黒き荒野の果て の商品レビュー
「V8!V8!」 『マッドマックス怒りのデスロード』をご存知でしょうか。映画内では車のエンジンが神格化しており、それを崇めるボーイズ達が叫んでるのですが本書を読んでいて中盤からずっとこの声が頭に響いておりました。 読書に集中したい時は大抵クラシックかオペラを垂れ流しているのですが...
「V8!V8!」 『マッドマックス怒りのデスロード』をご存知でしょうか。映画内では車のエンジンが神格化しており、それを崇めるボーイズ達が叫んでるのですが本書を読んでいて中盤からずっとこの声が頭に響いておりました。 読書に集中したい時は大抵クラシックかオペラを垂れ流しているのですが(音があった方が集中出来るようです)今回ばかりはこれはあかん!とワイルドスピードのサントラを流してました。 お世話になっている1Q8401さんに『頬に哀しみを刻め』を読んだならこっちもかっこいいおじ様が出るよと教えて頂き、かっこいいおじ様は見ているだけで眼福なので拝読。 タイトルと表紙から黒人さんの悲哀がまた書かれているのかと思いきやもっと重たいテーマが隠されていました。 主人公のイケてるおじ様ボーレガードは自動車修理工場を営む黒人さん。 妻のキアと2人の子供と暮らしており、もう1人前妻との娘もいます。 ところがライバル会社にほぼ仕事を持って行かれ経営難。家庭は支えないといけないし母親は施設に入っているのでお金を工面しないといけないし、娘の学費は出したいし…読んでいてこっちも胃がきゅっとなりましたが、大金をすぐに稼ぐ方法と言ったら違法な事か宝くじで当てるか臓器を売るしか無いので(ひきずるテスカトリポカ)元は裏社会の伝説のドライバーだったボーレガードは、昔の仕事仲間ロニーに持ちかけられた宝石強盗の仕事に手を出す事になるのです。 もうこの設定が痺れる!伝説のドライバーとか伝説の殺し屋とかロマンの塊ですね。 そもそもはボーレガードの父親のアンソニーが中々の悪で、嫁とボーレガードを置き去りに逃げたか亡くなったか、帰らぬ人となっています。それを見ているボーレガードは自分は同じ轍は踏まないと必死に頑張っているのですが、父親を愛している事実と家庭を守りたい気持ちがせめぎ合って苦しむ事に。 ですが、いくらお金に困っても父親の形見のダスターを売らなかったり勤め人にならずに自営業に拘ったり、中々父親の呪縛から解かれないボーレガード。 嫁からしたらお前、ええ加減にせえよ!状態ですが、ここがまたかっこいいんですよね。ダスターは売ったらいかん! 昔の血が騒ぎハンドルを握って「飛ぶときだ」と呟くボーレガードに車なのに飛ぶって表現するんだ、と痺れておりましたら本当に飛んでしまった。 こちらもアドレナリン大放出でしたが、文章でアメリカ産のカーチェイスを読むのがこんなに楽しいとは!!私も飛んでみたい!藤原とうふ店のように溝落としとかしてみたい!(実際はチキンなので超絶安全運転な私) しかしこの仕事が後々に家族を巻き込む大変な事件へと発展していまいます。 前も思いましたが内容がスッキリと分かりやすく、翻訳本に慣れていない方でもあっという間に読み終えてしまえると思います。相変わらず『クソ車』という表現には笑ってしまいますが、その『クソ車』がこんなにかっこよく走ってしまったらもう、「V6!V6!」と心の中で叫んでしまうわけです。(ボーレガードが積んでいるのはV6エンジンなのです) 初っ端のドッグレース以降、中盤までは丁寧にボーレガードおじ様の家族の事などを書いてくれているので一旦熱狂はお預けなのですが、仕事に着手する中盤からその後の後始末にかけてタイヤがアスファルトに擦れる匂いがしてきそうな勢いでテンションが上がります。 その裏では悲しい事件もいくつか起こってしまいますが、果たしてボーレガードは家族を守る一般人に戻れるのか、それともアンソニーの影を追ってしまうのか…。 ハリウッド映画みたいな本をお探しなら、こちらと同作者の次の作品『頬に哀しみを刻め』セットでお勧めです。 前のバイト先の店長がマツダセブンに乗っていたので乗せて貰えば良かったと心から後悔している私が1番好きな車はプジョーです。(完全にTAXiの影響)
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古き良きアメリカ映画のような一冊でした はい、宝島社が毎年発表しているこのミステリーがすごい!ランキング2024の海外編1位に『頬に哀しみを刻め』が選ばれましたね ということで、S・A・コスビーの『黒き荒野の果て』を読んでみました 『頬に哀しみを刻め』のほうは既読です めちゃ...
