金環日蝕 の商品レビュー
あなたという存在は知っているのに心の内は分からない。自分というものの確かさが分からない。そんな、人の多面性がえがかれた作品でした。
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ひったくりを目撃した大学生の春風(はるか)と高校生の錬。犯人が落としていった物がきっかけで二人は事件を調べ始める。ひったくりの背後にあるものを知っていくうちにどんどん危険な方へ進んでいく調査。思いがけない展開と春風や錬それぞれの家族やその背景にあるもの。それぞれが抱えてるもの、犯...
ひったくりを目撃した大学生の春風(はるか)と高校生の錬。犯人が落としていった物がきっかけで二人は事件を調べ始める。ひったくりの背後にあるものを知っていくうちにどんどん危険な方へ進んでいく調査。思いがけない展開と春風や錬それぞれの家族やその背景にあるもの。それぞれが抱えてるもの、犯罪に関わろうとするもの、止めようとするもの。簡単には答えを出せなくなってしまうような苦しさがあって読み応えがある。前作のスポーツ小説『パラ・スター』とは全然違う作品で驚くけれど今年読んだ作の中でも上位にくる面白さ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
年寄りを狙ったひったくり。犯人を追う女子大生と男子高校生。 でもその事件はこの物語の目次ですらなかったのだ。 ひとつの犯罪が及ぼす影響。事件が終わっても続く、かかわった人たちの人生。 人が人を騙すこと、人が人に騙される事。 なぜ騙すのか、なぜ騙されるのか。信じたいと思う人と、騙すことに魅入られていく人。人間の愚かさと脆さが真実を覆い隠していく。 読み進むたび、変わる景色。少しずつずれていく人の印象。それでも人は人を信じてまっすぐ生きていくことはできるのだろうか。 何人もの人の人生が「罪」というものにゆがめられていく。それでもなお前に進もうとするその強さを阿部暁子は切り取っていく。 闇に飲み込まれないように、守りたい、失くしたくない誰かのために、前に進んでいくのだ、私たちも、きっと。
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