無人島のふたり の商品レビュー
きっともっと大変なことは沢山あったはずだし心の動きはめまぐるしかったと思うけど、これは「読者」に向けて書かれた日記だから、その当たりはあまり書かれていない。 それでも死を意識しながら生きるというのはどういうことなんだろう…と考えさせられました。とてもこわいけど、大切な人を大切にし...
きっともっと大変なことは沢山あったはずだし心の動きはめまぐるしかったと思うけど、これは「読者」に向けて書かれた日記だから、その当たりはあまり書かれていない。 それでも死を意識しながら生きるというのはどういうことなんだろう…と考えさせられました。とてもこわいけど、大切な人を大切にして生きようとする文緒さんの強さが見えた。
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※このレビューにはネタバレを含みます
図書館の予約待ちをし、ようやく順番が巡ってきた一冊。 初めての山本文緒さんが小説ではなく闘病日記って。。と思ったが、そういう出会いもあるのだ。 コロナが流行り始めた2020年の春に、父を末期癌で亡くしているので、他人事のような気がせず、癌と生きている当人の思いを知りたいと手に取った。 2021年4月にステージ4bの膵臓癌と診断され、一度は抗がん剤治療を受けるが「地獄」の副作用で癌で死ぬより抗がん剤で死んでしまうと思い、緩和ケアへ進んだ。5月下旬から10月4日までの日記。 良くなったり悪くなったりしながら病が身体を蝕んでいく、出来ることが減っていく。 亡き父は認知症でもあったから、癌の進行をどのように受け止めていたのかな。山本さんのように意識がはっきりした状態よりも楽なのか、辛いのか、考えながら読んでいた。 9月28日の日記に『痛い、つらい、気持ちが悪い、むくみなどはありません。でも何だか自分が変になってきているという感覚はある。』とあり、亡き父も、癌ではないけれど介護施設にいる母も、そう感じた時期はあったと思う。 そして最後の10月4日の日記。 ある意味、とても怖かった。 亡き父の様子が思い浮かんだ。 でも、怖いと感じるのは、とりあえず健康な身体を持ち、この物質世界で生きていて、どのくらい続くか分からないけれど、終わりが見えない中で生き続けて行かなくてはいけない、という立ち位置から見たからなのかも知れない。 山本さんが次に書こうと構想していた、『今の日本の中にいる無国籍の女性の話』、『ばにらさま』収録の「20×20」という短編に出てきた純文学作家崩れの女の人が主人公の連作短編集、読みたかった。
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図書館で待つ事1年半… 読み出したら数時間で読み終えられるサイズなのに、だいぶ待った… 日々の日記形式。闘病記ではなく逃病記、とおっしゃる。誰もがそうだと思う。ここまで文字にできることがすごい。涙なくは読めない。最後まで書く事でご自身を保っていらしたのだろうか。作家根性?魂?素...
図書館で待つ事1年半… 読み出したら数時間で読み終えられるサイズなのに、だいぶ待った… 日々の日記形式。闘病記ではなく逃病記、とおっしゃる。誰もがそうだと思う。ここまで文字にできることがすごい。涙なくは読めない。最後まで書く事でご自身を保っていらしたのだろうか。作家根性?魂?素晴らしい。 頑固に生きてきた、と振り返り、そのおかげで仕事に苦労した時期もあるようだが、支えてくれるご主人、編集の方々、友人、見送られて、惜しまれて世を去っていかれた… もっともっと作品を読んでみたい作者だったので残念でならないが、心に刻まれ惜しまれてこの世を去るのも一つの引き際としてはいいのかも。 軽井沢に移り住み、夫と自分の2人きりの無人島と表現。国立がんセンターからの余命は4ヶ月。まずは120日生きよう!と。 自身の辛さももちろんだが、看取ると決めたご主人が、ホワイトソースから作ったグラタンをオーブンから取り出す時に落として泣き出してしまうシーンは何度読んでも辛い… きっとこーいうことは、普段頑張っていても小さなキッカケで溢れ出てきてしまう感情の波で、とてもリアルでどうしようもなく悲しい。 腰や背中が痛くてたまらない、縦にも横にもなっていられない。身の置き所がなくて、ただもぞもぞ寝返りを打って唸っているしかない。(がんの症状のひとつらしい) p.103
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人生の終わりが見えていても、日常は続いていく。山本さんと旦那さんの毎日がとてもリアルに描かれていて、死期がだんだん迫ってくる頃の日記に涙した。 変わり映えしない日常に少々つまらなさを感じていたけど、毎日少しでも楽しいこと、気持ち良いと思えることがあればそれで十分、今を楽しむことが...
