ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
教養を身につけたいという気持ちは高校生ぐらいからずっとあった。私が思う「教養」とは文学、映画その他なんでもいいのだけれどそれを楽しみながら身につけることで想像力を育み、曖昧さを許容し人間の複雑性を理解することである。 これは私が本や映画に描かれている物語が好きだからだと思う。物語では人間のどうしようもなさだったり、一生懸命生きていてもままならない事態に巻き込まれたりとにかく「上手くいかない」人たちや社会が描かれている。これは努力不足によるところではなくて、その人物を理解して受け入れてくれる人がいないことによる孤独やそれ故の生活の危うさなんかだ。 それらを掬い上げているのが物語であり、それらを照射しているのが小説や漫画やアニメや映画なんかである。 だから私にとって「教養」とは、それらから受け取った物語でもって実生活にもそうは見えないだけで、私が知らないだけで物語に出てくる人物のような苦しさやもどかしさを抱える人物がいるかもしれない。それがマンションの隣の部屋の人だったり、いつも行くスタバの店員さんやコンビニでアルバイトをしている人かもしれない。 そういった人に対しての想像力を養うためのものが私にとっての「教養」だ。 以下集英社HPより引用 【「教養=ビジネスの役に立つ」が生む息苦しさの正体】 社交スキルアップのために古典を読み、名著の内容をYouTubeでチェック、財テクや論破術をインフルエンサーから学び「自分の価値」を上げろ───このような「教養論」がビジネスパーソンの間で広まっている。 その状況を一般企業に勤めながらライターとして活動する著者は「ファスト教養」と名付けた。 「教養」に刺激を取り込んで発信するYouTuber、「稼ぐが勝ち」と言い切る起業家、「スキルアップ」を説くカリスマ、「自己責任」を説く政治家、他人を簡単に「バカ」と分類する論客……2000年代以降にビジネスパーソンから支持されてきた言説を分析し、社会に広まる「息苦しさ」の正体を明らかにする。 本書はそもそもファスト教養とは?からファスト教養が生まれ、ここまで社会に浸透するに至った流れを詳細に説明してくれている。 読んでいたらファスト教養が生まれる下地は私が小学生ぐらいのころから始まっていることが書かれていて、そこそこの歴史にふらっとなってしまった。またファスト教養は自己責任論を強める可能性の示唆も書かれている。 この本の良いところはファスト教養と従来の教養という二項対立的な立場をとるのではなく、ファスト教養という自分の成長させたいという姿勢はそのままにファスト教養に呑み込まれず、知識や自分の好きを大切に扱うスタイルを勧めてくれている。 私もファスト教養そのものが悪いとは思わない。先述した私の思う「教養」も自分の成長させたいという点で見れば、そういう意味も含まれると思う。 だから成長したいとかは何も悪いものではないのだ。自分にとって何をどうすることが「成長」につながるのか、その「成長」のために本当に必要な知識とは、と考えることが必要だ。 ファスト教養に呑み込まれないようにするためには、丁寧に自分の思いを取り扱ってあげることが「教養」を身につける第一歩なのではないかと思う。
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面白かった。ファスト教養を享受している自分としてはグサグサ刺さる内容だった。筆者は会社勤めをしている傍ら副業でwebライターもしていることから、私のようなファスト教養を摂取するサラリーマンの気持ちも理解してくれる。
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タイトルは魅力的なんだけど、ぶっちゃけ著者名でちょっと身構えてしまった。完全に偏見。それをさしおいて読むことにしたのは、ひとえに武田砂鉄推薦の書、だったから。どんどん自己責任が叫ばれる場面が増えている現代に、なぜファスト教養がもてはやされるのか、色んな事例から読み解かれていく。繰...
タイトルは魅力的なんだけど、ぶっちゃけ著者名でちょっと身構えてしまった。完全に偏見。それをさしおいて読むことにしたのは、ひとえに武田砂鉄推薦の書、だったから。どんどん自己責任が叫ばれる場面が増えている現代に、なぜファスト教養がもてはやされるのか、色んな事例から読み解かれていく。繰り返し名が挙がる面々に関しては、声が大きい分、否が応でも目にする機会が多い訳だけど、常日頃から感じる違和感を、見事に明文化してくれている。その一方で、早く(コスパ良く)教養を身につけたい、みたいな気持ちは否定できず、折り合いのつけどころが難しい。そんなモヤモヤに対する、一つの答えが本書かも。
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なぜこんなにもコスパ重視だったり、手軽に知識を取り入れようとする流れがあるのか、その背景としては自己責任論や新自由主義における不安と焦り等があると言う事は大変興味深かかった。 ファスト教養と呼ばれるものに嫌悪感を抱いていたが、何となく腑に落ちた部分もあり非常に良かった。
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書店に行けば店頭の一番目立つ棚にビジネス書の新刊が平積みされている光景からも分かるように「ビジネスの役に立つから」という理由で様々な知識を学ぶ姿勢が流行っている昨今。著者はそれを「ファスト教養」と定義し、広まった背景や成長に焦るビジネスパーソンへの提言を述べている。自分も含めて映...
