あなたのための短歌集 の商品レビュー
お題を送ってくれた人に短歌を作って返す。その作品はどこにも発表せず、その人だけのものとする。という条件で詠まれた作品百首を、出題者同意の元に集めた短歌集。 元は一対一の関係で贈られた作品たちなので、出題者の気持ちに寄り添い、その人が必要としている言葉をかけてあげている印象が強...
お題を送ってくれた人に短歌を作って返す。その作品はどこにも発表せず、その人だけのものとする。という条件で詠まれた作品百首を、出題者同意の元に集めた短歌集。 元は一対一の関係で贈られた作品たちなので、出題者の気持ちに寄り添い、その人が必要としている言葉をかけてあげている印象が強い。もうほぼ世界に一つだけの花じゃん!みたいな歌もあり、その直球さに時折ギョッとする。 同棲にマンネリを感じている人への「適温の愛を見つけたぼくたちは燃え尽きることなく抱き合える」や、念願の教師になるという人への「背を向けて板書しながらあなたにも翼があると教える仕事」は、出題者と同じ温度の手をポンと肩に置くようなあたたかさがあり好きだった。自分を忘れるほど老いた実家の犬との別れを考えると辛い、という人への「習性として老犬は大切なきみを記憶に埋めて隠した」は、懸命に穴を掘る犬の後ろ姿が見えてくるようだ。 個人的には優しい系よりも、「エアコンの壊れた部屋で兄さんと海の匂いの部位を見せ合う」の官能性とか、「抱き合っていても背中は空いていて愛は人間よりも大きい」「どの窓も割れているからあたたかくしてぼくという廃墟においで」の愛と寂しさの描き方が好き。「服を脱ぐたびにあなたは神様を辞めてわたしの獣になった」は、出題文も含めて名作だと思う。 百首目に置かれた「君という火種で燃えるべきつらくさみしい薪があるんだ、おいで。」は、個人的にはもう中島敦の「悟浄歎異」の一番好きな箇所、「彼は火種。世界は彼のために用意された薪」を連想せずにいられないが、描かれているのは真逆のナイーブさである。
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積読していた本を、長い入院明けに読んでみた。 『音を止め心の声を聴くために神があなたへくれた休息』 で知らぬ間に 涙があふれて、少し元気になれた気がする。
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歌人・木下龍也による短歌の個人販売「あなたのための短歌1首」から、100首を収録している。構成は右のページに依頼者からのお題。左のページに短歌が掲載されている。 ちなみに、この歌集の印税を著者は受け取らないという。短歌への対価はすでに依頼者から受けとっているという理由で、著者の...
歌人・木下龍也による短歌の個人販売「あなたのための短歌1首」から、100首を収録している。構成は右のページに依頼者からのお題。左のページに短歌が掲載されている。 ちなみに、この歌集の印税を著者は受け取らないという。短歌への対価はすでに依頼者から受けとっているという理由で、著者の真面目な人柄があらわれていると感じた。 何首か紹介したい。 “そのラブレターに足りないのは勇気という唯一買えない切手” “違いとは間違いじゃない窓ひとつひとつに別の青空がある” “読み終えて漫画の外にいるきみもだれかを救う主人公だよ” “部屋にいる以外をしない雨の日の炎のようなあなたの寝癖” “悩むとは想像力に火をつけて無数の道を照らすことです” “「まっすぐ」の文字のどれもが持っているカーブが日々にあったっていい” “絶望もしばらく抱いてやればふと弱みを見せるそのときに刺せ” “しあわせをひとりひとりに配り終え手ぶらで去ってゆく十二月” この歌集で一番好きな短歌。十二月がめちゃくちゃかっこよく思えた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
自分が感じていた不安や思いを言語化してくれていて、かつ新しい考え方を短歌で提起してくれている。 本を読むという行為よりもマンガを読む時間の方が圧倒的に長い私にとって、 この本はとても読みやすいのに 意味を理解しよう、真意は何かと考えて 自分なりの解釈で「なるほど!」と思えることがこの本の面白い所だと思った。 1番心に残った短歌は 「愛された犬は来世で風となり あなたの日々を何度も撫でる」 今世は私がたくさん撫でてあげるから 来世では見守っていて欲しい。 その後すぐに生まれ変わって、 また私と一緒に生きて欲しい。 そんなことを思っていたら、 ふと『恋するMOONDOG』を思い出した。
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SNSで見かけて購入。 初めて短歌を面白いと感じた。 短歌以外にも触れたことのないジャンルに挑戦してみようと思うきっかけになりました。
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この書影の下(ブックカバーを外した本当の装丁)にちょっとした感動がある。もちろん中身もいい。現代歌人の中ではナンバー1。
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木下龍也が依頼者寄せられたお題をもとに短歌を作り、封書にして送るプロジェクト『あなたのための短歌一首。』このプロジェクトで作歌した中から100個のお題と短歌を選定しまとめた短歌集。 お題のジャンルがバラバラで、日常にある些細なものから大きな悩み、人生についてまで。様々なジャン...
