優等生は探偵に向かない の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
前作では、身近な人の事件とはいえ過去の出来事の調べ直しで、結果的に真相にたどり着いて真犯人を見つけることができたけれど、今回は事件に巻き込まれているのなら命が危ないという時間的制約との戦いが大きい。 けれどもまだ学生のピップは学校生活を優先させなければならないので、必然的に睡眠時間を削ることになる。 そのピップの焦りのようなものが、余計に今回の事件の不安をあおることになる。 前回の事件で心にも体にも傷を負ったピップは、もう二度とこのようなことはしないと誓ったはずだった。 けれど、警察が行方を捜してくれないのなら、そして自分には探すための手段があるのなら、覚悟を持ってこの行方不明事件にかかわることを決める。 何かあった時に後悔しないためにも。 「こういうことをまたわたしにやらせないでください。お願いだから。もう一度やるなんて無理なんです」 警察でピップがこう言っていたことなんて世間は知らない。 売名行為だとか、スポンサー契約のためだとか、心ない言葉がSNS上を飛び交う。 もちろんピップの目にも触れることになる。 今作は、前作でちらっと出て来たシーンが大きなカギとなっていたことがあとでわかる。 また、前回の事件に絡んでレイプ犯の裁判が行われているのだけれど、明らかに犯罪を犯した人物が裁判の結果無罪となったことも、ピップの精神にダメージを与える。 前作と今作は独立した話ではあるけれど、無関係な話ではないのだ。 裁判の結果に打ちのめされ、警察や裁判所を信じられなくなったピップに、新しく隣人になったチャーリーは言う。 「自分たちにとっての善と悪、正義と悪はどういったものか、受け入れろと言われたものではなく、ぼくら自身が決めていいと思うんだ」 この言葉で立ち直ったピップは、ブーメランのように返ってきた他者の正義に翻弄される。 自分の正義のためなら何をしてもいいのか? SNSは、隠したい秘密も、知られたくない過去も、情け容赦なく暴いてしまう。 そして、火の無いところに煙を立たせることもある。 便利なだけではなく、使い方を誤るととてつもなく恐ろしいツールであることを、私たちは覚悟しておかなければならない。 一介の学生であるピップですら、ジェイミーのパソコンのパスワードを解除し、履歴を検索して、彼の行動を追うことができるのだから、デジタルの中に秘密を置くことはできないと思っておいた方がいいだろう。 もう一つこわかったのは、一度社会的なレッテルを貼られると、それまでの関係など無かったかのようにレッテルを猛進してしまう人たちが一定以上いるということ。 個人対個人として親しく付き合っていたはずなのに、レッテルが貼られてしまうと、それが事実であるなしにかかわらず絶対になってしまう。 事件の真相が明らかになった時、彼の長くはない人生の中で、最後まで彼個人の人間性を信じたのがピップだけなのだとしたら、哀しすぎる。 ラヴィとピップはアツアツとかいちゃいちゃという感じではなく、いいパートナー、バディだと思う。 そしてジェイミーは年齢よりちょっと幼いのではないかな。 ピップの同級生、コナーの6歳上のお兄さんのはずだけど、彼らよりも明らかに頼りない。 これも何かの伏線なのかと思ってしまったよ。 さて、一つ気になるのは900ポンドの返済。 小説の最後は返済期日を過ぎていると思うのだけど、まったくこの件に触れていないということは、次の事件はこれに関わることなのかな?
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シリーズ2作目。冒頭から前作のネタバレだらけなので、ご注意ください。前作の、ある伏線を回収する箇所が物語のメインだったかな。3部作のようなので、次回にも期待。
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例えば前作『自由研究には向かない殺人』を読んだ方へ 前作にて探偵業のつらさを実感したピップは、もう探偵はやらないと決意を固めます。 しかし友人から行方不明の兄を探してほしいと頼みこまれ、渋々探偵をやることに。 ポッドキャストやSNSを駆使して、友人の兄を探していくうちに過去の...
