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あちらにいる鬼 の商品レビュー

3.8

75件のお客様レビュー

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2021/12/11

 女との関係を妻に口述筆記させた檀一雄の『火宅の人』も壮絶でしたが、寂聴さんが亡くなった直後のせいか、娘が父親の愛人を描いた作品もまた壮絶でした。  父、母、愛人、3人の女の視点で書いているのですが、著者の「分身」である娘がどうやって取材したのだろうと思いつつ読み進めました。  ...

 女との関係を妻に口述筆記させた檀一雄の『火宅の人』も壮絶でしたが、寂聴さんが亡くなった直後のせいか、娘が父親の愛人を描いた作品もまた壮絶でした。  父、母、愛人、3人の女の視点で書いているのですが、著者の「分身」である娘がどうやって取材したのだろうと思いつつ読み進めました。  読み通すのが辛くもありましたが、瀬戸内晴美を捨てて寂聴となった得度の様子をテレビ報道や新聞記事で見た際に感じた生々しさといかがわしさの理由も、この十数年ほど寂聴さんの話を聞いて感じるある種の清々しさの理由も、娘がどうしようもない父親を正面から見据え、作品として描くことができた理由も、なんとなくわかった気がします。

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2021/11/30

寂聴さんがお亡くなりになり知った本作。 本作がどこまで事実なのかはさておき、篤郎はどーしようもないクズだなと。 でもそれでも別れない妻の笙子と不倫をやめないはるみの気持ちもなんとなくわかる気がする。 はるみが出家してからは、篤郎だけではなく家族全員同志のような関係性になったような...

寂聴さんがお亡くなりになり知った本作。 本作がどこまで事実なのかはさておき、篤郎はどーしようもないクズだなと。 でもそれでも別れない妻の笙子と不倫をやめないはるみの気持ちもなんとなくわかる気がする。 はるみが出家してからは、篤郎だけではなく家族全員同志のような関係性になったような雰囲気だけど、そこまでいくほど強い関係性というのも不思議な縁だと思う。 女性の燃えるような、燻ってるようななんとも形容しがたい心を丁寧に描いていて面白かった。

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2021/11/27

瀬戸内寂聴氏が永眠されたニュースを聞いた次の日、何故かKindleのおすすめに現れたこの本。 正直いうと、寂聴さんの小説はそれほど好みではなく、この作者のことも、そして父のことも知らなかった。 自分の父親と母、愛人をめぐる話を娘が書いた小説。タイトルの「鬼」の文字に惹かれ、誰のこ...

瀬戸内寂聴氏が永眠されたニュースを聞いた次の日、何故かKindleのおすすめに現れたこの本。 正直いうと、寂聴さんの小説はそれほど好みではなく、この作者のことも、そして父のことも知らなかった。 自分の父親と母、愛人をめぐる話を娘が書いた小説。タイトルの「鬼」の文字に惹かれ、誰のことを指しているのだろうかと興味を持った。 読んでいる最中も、なぜ自分はこの本を読んでいるのだろうか?と何度も思う。 寂聴さんが生前、恋とは雷に打たれるようなもの、突然やってくる、逃げられない。と語っていたが、そういう人生を歩んだ人達の話が静かに進んでいる。声を荒げるでもなく、泣き叫ぶでもなく、相手の出方を感じ、男を通して妻や愛人が互いに思う。この3人は不思議な関係だ。 小説としてはそれぞれの目線で交互に語られ面白いと思うが、どうしてもモデルとなった寂聴さんが頭をかすめ小説として楽しめなかった。 人間の理性と動物的な本能とを併せ持つ男と女とそれに振り回されてないように振舞う女。それぞれの視点から描く心の動きの表現は良いと思う。 もう亡くなってしまった人達を総称として「鬼」と言っているのか、娘は何を思って「鬼」と言ったのか? どんな思いでこの小説を書いたのだろうか? あくまでも小説の中の人物であっても、モデルである人物が見え隠れする。

Posted byブクログ

2021/11/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

複数人を愛してしまうことは起きうる、全然不思議なことではないと、もともと思わされることがあったりで、こういう関係を選ぶ人生もあるんだろうと納得。私はどの立場も務まる器ないなぁとも思う。一緒にいたいと強烈に思わせてくれる井上光晴さんは、どんな魅力のある人物だったのか想像力逞しくなります。

Posted byブクログ

2021/11/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

妻を、そして瀬戸内晴美を愛しきった井上光晴。その完全なる三角関係を描いた娘、井上荒野。 これこそが業なのだろう。そして愛なのだろう。 父と愛人と、母の、その関係を娘が小説として描く。 同性として見る母と父の愛人の、それぞれの性と生。女として娘として見てきたもの、そこにあったのは何だったのか。 親の性を描くこと。愛情とか同情とか嫌悪とか憎悪とか。そういう言葉に当てはまらない何かを描くには小説という形しかありえなかったのだろう。 少し離れた外側から描いているのに内側からの声が聴こえる。 描く者と描かれる者の、潔い覚悟。 愛というものは一筋縄ではいかないものだ。どうやったってこの域に達することはできそうにないけれど、この道を通ったものにしか見えない景色は、ちょっと見てみたいような気がする。

Posted byブクログ