「能力」の生きづらさをほぐす の商品レビュー

勅使川原真衣(著者),磯野真穂

2023/08/11

知り合いにおすすめの本として紹介されたので購読。
亡くなった母が我が子に送る「能力」についての本で、◯◯力と呼ばれる幻の概念に病める息子に語りかける物語でよみやすかった。
教育社会学と呼ばれる、社会に必要とされる人材や能力を研究する学問があることを初めて知った。能力は曖昧で幻のような概念だが、あたかも正当性があるかのように、◯◯力を評価されている状態に違和感を覚えるようになった。

能力にも流行りがあり、リーダーシップ力が人気になったかと想えば、メンタルヘルスも能力とされるようになったり、進化や深化していくことが分かった。
能力という言葉に縛られずに、人間関係を気づいていきたいと感じた。
税抜2000円と本にしては高く感じるが、知らなかった学問や新しい視点を持つことが出来たことを考えれば、購読する価値はあった。

2023/06/04

子どもとの対談形式で、コンピテンシーや人材開発業界の闇などを暴いてく。著者の近況を考えると胸が痛くなるが、今後の若い人が気持ちよく働いてもらうための著者の覚悟を感じた。

2023/05/14

まず抗がん治療をされながら、会社を経営して育児家事をこなして執筆された筆者様のバイタリティというか、信念の強さに敬服いたします。

何度も転職をしたので市場価値や能力査定というワードに毎回疑問を感じていたのですが、人材業界側からみた能力査定の歴史を知り、なるほどーと。
能力と言っても、それはあくまで個人の一側面であって、優劣はつけられないのが本来の能力だと。置かれた環境次第で個人の能力の発揮され具合も変わるので、個人による努力以上に、採用前の人物像の明確化と採用後のフィッティングが大事だよ、と。

ほんそれー！と納得しかないのですが、実際の会社で新卒や転職者にそんなに丁寧にフォローする人事はいないので、自分で気づいて調整していけるやつが出来るやつ、みたくなっちゃいますよね。

でもこの本読んで、自分の会社での評価が絶対値じゃないんだよ、ほんとに悩んでるなら他に行けばいいんだよ、って思える新人さんは多いと思う。我が子が就職したら送りたい本ですね(何年先なの)

2023/05/12

誤りを恐れずに、私の理解を言葉にしておきます。

能力、は人や組織の関係性のなかで発揮できたり、できなかったりする。適所にいれば伸びるし、合わないところにいれば縮みもする。

誰も知らない本当の私、はどんな試験でも測れないもの、と聖域を持つことで、自分を守ろうとする幻想。

（適性検査、は人材開発業界が生んだ大ヒット商品…！）メンタルヘルスや占いも市場としてお金のなる木。私という個人を長く対話やヒアリングしてくれる。私を大切にしてくれるから。

大切な最初の一歩は性格の把握。
性格や性質、課題や問題の所在がわかれば解決ではない。例えば私はHSPだ！とモヤモヤに名前が与えられたとしても、性質だからどうしようもない。揺らいでもくよくよしてもモヤモヤしても泣いてもいい。最短の美しい道を探さなくても、たくさん寄り道してもいい。

私たちを追い詰めていたのは、一元的な「正しさ」。間違っている、わからない、あいまい…それらは社会を揺るがすものだから、あってはならないもの。科学や試験に正しさや正解を測ろう、それらに適した人になろうとしたからしんどい。

自分を尊重すること、他者を尊重すること。それは、常識や科学のものさしで測った正しさだけでなく、不合理な浪費だってわがままだって、まるごと「そうなんだねえ」と、受け止めることだと感じました。それはダメだなとジャッジすることは…思ってもいいけど、口に、行動に出したくない。

2023/05/07

時代とともに変化する、社会が求める「能力」の曖昧さ。人材開発業界が生んだ「能力商品」の数々。組織がうまくいくためには、個人の「能力」よりも、他者との「関係性」が大事。「能力」に関するさまざまなことが分かり、少しだけ気持ちが楽になった。

「排他的な基準に振りまわされないことは、自分を尊重することであり、他者を尊重することだ。」

2023/05/02

死んだ母が悩める子供たちの前に現れて、「能力の不確かな神話」を話し合う。
人材開発業界、企業の都合のよい能力という言葉のカラクリを明らかにして興味深い。能力開発からメンタルヘルス、勘違いの結果流行る業界。なるほどと本屋に並ぶタイトルを思って腑に落ちた。

2023/04/15

私はなにも出来ない
頑張り方をいつも間違えてる
頑張っても人より出来ない

頑張りが足りない…と嘆くのを辞め楽にはなったけれど
頑張ってもこれが私の100と自覚することはまた苦でもある

この苦悩と生涯付き合っていくの？
もう少し解放されて生きたいと思っていました。

勅使河原さんの「死んでも死に切れない」は私も同じ状況で
能力の呪いが蔓延る世界に砂利のひとつでもいいから投じたい…そう思っていたところだったので
救われたような気持ちです
お会いしたことはありませんが、同志がいる…と確信した1冊です

さあ、今日も生きよう。

2023/04/02

魂のこもった一冊。
著者本人の血がインクになったような内容にも関わらず、知らず知らずのうちに自分の中で常識化されていた価値観や既成事実を対話形式で分かりやすくときほぐしてくれる。

2023/03/23

能力ってわけわかんないくせに
社会のあらゆる評価基準に
組み込まれているよね、という本。

生きるって心細いことだわー。
(まずは読後すぐに思った一言)

2023/03/20

「能力」が商品化され、人の心を蝕み、「メンタルヘルス」という受け皿と共に、市場が広がっているーーー。
そんな構図を、わかり易く見せてくれた本。

？と思うもの(今の場合は「能力開発」)に値段がついて(価値がついて)、いつのまにか、市場経済のループに嵌め込まれ、無限の輪っかを回すハムスターのように忙しい。
そして、なんだかとっても苦しい。
この苦しさは、いつか終わりが来るのだろうか、、、
どんな物語を心に描いたら頑張り続けられるのだろうか、、、
そんなモヤモヤの背景を言葉にしてくれて、ありがとうございます。

限りある人生、全うされますように。
もちろん、私も。