燕は戻ってこない の商品レビュー
ラストに息を呑んだ。 ぐらにとっては、資産的に余裕のある草桶家に育てられるのが幸せなんじゃないか、と思ってしまうけど、その考えこそ、産んだ張本人であるリキを蔑ろにした、グロテスクな考えだとも思う。 お金を払えば代理母のプライバシーを侵害してもいいのか、お金を払えば代理母からそ...
ラストに息を呑んだ。 ぐらにとっては、資産的に余裕のある草桶家に育てられるのが幸せなんじゃないか、と思ってしまうけど、その考えこそ、産んだ張本人であるリキを蔑ろにした、グロテスクな考えだとも思う。 お金を払えば代理母のプライバシーを侵害してもいいのか、お金を払えば代理母からその子供を引き取ることは当然とされるのか…自分の考えをまとめられないまま一気に読み終えた。 倫理とか代理母の命に危険が生じるという以前に、復縁しないと言った悠子が復縁したり、契約書の内容に反してリキが子供を手放さなかったり、人間の気持ちが本人からもどうなるか読めないものである以上、命に関するこういったやりとりは許されるべきじゃないんだろうと思った。 そうである以上、そんなやりとりに関する契約なんてはなから無効で、リキが子供を連れ去っても誰も何も言えないんじゃないかな。 新生児の持つ生命力に登場人物たちが引き込まれていくのも面白かった。 本当に女性って、生殖のリミットが早くて、でもそんなにもリミットが早いということは、当事者になって初めて知らされるし、痛感する。 そして仕事で脂の乗る時期と、出産適齢期とされる時期がぴったり重なっていて、女性の人生ってなんなのだろうとも考える。
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女性の出産年齢がどんどん遅れ、子供を持ちにくくなったカップルが、生殖医療ビジネスに頼り、子供を授かるという話はこれから益々増えていくと思う。生殖テクノロジーは、恐ろしいほど発達し続けており、それに追いつかないのは、人間の感情と法律だけ。 今後、お金に糸目をつけない人たちは、子供の...
女性の出産年齢がどんどん遅れ、子供を持ちにくくなったカップルが、生殖医療ビジネスに頼り、子供を授かるという話はこれから益々増えていくと思う。生殖テクノロジーは、恐ろしいほど発達し続けており、それに追いつかないのは、人間の感情と法律だけ。 今後、お金に糸目をつけない人たちは、子供の容貌や能力さえも手に入る時代がきたら恐ろしい。
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地方から上京し非正規労働者で、困窮を極める29歳女性・リキ。 同僚のテルから卵子提供の話を聞く。 クリニックからは代理母の選択もあることを教えられる。 リキはお金が欲しい。 でも、スパッと割り切れない思いもある。 子供が欲しくても授からなかった依頼人の妻・悠子。 読んでいて、い...
地方から上京し非正規労働者で、困窮を極める29歳女性・リキ。 同僚のテルから卵子提供の話を聞く。 クリニックからは代理母の選択もあることを教えられる。 リキはお金が欲しい。 でも、スパッと割り切れない思いもある。 子供が欲しくても授からなかった依頼人の妻・悠子。 読んでいて、いちばん身近に感じたのは彼女かな。 夫と義母は資産家なので、お金で解決しようとするし 友人のりりこも贅沢な暮らしができるほどに裕福。 (遠い国の話だと思ってしまった) 貧困に喘ぐ、リキとテル。 でもリアル過ぎて目を背けたくなる自分もいる。 小説の中の出来事ではなくなっているのだろう。
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主人公と言い、草桶夫婦といい、チミコといい、こどもを産む、育てる、ということに関していいとこ取りだけしようとする自分勝手な人たち満載で人間の嫌ぁ〜な部分が存分に出てるなぁ、と。 でも、所々それぞれの登場人物に感情移入してしまう部分もあり、この人完全悪!と言えない不思議なバランスです。 途中までは常に右往左往というかふわっとした考えしかもてない主人公が、最後ぐらを連れて行くところは母強し、、と思いましたが、基も本当に自分の子か分からないながらも育てる決意を強くする描写や悠子の心変わりなどは、こどもってそれくらい人を強くさせる不思議な存在なんだな、ってこと自分の実体験も含め再認識させられました。 全体的にフェミ寄りな内容で好みです。
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主人公の考えが浅くてイラッとした結末だった。 自分一人でもどうしようもなく貧困だったのに、子どもを育てられるのか?なんか物語の後の不幸を想像してブルーな気分になった。 まあ、それも作者の意図なのかもしれないけど。 頑張り癖がある人には、いくらでも頑張りようがある、技術の進歩が生...
