脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか の商品レビュー
高度に発達した科学は魔法と区別がつかないーー この言葉が表すように、あまりにも未来すぎる話題は、何故そうなるのか理解ができない。科学技術そのものへの理解もそうだし、また、その技術が普及した社会も同様だ。 本書で言及されてる世界もまさにそうだ。 脳に直接チップをつないでコンピュー...
高度に発達した科学は魔法と区別がつかないーー この言葉が表すように、あまりにも未来すぎる話題は、何故そうなるのか理解ができない。科学技術そのものへの理解もそうだし、また、その技術が普及した社会も同様だ。 本書で言及されてる世界もまさにそうだ。 脳に直接チップをつないでコンピュータを制御するNeuralink、脳に情報を直接書き込むBMI、ノーベル賞を取るAIや、指示された通りのAIを自分でプログラム可能なAI等々。 本書中では「マトリックス」「攻殻機動隊」「ソードアートオンライン」など、現代人が馴染みやすいSF作品になぞらえていたけど、どこまで理解できただろうか。 凡人たる私たちには想像もつかない未来の話だけど、確実に言えるのは、AIやディープラーニングなどはすでに我々が関わりを持っているということだ。 我々が日常的に使い始めているSiriやAmazon AlexaはAIそのものだし、また、彼ら(彼女ら?)への問いかけや、Webサービスに入力している情報は、ことごとく彼ら彼女らへの知識として蓄えられている。要するに、私たちは日常的に未来のAIを育てているのだ。 本書に書かれた未来の世界が、未来であるうちに目を通しておいて間違いはない。 いまが旬の一冊でず。
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脳科学と人工知能の最新の研究動向、この2つの分野の融合研究に関して、有名なトピックを数多く含む幅広い分野について分かりやすく解説がされており、現在の研究の全体状況を概観できる内容となっている。 全体として素晴らしい内容であったが、一つ疑問に思ったのは、作者が「ここまでの話を聞い...
脳科学と人工知能の最新の研究動向、この2つの分野の融合研究に関して、有名なトピックを数多く含む幅広い分野について分かりやすく解説がされており、現在の研究の全体状況を概観できる内容となっている。 全体として素晴らしい内容であったが、一つ疑問に思ったのは、作者が「ここまでの話を聞いて、みなさん自身はNeuralinkの電極を脳に埋め込みたいと思うでしょうか?」と、リスクを負って電極を脳に埋め込むことを多くの人が拒否するだろうと考えている点である。 私自身は、多少のリスクがあっても、若い頃の記憶力や頭の回転を取り戻せるのならトライしてみたいし、手術をすれば、誰でも簡単に東大に入れる頭脳が手に入るとなれば、多少の危険はあっても希望する人は多いのではないだろうか。 美容整形のように、誰でも簡単に優れた頭脳を手に入れられるのであれば、むしろ手術をしない方が不利という状況も出てくるのではないか。 スポーツにおけるドーピングや肉体改造のように、技術的には可能でも、手術を実施するのは規制しないといけない場合もあるだろうし、「果たして、そのような技術(頭をよくする技術)を開発すること自体許されるのか」という倫理的な問題さえ呼び起こす恐れがあると危惧される。
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オススメの一冊。 まず表題がすごい。脳と人工知能がつながる? SFや空想の話ではない。東大教授と東大病院の医師の共著による冷静で現実的な本である。 医学や情報科学の指数関数的な進展でヒトはどうなるのか、シンギュラリティを迎えるのか。断片的なニュースに戸惑うばかりの私にとって、...
