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あちらにいる鬼 の商品レビュー

3.8

75件のお客様レビュー

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2022/10/19

実在の人物がモデルであると、リアリティが増して楽しめる場合と、実在の人物が物語を邪魔して楽しめない場合とがある。 この小説は後者だった。 井上荒野は好きな作家だし、ましてや、瀬戸内寂聴と井上光晴を描いた小説なら、他にも増して楽しめると思ったのだが。 私はどうやら井上光晴が嫌いの...

実在の人物がモデルであると、リアリティが増して楽しめる場合と、実在の人物が物語を邪魔して楽しめない場合とがある。 この小説は後者だった。 井上荒野は好きな作家だし、ましてや、瀬戸内寂聴と井上光晴を描いた小説なら、他にも増して楽しめると思ったのだが。 私はどうやら井上光晴が嫌いのようだ。 こういう人は嫌いなのだ。 才能があって嘘つきで哀れなセックス依存症のような男のいいところも悪いところも全部許容して愛することのできる懐の大きい2人の女性は現実に存在するだろうし、その2人が自分の母と同業者なら小説家として描きたい、描かねばならないと思うのも当然だと思う。 でもその真ん中にいる井上光晴への気持ち悪さによって小説として楽しめないという結果になってしまった。 井上光晴のドキュメンタリー映画「全身小説家」は見てみたいと思う。 そして、やっぱりこの人嫌いだなと確認したいような気がする(笑)

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2022/10/10

みはると笙子 2人の視点で交互につなぐ、白木をめぐる生活。 その人と深く分かり合った2人だからこそ、話したいことがある、けれど決して触れない部分を持つ、何だか分かる気がした。

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2022/10/07

もっとドロドロしたものかと思っていたけど 読み終えたら妙な清々しさ とても強い女の人たちだな 恐れ多くも目標にしたいと思った

Posted byブクログ

2022/10/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

帯に瀬戸内寂聴の言葉がある。 「作者の父井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった」 これは、「実話です」と言ってるようなものであり、最初からそう思って読むことになる。 白木の妻笙子の視点と、白木の愛人みはるの視点が交互に描かれている。 みはる。。瀬戸内寂聴って昔は晴美だったな、と思い、子供を置いて恋人と逃げてきた過去や、作家という職業、出家して寂光になるところなど、 あの姿を想いながら読んでしまう。 そして、その読み方で、いいのだと思う。 白木の妻、白木の愛人、それぞれの視点からなのだが、本当は白木の娘の視点なんだなと思う。 そして、父である白木の肖像なのだと思う。 笙子のタバコや、海里の自転車、白木が靴下を脱ぐところ、など、ありありと目に浮かび、 あまり詳細に書かれてない部分を、私自身の感情が埋めていくように感じた。 若かった日々から、命つきるまで、さらに遺骨のゆくえ、ラストのモスクワの女の話、その姿が寂光にもみえた階段、静かに心に染みていくようだった。 ところで、私は作者は「こうや」だと思っていて、「あれの」だと初めて知った。 しかも本名だそうで。父は娘に「荒野」と名付けたんだな、、、と、秋晴れの空を眺めながら、思った。

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2024/02/17

不倫関係にあったという作家の井上光晴と瀬戸内晴美(寂聴)。井上の実娘である著者が、自身の母を含めた三角関係を描いている。 物語は時系列で、愛人みはると妻笙子の視点から交互に作家白木篤郎との日々が語られる。とにかく篤郎の女性関係のだらしなさ、無神経さに呆れてしまう。今でいうなら一...

