悪い言語哲学入門 の商品レビュー
「『悪い言語』哲学入門」であり「悪い(=あくまで正統的でない、という意味で)『言語哲学入門』」でもある本。 言語哲学については、言語行為論をはじめいくつか目を通したことがあったが、それら、「言語哲学」の中でいくつか出てくる理論(けして奇をてらったものではなく、言語哲学のなかではか...
「『悪い言語』哲学入門」であり「悪い(=あくまで正統的でない、という意味で)『言語哲学入門』」でもある本。 言語哲学については、言語行為論をはじめいくつか目を通したことがあったが、それら、「言語哲学」の中でいくつか出てくる理論(けして奇をてらったものではなく、言語哲学のなかではかなりベーシックなものだ)を総ざらいしつつ、それらの理論が「ヘイトスピーチ」など、現代社会における発言・言語をめぐる問題にいかにインパクトをもたらすかまで論じられており、単純に面白い。「言語を哲学する」という営為が、たしかに、私たちの日常を変え、社会問題を考える際の切り口を提供することを実感させてくれる本。 そして個人的には、言語哲学における固有名論争を理解するさいに、『とってもラッキーマン』の知識が非常に有用だということを示してくださった点が、素晴らしいと思いました。
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※このレビューにはネタバレを含みます
言語哲学を通してヘイトスピーチがなぜ悪いのかを説く本。 言語哲学の話と悪口の話をしながらヘイトスピーチの問題に収斂していく。 言語哲学なら言語哲学、罵詈雑言なら罵詈雑言の本、ヘイトスピーチならそのヘイトスピーチの現象や経緯と焦点を絞って一冊にしてくれたらわかりやすかったと思う。 言語哲学が専門なせいでしょうが、悪口の分析のあと、言語の話になり、そしてヘイトスピーチの話になり、あまり展開に一貫性がないように感じられました。 それでも1章、1章独立して読めばそれなりに面白い話ではありました。 ヘイトスピーチはよくないと私も思いますが、ヘイトスピーチをおこなう人はそれなりにヘイトスピーチをするに至った悲しい社会的抑圧を感じているのだと想像しています。その抑圧をいかに取り除くかあるいは抑圧と共存しながらヘイトスピーチをしないようにどうもっていくか社会的課題としてわたしたちに突きつけられていると思っています。 その考えると、言語運用上ヘイトスピーチは社会的に害だと分析されても、問題の解決には遠いようにか思うのです。 数学の勉強はそこそこしてきましたがフレーゲは知りませんでした。
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タイトルに惹かれて読みました。「悪口」という言語について考えることによって、「言語」について知識や世界の成り立ち(哲学的関心)にまで踏み込んでいる本。この本を読んで、言語を使うことと、「言語」を理解しすることは全く違うものだということがよくわかりました。誰かを罵るという言語行為の...
タイトルに惹かれて読みました。「悪口」という言語について考えることによって、「言語」について知識や世界の成り立ち(哲学的関心)にまで踏み込んでいる本。この本を読んで、言語を使うことと、「言語」を理解しすることは全く違うものだということがよくわかりました。誰かを罵るという言語行為の中心的機能は、その人物を自分より低くランク付けすること。そしてランキングの存在は暴力や差別の「正当化」に繋がる。もしある単語が、社会構造と結びつくとこにより、差別的含意を持っているのならば、差別的単語を使用した時点で、差別的な構造の維持に貢献していることになる。やや難しいところもありましたが、何が「悪口」でどういう時に人を傷つけるのかがよくわかりました。より詳しく知りたい人向けに巻末にブックリストも掲載。
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入門書には2種類あって、浅く広くか、特定の分野について取り上げるか、のどちらかである。本書は悪口という切り口を掲げながら浅く広くというとても中途半端な構成になっている。鎌倉時代や中世騎士を例に取りながら、人は全て平等という西欧近代に特殊な価値観を前提に悪口を分析してしまうのは著者...
入門書には2種類あって、浅く広くか、特定の分野について取り上げるか、のどちらかである。本書は悪口という切り口を掲げながら浅く広くというとても中途半端な構成になっている。鎌倉時代や中世騎士を例に取りながら、人は全て平等という西欧近代に特殊な価値観を前提に悪口を分析してしまうのは著者の歴史に関する関心の薄さか紙幅の不足かいずれにしてもあまりに議論が狭く浅く消化不良である。
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「悪口」について考えることを通して言語哲学に触れようと いう本。発想はいいと思うし面白い本であるのは確かなの だが、途中完全に「悪い」が抜けた「言語哲学入門」に なっている気がする。そこがやや難しく損しているのでは ないかな。言葉ほど自由で言葉ほど不自由なものはない。
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悪口は人を傷つけ、また、人にも嫌われる。これだけで悪口を言わない理由としては十分だと思う。 ただ、それだけではなく、悪口には、真偽とは関係なく相手のランクをさげることに繋がると。なるほど、その通りだと思った。言葉には公共性があり、行為としての責任も伴うとは思っていたが。
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「悪い」言語「哲学」。それはまたどういうことだろう?タイトルにひかれて読んだら、とても興味深い内容で、日頃モヤモヤしていることの霧が晴れた気がした。 恥ずかしながら、言語哲学という学問分野があることを、これまで知らなかった。筆者は「言語のダークサイドに立ち向かう際に、言語哲学が...