例えば前作『自由研究には向かない殺人』を読んだ方へ 前作にて探偵業のつらさを実感したピップは、もう探偵はやらないと決意を固めます。 しかし友人から行方不明の兄を探してほしいと頼みこまれ、渋々探偵をやることに。 ポッドキャストやSNSを駆使して、友人の兄を探していくうちに過去の事件と結びついてきて…。 この作品の特徴は前作からほとんど登場人物が変わらないことです。主要キャラクターは変わらず、容疑者や被害者が変更になるのがよくある括りかなと思いますが、この作品はほとんどが同じキャラクターで話が進むので、前作からの続編として楽しみやすいです。 ミステリの面白さもさることながら、ピップの苦悩なども楽しめる作品でした。
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今年最後の読了本となりました。 前作『自由研究には向かない殺人』に続き、充実した読書の時間となりました。 前作終末では、自由研究だけに<真相を講堂の舞台で話した>のですが、事件が完全解決した訳ではなく、まだ諸作業が続いていました。 本作は正にその続きから始まります。ポッドキ...
今年最後の読了本となりました。 前作『自由研究には向かない殺人』に続き、充実した読書の時間となりました。 前作終末では、自由研究だけに<真相を講堂の舞台で話した>のですが、事件が完全解決した訳ではなく、まだ諸作業が続いていました。 本作は正にその続きから始まります。ポッドキャスト配信でエピソードが公開され、シーズン2を期待されるのでしたが、ピップは「あくまでも事件の公判や審理が終わるまでで、セカンドシーズンはない」と公言するのでした‥。 が、そんな折、友人の兄が失踪し調査を依頼されます。苦渋の決断で引き受け‥、シーズン2の幕開けです。 本作でのピップは、相変わらずの忍耐と公正をもち、困難に立ち向かっていきますが、前作と比べて性格の〝陽〟の部分が減った印象を受けました。恐らく、周囲にピップを悪しく思う人が増えたことに起因するのかと思います。物語全体に陰鬱なイメージが増したのは、やや残念に感じます。 しかし、その分、ピップの覚悟や鬼気迫る雰囲気に、ピップの成長を見て取りました。前作と違う一面と言うより、成長した一面と感じた訳で、「やっぱりピップはいい子だなぁ」という想いは変わりません。そういう意味では、前作とまた一味違う魅力をもった作品になっている印象です。 両作とも、ピップと共に泣き笑いしながらミステリーに浸れる、良質なおすすめ作品でした。 今年も良質な本と出会え、ブクログユーザーの皆さんのレビューに感謝申し上げます。 良いお年を〜。来年もよろしくお願い致します。
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一作目よりやや地味かな? ちょっと話がうまく進みすぎて、リアリティが減った気がする。 それでもどんどん先を読みたくなるのは話が展開していくテンポの良さのおかげ!
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物語は前作のすぐあとからそのまま始まる。 今回は友達の兄貴がまた家出をし、 家族が今回はなんか犯罪に巻き込まれてる気がする!と主人公に泣きついてくる。 こんなしょうもない話は、映画でいうタイトルが出る前にパパっと済ませられる話かと思いきや、これがメインの話だった。 前作の事件と...
物語は前作のすぐあとからそのまま始まる。 今回は友達の兄貴がまた家出をし、 家族が今回はなんか犯罪に巻き込まれてる気がする!と主人公に泣きついてくる。 こんなしょうもない話は、映画でいうタイトルが出る前にパパっと済ませられる話かと思いきや、これがメインの話だった。 前作の事件と比べて圧倒的にスケールも魅力がなく、物語の推進力も弱い。読み終わるまでかなり時間がかかった。 この話に興味を持つのが難しくて、結局今作は繋ぎの話だったと終わりまで読んでわかった。 まず失踪した友達の兄貴がいい歳の大人で 中盤を超えた終盤あたりまで本当に失踪か家出かも よく分からないのがストレスだった。警察が相手にしてくれないって普通じゃね?兄貴が選ばれたのは今回の謎を成立させるためのただの道具だっただけ。可哀想に 結局やりたかったのは犯人と主人公の対談だったし、あいつに鉄槌を下してしまう主人公が今後どうなるかを示すための長ーい前振り。 1作目との落差が激しかったのでショックだった。
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ずっと温めていた楽しみの積読本。変わらずのボリュームと読み応え!期待を裏切らない面白さでした。また続編や同じ作者さんの作品を読みたいです。
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『自由研究には向かない殺人』の続編です。 前作と同様、女子高生のピップが、街で起こった事件について、自らの手で調査を進め、真相へと近づいていきます。 今回は、ピップの友人のコナーの兄・ジェイミーが突如失踪してしまうという事件が発生するのですが、関係者へのインタビューやSNSを利用...