オススメの一冊。 まず表題がすごい。脳と人工知能がつながる? SFや空想の話ではない。東大教授と東大病院の医師の共著による冷静で現実的な本である。 医学や情報科学の指数関数的な進展でヒトはどうなるのか、シンギュラリティを迎えるのか。断片的なニュースに戸惑うばかりの私にとって、格好のガイドブックが見つかった。 脳と人工知能(AI)の融合について、過去、現在、未来の3つの章に分け、これまでの成果と現在の最先端の状況をわかりやすく整理し、未来予想図をビビットに示してくれる。 どのページの内容も濃密。敢えて要約すれば、爆発的に進化している脳研究の世界のことを、紺野先生の「纏括力と執筆力」で鮮やかに切りさばいてくれる格好のテキストとでも言えようか。 脳と人工知能の融合により実現しつつあるワクワクするような革新が簡潔にスピーディに語られつつも、専門家としての抑制の効いた誠実さを感じさせる文章なので安心して読み進むことができる。 落ち着いた筆致でありながら、情熱と躍動感に溢れていて、未知なる「知」に戯れる喜びがひしひしと伝わってくる。イラストや写真により多くのエピソードがわかりやすく紹介されているのもうれしい。 読後、神経科学や人工知能についての視界が一気に広がった。ニュースをフォローしていくための自分なりの視点、軸ができた気がする。よく耳にするメタバース(多次元の世界)やイーロン・マスクのNeuralink が、何だか身近な存在に思えてきた。 「進化しすぎた脳」の池谷先生が率いる、脳AI融合(!?)というすごい名称のプロジェクトがあるという。その研究室に東大病院医師の紺野先生が参画し、この共著が実現した。今後、このプロジェクトがどんな成果を上げるのか、楽しみだ。 紺野先生は、note やTwitterで最新のテーマを扱った情報発信をしている。podcast の「研エンの仲」では、「#35 老いというヒトの限界は克服できるは克服できるのか?」にゲスト出演していて生の声を聴くこともできる。 紺野先生は、数年後、いや数ヶ月後には、ものすごい有名人になっているような気がする。そんな予感を抱いた一冊だった。
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近い研究をやっている身として、かなり面白かった。 GPT-3やDALL・Eは知らなかった。汎用AIに近づいているようで期待大。 やはりinput側のBrain Machine Interfaceはまだまだ厳しいようである。 刺激による脳活動の再現は研究していきたいところ。 ...
近い研究をやっている身として、かなり面白かった。 GPT-3やDALL・Eは知らなかった。汎用AIに近づいているようで期待大。 やはりinput側のBrain Machine Interfaceはまだまだ厳しいようである。 刺激による脳活動の再現は研究していきたいところ。 研究をやるメリットに,「科学の教科書や読み物を自分ごととして捉えられること」があるなと感じた. 常に,自分の専門分野とはどう関わるか,自分の研究にどう使えるか,といった視点を持って読むことができる.面白さを見出しやすい.
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抜群に読みやすく、この分野を知らない人にとってこれ以上にない心オドル本である。 ただし、人工知能や脳に常日頃関心がある人にとっては少々常識的な有名な話が多い印象。 著者独自の研究成果や思想がもっと書いてあるとオリジナリティのある内容になると思う。 ノーベルチューリングチャレンジで...
抜群に読みやすく、この分野を知らない人にとってこれ以上にない心オドル本である。 ただし、人工知能や脳に常日頃関心がある人にとっては少々常識的な有名な話が多い印象。 著者独自の研究成果や思想がもっと書いてあるとオリジナリティのある内容になると思う。 ノーベルチューリングチャレンジで最初にAIが取る賞のジャンルは文学賞だろうという読みは鋭いし、同感である。
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脳科学や人工知能、それらを掛け合わせた最新研究が豊富に紹介されている。 本文の執筆は基本的に紺野氏、共著の池谷氏はその師匠格だそう。 この紺野氏の書かれる文章の読みやすさが格別。「神経科学のファンを増やすことがライフワークのひとつ」とプロフィールで仰る通り、全く素人の自分でもする...