古き良きアメリカ映画のような一冊でした はい、宝島社が毎年発表しているこのミステリーがすごい!ランキング2024の海外編1位に『頬に哀しみを刻め』が選ばれましたね ということで、S・A・コスビーの『黒き荒野の果て』を読んでみました 『頬に哀しみを刻め』のほうは既読です めちゃくちゃ面白かったんですが、「このミス」1位はアンソニー・ホロヴィッツの『ナイフをひねれば』と予想してたんですよね なんとなく「このミス」って王道というか正道のミステリーが1位になるイメージがあって、それに対抗するわけではないのかもしれませんが、他のミステリーランキングがちょっと変化球で攻めてくることが多いみたいな 『頬に哀しみを刻め』はだいぶ変化球な気がしたんでね そしてもう一つ今回のこのミスで触れておきたいのは本作の訳者でもある加賀山卓郎さんね なんと3位にランクインした『処刑台広場の女』も加賀山卓郎さん訳なのよ ひとりで2冊ランクインですよ、すげー そして加賀山卓郎さんにも変化球のイメージがあるんよね はい『黒き荒野の果て』に戻りますね こちらは逆にめちゃくちゃ王道!王道のクライムノベルでした そしてほんと映画みたい、構成が もちろん読みどころは激しいカーアクションなんですが、ちゃんと最初に軽いのがきて、真ん中で激しく魅せて、最後に締めるというめちゃくちゃオーソドックスな配置 でも王道好きとしては、それが良いのよね〜 よし!『処刑台広場の女』も読むぞ!
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激しいカースタントを文章だけで表現するのはすごかった。単純なストーリーだが、凄まじい描写の嵐。圧巻の犯罪エンターテイメント小説だった。
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エンタメ小説を読みたいなと思って以前にチェックしていた本作を読んだ。アメリカの近代ノワールとしてめちゃくちゃオモシロかった。こんなん即映画化されるだろうなと思いながら読んでたら、やはり映画化されるらしい。ここまでハードな環境ではないとはいえ、父となった今ではファーザーフッドについて考えさせられる作品でもあった。 訳者あとがきにもあったように物語の大筋は非常にベタ。しがない自動車整備工場を営む男が元裏社会の人間で、凄腕ドライバー。足を洗ったつもりだったが、そうは問屋が卸さないということでしがらみ、暴力の渦に飲み込まれていくというもの。どこにでもありそうな話なだけど、本著が特別なのは南部のアフリカンアメリカンが主人公であること、あとは著者のとんでもない描写力と細かい設定の巧さ。アフリカンアメリカンが直面している過酷な現実が細かく描写されており、そのストラグルの過程でとんでもない量の血が流れるところが圧巻。主人公が最初から無敵過ぎる問題はあるとはいえ、自身以外の身に降りかかる不幸の量もハンパじゃない。ゆえに見どころが途切れなく続き、最後の方は飲み食いも差し置いて読み耽っていた。またカーアクションの描写がとてもスリリングだし、思いも寄らない設定もあいまって楽しんだ。もう一作、同じ著者で翻訳されたものがあるので読みたい。