人生の終わりが見えていても、日常は続いていく。山本さんと旦那さんの毎日がとてもリアルに描かれていて、死期がだんだん迫ってくる頃の日記に涙した。 変わり映えしない日常に少々つまらなさを感じていたけど、毎日少しでも楽しいこと、気持ち良いと思えることがあればそれで十分、今を楽しむことが大事なんだと気付かされました。
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なかなか読み始められなかった。が、読み出したら、すぐに読み終えて。なんて、そのままの記録なんだろう、と驚く。最後の日記を何度か読み返した。
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がんで亡くなられた著者の最期の記録。 緩和ケアの実際もわかる。 なんともない調子のよい日と 本当につらい日との落差。 その日が来るのを知っているのに 買い物をし、食事をし、本を読み、文章を書く。 普段の生活を楽しんで 書き残せることを大切に思う。 人間って不思議ですね。 著...
がんで亡くなられた著者の最期の記録。 緩和ケアの実際もわかる。 なんともない調子のよい日と 本当につらい日との落差。 その日が来るのを知っているのに 買い物をし、食事をし、本を読み、文章を書く。 普段の生活を楽しんで 書き残せることを大切に思う。 人間って不思議ですね。 著者と生前つきあいのあった方々も ファンの読者さんたちも きっとこの日記の中に おもかげを感じられるのではないでしょうか。
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病気になって夫とふたり無人島に流されているような日々を送っているようだと、書かれた日記でした。 がん宣告を受けて完治不能だと知ってから、あらゆる苦しみから逃げなくちゃと思ったのと同時に、それは不可能だと分かっていたように思う…と書かれていました。 少しでも、体調の変化に「もしか...
病気になって夫とふたり無人島に流されているような日々を送っているようだと、書かれた日記でした。 がん宣告を受けて完治不能だと知ってから、あらゆる苦しみから逃げなくちゃと思ったのと同時に、それは不可能だと分かっていたように思う…と書かれていました。 少しでも、体調の変化に「もしかしたら今晩何かあるのでは」と恐怖に駆られる…と。 大好きなご主人が近くにいつも居て、ご自宅で永眠されたそうです。 残された作品をこれからも読ませていただきます。
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私が、自転しながら公転するを読んでいる時には、既に山本文緒先生はこの世に居を去られていた。 凄い力作だなぁと思ったし、もっとこの作家さんを読んでみたいと思ったのだが、とても残念だ(ToT) この本は、膵臓癌で治療法は無く、進行を遅らせることしか出来ない状況で、緩和ケアを選択さ...
私が、自転しながら公転するを読んでいる時には、既に山本文緒先生はこの世に居を去られていた。 凄い力作だなぁと思ったし、もっとこの作家さんを読んでみたいと思ったのだが、とても残念だ(ToT) この本は、膵臓癌で治療法は無く、進行を遅らせることしか出来ない状況で、緩和ケアを選択された山本文緒先生の生々しい逃病生活を綴った日記だった。 闘病ではなく、逃病らしい。 最後まで日記を書き、本にしようと思う意欲、さすが作家さんだなぁ。。。 凄く正直な文体で、引き込まれるように読み入ってしまった。 余命を宣告されて、はい、そうですか!とはならないよな。。。 事実を綴った日記だろうからか?その苦しみがより伝わってきて読んでいて辛くなるし、終わりが近づくと怖くなる(ToT) そんな苦しい中でも、たくさんの本を読まれるんだなぁ。。。本が本当にお好きなのだろうな。 山本文緒先生の、こんな苦しい中でも伝えようというお気持ちに★×5 を捧げたい。
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膵臓癌で、次第に衰え、進行していく様をコミカルに書いている。 著書からは、こんな前向きな明るい方だとは思えてなかったので驚くとともに、この世から去られた事をとても哀しく感じた。
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山本文緒さんのプロとしての魂を見ました。自分は研究者の端くれ、社会に貢献する成果を出すのが「使命」で、それで1人でも救われるかもしれないと思っているので続けています。山本文緒さんは作家として、命を削っても書き続け、これが「使命」だと感じたのだと思います。さらに言うと、書くことが好きだったんだろうとも思います。好きなことが「使命」になるというのは幸せなことで、自分も幸せなことなんだと感じています。人間必ず死を迎えます。難しいことに、死がいつ来るかは分かりません。だからこの瞬間の幸せを感じて生きたいのです。⑤
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