ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた の商品レビュー
大学時代、マルクス思想の研究に 没頭、資本主義が生み出す貧困や環境破壊に対する怒りからポスト資本主義の可能性を考え続けてきた著者。2000年9月に著した『人新世の「資本論」』で打ち出した「脱成長コミュニズム」が大きな反響を生んだ。 そんな著者が、「理論と実践は対立しない」との考え...
大学時代、マルクス思想の研究に 没頭、資本主義が生み出す貧困や環境破壊に対する怒りからポスト資本主義の可能性を考え続けてきた著者。2000年9月に著した『人新世の「資本論」』で打ち出した「脱成長コミュニズム」が大きな反響を生んだ。 そんな著者が、「理論と実践は対立しない」との考えから、また、「学者は現場を知らない」という印象を払拭したい思いから、2年間、各地の現場に出て勉強し、記録にまとめたのが、本書である。 ウーバーイーツの配達、若者が起業したジビエ業の現場体験、不便と向き合う脱プラ生活など、精力的な実践をユーモアを交えエッセイ風に語る読みやすい構成になっている。 だが、基調にあるのは、環境破壊への危惧、傷ついた人を切り捨てる社会への憤りである。 著者は、エッセンシャルワーカーやグローバルサウスの問題に目を向け、水俣病や被差別部落の現状なども取材する中で、自らを含めたマジョリティの特権集団には、他者の立場を想像するエンパシーやケアの精神が根本的に欠如していると指摘する。 そのことを踏まえ、最後に触れているのが「共事者」という概念。人は誰もが加害者にもなり、被害者にもなる。様々な問題との交差性を見いだし、様々な違いや矛盾を乗り越え結束して「沈黙する社会」に声をあげるようと訴える。 大事なテーマであるが、著者もちらりと本音を出しているように社会変革に乗り出すのは容易ではない。 ラストに示された、現場で他者と出会い、自らの問題に向き合って「学び捨てる」ことで、新しい人とつながり、新しい価値観を作り出すという点には共感を覚えた。それを少しずつ実践することを自分に言い聞かせて、本を閉じた。
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#ぼくはウーバーで捻挫し山でシカと闘い水俣で泣いた #斎藤幸平 #読了 人新生の資本論は難しくてあきらめたがこちらは読めた。社会問題に対し、現場に行き、人と出会い、目で見て、やってみて感じたことが書いてある。自分も十分にできていませんと語る著者のスタンスが好きだ。
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気鋭のマルクス主義思想研究者が様々な社会課題の現場に赴き、実践や取材を通して学ぶという新聞の企画を書籍化。とてもよみやすい文章。 理論と実践を架橋しようとする興味深い試みで、タイトルに挙げられたもののほかにも、京大タテカン制作、あつ森、男性メイク、昆虫食、培養肉、脱プラ生活、外国...
気鋭のマルクス主義思想研究者が様々な社会課題の現場に赴き、実践や取材を通して学ぶという新聞の企画を書籍化。とてもよみやすい文章。 理論と実践を架橋しようとする興味深い試みで、タイトルに挙げられたもののほかにも、京大タテカン制作、あつ森、男性メイク、昆虫食、培養肉、脱プラ生活、外国人労働者問題、被差別部落問題、東日本大震災からの復興、アイヌなど、いろんな先端の「現場」を知れて面白かったし、それらの「共事者」でありたいと思った。 一方、「あとがきに代えて」を読む限り、著者はかなりこのことに自覚的で、誠実に現場に向き合おうとしているというのはよくわかるのだが、どうしても高みからの評論感は拭えないかなと感じてしまった。「共事者」たるというのは難しい。また、新聞の企画なので仕方ないとは思うが、いろんな分野をつまみ食いする感じで、1つ1つの内容はちょっと薄く感じるところもあった。
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本書を通して、小松理虔さんの「共事者」を体現しようと奮闘し、「どのようにして、非当事者としてのマジョリティは現場に関わるべきなのか(215頁)」悩みこそすれ、「共事者」として声をあげる。そのことが、社会運動や住民投票など〈コモン〉の管理を身近に感じ、システムの転換に賛同してくれる...