書店に行けば店頭の一番目立つ棚にビジネス書の新刊が平積みされている光景からも分かるように「ビジネスの役に立つから」という理由で様々な知識を学ぶ姿勢が流行っている昨今。著者はそれを「ファスト教養」と定義し、広まった背景や成長に焦るビジネスパーソンへの提言を述べている。自分も含めて映画や音楽などのポップカルチャーが好きな人間は往々にしてこういったものを批判したり憂いたりして理想論で終わりがちだが、本書がフェアなのは「ビジネスの役に立つ知識を学ぶ」ことそれ自体を否定しているわけでない点。社会に自己責任論がもはや不可逆的なレベルまで蔓延している現状を踏まえ、またファスト教養論者と呼ばれるインフルエンサーの発信も彼らの専門分野の内容であれば良いものはあると明言している。この辺りのバランス感覚は著者が研究者ではなく現在も会社員(ライターは副業)であることから来るものだろう。個人的にも昨年体調を崩した時期にファスト教養的なものに惹かれる感覚はあった(こんな辛い会社員なんて辞めて自力で稼ぐ方法はないだろうかと当時は本気で考えていた)ので冷ややかに見ているつもりの人でも要注意である。また、第5章の「トレンドを追わない」は自分が「配信で次々に来る映画やドラマの新作をリアルタイムでいち早くチェックする事こそ正義」という思想に取り憑かれていたと気付かされて目から鱗だった。稲田豊史・著『映画を早送りで観る人たち』と近いテーマなので合わせて読むと良いと思う(第5章で引用もされている)
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本書で取り上げる「ファスト教養」とは、ビジネスの役に立つか否かという判断基準で消費される「コストパフォーマンス」の高いお手軽な教養のことで、現代の日々仕事に追われているビジネスパーソンが感じている自身の市場価値の向上、成長への焦りと密接に結びついている。 しかし本来教養とは...
本書で取り上げる「ファスト教養」とは、ビジネスの役に立つか否かという判断基準で消費される「コストパフォーマンス」の高いお手軽な教養のことで、現代の日々仕事に追われているビジネスパーソンが感じている自身の市場価値の向上、成長への焦りと密接に結びついている。 しかし本来教養とはそんなに簡単に手に入るような物ではなく、役に立つ、立たないに関係なく学びを楽しむことで人生を豊かなものにするための精神を養うといった知的態度を指す言葉であり、お金儲けのための自己啓発としてのファスト教養は、文化を愛する人たちからは浅く、不完全な知識と揶揄される。 お手軽な教養がはびこる世の中でこれからの教養はどうあるべきなのかについて実際の例を挙げながら考察し、本来あるべき知的態度を知るための指針となる本。
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ファスト教養は自己責任社会を背景として勃興したのだという論に、膝を打ちました。成長に駆り立てられていた、と言うよりは焦りと不安を感じていた自分を見つめ直す良い契機になりました。
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ファスト教養 ★概要 「自己責任」が重くのしかかり、周りが競争相手になった結果、経済的な勝ち組を目指すことが最善となった。 その結果、スキルアップ・人脈開拓・営業の話題作りしたいビジネスマンや学生が増えた。 そのニーズに答えるものがファスト教養です。 今までの教養と違い、ファス...
ファスト教養 ★概要 「自己責任」が重くのしかかり、周りが競争相手になった結果、経済的な勝ち組を目指すことが最善となった。 その結果、スキルアップ・人脈開拓・営業の話題作りしたいビジネスマンや学生が増えた。 そのニーズに答えるものがファスト教養です。 今までの教養と違い、ファスト教養は「お金に稼げるか」「その為にどのぐらい時間がかかるか」にフォーカスしてます。 そのファスト教養の問題点をこの本は指摘しています。 ★感想 読んでる途中は、色々「ファスト教養」をありがたがる人を批判的に考えてました。 しかし最後まで読んでいく頃には、「家族を養う」とか「金持ちになる」とか「SNSで注目を浴びる」のような『私が諦めた夢』を目指している人々が必要だからやっていることだと気が付きました。 だからその試行錯誤を笑うことはできないなと考えました。 しかし私は、最近毎日本を読むようになったので特に思いますが、「興味あるなら読めばいいのに」「興味ないのにダイジェストだけ読んで納得出来るの?」と考えちゃいます。
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ファストフードなどに使われるファストと教養を組み合わせた、最近のビジネスに直結し、かつ手軽に得られる教養についての本。 ホリエモンや箕輪氏らが作り出した、金儲けこそ全て、自己責任、という風潮により、何者かになりたいと焦るビジネスマンが、名作映画を早送りで見たり、あらすじのみで満...
ファストフードなどに使われるファストと教養を組み合わせた、最近のビジネスに直結し、かつ手軽に得られる教養についての本。 ホリエモンや箕輪氏らが作り出した、金儲けこそ全て、自己責任、という風潮により、何者かになりたいと焦るビジネスマンが、名作映画を早送りで見たり、あらすじのみで満足している。 そうした、本来の教養とは程遠いものの、大量に消費されていく姿からファスト教養と筆者は定義付けている。 こうしたファスト教養に染まらないためには、無駄を愛しつつ、金儲けに直結はしないかもしれないが、自分が本当に好きなものについて、より深く学習することを勧めている。 最近感じていた違和感が言語されており、非常に頭の整理になった。
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それはそうだよなと、普段考えていることが書いてある感じであった。NewsPicksのYouTubeに違和感がある人は、あまり読む必要がないかもしれない。しかし、よく見る人や共感できる人は、読んでみるといいだろう。 数ヶ月前までやっていた就活で、「成長したいです」という話をよく聞い...
それはそうだよなと、普段考えていることが書いてある感じであった。NewsPicksのYouTubeに違和感がある人は、あまり読む必要がないかもしれない。しかし、よく見る人や共感できる人は、読んでみるといいだろう。 数ヶ月前までやっていた就活で、「成長したいです」という話をよく聞いた。その度に、なんのために成長するのか、と感じていた。成長の目的がないのに、将来に不安な人が、マスメディアによって増えているのだろう。そうはなりたくない。強い成長への欲求は、自己否定につながり、不幸を産む。努力なんかしてたまるか、という精神で生きていきたい。
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