タイムマシンに乗れないぼくたち の商品レビュー
「コードネームは保留」「タイムマシンに乗れないぼくたち」「口笛」 「夢の女」「深く息を吸って、」「灯台」「対岸の叔父」 7話収録の短編集。 大きな出来事が起こるわけではない。 登場人物は特別な人ではなく、私達のすぐそばにいそうな人達ばかり。 皆それなりに日々を過ごしているけれ...
「コードネームは保留」「タイムマシンに乗れないぼくたち」「口笛」 「夢の女」「深く息を吸って、」「灯台」「対岸の叔父」 7話収録の短編集。 大きな出来事が起こるわけではない。 登場人物は特別な人ではなく、私達のすぐそばにいそうな人達ばかり。 皆それなりに日々を過ごしているけれど、行間からは孤独感や寂しさが伝わって来る。 人には説明しづらい、もやもやっとした気持ちを、優しく掬い上げて、フワっと浄化してくれる様な繊細で温かい物語だ。 不器用にしか生きられない人、生き辛さを抱えている人にそっと寄り添ってくれる心の処方箋小説。
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ちょっとこじらせた人たちの話。 人は他人と生きてるから、全てがうまく行くわけじゃなく、折り合いをつけれる場面も、つけれない場面もあって、それでも自分の世界を大切にできる人は強いし、そうやって生きて行かなきゃね、と思った。 よい人に囲まれて、幸せに暮らせたら感謝。
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短編集ということで物足りないかと思いきや、余韻を残すのも悪くないと思えました。 「深く息を吸って、」 スタンド・バイ・ミー、そしてリバー・フェニックス。 10代の頃夢中になっていたので、なんだかうれしい。 いろいろな人の思いに気づくことができる一冊。
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短編集。なんとなく生きづらさのような気持ちを抱いている人たち。最後は、ポッと明かりが灯るような終わり方だった。
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多様な生き方をしてもいいんじゃないかと背中を押してくれる話ばかり。自由そうに見えて不自由な登場人物。まさに隣の芝は青い。 結婚至上主義に疑問を呈するように見えて、結婚したことでできる人の繋がりも描くことで、多様性が深掘りされる。
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タイトル:コードネームは保留 p40 「同じ空間にいても互いの実態すら知り得ない。私達は星と星みたいに遠い。けれどもお互いがそこにいると知っていれば、それで十分だ。こんな風にときどき交信できたらなおいい。」 自分を役にあてはめる事で独りという現実から逃れようとしている寂しい主人...
タイトル:コードネームは保留 p40 「同じ空間にいても互いの実態すら知り得ない。私達は星と星みたいに遠い。けれどもお互いがそこにいると知っていれば、それで十分だ。こんな風にときどき交信できたらなおいい。」 自分を役にあてはめる事で独りという現実から逃れようとしている寂しい主人公。 反対に同じ会社で働く「古川さん」は主人公から見ると「看板娘」という輝いたイメージだったが、ひょんなことから相手も同じく主人公を羨んでいたことが分かる。 みんな、自分と戦っていて自分を嫌いになって人を羨んで… 自分だけが一人ではなく、皆一人。自分を幸せに出来るのは自分しかいない、と思いました。 タイトル:「口笛」 p96 「自分にも、瑠璃香さんにも、美姫にも母にも、井上さんにも、おそらくはあの信田よし江にもそれぞれの苦しみがあり、痛みがあり、喜びや願いがある。」 「しあわせとやらが一種類ではないことくらい、私たちはもうちゃんと知っているはずだ。それなのに私たちは「女」のしあわせから離れていく者に「どうして」「どうして」と問いかけてしまう。」 人の幸せに口突っ込むよりも自分の幸せについて考えるべきなのだなと改めて感じた。自分が幸せと思う事が、他人には全然幸せな事ではないのかもしれない。(逆も同じ) 他人に「なぜ(こっちの方が良いのに)やらないの?どうしてそっちにしなかったの?」とか無神経に聞くの控えようと思った~。
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主人公は変な人が大きて、生きることに苦労しているのだけど、なんとか楽になる術を身につけようとしている。 「コードネームは保留」が特に良かった。設定があるだけで生きる意味を簡単に見出せた気がするのは、きっとライフハック。
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いくつかの短編があり、どれも一般的に考えられる普通、というものに馴染めない人々の話。 この作家さん、読むたびに、私はいまいち共感できないと思う。好きな人は、とっても好きだと思う。 コードネームは保留 とか。楽器店で働く優香は、“殺し屋”の設定で生きることでつまらない毎日を過ごそうとしていた… タイムマシンに乗れないぼくたち ぼくは、博物館が唯一落ち着く場所。先生のTシャツの恐竜をクラスメイトがティラノサウルス!といったところを別の恐竜だと指摘する。それはこれこれの理由だから…と発言する。
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個人的に刺さったフレーズとしては、 しあわせとやらが1種類ではないことぐらい、わたしたちはもうちゃんと知っているはずだ、 そうではないのか、と思いながら 〜 〜 それなのにわたしたちは、 「女の」しあわせから離れていく者に 「どうして」「どうして」問いかけてしまう。 ...
