ある愛の寓話 の商品レビュー
短編集。 ナンタケット生まれの"世界で一番美しいかご"が主人公の「グレイ・レディ」。雰囲気が好き。 持ち主とのあっけない別れ、誰にも価値を分かってもらえなくて孤独だったかごを拾った次の持ち主との出会い。そして迎える最期。かごの人生は波乱万丈であり、暖かさに満ち...
短編集。 ナンタケット生まれの"世界で一番美しいかご"が主人公の「グレイ・レディ」。雰囲気が好き。 持ち主とのあっけない別れ、誰にも価値を分かってもらえなくて孤独だったかごを拾った次の持ち主との出会い。そして迎える最期。かごの人生は波乱万丈であり、暖かさに満ちていたと思う。かごのように物言わぬ存在だからこそ、こんなにもかごの人生(かご生?)が際立って見えるのだろう。擬人化ではなく、最初から最期までかごはかごとして生きているところも良かった。 「乗る女」も好き。さとみのように人に妬まれるぐらいに人馬一体となれたらと思う。人と馬なのに官能的な気配を感じるという黒澤さんは流石によく見ている。馬は人間とかなり近い存在だし、さとみの方にも馬に対して愛情を超えた何かがあるように思えた。 動物と人、モノと人、そこには当人たちにしか分からない繋がりがあり、特にモノに対する思いは他人に話すことは難しい。話せば聞いてくれる人はいるかもしれないが、理解してもらうのは難しいだろう。 著者が最後に書いている「誰しもが自身の原点となった物語を持つ」という言葉が心にしみる。 直接関係はないが、自分の誕生日に亡くなった祖父の家の犬を思い出しながら読んだ。
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ごんぎつねほどの感動はなかった…仙台発苫小牧行きフェリーで日高、アポイ岳コースが心に浮かんだ。行かなくちゃ。5月の桜シーズンか。
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村山由佳さんの「デビュー30年記念作品」と掲げられた本。 あの当時、集英社のPR雑誌『青春と読書』を購読していたので、小説すばる新人賞を受賞したあとのインタビューだか寄稿だかを読んだ記憶があるようなないような……。ただ、以前にも書いたが、受賞作は購入したのだけれど読めなかった。そ...
村山由佳さんの「デビュー30年記念作品」と掲げられた本。 あの当時、集英社のPR雑誌『青春と読書』を購読していたので、小説すばる新人賞を受賞したあとのインタビューだか寄稿だかを読んだ記憶があるようなないような……。ただ、以前にも書いたが、受賞作は購入したのだけれど読めなかった。そんな、なんとなく苦手意識のある作家さんだが、最近の著作はわりと読んでいる。 本作は後書きにもあるように、人と人ならざる者との交情を主題とした6篇からなる短篇集だ。どれも珠玉の出来だが、「世界を取り戻す」「乗る女」がとても好みだった。
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擬人化してある話が多かった。 犬との恋愛はちょっと抵抗もあったけど、 村山由佳さんの描き方だから 完読できたと思う。 でもできれば人対人の話がよかったかな
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タイトルと、村山由佳さん30周年ということで買い。 どのお話も一歩前へ進んでゆく姿が描かれていて、 小さな勇気を沢山もらいました。 凛と、颯爽と、しなやかに立つひとになりたいな。
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6編の短編集。 読み終えて「白は200色ある」というアンミカの言葉を思い出した。何かとネタにされてしまっているような言葉ではあるけど、シンプルに。 純愛という言葉が、一つの愛を貫き通す、という意味であるのならば、6編はそれぞれ純愛の物語であると思う。そして、言葉がイメージする色...
6編の短編集。 読み終えて「白は200色ある」というアンミカの言葉を思い出した。何かとネタにされてしまっているような言葉ではあるけど、シンプルに。 純愛という言葉が、一つの愛を貫き通す、という意味であるのならば、6編はそれぞれ純愛の物語であると思う。そして、言葉がイメージする色はやはり白。 ただ、純愛の中にある感情や行為、彼や彼女たちが紡いできた歴史はもちろん違うものであり、それが「白は200色ある」という言葉につながったのだ、と感じます。同じように見えて、どの色も全て違うものを含んでいる。 残酷な「晴れた空の下」。「同じ夢」の秘密の共有。過去との決別の「世界を取り戻す」。寄り添い続ける「グレイ・レディ」。再生の「乗る女」。初恋の「訪れ」。 「晴れた空の下」の残酷さは、ちょっと読むのがしんどい。 「彼」を愛していることは間違いなく、その記憶の鮮明さゆえに語り残しておこうとするのだけど、目の前にいる人が彼であることに気づけない。 「彼」がどれだけ彼女を愛してきたか、自分が思う以上に彼女がどれだけ思ってきてくれていたか、どれだけ与え与えられてこれまでの二人の人生を送ってきたのか。 それを大事に思うからこそ、記憶を無くしてしまうその前に残しておこうと思っているのに、感謝と愛情を伝えるべき相手に気づくことができないというのは、悲しい。 彼女のことを理解している「彼」が、ただただ聞き手に徹しているというのも辛い。 愛情がもつ残酷さを、とにかく綺麗に伝えられました。この物語の舞台は綺麗なのだけど、語られている言葉は残酷なんだ。 一番心に傷をつけられてしまった物語でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2023/01/10リクエスト 3 いつもの村山由佳とは全く違う、小さなかわいい小説が6編。 人間同士の間に、人間以外のものが挟まれる。 ぬいぐるみだったり、動物だったり… 自分が馬が好きなので、 乗る女 が一番好きだった。こんなに乗れたらいいなあと。 落馬ばかりしている生徒だったため、駆け足や外乗なんて夢のまた夢。でも読んでいて私が駆け足を出し、外乗している気持ちになれた。久々に馬に乗る気持ちを味わえて楽しかった! グレイ・レディ は、モチーフに有名な彼女がなってるのかな、と思いながら読めてこれもまた楽しかった。 カゴは知らなかったので、ステキなエピソードだな… 晴れた空の下 最初の一編。 悲しい。泣けてくる。これを最初にもってきたのは、何故なんだろう。 でもいいドクターに話をできたことは幸せだったね…と。 大好きなQueenが話中に出てきたことは、なんだか得した気分で嬉しかった! いつもの村山由佳作品とは違うので、普段は読まない人にも、おすすめできる本。 いつもの村山由佳ワールドを求める人には、物足らないかも。
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【村山由佳 デビュー30年記念作品】原点回帰にして到達点。猫、犬、馬、人形など、異質な存在との交歓によって導かれるカタルシス、圧倒的な熱量をはらんだ作品集です。
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