すべての、白いものたちの の商品レビュー
ノーベル文学賞を受賞したニュースを受けて、気になって読んだ。行きつけのブックカフェに文庫本が置いてあったので手に取ったのだが、調べてみると単行本にも紙質のこだわりなどがあるらしく、どうしても欲しくなったので購入することにした。神戸三宮まで行ったけれど品切れで、結局その日おじいちゃ...
ノーベル文学賞を受賞したニュースを受けて、気になって読んだ。行きつけのブックカフェに文庫本が置いてあったので手に取ったのだが、調べてみると単行本にも紙質のこだわりなどがあるらしく、どうしても欲しくなったので購入することにした。神戸三宮まで行ったけれど品切れで、結局その日おじいちゃんと会う約束があったので昼食を食べた帰りに梅田で買った。調べてみると静かな祈りのような、美しい小説だった。ただその静けさの中に溢れんばかりの痛みと悲しみを感じた。 何度も読み返したい、すきな小説だった。韓国の歴史についてもきちんと学びたいと思った。
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受賞報道を聞いて即、図書館で予約、手元にきた「菜食主義者」に続いてハン・ガン2冊目 娘の本棚から借りて 今、デッサンを習っていて、難しさを味わってあるからか、 スケッチのようなこの作品に 見る、表現する力がすごいのだと感じた。 これから、あと3冊、続けて読む。
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冷えた空気が肺をいっぱいにし肌を針で刺すような厳しく寒い冬を思い出しながら読んだ。 吐く息は白い。 それは自分が暖かい存在だからだ。 生と死の間を彷徨うような美しい文だった。
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この本のおわりまで読んだあと、 きっと多くの人がそうするように 第2章をもう一度読んだ。 最初に読んだときには気が付かなかった。 私、や、私たち、の使い分けに気をつけていれば 気付けたのかもしれない。 吹雪の描写が、まるで違って感じられた。 「弱々しく消え去ってゆく、 そ...
この本のおわりまで読んだあと、 きっと多くの人がそうするように 第2章をもう一度読んだ。 最初に読んだときには気が付かなかった。 私、や、私たち、の使い分けに気をつけていれば 気付けたのかもしれない。 吹雪の描写が、まるで違って感じられた。 「弱々しく消え去ってゆく、 そして圧倒的に美しいこれ」 生きている実感は 失ってからでなくては わからない(かもしれない)けれど、 失ってからでは わからない(かもしれない)。 もっと詩のような文章を、 もっと書こうと思った。 もっと正直に、 もっと書こうと思った。
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ハン・ガンさん 祝ノーベル文学賞受賞! 本書を一読後、レビューが困難で随分悩みました。「あとがき」「訳者補足」「解説」を経て、じわじわと理解が深まったものの、二度読み必至(己の読解力不足!)かもしれません。鎮魂と恢復の繊細な物語に、自分の遠い記憶を重ねていました。 3章構...
ハン・ガンさん 祝ノーベル文学賞受賞! 本書を一読後、レビューが困難で随分悩みました。「あとがき」「訳者補足」「解説」を経て、じわじわと理解が深まったものの、二度読み必至(己の読解力不足!)かもしれません。鎮魂と恢復の繊細な物語に、自分の遠い記憶を重ねていました。 3章構成で、全て短い断片的な文章から成り、詩ともエッセイとも受け取れますが、通読して初めて、著者の死生を伴う来歴が窺われる構造の輪郭が明瞭になり、私小説に近い印象と味わいでした。 著者は、本書を<清潔な「白」ではなく、生と死の寂しさをあふれるほど内に秘めた「白」についての作品>と語っています。「白」の中身がとても深いです。生後2時間で早世した姉の記憶を軸とし、廃墟から再生したワルシャワの「白い」 都市で考え続けます。 私(著者)の生と体を彼女(姉)に貸し与え甦えらせることで、死者を悼み、孤独と静けさに向き合いながら共に生きる勇気を描き切っているようです。 生者と死者の視点を変えながら、丹念に「白いもの」を描いていく過程に、誰しもが抱えているであろう喪失感や孤独が重くのしかかりますが、希望と光の兆しがあり、癒しにつながる気がしました。 ノーベル文学賞受賞を報じる新聞記事の、「物語の多くに共通するのは、社会の抑圧に対して静かに抵抗する"傷ついた人たち"の姿」には、韓国の歴史・政治的背景があるのでしょう。 さらに、「彼女の小説には常に、心に深い傷を負った人物が登場し、肉体と魂の相克の問題が主題とされる」とあり、本作を読んで妙に納得しました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
エッセイというより詩的な散文と言うほうがいいかもしれない。白いものについて、一章にひとつずつ綴られた想い。 白というのは、おおむね死を思わせるものだ。 特に、過去の家族の死にまつわる白いもの。それがおりおりに生きている者の心や目に現れる。 文章から想起されるイメージはとても美しい。著者の心を大きく占める物悲しい白は感傷的ながら、それと対峙する生者の冷静な眼差しもある。 個人的には 今は人の心を強く感じるものは読みたくないので、 半分ばかりで置くことにする。
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『菜食主義者』で有名な著者の作品。ごく短い小説のような、詩のような。美しく読みやすい文体だが、いたるところに誰しもが感じるよるべなさがじわりと滲む。 空白のページも多く、言葉だけでなくページさえも白いものに覆い尽くされている。 著者のほかの作品も読んでみたい。
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詩的で美しい文体。原文で読めないのが大変残念だが、素晴らしい翻訳だと感じる。自分の心から少し離れた部分に白いものたちがひたひたと沁み込んでいくような、不思議な感覚になった。
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読み終えて、作者のあとがきと解説を読んで「ああ、そういうことか、そうなのか」と思う。読み切れていなかったものが心の中にそっと置かれているよう。また、もう一度読み直そうと思う。
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詩的なモノクロ映画を見ているような雰囲気でした。 著者の実体験が基になっていて、痛みを乗り越える方法を模索しているのかな、と読んでいて感じました。 ガーゼや雪など、この本に出てくる白いものたちは、背景が暗いほど際立ち、著者の抱える痛み(暗い闇のような背景)が強いほど、背景と対象...
詩的なモノクロ映画を見ているような雰囲気でした。 著者の実体験が基になっていて、痛みを乗り越える方法を模索しているのかな、と読んでいて感じました。 ガーゼや雪など、この本に出てくる白いものたちは、背景が暗いほど際立ち、著者の抱える痛み(暗い闇のような背景)が強いほど、背景と対象物のコントラストがはっきりするように感じました。 著者の表現が魅力的で、どんな風に文章が誕生するのだろうと思います。 誕生は白く、死は黒い、というイメージを、読みながら感じていました。 街を生き物として考えると、戦争や災害などで一度破壊されてしまった場所が、建物や自然など新たな体を得て生きていくことは、かつての体の再生だけど、昔と同じになるとは限らず、その時に合った姿に生まれ変わるのだと思います。そのような街は、白さと黒さが入り交じったように感じるかもしれません。 ろうそくが何本も燃えて風に揺れて、手向けた誰かの、手向けられた誰かの魂が浄化される時間が流れているような感覚です。 最後の解説で、著者の意図していた事が分かり、再読すれば違った気持ちで読めるだろうなと思いました。
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