ブルシット・ジョブの謎 の商品レビュー
丁寧にデイビッド・グレーバーの思考を辿るものであった。それであってもなお、容易には理解できないグレーバーの理路がある。
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タイトルや書店での平積みから密かに気になっていた本。 始めのブルシットジョブの例が、言い方は悪いがちょっと苦笑いしそうなものから、周りにもいるのではと思わせるものまで多様なのに驚かされる。 オリジナルの本を噛み砕いて書かれた本であり、著者も言うようにオリジナル読んでなくても読...
タイトルや書店での平積みから密かに気になっていた本。 始めのブルシットジョブの例が、言い方は悪いがちょっと苦笑いしそうなものから、周りにもいるのではと思わせるものまで多様なのに驚かされる。 オリジナルの本を噛み砕いて書かれた本であり、著者も言うようにオリジナル読んでなくても読めたのだが、ところどころ理解しづらいなと感じる部分もあり、これだとオリジナルはどれほど厳しいのだろうなどと思ってしまった。
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なぜ「エッセンシャル・ワーカー」は社会にとって必要不可欠なのに、報酬が低いのか。 裏を返せば、「ブルシット・ジョブ」は社会にとって”不要不急”なのに、報酬が高いのか。 本書は、ブルシット・ジョブの正体に迫るとともに、社会に不可欠ながら低賃金の問題に切り込んでいく。グレーバー...
なぜ「エッセンシャル・ワーカー」は社会にとって必要不可欠なのに、報酬が低いのか。 裏を返せば、「ブルシット・ジョブ」は社会にとって”不要不急”なのに、報酬が高いのか。 本書は、ブルシット・ジョブの正体に迫るとともに、社会に不可欠ながら低賃金の問題に切り込んでいく。グレーバー『ブルシット・ジョブ』(岩波書店、2020年)で語られていたことを分かりやすく、そして刊行後に起きた新型コロナ禍で浮かんできた問題点とその”答え合わせ”を解説している。 ところで、『ブルシット・ジョブ』で「掠奪的」資本主義のモデルを、2020年から2021年にかけて、目の当たりにするとは。東京五輪委員会の中抜き問題である。とにかく酷かった。 委員会は多額の予算を運用しておきながら、現場は「ボランティア」、つまりタダ働きをさせている。多額の予算はどこへ行った。その一方で、「ブルシット・ジョブ」を担う運営スタッフは上層部の相次ぐ計画変更、そして辞任ドミノに、振り回されっぱなしだった。はたして給料はその業務量に見合っていたのだろうか。 上層部は責任を取って報酬を返納とか減額とか、そういうのがなかった。もらうだけもらって、問題ばかり残したまま、逃げ去ってしまった。それを追求しなくてよいのか? クソのような新自由主義的な掠奪の仕組みを、理論的に説明することに成功した元の書と本書の功績は、きわめて大きい。読んでいて胸クソ悪くなるが、世直しのためには読んだ方がいい。
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ブルシットジョブに関する論文を分かりやすく解説していくスタイルだった。 本書の根底にある資本主義への批判には共感できつつも、ブルシットジョブの例が分かるようで分からず、ピンとこないところがあった。 確かに管理のための管理…で書類がどんどん増えていくのは会社でもあるあるだけれども、...
ブルシットジョブに関する論文を分かりやすく解説していくスタイルだった。 本書の根底にある資本主義への批判には共感できつつも、ブルシットジョブの例が分かるようで分からず、ピンとこないところがあった。 確かに管理のための管理…で書類がどんどん増えていくのは会社でもあるあるだけれども、本書に出てくるような明らかに無駄なことをしている人は現実にはそこまでいないと思う…分かりやすい例を出しているだけなのかもしれないが、例えば判断できるだけの能力を持つ人がたくさんの案件をさばくために、部下が報告書を作成するのは果たしてブルシットジョブなのだろうか?偉くみせるためだけに、取り巻きに仕事をやらせているというのはあまりに極論と感じた。 ただ、豊かになってるはずの世界で仕事が減らないのはブルシットジョブが蔓延しているのが原因なのは事実だとは思う。何がブルシットなのか、自分なりに深掘りして考えてみたいと思った。
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前半は少し重めのビジネス書というレベルですが、中盤から後半になるにつれ人類学・社会学?的な語り口、哲学的な領域に入ってきます。 わたしとしてはなかなかに難しい本でしたが、新しい観点も得られたので良かった本ではあります。
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私の勝手な解釈では『ブルシット・ジョブ』は単にナンセンスな労働の実態/実体を暴露しただけにとどまらず、「働くこと」そのものの意義を見つめ直す本だった。この解説書でも(時に難解な経済的理論も語られるが)そもそも「空気」を読み「働くことそのものは身体/精神を壊してでもやらなければなら...
私の勝手な解釈では『ブルシット・ジョブ』は単にナンセンスな労働の実態/実体を暴露しただけにとどまらず、「働くこと」そのものの意義を見つめ直す本だった。この解説書でも(時に難解な経済的理論も語られるが)そもそも「空気」を読み「働くことそのものは身体/精神を壊してでもやらなければならないほど尊い」とされる風潮がどうして生まれるのかを掘り出す試論が展開されている。日本とイギリスの相違/差異を踏まえた上でより日本の風土/空気の中で『ブルシット・ジョブ』を効果的に読むためにこの本はふさわしいと思う。職場で読みたい本
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ほどよくフランクな語り口で間口を広げ、かっこいい専門用語をうまく織り交ぜて読者の知的プライドをくすぐる。そして何より、講談社現代新書の読者層(と思われる)「日々、仄かな徒労感に襲われるようなインテリ風ジョブにいそしみながら、自分ではその根源を思索するまでの余力知力はない」という人...
