ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち の商品レビュー
この本より半年程度前に出た『映画を早送りで観る人たち』を読もうと思っていたところ、偶然本書に出会う。 ファスト教養とは、素早く身につけられて、ビジネスに役立つスキルとしての教養ということのようだ。 本書で初めて提示された概念だそうだ。 この本では、こうした教養のありかたが招請...
この本より半年程度前に出た『映画を早送りで観る人たち』を読もうと思っていたところ、偶然本書に出会う。 ファスト教養とは、素早く身につけられて、ビジネスに役立つスキルとしての教養ということのようだ。 本書で初めて提示された概念だそうだ。 この本では、こうした教養のありかたが招請される土壌がどのようであるかを確認する。 ホリエモン、ひろゆき、勝間和代(さらには橋下徹)といったビジネスエリートたちの言説、スポーツ界からビジネスに転身した本田圭佑や中田英寿、さらに教養のエンタメ化を推進したYoutuberたち(中田敦彦たち)。 池上彰や出口治明といった相応の知識人のふるまいさえも、時にファスト教養的に消費されていることも鋭く指摘されている。 本だけではなく、様々なメディアの状況が広く押さえられていて、「ファスト教養」的風土の広がりに驚かされる。 著者と年齢が近いこともあって、この雰囲気、自分の体感としてわかる部分が多い。 大学に職を得た女性研究者たちにカツマーがいたりしたことに、当時ぎょっとしたものだ。 強者であることに無自覚なまま自己成長を礼賛する姿勢と新自由主義との親和性が指摘されていて、ああ、やっぱりか、と息苦しくなってくる。 著者は、もちろんファスト教養に批判的であるのだが、自分自身もそれに飲み込まれそうになったことを率直に認めている。 ファスト教養の吸引力を意識しつつ、もがきながら、いかに相対化すべきかを提言している姿勢に共感をおぼえた。 それは、従来型の教養に戻すということではない。 自分を絶対化しないこと。 絶対化しないためにこそ、教養が必要なのだということであった。 この提言に対して、自分が実現できるかといったら、相当難しいとは思う。 正直、自分も10分で答えがわかったらいいなあ、とイージーに流れてしまうことはあるから。 が、そういう知のありかたでいいのかという思いは共有できる。 なぜそれではいけないのか、を明晰に言語化できないけれど。
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読みながら自分なりの言葉で「教養」とは何かを探っていた。表面的には、恐らく「教養」とは「ネクタイ」みたいなものだ。身につける目的は自己満足か自己表現。ある種のドレスコードに対応したり、品位を示すもの。それが最近では、合理性から寛容的になり、ノーネクタイが普及し始めた。ファスト教養...
読みながら自分なりの言葉で「教養」とは何かを探っていた。表面的には、恐らく「教養」とは「ネクタイ」みたいなものだ。身につける目的は自己満足か自己表現。ある種のドレスコードに対応したり、品位を示すもの。それが最近では、合理性から寛容的になり、ノーネクタイが普及し始めた。ファスト教養、つまり実用性を目的としたコスパの良い教養が蔓延し始めたのはノーネクタイのような現象。著者には悪いが、別にそれで良いではないか。 古典を読め。真の教養とは、などと語る輩は、既得権益層だ。読書に見返りを求めるという意味では、同じ事ではないか。他人のネクタイにケチをつけるな。教養あるものに求められるはずの他者への価値観の尊重が、欠如し矛盾している。無教養が教養を語る。品位なき品位。同族嫌悪。 それと瑣末な指摘は悪い癖だが、10分で答えが欲しい人たち、は本著に紹介された著名なキャラクター達には該当しない気がする。欲しいのが答えなら、10分もかけない。教養、知識、答え、は明確に異なる概念であり、ファスト教養とファストアンサーは別。照合して得られる一問一答なら、検索して直ぐ手に入れられるし、その暗記量を教養とは言わない。 良いではないか。普段はカジュアルに。時々、ピシッとネクタイを締める位の余裕で。
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ファストに「教養」を得られる本や動画が流行っている背景を丁寧に紐解く内容。世代じゃないので、当時ホリエモンが持て囃されてた理由を振り返る部分が特に面白かった。私もファスト教養の誘惑を受けることがあるけど、本書で示された道筋を参考に冷静な距離感で自分の真に学びたいことを地に足つけて...
ファストに「教養」を得られる本や動画が流行っている背景を丁寧に紐解く内容。世代じゃないので、当時ホリエモンが持て囃されてた理由を振り返る部分が特に面白かった。私もファスト教養の誘惑を受けることがあるけど、本書で示された道筋を参考に冷静な距離感で自分の真に学びたいことを地に足つけて学びたい。 あと改めて、オードリー若林さんをリスペクト。
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そもそも「教養」とは何か、難しい定義ではあるが第六章で述べていた事がまさに忠実であるのではないかと。(引用:ビジネスシーンにおいて活用できる知識を適切なソースから得るとともに、自身の「好き」にこだわりながら人生において掘り下げるべきテーマを持ち、さらには雑談するかのように結論を定...
