ソ連兵へ差し出された娘たち の商品レビュー
岐阜県の山村から満州へ向かった開拓団。ソ連の侵攻、娘たちは兵士への「接待」を命ぜられる。現在も続く女性蔑視、長い戦後を丹念に取材した力作ノンフィクション。 時代だからと言って一言で片付けてしまうわけにはいかないだろう、隠れた歴史。 開拓団を守るため犠牲となった少女たち。それを...
岐阜県の山村から満州へ向かった開拓団。ソ連の侵攻、娘たちは兵士への「接待」を命ぜられる。現在も続く女性蔑視、長い戦後を丹念に取材した力作ノンフィクション。 時代だからと言って一言で片付けてしまうわけにはいかないだろう、隠れた歴史。 開拓団を守るため犠牲となった少女たち。それを利用する団幹部。帰国後も続く蔑視、差別。 松本清張の「赤いくじ」だったり黒澤明の「七人の侍」のエピソードは実際に多くの場所で起こっていた出来事だったことに衝撃を受ける。 本書の投げかけるテーマは実に重い。結局周囲の男たちが情けないという結論しかないのだが。武器なく抵抗できない場面では今後も起こりうる事態である。 社会から見捨てられた女性たちを描いたノンフィクションは実に哀しい内容でした。
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戦争だから、戦地の女性が酷い目に合うことは想像に難くない。しかし、この本が真に訴えたかったことは、その時あった悲惨な事象をあげつらうことではなく、そういうことになった経緯やその後を丹念に浮かび上がらせること。岐阜の黒川村が満州に移住し、引き揚げて来た中で起こったこと中心の記述だか...
戦争だから、戦地の女性が酷い目に合うことは想像に難くない。しかし、この本が真に訴えたかったことは、その時あった悲惨な事象をあげつらうことではなく、そういうことになった経緯やその後を丹念に浮かび上がらせること。岐阜の黒川村が満州に移住し、引き揚げて来た中で起こったこと中心の記述だから、大戦の中のほんの一つの事象なのだけど、そこから見えてくる普遍性がある。 読んで良かった。差し出される時の様子や単独での引き揚げ方、戻ってきてからの扱いなどは想像を越えていた。
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知ることができてとても良かったと思いました。 その当時の状況というのは想像しても想像しきることができないのだけれど、それでも一番弱い立場にあった未婚の女性たちが強制的に(といっていいと思う)ソ連兵の元へ〝接待〟という名の性暴力を受けなくてはならなかったということが想像するだけでこ...
知ることができてとても良かったと思いました。 その当時の状況というのは想像しても想像しきることができないのだけれど、それでも一番弱い立場にあった未婚の女性たちが強制的に(といっていいと思う)ソ連兵の元へ〝接待〟という名の性暴力を受けなくてはならなかったということが想像するだけでこれ以上ない地獄。引き上げ時にも女性たちは体を売らなければ生きていくことができなかったという過去は、理解しようと思ってもなかなかできない。 弱い立場の女性たちの声は消されていく。今でもそうなのではないか。当時から、ずっとそうなのだよな。その声を拾ってくれた著者に敬意を表したいと感じている。 「減るもんじゃない」という思いを持っている人はそこかしこにいっぱいいるんだろう。性暴力の体験はいくら年月が経とうとも当事者にしかわからないんだろうと思う。本当にわからない人は、そうやって軽い言葉を投げかけたり笑ったりと、今もずっと起こっていることだ。 本当にうんざりする。 美化したりとか、ないことにしたりとか、特に戦時下の女性に起こったことはそうやって見えないようにされていく。 だから戦争は絶対起こってはいけないんだとも思う。
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同じ開拓団の仲間が、立場の弱い少女達を「接待」という名目でソ連兵に差し出す。初めてこのことが報道された時の衝撃を今でも覚えている。 集団内の強者が決めたことが「公然の秘密」として無かったことにされたり、帰国を果たしてからも貶められ過酷な日々があったこと。大きな声で語ることを封じら...
同じ開拓団の仲間が、立場の弱い少女達を「接待」という名目でソ連兵に差し出す。初めてこのことが報道された時の衝撃を今でも覚えている。 集団内の強者が決めたことが「公然の秘密」として無かったことにされたり、帰国を果たしてからも貶められ過酷な日々があったこと。大きな声で語ることを封じられてきた彼女達の心の声が、本書によって世間に広く知られることで少しでも慰められ報われますように。 ひとたび戦争となれば、人間の尊厳はすべて奪われてしまう。ソ連によるウクライナ侵攻の報道を横目で見つつ祈るような気持ちで読了。
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読んでいる間、ずっと胸が苦しかったです。 ページを開くたびに、暗鬱とした気分になりました。 犠牲になった「乙女たち」に、心からの同情を禁じ得ません。 直截的なタイトルが示す通り、敗戦後、満州でソ連兵に「性接待」を強要された、日本人女性たちの話です。 著者の平井美帆さんは、丹念に丹...