個人的に刺さったフレーズとしては、 しあわせとやらが1種類ではないことぐらい、わたしたちはもうちゃんと知っているはずだ、 そうではないのか、と思いながら 〜 〜 それなのにわたしたちは、 「女の」しあわせから離れていく者に 「どうして」「どうして」問いかけてしまう。 ・ ・ ある章では女の幸せ=結婚。 結婚しないのは何故??のような構図で書かれている。 この短編集では、そういった周りからの 「どうして」に立ち向かっていく話ではない。 あくまでも、人それぞれだよなーと 思える本なのかなと思いました。
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表題作を含む短編集。 これくらい短くても、「寺地さんの本だぁ~」というホッとする感じがある。 「深く息を吸って、」なんて、涙なくしては読めない。 何も事件は起きないけど、情報もない田舎(おそらく時代も平成10年代くらいかなと予想)で暮らす少女が、外国の映画(おそらくスタンド・バ...
表題作を含む短編集。 これくらい短くても、「寺地さんの本だぁ~」というホッとする感じがある。 「深く息を吸って、」なんて、涙なくしては読めない。 何も事件は起きないけど、情報もない田舎(おそらく時代も平成10年代くらいかなと予想)で暮らす少女が、外国の映画(おそらくスタンド・バイ・ミー)を見て、出演している俳優を好きになり、世界の広さだったりを少しだけ知るという、それだけの話なのだけど、とにかく泣ける。 自分とこの少女が重なる部分が多分にあるのだ。 勝手な妄想ですが、これは寺地さん(77年生まれ、佐賀県出身)が自分の少女時代をモデルに書いたものではないのだろうか?なんて思ってしまった。 私は常々思うんだけど、田舎の閉塞感とか、少ない情報や手段の中で欲しい物が手に入ったときの喜びとか、今の若い世代にはわからないんだろうな、と思う。 だから「深く息を吸って、」が刺さるのは、私のような携帯電話のない青春時代を過ごした地方の田舎出身者だけかもしれない。 でも、そういう人は、確実に、日本中にたくさん存在するんだよね。 大げさかもしれないけど、寺地さんにそんな自分の少女時代を見つけてもらったような・・・自分自身でもそんな時のことすっかり忘れていたくせに都合いいんだけど、そんな切ない気持ちになりました。 寺地さんの本は、やっぱり優しい。 すみっこで、ただ誠実に生きていこうとする人へのエール。 主役にはならない人を主役にして書いた物語、好きです。 寺地さん、もっと売れてほしいし、もっと多くの人に知って読んでほしい。 原田ひ香さんのようなマネー系とかグルメ系の「売れるタイトル」の小説書いても絶対に上手いと思うんだけど、御本人がそういうのは興味ないのかな。 そもそも、寺地さんの本のタイトルは売れ線狙ってないような。おそらく寺地さんの本の中で売れている部類であろう「水を縫う」だって、タイトルから本の内容がわかるものではないしさ。 寺地さん独自の広まり方というのが、「国語のテストに採用される」(これも多分水を縫うが多いのだろう)というもので、ちょっと教科書的なのかな。 テストに採用された結果、抜粋部分を読んだ受験生が「この本もっと読みたい」と思って若い読者が生まれるのは喜ばしいけど。 普段本は読まないとか、優等生じゃない人にも、読んでほしい作家さんだし、読んだら好きになる人がきっと多いはずだから、もっと知られてほしいんだよ。 寺地さんファンのぼやきでした。
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