そもそも「教養」とは何か、難しい定義ではあるが第六章で述べていた事がまさに忠実であるのではないかと。(引用:ビジネスシーンにおいて活用できる知識を適切なソースから得るとともに、自身の「好き」にこだわりながら人生において掘り下げるべきテーマを持ち、さらには雑談するかのように結論を定めずさまざまな領域に目を向ける。) 今の世の中は、要点だけをピックアップして素早く情報を伝えるという事が主流な為、何が正しくて何が間違っているかよりも、いかに端的に早く伝えるかという事が正しいかのように振る舞われている社会になっているのではないかと思う。そのため色んな意見が飛び交ってしまったり、憶測や混乱を招いてしまう。 一例だが、私の母がコロナワクチンの件で打つ打たないの議論があった際、母はメディアの情報に疑心を持ち、一体ワクチンがどんな成分を使っているのか、どこまで種類があるのか、またその成分はどんな所で使われる時が多いのかなど、事細かく自分なりに分析をしていた。陰謀論とはまた違うが、こうして調べることや探究することは非常に大切であると思った。良い例である。 だからこそ、どんな情報においても自分の人生において掘り下げるべきテーマ、いわゆるまずはどんな分野でも良いので端的な情報だけでなく、その情報や物事を深く理解する「探究心」を持ち、物事を正しく受け止められるリテラシーを身につける事が大切ではないのかと思う。
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・ファスト教養がどのようなものであるかが書かれているが、ビジネスパーソン以外のファスト教養の消費者(例えば大学生など)について書かれていなくて残念。 ・後半から出てくる新自由主義批判は印象批評の域を出ていない。
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自分は怠惰な人間なので、ここに挙げられていたコンテンツや著名人とは距離をとってきたし、これからもそうでありたいと思う。そう思っていても知らぬうちに、そういう世の中の空気にからめとられているのかもしれないと思った。これを読んで、正直自分は不安になった。6章で多少はやわらげられたけど...
自分は怠惰な人間なので、ここに挙げられていたコンテンツや著名人とは距離をとってきたし、これからもそうでありたいと思う。そう思っていても知らぬうちに、そういう世の中の空気にからめとられているのかもしれないと思った。これを読んで、正直自分は不安になった。6章で多少はやわらげられたけど。時代的な背景から説明されていて、けっこうおもしろかった。
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元々私はファスト教養的なものには批判的・否定的な考えだったので、それを求める人たちの考えを知って「なるほど」と思った。 カネのための教養虚しいわーって言ってられるのは、常に成長を志さなくてものほほんとなんとなく生きてられる心性の人間のある意味特権なのかな、とも。 だからこの本を読...
元々私はファスト教養的なものには批判的・否定的な考えだったので、それを求める人たちの考えを知って「なるほど」と思った。 カネのための教養虚しいわーって言ってられるのは、常に成長を志さなくてものほほんとなんとなく生きてられる心性の人間のある意味特権なのかな、とも。 だからこの本を読んで「ファスト教養を求める人」への印象は改まったけど逆に「ファスト教養を作る人」のことは今までよりだいぶ嫌になった。
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教養のある人がデキるのではなく、デキる人は教養があるのかなと感じた。手っ取り早く教養をつけようと、無駄を省いてコスパだけを重視していると、自分軸で必要、不必要を決めつけて偏っていく。そうならないためにも、時には無駄なこともしていきたい。
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「せこい世の中」 最近の日本は政治家も含めて「目先にこだわる」(ファスト感)が多く、先行き考えず「手っ取り早く結果を求める」などましてや「長期展望」を望まない傾向が多いのはこの「ファスト教養」なのか。厄介なことは「先延ばし」で将来誰かが対処するだろうと楽観視、その場限りの自己満足...
「せこい世の中」 最近の日本は政治家も含めて「目先にこだわる」(ファスト感)が多く、先行き考えず「手っ取り早く結果を求める」などましてや「長期展望」を望まない傾向が多いのはこの「ファスト教養」なのか。厄介なことは「先延ばし」で将来誰かが対処するだろうと楽観視、その場限りの自己満足型人間が増えてきた。一言、「せこい世の中」に成りつつある。責任概念なき個人主義(儲け主義)など隆盛となり「世間離れした世界に夢を抱く」若者が増え、実際は世間との共有、共感などなく利己主義中心的な世が蔓延しているのは悲しい。
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なんか論点がはっきりしない本であった。現状でうけている著者たちを批判したいだけではないのか。 手軽に知識を得ようとする風潮も批判しているようだが、現在は手にいれる情報が圧倒的に増えているので、なにを入手すればいいのかを示唆するキュレーターがうけるのは当然だと思うのだが。 教養とい...
なんか論点がはっきりしない本であった。現状でうけている著者たちを批判したいだけではないのか。 手軽に知識を得ようとする風潮も批判しているようだが、現在は手にいれる情報が圧倒的に増えているので、なにを入手すればいいのかを示唆するキュレーターがうけるのは当然だと思うのだが。 教養という輪郭のわかりづらい概念を元にファスト教養というワードを提示するのは、少々無理があるような気がするし、ここで書かれているファスト教養が悪いものとは思えなかった。そもそも、そうやって知識を得ようとするだけでも立派ではないだろうか。
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