主人公の考えが浅くてイラッとした結末だった。 自分一人でもどうしようもなく貧困だったのに、子どもを育てられるのか?なんか物語の後の不幸を想像してブルーな気分になった。 まあ、それも作者の意図なのかもしれないけど。 頑張り癖がある人には、いくらでも頑張りようがある、技術の進歩が生み出した選択肢の多さというのは、人を不幸にしうるなぁと改めて思った。
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不妊治療経験者であればどれだけ妊娠することが大変だということも共感できるに違いない。また妊娠それも双子出産ということがどんなに危険であることか。。いくらビジネスだと言ってもriskを伴う双子を代理出産をすると決めたリキには共感できず。。 悠子の身勝手な感情にも振り回されイライラし...
不妊治療経験者であればどれだけ妊娠することが大変だということも共感できるに違いない。また妊娠それも双子出産ということがどんなに危険であることか。。いくらビジネスだと言ってもriskを伴う双子を代理出産をすると決めたリキには共感できず。。 悠子の身勝手な感情にも振り回されイライラしちゃいましたがリキの最後の決断にスッキリ感もありつつ子どもが可愛いそうだよ、という感想。一気読みし面白かったです。
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なんというか…決して「面白い」とか「グッとくる」とは思えない、むしろ微妙に不快な気持ちになるのに、とめられなくって一気に読んでしまった。 まさに帯どおりのノンストップディストピア小説。 男性と女性で、さらには妊娠出産の経験があるかないかで、感じ方は全然違うんじゃないかと思う。 銀チャリ男のエピソードとか、終盤の春画へのコメントとか、男性は無意識でも女性にはわかる不快感の描写がよかった。 そして、それでも女はいいよ、というラストになんだかホッとした。
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エッグドナー、代理母、不妊治療に関する書かれ方がとてもリアルだった。 登場人物の揺れ動く心情、突発的な感情、合理的でない言動は、読んでいて快適ではないものの、生身の人間を感じさせるものだった。 桐野夏生の作品はエグくて面白い。 年代や性別、結婚または出産経験の有無によって作品の...
エッグドナー、代理母、不妊治療に関する書かれ方がとてもリアルだった。 登場人物の揺れ動く心情、突発的な感情、合理的でない言動は、読んでいて快適ではないものの、生身の人間を感じさせるものだった。 桐野夏生の作品はエグくて面白い。 年代や性別、結婚または出産経験の有無によって作品の感じ方は、変わってくるだろうなと思った。
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一気読み! 「生殖」や女性の体の「期限」問題だけではなく、色んな今の世の中の澱が描かれてる。本筋じゃないけど、男性の作家なら、絶対気づいてくれない銀チャリ男のエピソードとか、よくぞ拾ってくれました。 桐野夏生は、私たちがかろうじて外に出さないようにしている常々抱えている不満や不穏...
一気読み! 「生殖」や女性の体の「期限」問題だけではなく、色んな今の世の中の澱が描かれてる。本筋じゃないけど、男性の作家なら、絶対気づいてくれない銀チャリ男のエピソードとか、よくぞ拾ってくれました。 桐野夏生は、私たちがかろうじて外に出さないようにしている常々抱えている不満や不穏な考えを、読み手にじわじわと思い起こさせる。そして、パチンと風船が割れるみたいに限界を迎えて振り切れてしまう人たちを描くのが、とても上手。 「あっち側」に行ってしまった人たちは、もやもやを抱えつつも結局ぬるま湯から出はしない我が身の分身のように思えるから、引き込まれるのかな。 今のところ非現実的な展開なのだろうけど、世の中の色んな立場の人の色んな考え方が描かれていて、特に裕福な人の視点の傲慢さと、若い上京組の経済的に八方塞がりの感じは、現実味があって迫力があった。 自分のポリシーや立場に良くも悪くも固執するのではなく、色んな人と出会って色んな経験をして、考えが揺れ動きながら、人は生きていったらいいのかもしれない。ということを考えた、誰にも会わずに終えそうな週末。
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ノンストップディストピア小説とはよく言ったものだ。本当にノンストップで読んでしまった。主テーマは代理母、裏テーマは田舎から出てきた東京ワーキングプア女子だ。ワーキングプアとはまさにこのこと、という困窮っぷりで、それがリアルで、こんな作品が出てくるようになってしまった世の中では、安...