本書を通して、小松理虔さんの「共事者」を体現しようと奮闘し、「どのようにして、非当事者としてのマジョリティは現場に関わるべきなのか(215頁)」悩みこそすれ、「共事者」として声をあげる。そのことが、社会運動や住民投票など〈コモン〉の管理を身近に感じ、システムの転換に賛同してくれる人が増えるきっかけになって欲しい。(218頁)と締めくくられました。ひとつの現場の様子は短くまとめざるを得ない事情がありながらも読みやすく、現場に行けという尊敬する先生の言葉を実行し、共事者となる読者の獲得は上手くいったのだと思います。
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著者がたまにオンラインのコンテンツで見かける方だなあ。という動機で購入。著者が直接話を聞いたり体験したことを、ちょっと聞いたりやっただけで分かったつもりになって良いのかと葛藤しつつ書いていることにとても共感した。 コロナでデジタル化が加速して、何でもオンラインで見聞きして知ったよ...
著者がたまにオンラインのコンテンツで見かける方だなあ。という動機で購入。著者が直接話を聞いたり体験したことを、ちょっと聞いたりやっただけで分かったつもりになって良いのかと葛藤しつつ書いていることにとても共感した。 コロナでデジタル化が加速して、何でもオンラインで見聞きして知ったような気になっているが、現場に行き、学び捨てることがとても大事だと感じました。
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ウーバーの体験やタテカン問題など、割と軽めのものから、水俣病や原発問題など、幅広く体験し学ばれたことが述べられていた。まさに知ることから全ては始まると思った。私もこれを読んで初めて知ったことがあった。東京オリンピックの際の菊池さんへの国の対応は衝撃的だった。ニュースはある意味国民...
ウーバーの体験やタテカン問題など、割と軽めのものから、水俣病や原発問題など、幅広く体験し学ばれたことが述べられていた。まさに知ることから全ては始まると思った。私もこれを読んで初めて知ったことがあった。東京オリンピックの際の菊池さんへの国の対応は衝撃的だった。ニュースはある意味国民の情報操作で、国が推し出したい一部分しか取り上げていないことを改めて感じたし、自分で精査し正しく知ることが大事だと私は思う。
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斎藤さんの「現実知ろうとする努力」がすごい。とても読みやすく、今の社会ってどうなの?と考えさせられるような話ばかり。私ももっと視野を広げて、知りたい、学びたいという気持ちを大切にしたいと思った。
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著者は同世代であり思想的にも近いものを感じるので、まずは一冊と思い手に取りました。 とても興味深かったです。 今、脱成長に方向転換しないと間違いなく地球はもたないと感じています。お金を生み出すために新しいものを作り続けることが本当に幸せにつながるのか、自分も世界も地球も疲弊する一方に思えてなりません。 市民営の力により、儲けを目的としない、本当に必要なものをみんなで生み出したり使ったりする仕組みが日本の中でも生まれつつあることには驚きました。 脱成長、脱資本主義、地球環境を持続可能なものに...という主張は、一見倹約や我慢ばかり強いるように思えますが、実際の現場を見ると、共同体のつながりの強さや、自分たちで生活していくことへの自負と誇りがあるということを感じます。 もしかしたらお金に支配されるよりも豊かな人生、幸せな人生につながるのかもしれないと思わされるほどです。 また、被差別やマイノリティの現場に関する章に書かれていた、当事者かそうでないかの二分ではなく「共事者」なのだという主張は目から鱗でした。この考え方はすべての学びの基本になると思います。 「共事者」視点をもって共に考えたり話し合ったりすることが、当事者ではないからと他人事になったり思考停止したりすることを防ぐのだという考えにはすごく納得しました。
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古いもの新しいもの、本当に問題は山積している。さらに、解決しないままに、古い安穏に戻ろうとしている。 新しいアイデアを探せていない。「みんなで」「総力を挙げて」という言葉を言い出す時には、結局何もしない。大きなアクシデントが起こった時に、解決ではなくて、別のおかしなものを無理矢理しのびこませる。 時間がいくら経っても解決しないものはしないのだということを再認識。
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ーー現代の問題に向き合うーー そんな途方もないテーマに著者が立ち向かっていく内容です。コロナ渦という状況でありながら、著者が問題の現場に赴き問題の最前線を報告してくれます。 それを聞いた私たちも簡単に問題を解決するための活動をするわけではないのですが、問題について関心を持つことだ...
ーー現代の問題に向き合うーー そんな途方もないテーマに著者が立ち向かっていく内容です。コロナ渦という状況でありながら、著者が問題の現場に赴き問題の最前線を報告してくれます。 それを聞いた私たちも簡単に問題を解決するための活動をするわけではないのですが、問題について関心を持つことだけでも重要と思いました
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