑)分からなかったです…m(_ _)m 日本人・ノーベル文学賞作家(川端...

『自分には全く理解できなかった作品(笑)』 「アジア人女性初のノーベル文学賞受賞作家」でつい最近話題になっていたので手に取った本作。 恥を恐れずに素直に書くと…自分には正直全く良さが(というか内容すら笑)分からなかったです…m(_ _)m 日本人・ノーベル文学賞作家(川端康成・大江健三郎・カズオイシグロ)は全然イケたんですけどね…この作家さんはどうも… 「詩的」っていう意味も分かるし、綺麗な文章を書くなぁとも思いはするんですが…とはいえあまりにもサクり過ぎじゃねぇかな…とか思ったり…笑 皆さんの得点は普通に高いので、たぶん自分だけがけっこう理解できてない感じ…?(笑) けっこう真剣に読み方を教えて欲しい…m(_ _)m と思うくらい、久々に圧倒的に読み切れない作品でした。 <内容(「BOOK」データベースより)> チョゴリ、白菜、産着、骨……砕かれた残骸が、白く輝いていた――現代韓国最大の女性作家による最高傑作。崩壊の世紀を進む私たちの、残酷で偉大ないのちの物語。 ノーベル文学賞受賞! ハン・ガン作品、どれから読んだらいいかわからない……という方には、個人的には『すべての、白いものたちの』をお勧めしたいです。 詩のように淡く美しく、それでいて強く心をゆさぶる名作です ーー岸本佐知子 『すべての、白いものたちの』は、アジア初のブッカー国際賞を受賞した『菜食主義者』(cuonから2011年に邦訳刊行)に続き、2度目のブッカー国際賞候補となったハン・ガンさんの代表作です。 詩的に凝縮された言葉で書かれた本書は、個人の痛みのむこう側に横たわる歴史的・普遍的な痛みという、著者のテーマがストレートに表れている作品です。 単行本では、造本に特別な仕様をほどこしました。『すべての、白いものたちの』物語全編に通底する「白にもさまざまな白がある」ことをコンセプトに、書籍の本文用紙にすべて異なる5種類の紙材を使用。小口側から本をながめると、色味、彩度、手ざわり、さまざまな白が存在することが見てとれます。 ぜひ手に取ってください。

Posted byブクログ