脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか の商品レビュー
SFアニメなどで、視野の中にみているものの情報が直接表示されたりというようなアイデアがあったり、「ソードアートオンライン」に代表される脳に直接働きかけて疑似世界のなかに生きているようなゲームが描かれたりする。また「攻殻機動隊」ではネットワークの世界に意識をダイブさせたり、タチコマ...
SFアニメなどで、視野の中にみているものの情報が直接表示されたりというようなアイデアがあったり、「ソードアートオンライン」に代表される脳に直接働きかけて疑似世界のなかに生きているようなゲームが描かれたりする。また「攻殻機動隊」ではネットワークの世界に意識をダイブさせたり、タチコマのように人工知能搭載した戦車が互いに通信して自分の得た情報を共有したり互いの情報をもとに議論する。挙げ句の果てはネットワークの中で生きる人格がでたりする。 本書では、そういった世界がサイエンスフィクションでなく、ノンフィクションになりつつある事が描かれている。先ずは脳とAI融合技術の過去・現在の事例が紹介され、そこから著者たちが取り組んでいる池谷脳AI融合プロジェクトの紹介を中心に「未来」がえがかれる。 〇脳情報の読み取りと情報の脳への直接的な書き込み 〇神経・精神疾患治療への応用 〇赤外線、紫外線、放射線、磁気などの画像情報による新しい知覚の獲得 さらに人工知能研究の進歩が描かれている。 ビックデータと人工知能を用いることで複雑な現象を直接モデル化することができる。しかしながらそこから導かれる知見の有効性は検証可能であるが、そこにいたるプロセスは人間には理解する事ができない可能性が高い。ディープラーニングによるブラックボックス問題といわれているものであろう。 本書で一番面白いと思ったテーマは、囲碁や将棋といったゲームで人工知能が人間を打ち負かす時代になってきているが、今話題の藤井聡太四冠が人工知能ソフトで自分の気づかなかった手や判断を示されることがあり、将棋の新しい可能性を拡げてくれるという主旨のことのいっている。人類と人工知能とが互いの強みを活かして、どちらか一方ではたどり着けないところまで行くことができる可能性があると言うこと。 『脳が人工知能とともに進化できれば、人間が持つ「脳の限界」自体がどんどんアップデートされていくかもしれません』単純に便利な人工知能をつくるのではなく、それによって自分たちの脳も限界をどんどん拡張させていく。脳科学恐るべしである。
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脳と人工知能をつないだら人間の能力はどこまで拡張できるのか 著作者:紺野大地 発行者:講談社 タイムライン http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698 脳AI融合の最前線
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最近の動向がコンパクトに分かりやすく紹介されていることに加え、著者(紺野さん)の意見もすごく参考になります。 読んでて著者のワクワク感が感じ取れる一冊でした! 本文中に、「過去の偉人のデータを GPT‐ 3に学習させることで、あたかもその人が発言したかのような会話ができる」とあ...
最近の動向がコンパクトに分かりやすく紹介されていることに加え、著者(紺野さん)の意見もすごく参考になります。 読んでて著者のワクワク感が感じ取れる一冊でした! 本文中に、「過去の偉人のデータを GPT‐ 3に学習させることで、あたかもその人が発言したかのような会話ができる」とありました。 人間の思考は学習によって変化しますが、圧倒的な速度で学習するGPT-3にも"思考の進化/変化"は見られるのか?という点が気になりました。 また、「脳のデータと人工知能を利用して精神疾患をこれまで以上に客観的に研究・診断・治療しよう」という点については、国内企業にも自然言語処理技術を活用した診断支援プログラムの開発を行なっている企業があり、基礎研究と産業の今後の発展が楽しみです。
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とても良い。タイトルに「人工知能」の入った一般書は基本的に読まない派だが、そういう人達にもぜひ読んでみてほしい。 平易で情報の伝わってくる文章で面白い研究や取り組みをたくさん紹介している。Neuralinkやノーベルチューリングチャレンジの動向を今後も追っていきたい。 最新情報...
とても良い。タイトルに「人工知能」の入った一般書は基本的に読まない派だが、そういう人達にもぜひ読んでみてほしい。 平易で情報の伝わってくる文章で面白い研究や取り組みをたくさん紹介している。Neuralinkやノーベルチューリングチャレンジの動向を今後も追っていきたい。 最新情報や最新の研究が多く含まれており、神経科学とメタバースの融合について意見を述べる際FacebookがMetaに社名変更したことにまで言及されていることには驚いた。出版直前まで文章を推敲していたに違いない。 個人的に人間の認知とこれからの科学のあり方について考えされられた点が一番良かった。 「意識を持つとはどういう状態なのか」「意味を理解するとはどういうことなのか」の問いに紹介されたトノーニ先生の統合情報理論や北沢先生の主張は面白かった。なおここでこの理論が正しいかどうかは誰にも分からないよ、と一言添えている点に誠実さを感じた。 従来の科学は仮説検証と人間による理解を重んじており、自身も重んじて生きてきたけれど、潤沢な計算資源を用いて仮説を立てずして正解を導くことや人間には理解できない万物の方程式が生み出されることが現実的になってきた今、科学に対する姿勢や取り組み方は大きく変わっていくのだろうと未来に想いを馳せた。
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