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悪い言語哲学入門 の商品レビュー

3.6

22件のお客様レビュー

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2024/08/30

友人の本棚にあったので読了。 「なぜ悪口は悪いのか」という視点から言語哲学について考える本であり内容も知っていて損はないことばかりでとても面白かった。読了感が誰かにディスられた時、「そもそもなんで自分は言われた言葉に腹を立てているのか」と変に冷静になった時の思考を更に拡張させたよ...

友人の本棚にあったので読了。 「なぜ悪口は悪いのか」という視点から言語哲学について考える本であり内容も知っていて損はないことばかりでとても面白かった。読了感が誰かにディスられた時、「そもそもなんで自分は言われた言葉に腹を立てているのか」と変に冷静になった時の思考を更に拡張させたような感覚に近く、言われたことの問題は解決せずとも自分の中で何かが勝手に納得する時のようで意味不明だがスッキリした。

Posted byブクログ

2024/07/27

悪口を例にした言語哲学の入門。 「なぜ悪口は悪いのか?」 「そしてときどき悪くないのか?」 「どうしてあれがよくてこれがダメなのか?」 こうした問い、ある表現や言葉が悪くなったり悪くなくなったりする原理を、言語哲学の概念を使いながら解き明かしてくれる。(あまりよいことではない...

悪口を例にした言語哲学の入門。 「なぜ悪口は悪いのか?」 「そしてときどき悪くないのか?」 「どうしてあれがよくてこれがダメなのか?」 こうした問い、ある表現や言葉が悪くなったり悪くなくなったりする原理を、言語哲学の概念を使いながら解き明かしてくれる。(あまりよいことではないが)悪口は、軽いものから重いものまで、身の周りに溢れているので、実感を持って難しい哲学的な概念についても理解することができるし、そうした概念を通して身の周りの悪口についての理解も深まるので、とても面白い。より専門的に勉強したい人向けに、巻末にブックガイドもある。 おわりにまとめてある「あるべきでない序列関係・上下関係を作り出したり、維持したりするから」悪口は悪いのだという結論が、個人的にはすっきりとして納得のいく答えだった。 つい先日、中学生の女の子が「顔面土砂崩れ」というあだ名をつけられたのだが、本人的には嫌ではないから別にいいと言っていたことを読んでいて思い出した。よく「いじり」と「いじめ」の境目は何かといった話があるが、こうしたときに、本人が良ければいいじゃないかという意見は、よく見かけるように思う。「顔面土砂崩れ」と呼ばれた彼女も、自分はいいと言っているが、この本のまとめから考えると、やっぱりだめなんじゃないかと思う。 著者の結論から言えば、彼女が、それを自分は別に気にしないからという理由で認めてしまえば、そこに「あるべきでない序列関係」がおそらく生まれる。だから、これは「悪い」のだと言える。 たとえ彼女がよかったとしても、それを許してくれる女の子が一人いたということが、言ってもいいことなんだという事例を作ってしまう。この本7章と8章では、名詞化とヘイトスピーチがテーマになっているが、やがて、そうした事例は、クラスの中で「女の子」という集団を下に見ていいという雰囲気を作りかねないのかもしれない。 あだ名や悪口は、ただ単純に本人の気持ちの問題ではなく、やはり、口にされた言葉が何をもたらすのかから評価されなくてはいけないということを改めて思った。 著者も言っていることだけれども、言語哲学という分野に興味のある人が入門するための本としても、もっと直接的に「悪口」と呼ばれる表現にモヤモヤを持っている人が「悪口」について考えるきっかけにする本としても読める。そして、ここで言われている問題は、上の自分の体験のように、誰にとっても心当たりのある、切実な問題なのではないかと思う。 そんな言葉の問題について一度でも切実に考えようと思う人には、十分おすすめできるいい本だった。

Posted byブクログ

2023/10/10

第8章のヘイトスピーチに関する議論をするため、それまでの章で言語哲学的道具立てを整えている。そんな作りの本。第3-4章辺りがややハード。言語学を学ぶモチベーションのある学生さんには良い本かもしれない。第8章については、なるほどと思った。

Posted byブクログ

2023/09/17

悪口、嘘、ヘイトスピーチなどの「悪い」言語使用に焦点を当てた言語哲学入門。 挑戦的で面白い試みだと思ったが、読み終えて、言語哲学の入門書としても、悪口やヘイトスピーチなど「悪い」言語使用の分析としても、ちょっと中途半端だったかなという印象を否めなかった。個々の記述には興味深いもの...

悪口、嘘、ヘイトスピーチなどの「悪い」言語使用に焦点を当てた言語哲学入門。 挑戦的で面白い試みだと思ったが、読み終えて、言語哲学の入門書としても、悪口やヘイトスピーチなど「悪い」言語使用の分析としても、ちょっと中途半端だったかなという印象を否めなかった。個々の記述には興味深いものが少なくなく、特に、悪口やヘイトスピーチの本質は自分より低くランクづけをすることという本書の指摘には納得感があった。

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2023/07/16

本書の主題は、「悪口はなぜ悪いのか」と「どうして場合によるのか」ということである。本格的な議論の道具立ての導入も丁寧だし、語口調も面白い。それでも、難解な部分が残るのは、言語に関わる行為を真正面から捉えることの難しさが関わっているのだろう。逆に言えば、本書が随分とハードルを下げて...