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裏社会から足を洗って2年、自動車整備工場を経営するボーレガード。 近所に出来た別の店との価格競争に勝てず、仕事が急激に減り、資金は底を付く間近。 右に出る者のいない走り屋としての己の腕を頼りに、なけなしの財産をはたいて賭けレースに出向くも、警察の取り締まりに合い財産没収。 ペテンであることを見抜くが、時すでに遅し。 全額を取り戻すことはできず、取り戻せたのは誇りばかり。 整備工場の家賃ばかりか子ども達の生活に関わる出費、さらには保険の手違いにより母親を預ける施設の代金が大きく請求されることに。 こののっぴきらない状況の中で取りうる策は、そう、裏社会への復帰。 そこにタイムリーに舞い込む、宝石店からのダイヤモンド強奪計画の誘い。 話を持ち込んできた因縁の相手ロニーの無計画性や胡散臭さ、ロニーの仕事仲間クアンのはりぼての威勢の良さに辟易としながらも背に腹は変えられないと、ボーレガードは計画に手を染めていく。 が、そこで狙った金品のせいで思いもよらぬギャングの抗争に巻き込まれていく。 デイヴィット・ゴードンの『用心棒』とかジョーダン・ハーパー『拳銃使いの娘』を彷彿とさせる、怒らせちゃいけない人を怒らせちゃった系の物語。 思っていたよりアクション寄り。 ボーレガードの抜け目なさや、走り屋としての腕の良さ、車を愛する気持ちがとても魅力的ではあるけれど、やっぱりこういうのは映像向きかなぁと。 それと、ボーレガード自身も「呪い」とまで評するように、無情なまでに暴力で解決していく展開がちょっと辛いところあり。 そんな綺麗ごと言ってられないのはわかるし、そういう展開が逆に感情の昂りを与えてくれる面もあるのだけれど。 邦訳2作目の『頬に哀しみを刻め』は本作とは全く関係ないらしいけど、本作シリーズ化する気はないのかな。 失踪した父との清算やら、運命的な巡り合わせとなってしまった母子との関係やら、なんか宙ぶらりんな点も数々。 いろんな起点から続編書けそうなんだよな。 未訳の次作「All the Sinners Bleed」もなんか違う話っぽいし、謎。
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初のSAコスビー。 二月に2作目が発売されるため、まずは去年出た今作を。 ヤバい仕事から手を洗った男が、止むに止まれず再び手を染める。そこから転がり落ちていき、大切な家族にまで危機が。 アメリカンノワールのお手本のような作品。シンプルなストーリーだけどここまで読ませるのは、主人公のバグや敵のキャラがものすごく立っているからだと思う。かっこいい台詞回しも多い。 カーチェイスのシーンが本当に良くて、映像が目に浮かぶ。正直昔のアメ車は全部同じに見えるけど、ダスターのかっこよさはわかった笑 2作目も楽しみ。
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昔、アングラな走り屋だった男が自動車修理工場に務めるが、ギャングとの抗争に巻き込まれる話 多分やけど、ブレイキング・バッドにかなり影響受けてそう。実際名前も出てくるし。
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家族を守るために出来ることは何ですか? 米国南部の街で生き抜くクライムミステリー #黒き荒野の果て ■人生のつらい現実 環境が人生を決める。こういうつらい現実を実感するのは私が20代後半に差し掛かった頃だったでしょうか。 若い時代は夢と希望があれば、どんなに貧乏でも幸せなもの...
