嘘と正典 の商品レビュー
「王と道化の両方」 初めて読む作家さん。 親子で継ぐいい話系と狂気じみた展開だったりふざけてるのかどうかすら怪しいくらい計画的な犯行っぽい作品もあり、だんだんどっちに振り切るのかわからない状態で次の短編へ読み進めるのが楽しくなっていった。 「嘘が正典になるにら正典とは何か?」と...
「王と道化の両方」 初めて読む作家さん。 親子で継ぐいい話系と狂気じみた展開だったりふざけてるのかどうかすら怪しいくらい計画的な犯行っぽい作品もあり、だんだんどっちに振り切るのかわからない状態で次の短編へ読み進めるのが楽しくなっていった。 「嘘が正典になるにら正典とは何か?」と言う思いが頭を巡る。 他の方の感想見ると「短編も面白い」って言葉が気になりますよ…それ聞いたら長編も読みたくなるって.
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いやー、小川哲さんはすごい!短編もこんなに面白いとは。歴史改変SFとして非常によくできている表題作の「嘘と正典」はもちろん、特に下記の2本に心を動かされました。 ◉魔術師 途中まで「あ〜そういうオチね」と想像していたらとんでもない。最後の一行で頭を殴られました。最高の短編です。...
いやー、小川哲さんはすごい!短編もこんなに面白いとは。歴史改変SFとして非常によくできている表題作の「嘘と正典」はもちろん、特に下記の2本に心を動かされました。 ◉魔術師 途中まで「あ〜そういうオチね」と想像していたらとんでもない。最後の一行で頭を殴られました。最高の短編です。他の人の感想もぜひ聞いてみたい。 ◉ひとすじの光 競馬をまったく分からないのに猛烈に引き込まれました。ヒトスジのレース展開は展開が熱すぎて、手に汗握りながらページ捲りました。
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「魔術師」読んでるこちらの集中力の問題のような気がするんやけど、肝腎要のトリック周りがよく分からず。まぁ分からんなりにオモロいねんけど。 「ひとすじの光」これはさほどトリッキーでもなく、言葉悪いけどさほど盛り上がることもなく。 「時の扉」これもちょっとハマらず。こちらがナチ絡み...
「魔術師」読んでるこちらの集中力の問題のような気がするんやけど、肝腎要のトリック周りがよく分からず。まぁ分からんなりにオモロいねんけど。 「ひとすじの光」これはさほどトリッキーでもなく、言葉悪いけどさほど盛り上がることもなく。 「時の扉」これもちょっとハマらず。こちらがナチ絡みってだけで違うモノ期待するのは勝手やねんけどな、けど、、 「ムジカ・ムンダーナ」全体的に春樹感。どこがとか言えないけど「国境の西 太陽の南」みたいな。「カフカ」以降春樹から離れてるけど、「国境の西〜」は一番好きやし、コレも好き。一人っ子だからかも知れんし、関係ないかも知れん。 「最後の不良」コレどっかで読んだ気がするけど、どこやったか。その時からオチは何となく予想ついたけどそれで値打ち下がるわけではなく。 「嘘と正典」後半の展開が急でちょっとついて行くのが大変なところはありつつもオモロい。KGBもうちょっと出番ほしかったかな。
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濃密な短編集でした。作品の世界観や設定、そしてテーマ。これまでの小説やジャンルにとらわれない作品の数々に、改めて小説という世界は広がり続けているのだと気づかされました。 収録作品は6編。個人的には歴史に科学や時間改編の要素を絡めた作品が面白かった。表題作『嘘と正典』は謎めいた裁...