読んでいる間、ずっと胸が苦しかったです。 ページを開くたびに、暗鬱とした気分になりました。 犠牲になった「乙女たち」に、心からの同情を禁じ得ません。 直截的なタイトルが示す通り、敗戦後、満州でソ連兵に「性接待」を強要された、日本人女性たちの話です。 著者の平井美帆さんは、丹念に丹念に女性たちの証言を集め、ハードカバーで332ページの大著にまとめました。 歴史の闇に埋もれていた「人身御供」の全貌を掘り起こしたのです。 まさに労作というほかありません。 犠牲になったのは、現在の岐阜県から満州へ渡った「黒川開拓団」の女性たちが主です。 敗戦後、暴徒化した満州人をソ連兵に守ってもらうため、黒川開拓団の幹部らは18歳以上の未婚女性をソ連兵に差し出すことを決めました。 性接待のための施設も設けられ、女性たちは、そこに入れ代わり立ち代わり現れる屈強なソ連兵の性の相手となったのです。 何というおぞましいことでしょう。 多くの女性たちは、現在では他界したか、存命でも90代の高齢です。 存命の女性たちの中には、今でも「ガチャリ」という金属の音に怯える方がいます。 ソ連兵が腰のベルトを外す音に聞こえるのです。 女性たちの受けた心の傷の深さは計り知れません。 女性たちは、満州から引き揚げた後も辛い目に遭いました。 むしろ「地獄」はここからだったと言えるかもしれません。 ソ連兵に性接待をした「汚れた女」と差別を受けたのです。 団を守るために犠牲になったにも関わらず、です。 自分が性接待に出ることで、2歳下の妹を守ろうとした「善子」という女性がいます。 善子に守ってもらった妹の久子は、引き揚げ後の善子について、こう証言します。 「帰ってきたら冷たい目で見られ、親戚からも嫌がられ、『帰ってこにゃ、よかった。途中で死にゃよかった』って……。姉さんがどんだけ……、どんだけ、私に言ったかしれん」 開拓団の男の中には、貞操を守って自決した女たちを称賛する者までいたそうです。 あまりといえば、あまりにも酷い話です。 このレビューを読んでいて、「非常時だから仕方がないのでは」と訳知り顔で思った方もいるのではないでしょうか。 あなたのような反応は決して珍しいものではありません。 著者はしかし、その反応の底にある心理を次のような言葉で鋭く見抜きます。 「しかし、その許容には、根拠なく設定されている前提条件がある。 自分が犠牲にされない限り、である。」 戦時性暴力の実態をつまびらかにした本書は、昨年の開高健ノンフィクション賞を受賞しました。 まさに衝撃作の名に値する本書をぜひ多くの方に読んでほしいと思います。 最後に、満州にある「乙女の碑」に刻まれた善子の詩を紹介します。 「傷つき帰る 小鳥たち 羽根を休める 場所もなく 冷たき眼 身に受けて 夜空に祈る 幸せを」
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自分のだったら、自分の家族だったらと思うとやりきれない。戦争は弱いものから踏み躙るけれど、弱いもの同士でまた、踏みつける相手を探す。 作者が掬い上げ聞いてくれて、彼女たちの前で憤ってくれたのが少しだけ救いになった。 絶対に忘れないようにしようと思う
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
こんな悲惨な事実が戦時下の満州では公然と行われてたんだ。 以前、NHKスペシャルで見ておばあちゃんがそういうことがあったと語っていたけど、実際、17歳以上の未婚の女性が”接待”という言葉で下にソ連兵に”強制性交”を強要されていたなんて。 どんなに辛かったろう。その女性たちのお陰で命が救われたのに、感謝の気持ちも表さず、好き者、傷ものと陰口を言われなんのために犠牲を強いられてきたにか、春江さんや玲子さんのやるせない気持ちが胸に迫る。 集団に中においての決定事項には、逆らえない、この事実もまた彼女たちの立場を苦しめたんだろう。 当時、17歳だった彼女たちも今は90歳過ぎ、存命者が少なくなってきている。 この悲惨な事実を後世に伝えないとという著者の渾身の労作だと思う。 戦争は弱いものが犠牲になる、絶対してはいけないと改めて思った。
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黒川開拓団のこの事実を知ったのは、割と最近のNHKだった。ほとんどテレビを見ないのに、なぜにたまたま見たのだろう。はっきり覚えていないのだが、こちらから「差し出された」ことと引き揚げ後も感謝されるどころか差別、侮辱されたということが衝撃的だった。 この何年か前のNHKの取材に対し...