ノンストップディストピア小説とはよく言ったものだ。本当にノンストップで読んでしまった。主テーマは代理母、裏テーマは田舎から出てきた東京ワーキングプア女子だ。ワーキングプアとはまさにこのこと、という困窮っぷりで、それがリアルで、こんな作品が出てくるようになってしまった世の中では、安心して子どもなんて産めないなと思う。産み落とすまでも、肉体的・精神的に苦労が絶えずしんどいのに、その後の生活も保証されないのだから、そりゃ産めない。 契約直後に契約違反をするリキ、蚊帳の外なのが嫌でペーパー離婚を本当の離縁にしようとする悠子、自分の遺伝子が残せて、可愛い我が子のまさに可愛いところだけもらえればなんでも良さそうな基、そしてめんどくさそうなプリマの姑・千味子。東京で限界生活をしているテルを頼りまくる貧しい日本人とタイ人とのハーフのソム太と鬱病のタイ人の母。はぁ〜ディストピア。 最後、ぐらちゃんだけを連れていくのは、男尊女卑の社会への復讐だろうか。女は負けねえという、宣戦布告だろうか。解釈が難しいな。 p.75 「ね、悠子は長いのと太いの、どっちが好きなの?なんかさ、太いと男根と言いたくなるけど、長いとペニスと呼びたくなる。そんなことない?」 p.83 優子は口をつぐんだ。うまく説明できなかったが、自分は金額の多寡ではなく、自分たちが金を払って選ぶ、と言う行為がやるのだった。金を払うことになれば、結局はより良い卵子により良い子宮を選ぼうとするだろう。金額の大小は結果を生むからだ。それはどうせいである女の体を、金で切り刻むことにならないか。 p.121 漠然と切りは、「間に合わない」とは、容色が衰える事かと考えていたのだが、ここにして、叔母は女の生殖能力の限界について言及していたのだ、と思い至った。生殖能力があることが、結局結婚可能の証だったんだ。叔母にとって結婚とは、すなわち、つまらない町からの脱出であり、経済的にも精神的にも貧困から逃れる術だった。そして、自分を期限切れになったから、姪のリキが無事に結婚して子を産み、幸せになるよう願って死んでいったのだ。今、自分は29歳だ。エッグドナーになるのは30歳未満だから、来年はもう「間に合わない」。確かに、女の人生には、「間に合わない」がついて回る。 リキは、はす向かいに座る、悠子の穏やかな顔をそっと見遣った。佳子叔母をうんと垢抜けさせて、知的な眼差しにしたその人は、デザートのジェラート、1さじ口に運んでから、リキの視線を感じたのか、顔を上げた。この人も、「間に合わなかった」と断じられた人なのだ、とリキは思った。なのに、夫の基は、子供を育てあげるのにかかる時間のことを気にしている。女の限界と男の限界。なぜか悲しくなったリキは、青沼とバレエの話に興じている基を見た。まるで男根のような、長くて、太い首の上に小さな顔が載っている。 p.210 しかし、期限付きとは言え、こうして結婚と言うものを経験してみると、独身女に対して、人妻と言う身分がどれほど楽で、恩恵を被っているのかが、よくわかったような気がする。夫がどんなに冴えない男だろうと、妻と言う身分を得れば、世間ではでかいことができるのだ。1人の男の所有物となった女に対して、世間が遠慮するからだ。もちろん、その遠慮は妻と言うよりは、その傍にいる夫に対して、である。リキの結婚指輪もどきをチラリと見た男たちが急に遠慮したり、あからさまにリキに一目置いたりするのには驚いたし、若い男が自分とは関係ない女だ、と知らん顔をすることも初めて気づいた。また、若い女の中には、そのくらいのことで威張るなよ、とむかついた顔をするものもいる。かつての自分もそうだった。結婚していて子供のいる女は、どこか上から目線で私たち独身女を見ているものだ、と言う憤懣(ふんまん)があった。しかし、今はむしろ、女の人生の完成が結婚によるものだと、世間がそう仕向けているのとわかる。独身女も人妻も未亡人も、男が中心となった位置づけなのであった。 p.369 「私は子孫なんか作りたくないから。生物を生産したくないんだ。私はこの世にたった1人存在するだけでいい」「それで、私にお腹の中をすっきりきれいにするんだよ、と言ったんですね。でも、私、最近変わってきました。お腹の中で赤ん坊が動くと、不思議な気持ちになるんです。なんかかわいいんです。あと、危険かもしれないけど、子供を産める自分に酔ってる。何か自分がすごく価値のある、偉い人になった気分なんです」
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