濃密な短編集でした。作品の世界観や設定、そしてテーマ。これまでの小説やジャンルにとらわれない作品の数々に、改めて小説という世界は広がり続けているのだと気づかされました。 収録作品は6編。個人的には歴史に科学や時間改編の要素を絡めた作品が面白かった。表題作『嘘と正典』は謎めいた裁判シーンから始まりその後、話は一転して冷戦下のCIA職員を描きます。 アメリカとソ連の秘密裏の覇権争い。祖国に疑念を抱くソ連の科学者。この二つがSF的アイディアで結び付いたとき現れる壮大な思いがけない物語。 ものすごく突拍子もないアイディアでありながら、冷戦下という緊迫した舞台設定で話に巧みに引き込み、そのアイディアがどこかで本当にあったかのように思わせてしまう。そして歴史や政治、国家に翻弄される個人の哀しさも感じる一編でした。 「時の扉」も歴史と科学を合わせ、そして時間の概念を問いかけてくる思弁的な作品。王に対しいくつもの物語を語る男。現在とは過去とは未来とは。世界の在り方とは。そうしたものを考えさせられながら読んでいくうちに、男の語る物語が史実と結び付き…… 思考実験的な面白さに加えて、二人の正体が明らかになった時、物語の意味がまた違って見えてきてより深みが増しました 青春小説の味わいのある作品も、切り口が唯一無二のもので面白い。 父が息子に遺した競走馬の謎を追いかける「ひとすじの光」。 音楽を通貨とする集落に訪れた青年と、亡くなった父の関係が描かれる「ムジカ・ムンダーナ」 前者は競走馬の血統という歴史から、父親の思いを描くことで主人公の再生を描き、後者は不思議な民族の文化と父が遺したテープの謎が呼応して、主人公が音楽のトラウマを乗り越えていく。 ストーリーとしてはどちらも主人公が確執のあった父親とのわだかまりや、いま抱えている喪失を乗り越えるというものだけど、その切り口や謎を解く過程が独特で面白く読み込んでしまい、そのぶんラストの爽やかさも印象的に残りました。 謎解きと父親との確執でいうと「魔術師」もおもしろかった。稀代のマジシャンが最後に行ったタイムトラベルのマジックを描いた短編。 マジシャンの人生や子供たちの複雑な思いを描き、マジックに関する謎解き物語でありながら、超常的な要素も完全に排しないどこか奇妙な味の要素もある不思議な感覚の作品。一方で家族を描いた物語でもあり、改めて考えても感想を表すのが難しい……。とにかく多重的な作品だと思います。 「最後の不良」は他の作品とは少し毛色の違った物語。流行や個性をシニカルに描いた警句的な意味合いも感じられる短編で、これも最近のSDGSやファッションブランドの潮流やSNSの存在と合わせていろいろ考えさせられました。 小川哲さんは前回『ゲームの王国』を読んだとき、理解しきれないけどすごい物語を書く人だという印象を抱いたのですが、今回は短編集ということもあり前作より読みやすく、それでいて小川さんの描く物語の唯一無二の感じは失われず、改めてそのすごさを感じました。 SFというジャンルを超えて、またすごい物語が小川さんの手から生まれそうな予感がします。
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SF的ガジェットが一切登場しない、非SF作品は「ひとすじの光」だけとあとがきにあるが、逆にSF以外の何ものでもない作も「噓と正典」の一篇しかない。で、その「噓と正典」のガチSF的な部分を、解説者は「真面目かわからない」と評している。多分だが、あまりSFは読まない人なんだろうけど、...
SF的ガジェットが一切登場しない、非SF作品は「ひとすじの光」だけとあとがきにあるが、逆にSF以外の何ものでもない作も「噓と正典」の一篇しかない。で、その「噓と正典」のガチSF的な部分を、解説者は「真面目かわからない」と評している。多分だが、あまりSFは読まない人なんだろうけど、こう言われてしまうとSF者は立つ瀬がない気がする。それはともかく、SFと物語の比重で言うと、明らかに物語が重い。先に書きたい物語があって、それを効果的に表現する道具としてSFのガジェットがある。奇想がパーン、みたいのばかりがSFじゃないってことでもある。コアなSF読者にも響くと思うが、普段SFをあんまり読まない人にもお勧め。
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