木下龍也が依頼者寄せられたお題をもとに短歌を作り、封書にして送るプロジェクト『あなたのための短歌一首。』このプロジェクトで作歌した中から100個のお題と短歌を選定しまとめた短歌集。 お題のジャンルがバラバラで、日常にある些細なものから大きな悩み、人生についてまで。様々なジャンルのお題とそれに対する依頼主の気持ちを汲み取り、反映させた短歌の相互関係が面白かった。 勿論本人にはなれないから、そのお題に100%沿っている訳ではないと思う。しかし木下さんは依頼者の気持ちを出来るだけ汲み取って作歌したのだろうと勝手に妄想している。 なんというか多くの人の人生を覗いた気分で楽しかったです。私が印象に残った短歌は次の5つ。 012「とぅ〜ゆ〜♪のあと訪れる暗闇で再起動する日々の死にたさ」 032「飛び方を教えてくれてありがとう空はこんなに重いんですね」 033「『悩む』とは想像力に火をつけて無数の道を照らすことです」 087「キスのときくさかんむりを外されて明かりが胸の奥に萌え出す」 094「絶望もしばらく抱いてやればふと弱みを見せるそのときに刺せ」
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「いじわるな星だとしても母さんがそこにいるなら生まれてみるよ」 この一句をきっかけに本を手に取りました。 短歌の依頼文にワクワクを感じたり苦しくなったり悲しくなったりして、短歌集ながら読み終えるのにかなり時間がかかりました。 自分の状況によってグッとくる句が変わりそうなので、大事...
「いじわるな星だとしても母さんがそこにいるなら生まれてみるよ」 この一句をきっかけに本を手に取りました。 短歌の依頼文にワクワクを感じたり苦しくなったり悲しくなったりして、短歌集ながら読み終えるのにかなり時間がかかりました。 自分の状況によってグッとくる句が変わりそうなので、大事にとっておいて何度も読み返したい本です。
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第107回アワヒニビブリオバトル&全国大会予選で紹介された本です。ハイブリッド開催。@全国大会予選。 2023.12.29
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いじわるな星だとしても母さんがそこにいるなら生まれてみるよ 「悩む」とは想像力に火をつけて無数の道を照らすことです もかぐほどしずむかなしい海だから力を抜いて浮かんでいてね かなしまは寒がりだからすぐきみの胸の暖炉に集まるんだね 燃えているようで溺れているようであなたのキ...
いじわるな星だとしても母さんがそこにいるなら生まれてみるよ 「悩む」とは想像力に火をつけて無数の道を照らすことです もかぐほどしずむかなしい海だから力を抜いて浮かんでいてね かなしまは寒がりだからすぐきみの胸の暖炉に集まるんだね 燃えているようで溺れているようであなたのキスは魔法でしたね 細長い花瓶のために一輪は葉を落とされて立ったまま死ぬ 死者たちは重石をくれる大切なあなたが追ってこないように、と かんたんにひらいてしまう思い出のつぼみを根ごと枯らせてほしい しあわせをひとりひとりに配り終え手ぶらで去ってゆく十二月
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