脳科学や人工知能、それらを掛け合わせた最新研究が豊富に紹介されている。 本文の執筆は基本的に紺野氏、共著の池谷氏はその師匠格だそう。 この紺野氏の書かれる文章の読みやすさが格別。「神経科学のファンを増やすことがライフワークのひとつ」とプロフィールで仰る通り、全く素人の自分でもするすると読むことができた。その氏が脳科学に興味を持つ切っ掛けになったという池谷氏の他書も、実に面白そうなタイトルばかりで、ぜひ読んでみたいと思った。 個人的に面白かったのは、本来は地磁気のセンサーを持たない動物でも電気信号を脳に送ると、脳がちゃんと新しい知覚を処理できるように対応するという研究結果。これは筆者らのラボにおけるネズミでの実験だそうだけど、極度の方向音痴である自分にとっては、真っ先に実用化されないかと心待ちにしている技術だ。(頭蓋骨パカッはまだちょっと怖いけど、首の皮を切ってセンサー埋め込むくらいなら全然やってもいい。) 読んで考えていたのは、タイトルである「人間の能力がどこまで拡張できるのか」について。上記の地磁気のような知覚の他にも、紫外線を見えるようになるとか、念じるだけで文章が書けるようになるとかの可能性が示唆されている。それらによって、今はまだ想像も出来ないことが、人間の身体で可能になるのかもしれない。 しかし現代の時点で既に、情報過多によるSNS疲れ、倍速視聴、ファスト動画、デジタルデトックスなどが話題になっている。「脳」がさらに情報量を増やしても対応できる高いポテンシャルを持っていたとしても、それとは別の?人間の心か何かが、追いつかないのではないかという考えも湧いた。それで、例えば逆に白黒しか見えないようにする技術とか、そういう知覚をデチューンするための技術発展もしそうな気がした。ゲームは1日1時間まで!とガミガミしてたオカンが、フルカラーで視るのは1日何時間まで!になるとか、ね。 モノで溢れた消費社会に反動が起きたように、情報量も増えるばかりが贅沢という考えに反動が起きるのではないだろうか。
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脳研究、人工知能研究いずれも近年急速に進歩している分野であるが、両者を組み合わせたならばどれほどのことができるのか、最先端の興味深い事例が多数紹介される。 イーロン・マスク率いるNeuralinkの取組では、アカデミアとインダストリーの繋がりにより短期間で驚異的なブレイクスル...
脳研究、人工知能研究いずれも近年急速に進歩している分野であるが、両者を組み合わせたならばどれほどのことができるのか、最先端の興味深い事例が多数紹介される。 イーロン・マスク率いるNeuralinkの取組では、アカデミアとインダストリーの繋がりにより短期間で驚異的なブレイクスルーが実現されているが、豊富な資金力と高性能のコンピュータを擁する者の強みが実感される。(治療目的ではあるが、脳に電極を埋め込んだりと、SFに現実が近づいている感がした。) 著者は、東京大学「池谷脳AI融合プロジェクトに所属しているが、同プロジェクトでは、脳の未知なる能力をAIを用いて開拓することで、脳の潜在性の臨界点を探ることを目的として研究が行われている。 倫理的な問題には十分配慮して研究は行われているようだが、こうした取組の先にある"未来"はどのようなものとなるのか、各人の人間観、世界観を問われそうだ。
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科学の持つ可能性、明るい未来を描いた作品は久々なように思う。 題名の通りの内容。まさかここまでの可能性があるとは。AIが広がれば人間の仕事は取って代わられ無駄な存在になるようなある意味暗いイメージを持っていた。あくまで人間VS人工知能。 それが本書ではAIを人間の能力を拡張す...
科学の持つ可能性、明るい未来を描いた作品は久々なように思う。 題名の通りの内容。まさかここまでの可能性があるとは。AIが広がれば人間の仕事は取って代わられ無駄な存在になるようなある意味暗いイメージを持っていた。あくまで人間VS人工知能。 それが本書ではAIを人間の能力を拡張するために用いるという研究。しかも脳に電極、超音波などを用いて直接にやり取りするというまさに夢のような話。 技術の進歩を考えると本当に実現する日は案外近いのかもしれない。 科学そして人間の未来に久々に明るい作品に出会った。
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なんと長いタイトル。もちろん、池谷先生の名前があったから買って読んだ。本書の最初の方に出てくる「未来予想図」をツイッターで読んだときは、これは「トンデモ本」ではないかと思った。でも、池谷先生がそんなものに名前を連ねるはずはない、そう思って、目次とか「はじめに」とかを確かめて注文し...