「悪い」言語「哲学」。それはまたどういうことだろう?タイトルにひかれて読んだら、とても興味深い内容で、日頃モヤモヤしていることの霧が晴れた気がした。 恥ずかしながら、言語哲学という学問分野があることを、これまで知らなかった。筆者は「言語のダークサイドに立ち向かう際に、言語哲学が必ず役に立ちます」と言う。言語学は「こうなっている」と事実関係を明らかにするが、そこに、歴史的にものごとの善悪について考えるための道具を提供してきた哲学をプラスすることで、「これはよくない」「こうすべきだ」というような、価値についての判断にまで到達することができるのだ、と。なるほど~。 具体的に取り上げられているのは、悪口や嘘、デカイ主語、ヘイトスピーチなど。どれも切り口が新鮮で、とても面白かった。「入門」とある通り、学問的探求の入口を示す程度にとどめてあるので読みやすく、同時に、重ねられてきた研究の成果としての信頼感があると思った。以下は覚え書き。 ・ことばの評価はタイプ単位ではなく、トークン単位で行うべきもの。どんな場で、どんな文脈で使われたかで、同じことばが違う意味を持つ。 ・「言語行為」という考え方。あることを言うことそのものが行為である。「○○とは言ったけどからかったりしていない」という言い訳はできない。 ・「ことばは情報伝達の道具」という考え方の誤り。誹謗中傷をしながら「本当のことを言っているだけ」という場合、単に情報(本当のこと)を伝えたいだけではないはずで、これも言語行為。 ・悪口や不適切な発言があったとき、単にどの表現タイプを使った、使ってないということだけに注意をそらされてはいけない。また、「どういうつもりだったか」という答えの出しようのない問いは煙幕となる。 ・総称文(「男は~だ」「日本人は~だ」)は、単に「そうでない人もいるからよくない」のではなく、その集団が「本質的に」その性質を備えていると主張し、ステレオタイプや偏見を表明している可能性があるから、そのことに自覚的になるべき。 ・哲学者のミルによる言論の自由擁護の論証では、真か偽となる「意見」を提示する自由が擁護される。意見の提示ではない加害行為を、言論と見なして擁護する必要はない。 ・哲学者のヒラリー・パトナムの言葉。「ことばを一種の道具と見なすとしても、それがハンマーやねじ回しのような一人で使う道具ばかりでなく、複数の人間が関わる蒸気船のようなものである可能性も考慮しなければならない」 ・敬語などが持つ含意を私たちは自由に決められない。差別的語彙が持つ含意も、私たちは自由に決められない。 「差別的発言が、同列に位置づけられるべき集団を低くランクづけするような効果を持つならば、それは話者の意図と無関係に何らかの制裁の対象となるべきでしょう。本当のところは、深層心理では、差別的意識がないとかあるとか、そういったことは、表現の公共的使用とは無関係なのです」 ・「ヘイトスピーチの可能な規制や、人権を侵害する言語使用を批判するとき、私たちは蒸気船やタンカーの造船技術・運行規制・免許制度などについて話をしているわけです。『タンカーの操縦に規則なんかいらない、大事なのは安全に運転しようとするそれぞれの意識だ。ほっといてくれ』などと言われて納得する人はいないでしょう。ところが、言語については、『ことばよりも個人の意識が大事だ』のような見解がしばしば提示されます。少なくとも、私たちは、言語がときとして、大事故を引き起こすタンカーや航空機のように、人を傷つけ、社会を壊すことがあることを忘れてはならないでしょう」 以前テレビで、民族学校に街宣車が乗りつけ、「○○を叩き出せ!」「○○を殺せ!」と大音量で叫び、学校のなかにいた子どもたちが「怖い-」と泣いてるのを見た。憤りで体が震えた(本当に)。このとき以来、「ヘイトスピーチ」は「ヘイト」でも「スピーチ」でもないと思っている。恫喝や脅迫は犯罪だし、あれは絶対に「スピーチ」なんてものではない。「言論」が尊重されるのは権力に対するときであり、「何を言ってもいい」わけではない。本書のような論考はとても大事だと思うけど、現実には、そんなもの屁とも思わない人たちがたくさんいることを思うと、もどかしくてたまらなくなる。
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悪口とはなんなのか?に興味を持ち読み始める。また事実だから言っても良い論法の人に出会ったため、上手く何故それが悪いかを説明するためのヒントが無いか探そうという目的での読書。 図があるともっと入りやすかったかも… 読み終えた感想 「ヤツの尻尾を掴んだぞ!」 例や説明に使うモノが古...
悪口とはなんなのか?に興味を持ち読み始める。また事実だから言っても良い論法の人に出会ったため、上手く何故それが悪いかを説明するためのヒントが無いか探そうという目的での読書。 図があるともっと入りやすかったかも… 読み終えた感想 「ヤツの尻尾を掴んだぞ!」 例や説明に使うモノが古く(結構重要な役割を持つラッキーマンはまだいいけど横山ホットブラザーズはちょっと…)著者のプロフィールを見て納得、自分よりちょい上の方でした。 それも含めて面白かった。 読み終えたけど、再度要素だけ抜き出して図示しておくことにする。
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面白い!けど眠くなるw 本来平等であるはずの人間にランクをつけてモノを言う事が悪口。言葉はタンカーのように大きなもの、個人の意図や感覚で好き勝手されたらみんなに迷惑。この2点すっきりした
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帯に書いてある、「どこまでがセーフで、どこからがダメなのか」ということに興味を持ち、久しぶりに衝動買いをした。入門編というタイトルの割に、私にとっては少し難解に感じ、理解できたかというと自信はない。言葉というのは、捉えることが難しく、AIでもなかなか追いついて来られない領域ではあ...
帯に書いてある、「どこまでがセーフで、どこからがダメなのか」ということに興味を持ち、久しぶりに衝動買いをした。入門編というタイトルの割に、私にとっては少し難解に感じ、理解できたかというと自信はない。言葉というのは、捉えることが難しく、AIでもなかなか追いついて来られない領域ではあると思うが、素人ながら、ここまで深く考える必要があるのかと疑問に思った。
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