『自由研究には向かない殺人』の続編です。 前作と同様、女子高生のピップが、街で起こった事件について、自らの手で調査を進め、真相へと近づいていきます。 今回は、ピップの友人のコナーの兄・ジェイミーが突如失踪してしまうという事件が発生するのですが、関係者へのインタビューやSNSを利用した調査によって、少しずつ真相が明らかになっていく様子にドキドキさせられました。 ポッドキャストやTinderなど、まさに今どきのツールを駆使して調査を進めていくので、ミステリーの最先端だなぁなんて感じました。 このシリーズは全三部作のようなので、次作で完結ということになりますね。発売されるのが今から待ち遠しいです。
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買ってから随分寝かせてしまったので、 前作「自由研究には向かない殺人」を再読してから手をつけました。 前に読んだ時から1年ちょっと経ってたんだ・・・ やっぱり一気読み。 2冊ぶっ続けに。 あんな事があって、周りも自分自身も家族も メディアに晒される事になって 小さな町で それ...
買ってから随分寝かせてしまったので、 前作「自由研究には向かない殺人」を再読してから手をつけました。 前に読んだ時から1年ちょっと経ってたんだ・・・ やっぱり一気読み。 2冊ぶっ続けに。 あんな事があって、周りも自分自身も家族も メディアに晒される事になって 小さな町で それは ものすごく お腹に穴があいて食べられてしまう 感覚に襲われるだろう。 きっちり片をつけて、もう探偵のような事とは縁を切ろうと決めるのに 友人の切羽詰まったお願いに 断る事ができない。 辛かった。 読んでてとっても辛かった。 正しいって なんだ!? ピッパ。 あなたのことが心配です。 ただ、あなたの周りには ちゃんとあなたを理解して あなたを信じてくれる人がいるから だから、読み進める事ができた。 でも本当に最後100頁くらいは、ティッシュが大量に必要でした。 おかげで今も眼がパンパンに腫れていますよピッパ。 前作は、ラストに爽快感があったのに 今回は 心配と悔しさが残る。 続き 気になるので早めにお願いします。 色々問題残ってるんだもん・・・ あれやらこれやらそれやら・・・ どうなるのか気になって 夜しか眠れません・・・
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『自由研究には向かない殺人』の続編。 ピップは友人のコナーから、失踪した兄・ジェイミーを探してほしいと依頼されます。 前回の事件を解明した時に、自分や周りを危険にさらしてしまったことから、二度と“探偵”はしないと決めていたピップでしたが、コナーと彼の母親から頼みこまれ、警察も動...
『自由研究には向かない殺人』の続編。 ピップは友人のコナーから、失踪した兄・ジェイミーを探してほしいと依頼されます。 前回の事件を解明した時に、自分や周りを危険にさらしてしまったことから、二度と“探偵”はしないと決めていたピップでしたが、コナーと彼の母親から頼みこまれ、警察も動いてくれない為、仕方なく真相を追うことに・・。 今回は前作以上に物語にのめり込んで読ませて頂きました。 内容的には前作よりも重く、結末もやるせないものでしたし、なによりピップのメンタルが削られることが続く展開でした。 それでも、プロットの秀逸さでグイグイ引き込まれ、図版や画像といったビジュアル資料も前作以上に効果的に多用していて、それが立体感のようなものを生み出している印象です。 さて、ポッドキャスト配信やSNSを駆使して真相に迫るピップですが、それによって誹謗中傷や、いらん悪意を向けられてしまったりする部分が生々しいですね。 とりわけ、中盤で“あの判決”が出た時のピップの怒りは痛々しい程で、彼女も“グッドガール”なだけでなく、ヒューマンなんですよね。 そんなピップを包み込んでくれる、ラヴィの存在は本当に大きくて癒されるものがありました。 そして、話が進むうちに、ジェイミー失踪の背景に、過去に起きた連続殺人事件が絡んできて、前作から登場していた“あの人物”の知られざる過去が明らかになります。 怒涛のような終盤は、辛かったけど圧巻の読み応えで、正義って何なんだろう・・と考えさせられるものがありました。 第三部はどのような展開になるのか、今から楽しみです。今回しんどかったピップに笑顔が戻るとよいな。と、願いを込めてお待ちしております。
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