本書の主題は、「悪口はなぜ悪いのか」と「どうして場合によるのか」ということである。本格的な議論の道具立ての導入も丁寧だし、語口調も面白い。それでも、難解な部分が残るのは、言語に関わる行為を真正面から捉えることの難しさが関わっているのだろう。逆に言えば、本書が随分とハードルを下げてくれている部分は多いので、語用論の良い入門書でもあると思う。 第7章の総称文については、主語の大きさ問題を考える上では興味深いし、第8章のヘイトスピーチも現代的な問題として重要。これら終盤の2章までしっかり読んで欲しい。

Posted byブクログ

2022/08/20
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※このレビューにはネタバレを含みます

虫や獣に例える悪口はランクづけのために行うというのはなるほどなぁと思った タイトル自体がいろいろ分岐できるようにしてあるのは面白い

Posted byブクログ

2022/07/13

「悪口の分類」「総称文はすごい」など部分的には興味深く読める章もあったが、全体構造が掴みにくかった。言語哲学や意味論入門のきっかけとしては良いのではないか。

Posted byブクログ

2022/07/09

あだな、悪口、嘘、ヘイトスピーチ。 こういった邪悪な言語使用がもとで命を落とす人もいる。 本書はそれらに立ち向かうためにまずはどのように理論的に分析されるのかを解いていく。 新書としては貴重な本だと思う。 前半は、分析のために使用する言語学、言語哲学の概念が紹介される。 タイプ...

あだな、悪口、嘘、ヘイトスピーチ。 こういった邪悪な言語使用がもとで命を落とす人もいる。 本書はそれらに立ち向かうためにまずはどのように理論的に分析されるのかを解いていく。 新書としては貴重な本だと思う。 前半は、分析のために使用する言語学、言語哲学の概念が紹介される。 タイプとトークン。 意味はどこに存在するか。 意味の機能的側面(真理条件的内容、前提的内容、使用条件的内容、会話の含み)。 確定記述。 言語行為論(発語行為/発語内行為/発語媒介行為)。 扱われている概念の広がりを見ると、なるほど、本書が「入門書」を名乗ることがわかる。 筆者によるとヘイトスピーチは、権力を持った者がある集団を不当に低くランク付けするところに問題の根源があるという。 そして、「ヘイトスピーチ」という語の用法に、単に憎悪を表現したものと矮小化したものがあるとも指摘されていた。 この問題について、自分がいかに考えていなかったのか気づかされる。 とはいえ、上に列記したような概念を、一応頭に入れて読み進めることになる。 例をたくさん挙げ、語り口も少しくだけているので、読みやすいと言えば読みやすいけれど、やはりある程度下地がないと、ちょっと厳しい。 総称文のところを読んでいて、以前読みかけて放り出している飯田隆『日本語の論理』が何を問題にしようとしていたか、ちょっとだけわかった。 この本を手掛かりに、積読状態になっていた本が読めるようになるかもしれない。

Posted byブクログ

2022/06/08

「『悪い言語』哲学入門」であり「悪い(=あくまで正統的でない、という意味で)『言語哲学入門』」でもある本。 言語哲学については、言語行為論をはじめいくつか目を通したことがあったが、それら、「言語哲学」の中でいくつか出てくる理論(けして奇をてらったものではなく、言語哲学のなかではか...

「『悪い言語』哲学入門」であり「悪い(=あくまで正統的でない、という意味で)『言語哲学入門』」でもある本。 言語哲学については、言語行為論をはじめいくつか目を通したことがあったが、それら、「言語哲学」の中でいくつか出てくる理論(けして奇をてらったものではなく、言語哲学のなかではかなりベーシックなものだ)を総ざらいしつつ、それらの理論が「ヘイトスピーチ」など、現代社会における発言・言語をめぐる問題にいかにインパクトをもたらすかまで論じられており、単純に面白い。「言語を哲学する」という営為が、たしかに、私たちの日常を変え、社会問題を考える際の切り口を提供することを実感させてくれる本。 そして個人的には、言語哲学における固有名論争を理解するさいに、『とってもラッキーマン』の知識が非常に有用だということを示してくださった点が、素晴らしいと思いました。

Posted byブクログ

2022/06/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

言語哲学を通してヘイトスピーチがなぜ悪いのかを説く本。 言語哲学の話と悪口の話をしながらヘイトスピーチの問題に収斂していく。 言語哲学なら言語哲学、罵詈雑言なら罵詈雑言の本、ヘイトスピーチならそのヘイトスピーチの現象や経緯と焦点を絞って一冊にしてくれたらわかりやすかったと思う。 言語哲学が専門なせいでしょうが、悪口の分析のあと、言語の話になり、そしてヘイトスピーチの話になり、あまり展開に一貫性がないように感じられました。  それでも1章、1章独立して読めばそれなりに面白い話ではありました。  ヘイトスピーチはよくないと私も思いますが、ヘイトスピーチをおこなう人はそれなりにヘイトスピーチをするに至った悲しい社会的抑圧を感じているのだと想像しています。その抑圧をいかに取り除くかあるいは抑圧と共存しながらヘイトスピーチをしないようにどうもっていくか社会的課題としてわたしたちに突きつけられていると思っています。  その考えると、言語運用上ヘイトスピーチは社会的に害だと分析されても、問題の解決には遠いようにか思うのです。  数学の勉強はそこそこしてきましたがフレーゲは知りませんでした。

Posted byブクログ