家族を守るために出来ることは何ですか? 米国南部の街で生き抜くクライムミステリー #黒き荒野の果て ■人生のつらい現実 環境が人生を決める。こういうつらい現実を実感するのは私が20代後半に差し掛かった頃だったでしょうか。 若い時代は夢と希望があれば、どんなに貧乏でも幸せなものでした。 しかし気が付くといつの間にか大人のしがらみの中で生活をしなければならず、毎月の支払いのために自分のやりたかったことがができてないと気がつく。守るものができた時、生き抜くためにどんな厳しい運命が待っているのか。 ■家族を守るために 本書は自動車整備工場を営む主人公が、アメリカ南部の決して裕福ではない街で生き抜く物語。 彼はなんとか生活をやり繰りするも、愛すべき家族と友人に囲まれて暮らしていた。彼の強みは自動車の運転技術と腕っぷし、そして頭の良さ。賭けレースで日銭を稼ぎ、力と頭脳で冷酷な環境を日々を乗り越えていく。 しかしある日、自宅に招かれざる客が訪ねてくる。 かつての後ろ暗い仕事仲間で、ろくな結果が期待できない儲け話を持ってきたのだ。主人公は大切な人を守るために、嫌々ながらも仕事を受けなければならなかった。 ストーリーとしてはかなりシンプルで超骨太。主人公はお金のために様々なものを犠牲にしながら、図らずも裏社会で暗躍していく、いわゆるノワール、クライムミステリーです。 家族、友人、自分の工場は、何より大切で守らなければならない。暴力と比較して描写される彼の純真な想いがあまりに痛烈で、読者の胸が抉られていきます。 そして彼のことを大好きな登場人物たち。妻、可愛い子供たち、友人、おじさん。主人公の良いところも悪いところも、悩みも考えも全部知っている。 彼の対する深い愛情が描写され、それでも悪事に手を染めなければならない主人公への同情と葛藤シーンが読んでいてあまりに辛い。 そして罪深いのは愛車ダスター。いってしまえば単なる一台の自動車です。 主人公とダスターは、愛情としがらみにまみれながら作中いつも一緒に行動する。しかし主人公が最後にどういうことを悟り、結論をだしていくのか。本書一番の読みどころでした。 ■幸せとは何か 東京大学に合格する親の世帯年収は、6割以上が年収950万円以上だそうです。 親の年収が低いと子供は不幸なんでしょうか。データとしてはその確率は高いといえるのでしょう。環境によってある程度、幸せの度合いを決められてしまうのは事実です。 しかし本書の主人公は、最低の環境でも妻や子供たちを精一杯しあわせにするために行動している。生きるためにお金を稼いだり、教育や経済の正当性、黒人としての生き方を教えたり、そしてなによりいつも一緒にいてあげる。 データも環境もお金も確かに大切ではあるのですが、ここまで自身を犠牲にして家族に愛情を注げるのは、どれだけ素敵なことでしょうか。 生きていく中で一番大切なことは何かを教えてもらえた、素晴らしい一冊でした。
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米国南部の町で自動車修理工場を営むボーレガード。裏社会で語り継がれる伝説のドライバーだった彼は、足を洗い家族とまっとうに暮らしていた。 だが工場の経営が傾きだしたことで運命の歯車は再び狂い始める。 金策に奔走するボーレガードに昔の仲間が持ちかけてきたのは宝石店強盗の運転役。そ...
米国南部の町で自動車修理工場を営むボーレガード。裏社会で語り継がれる伝説のドライバーだった彼は、足を洗い家族とまっとうに暮らしていた。 だが工場の経営が傾きだしたことで運命の歯車は再び狂い始める。 金策に奔走するボーレガードに昔の仲間が持ちかけてきたのは宝石店強盗の運転役。それは家族を守るための最後の仕事になるはずだった。ギャングの抗争に巻き込まれるまでは――。 ありがちなシチュエーションだが、カーチェイスの描写で読ませます。
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CL 2022.9.10-2022.9.12 アメリカンノワール。 犯罪から足を洗ってまっとうに暮らしていると言っても、暴力的なところは微塵も変わってないようだから、いくら家族を愛していても結局こうなる運命だったんじゃないかな。 遺伝による暴力的傾向か。 犯罪者の連鎖。アンソニー...
CL 2022.9.10-2022.9.12 アメリカンノワール。 犯罪から足を洗ってまっとうに暮らしていると言っても、暴力的なところは微塵も変わってないようだから、いくら家族を愛していても結局こうなる運命だったんじゃないかな。 遺伝による暴力的傾向か。 犯罪者の連鎖。アンソニーからボーレガードへ。ボーレガードからジャヴォンへ。 犯罪小説をカッコいい、面白いと思えなくなったのは年取ったからかな。
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