なんと長いタイトル。もちろん、池谷先生の名前があったから買って読んだ。本書の最初の方に出てくる「未来予想図」をツイッターで読んだときは、これは「トンデモ本」ではないかと思った。でも、池谷先生がそんなものに名前を連ねるはずはない、そう思って、目次とか「はじめに」とかを確かめて注文し、次の日から読み始めた。なんとまあ、この30歳の著者は楽天的なのか。著者自身が「おわりに」でもそう書いているから、まあ良しとしておこう。で、まあおもしろい。そんなことができるようになってきているのか、の連続。僕の記憶では、安部公房が「第四間氷期」で1人の人間の脳をすべてコンピュータにコピーしたのだったと思う。60年以上前のことだ。それから、筒井康隆が「パプリカ」で夢の中に入っていった。おもしろいこと考えるなあと思っていたけれど、それがいよいよ現実になる? しかし、それは何のため? 何らかの病気の治療のためならあり得るとは思う。ただ、単なる人間の欲望のためというなら、しっぺ返しがこわい。北野さんとかが取り組んでいるという人工知能にノーベル賞を取らせるという話、GPT―3の方が先に文学賞を取るのではないかという話、興味深い。AIが見つけてきた理論を人間が理解できないという話、四色問題がちゃんと証明になっていないとか言われるのと近いのだろうか。まあ、いずれにせよ、技術の進歩でできることは増えていく。そのときに、どこまで進めるのか、科学の倫理については同時並行で研究を進めて欲しいものだ。ところで、教え子の一人が大学入学前にたずねて来てくれたときに、池谷先生のブルーバックスを紹介していた。それから10年近くたって、FBを通してその生徒(もう大人の女性だったが)が東大の大学院でニューロサイエンスの研究をしているということを知った。連絡をしてみると、「あのとき紹介してもらった本があって今の自分がある」というようなことを言ってくれた。うれしい限りである。研究室は池谷先生のとなりっだたそうだけれど。
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人は未知の技術開発に対しては「バラ色の未来」を夢想するものである。想定外の結末をもたらした原子力エネルギーの推進も、かつてはそのように捉えられていた。しかし、人間の生命や知性といった、私たちの根源的な存在に対する研究開発は、万人の人生を左右する絶大な影響を及ぼすものである。司法の...
人は未知の技術開発に対しては「バラ色の未来」を夢想するものである。想定外の結末をもたらした原子力エネルギーの推進も、かつてはそのように捉えられていた。しかし、人間の生命や知性といった、私たちの根源的な存在に対する研究開発は、万人の人生を左右する絶大な影響を及ぼすものである。司法の場面で、裁判員制度が導入されているように、専門家だけでなく一般人も議論に参加できるようなしくみが必要ではないだろうか。 人工知能(AI)は私たちの知性を助けるものであるが、それ自体は人間の支配下にあるべきである。AIを論じるなかで決定的に欠けているのは、私たちが「こころをもっている」という視点である。AIは便利な道具であるが、私たちの大切なこころがAIに支配されるようなことがあってはならない。また、AIにこころを与えてはならない。制御不能となって暴走するからである。 AIという道具が役立つものとなるか凶器になるかは、それを操る人間次第である。いつの世も新しい発明や知見は、その利点や長所に目を奪われがちであるが、その使い方を誤ると取り返しのつかないこととなる。しかし多くの人は、それがもたらす想定外の事故や事件、犯罪被害や習慣的依存による中毒症などのような恐ろしいことがらに対しては、目を背けようとする。 脳がAIに接続された場合、最も恐ろしいのはハッカーによるウイルス攻撃によって脳が破壊されることである。ほかにも、悪意のある人物が意図的に人々の思考回路を操作したり、特定の思想に洗脳したりする恐れも十分に考えられる。 いっぽう、人々の能力はAIの接続の有無によってどのように区分けされるのだろうか。教育機関の入学試験や資格試験、各種検定などにおいては、知識や情報、処理能力が問われるが、AIへの接続によって本人の努力とは無関係に資質を判定されるのだろうか。 人間は、想定外のできごとに出会いながら成長を続けていくものであるが、教育のあり方も大きく変化してしまうかもしれない。知識や技術の習得がAIへのアクセスによって手っ取り早くできるとすれば、あらゆる人間的な努力が無駄なことと一笑されることになるのだろう。SFの世界だけであった「機械人間」が誕生するのだろうか。 AIの接続によって優位に立った人たちが、自分たち以外の人を蔑視したり支配しようとすることはありうる。社会に新たな偏見と分断がそびえたち、ますます世知辛く生きづらい世の中になるであろう。 技術の急激な進歩には、必ず危険がつきまとう。AIの暴走によって私たち人間が支配されることがないように、想定外の危険を常に意識しながら開発されることをただ祈るのみである。
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