不倫関係にあったという作家の井上光晴と瀬戸内晴美(寂聴)。井上の実娘である著者が、自身の母を含めた三角関係を描いている。 物語は時系列で、愛人みはると妻笙子の視点から交互に作家白木篤郎との日々が語られる。とにかく篤郎の女性関係のだらしなさ、無神経さに呆れてしまう。今でいうなら一種の発達障害ではないか。妻は内心穏やかではなかったと思うが、淡々と受け止めて家族として変わらぬ生活を続ける。 やがてみはるは、不倫の清算のため出家を決意。最後に一緒に風呂に入り、髪を洗ってもらう別れの場面は美しく、この物語のハイライトだろう。それを男の娘が書いていると思うと胸がふさがれる。 後年は、みはると笙子は妻と愛人という葛藤を超えて、ある意味友人のようなふしぎな関係になっていく。 これまでに何冊か読んだ著者の小説では、肩すかしみたいな感想を抱くことが多かったが、今回は一番良かった。ラストも良かった。 自分の両親と文壇の大御所。悪し様には書けないだろうし、キレイごとになってる感はあるが、それでも並々ならぬ覚悟で向き合ってる迫力が伝わってきた。

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2022/09/03

井上荒野にとって、「理想の正史」がこの作品なのだと思った。父、母、娘(自身)、愛人‥‥全ての人を許し救いたかったのだと理解したい。これを書ききった作者の業こそが夜叉だと感じたし、崇敬した。 ただ‥‥瀬戸内寂聴はこれによってめちゃくちゃトクしてないか?未だに「出家」の選択はセルフ...

井上荒野にとって、「理想の正史」がこの作品なのだと思った。父、母、娘(自身)、愛人‥‥全ての人を許し救いたかったのだと理解したい。これを書ききった作者の業こそが夜叉だと感じたし、崇敬した。 ただ‥‥瀬戸内寂聴はこれによってめちゃくちゃトクしてないか?未だに「出家」の選択はセルフプロデュースの一環にしか思えないのだけれど、ここでも美化されすぎてない?

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2022/08/21

笙子もみはるもどうして自分のことを冷静に距離を置いて見ていられるのだろう。白木篤郎という人がどう思っていたのかも、二人の口からしか語られないが、なんとなくこうなんだろうなと思えてくるところがすごい。自分には考えられないこういう愛の形、夫婦の形もあるのだと思った。

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2022/08/10

最後の笙子さんの章が、なんとも言えず切ない、、 私のような凡人にははかり知れない愛の世界かな、 とてもよかったです

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2022/08/02

好きになってしまった、 そばにいると決めてしまった、苦しいのかもしれないが穏やかな日が続いて、 ある日、心が勝手に夫を嫌いになることを決めてしまった時に、夫ががんで命が長くないことがわかる… この妻の気持ちの描写が胸に残る。 夫の不倫相手と妻の不思議な関係。 不思議なのは「どうし...

好きになってしまった、 そばにいると決めてしまった、苦しいのかもしれないが穏やかな日が続いて、 ある日、心が勝手に夫を嫌いになることを決めてしまった時に、夫ががんで命が長くないことがわかる… この妻の気持ちの描写が胸に残る。 夫の不倫相手と妻の不思議な関係。 不思議なのは「どうして仲が良いのだろう」という点ではなくて、どうしてこんなに正直な気持ちが通じ合う気がするのだろう、ということ。

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2022/07/15

不思議な関係の小説だが、何重もの心理の襞を感じる。心理描写、状況を示す比喩の言葉の選び方にもハッとさせられ、描くということへのプロとしての凄みを見せつけられた。2人の主人公のどちらの視点にもすっと入り込めてしまうのも描き方の妙だろう。作者はこの実話の関係者であるわけだが、その立場...

不思議な関係の小説だが、何重もの心理の襞を感じる。心理描写、状況を示す比喩の言葉の選び方にもハッとさせられ、描くということへのプロとしての凄みを見せつけられた。2人の主人公のどちらの視点にもすっと入り込めてしまうのも描き方の妙だろう。作者はこの実話の関係者であるわけだが、その立場ならではの作者にしか書けない小説であるとともに、その立場を超えて作品に昇華させているところに、やはり凄みを感じる。そして心の中の真実が語り尽くされないことで、現実と地平が繋がっているような気がした。

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