黒川開拓団のこの事実を知ったのは、割と最近のNHKだった。ほとんどテレビを見ないのに、なぜにたまたま見たのだろう。はっきり覚えていないのだが、こちらから「差し出された」ことと引き揚げ後も感謝されるどころか差別、侮辱されたということが衝撃的だった。 この何年か前のNHKの取材に対して、著者の平井さんは面白くない思いを持っておられるようで、確かにその通りだろう。ただNHKが「後追い」をして事実がより広く知れ渡り、私みたいに平井さんのご著書を手にする人もいたのではないかと思うのだが、それはまた別の話か。 あまりの酷いことの連続で、何からどう書いていいのかわからない… 「減るものじゃないし」という言葉が最後の方に出てきた時、ハッと気づいた。どこで誰から発せられたか全く具体的には思い浮かばないが、何度も何度も聞いた言葉のような気がする。今の若い人はどうなのだろう。そんな発言する若い男性がいるのはあまり想像できないが(若い男性をあまり知らない)、おじさん(初老?)の人なら今でも平気で言いそうな人がいるのは思い浮かぶ。これではもし同じようなことが今現在の日本に起こった時、同じことが起こる。 戦争は絶対反対。女性が性被害にあうということだけでも絶対反対。日頃隠されている人間の闇の部分が顔を出してしまう戦争。 性被害というのはやはり日頃から女性を下に見ているから出てくるもの。下に見られるような私たちではない。 議員や官僚の女性の比率をもっと高める。 日常的に女性差別、蔑視にあったら抗議する。身近な人にも指摘する(今書きながら「減るもんでなし」とか言われたら一緒になって笑っている自分が見えた。あり得ない!)。 もう少しきちんと書いておきたいが、どうも無理。しばらく考えたい。
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敗戦後、満州に取り残された黒川開拓団。暴徒化した満人やロシア兵から団を守るため、ロシア兵側と交渉し、日本の娘らを「接待」として提供することに。 被害者の女性側の視点から語られているので、それが生々しく、痛々しい。重かった。終戦から70年経っても性的虐待、暴力を受けるのはほとんどが...
敗戦後、満州に取り残された黒川開拓団。暴徒化した満人やロシア兵から団を守るため、ロシア兵側と交渉し、日本の娘らを「接待」として提供することに。 被害者の女性側の視点から語られているので、それが生々しく、痛々しい。重かった。終戦から70年経っても性的虐待、暴力を受けるのはほとんどが女性。打ちのめさせられました。
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ニュースサイトで見た時から「なんで未婚女性なんだ?」て不思議だった。 この時代だと婚前交渉に死ぬほど厳しかったろうし ありていに言えば処女であることに価値がおかれると思ったから。 著者が「まだ誰の”所有物”にもなってない未婚女性」と 書いてて、そういうことか、と衝撃だった。 女性...
ニュースサイトで見た時から「なんで未婚女性なんだ?」て不思議だった。 この時代だと婚前交渉に死ぬほど厳しかったろうし ありていに言えば処女であることに価値がおかれると思ったから。 著者が「まだ誰の”所有物”にもなってない未婚女性」と 書いてて、そういうことか、と衝撃だった。 女性の扱いは私が思ってたよりはるかに下だった。 団の幹部は子どもにとっては「いいお父さん」だし 喜子さんの弟もお姉さんを慕ってた。 けど団の幹部は女性たちに謝ってないし喜子さんの弟もよその女性には 想像力が及ばない。 ジャーナリストの女性が大御所ジャーナリストからの性被害を訴えて TVに出てきたとき、 たまたま一緒にテレビ見てた男性が非難するように「性被害訴えるのにこんな胸元開いた服で出てくるかね」と言い出してびっくりした。奇抜な服ではないし何着ててもいいし、何着てたって性被害を受けていいことにはならんのに。 この人は普段はそこそこ良識的な人。 この辺のことは2022年もあんまり変わらない。 TVの件はとっさに何も言えなかったけど言えるようにならなければ。
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