ほどよくフランクな語り口で間口を広げ、かっこいい専門用語をうまく織り交ぜて読者の知的プライドをくすぐる。そして何より、講談社現代新書の読者層(と思われる)「日々、仄かな徒労感に襲われるようなインテリ風ジョブにいそしみながら、自分ではその根源を思索するまでの余力知力はない」という人々に、「そうだそうだ」と実感をいだかせるような巧みな例示だ。基となるグレーバーの本を読みたいと思わせる。 といっても、人類学者、社会学者が唱えることの多い、このBSJロジックに全面賛同はできない。これは、50数年前までに世界を席巻した「古い歌」と同じレトリックではないだろうか。例えば、世の中にハンズオンで直接手を下す人だけが仕事と呼べるものに携わっているのであって、資本提供者や管理層や調整層は不要だし配分を見直せ、とか、昔ながらの部族社会も実はハッピーでアクセクせずとも皆が充足できるだとか、だから資本主義ってやつは・・とか。比較的狭い範囲の関係性を特に詳しく分析して、そこから外延的に世界を見る人類学では、そういうふうに感じるかもしれない。だが、対極的な人が実際には多数派だ。最大多数の最大幸福の実現を至高と信じてプラグマティックでサイエンティフィックな視点を重視する人なら、世界をそんな風には見ていない。 『負債論』『官僚制のユートピア』『ブルシットジョブ』・・どれも、近いうちに読んでみたいとは思う。
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( ..)φメモメモ 価値ある仕事とは、存在している必要性に応えたり、人が考えたこともないものをつくりだして生活の向上や改善に資すること。今では殆どの産業で供給が需要をはるかに上回っていて、それゆえ需要が人工的につくりだされている。 商品を売るためには、何よりも先ず、人を欺き、そ...
( ..)φメモメモ 価値ある仕事とは、存在している必要性に応えたり、人が考えたこともないものをつくりだして生活の向上や改善に資すること。今では殆どの産業で供給が需要をはるかに上回っていて、それゆえ需要が人工的につくりだされている。 商品を売るためには、何よりも先ず、人を欺き、その商品を必要としていると錯覚させなければならない。こうした仕事がブルシットではないとはとても言えない。
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「ブルシット・ジョブ」のエッセンシャル版、といった内容の本著。「ブルシット・ジョブ」自体は分厚く、そして高いので入門書として格好な一冊。内容はほとんどの会社員にとってうなずきながら読めると思う。後は仕事に反映させる事がどう出来るか、だが。 残念なのはグレーバー氏が日本語版刊行後...
「ブルシット・ジョブ」のエッセンシャル版、といった内容の本著。「ブルシット・ジョブ」自体は分厚く、そして高いので入門書として格好な一冊。内容はほとんどの会社員にとってうなずきながら読めると思う。後は仕事に反映させる事がどう出来るか、だが。 残念なのはグレーバー氏が日本語版刊行後間もなく亡くなってしまった事。氏の遺志は訳者でもある本著者の酒井氏や全ての働く人々が引き継がなければならない。 ブックスタンド梅田店にて購入。
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日本の状況がよくわかるかなと思って読み始めたけれど、前半はグレーバーの著書の復習で、後半はマルクスとかケインズとか出て来て、かえって難しく感じた。著者の本音の部分は最後に少し出てくるだけで、「となりの人間国宝」の話と居酒屋はないと困るという話と猫の動画(妻も毎晩見ている)の話くら...
日本の状況がよくわかるかなと思って読み始めたけれど、前半はグレーバーの著書の復習で、後半はマルクスとかケインズとか出て来て、かえって難しく感じた。著者の本音の部分は最後に少し出てくるだけで、「となりの人間国宝」の話と居酒屋はないと困るという話と猫の動画(妻も毎晩見ている)の話くらい。そこだけ同意した。さて、妻(中学校教員)に、私の仕事はどうしたら楽になるのと聞かれたが、本書を読んでアドバイスできるようなことはなかった。妻の職場でのBSJはそれほどないように思う。官僚仕事は確かにあるだろうし、削れるところは削るべきだと思うが、やはり根本的に人が足りていない。部活動、不登校の生徒対応、問題行動のある生徒指導、道徳、総合学習、それにプラスして担任クラスや部活動の事務的な仕事、などなど、他の人ができる仕事も多々ある。それを分担できればいいと思う。私の会社でいうと、タスクマスター。本当に無駄な仕事をいろいろと作り出してくださる。しかし、非常事態時には何かと役立った。つまりは普段はしなくても回る仕事をしているということ。そういうことがよくわかった。まあ、このあたりはグレーバーの本を読んだときにも書いたのでもうやめておく。ところで、「となりの人間国宝」に私の幼なじみが選ばれた。染物をしている職人だ。昔はそういう人がたくさんいたのだと思うが、なんだろうこの会社員という職業。ブルシットな書類の作成など多すぎる。でも、いちいち逆らうのも面倒なので、BSJ、BSJと唱えながら、なるべく短時間ですませるようにしている。
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