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失われた岬 の商品レビュー

3.5

34件のお客様レビュー

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2023/09/17

久しぶりの篠田作品。 圧倒されんばかりの執筆エネルギーは言うまでもなく、近未来小説としての出来上がりとあって、ずしんと来た。 かつて読んだ「絹の変容」「弥勒」の系統に属し、私の好みともいえる展開とテーマ。 表題「失われた・・」のは北海道にある岬で行われた研究結果・・が失われた?...

久しぶりの篠田作品。 圧倒されんばかりの執筆エネルギーは言うまでもなく、近未来小説としての出来上がりとあって、ずしんと来た。 かつて読んだ「絹の変容」「弥勒」の系統に属し、私の好みともいえる展開とテーマ。 表題「失われた・・」のは北海道にある岬で行われた研究結果・・が失われた?或いはそこで行われた結果、数々の命が失われた?或いは研究の嚆矢となった高樹博士の功績、研究の意図するものがゆがんだ方向に行った?色々考えさせられる。 当初登場する美都子と消えた友人清花、異様な顔面野持ち主心理療法士の岡村と消えた恋人 肇子の話が前面から後退し、20年後に飛び、ノーベル賞作家一ノ瀬の話になる。 読み始め、このボリュームに圧倒されただけに、広げ過ぎの危惧は感じたものの、先述した岬研究所の高樹博士と関わる山本。その製薬会社の功罪を煎じ詰めるのはこれだけの裾野が必要だったのだろう。 後半、3割は当初のなぞ解きを再現しつつ、製薬会社がなぜこの原野に産するハイマツ、菌が関与する微妙な自然の生体作用に気付き、薬学の学問としての精緻性を逸脱した神秘的原始世界へ逆行していったかを紐解く。 たまたま訪日したストラうヴに触発された山本ら4人が癌サバイバーへの治療の過程で、制癌効果を見つけ、更に依存症完治効果までも至った。 脳への報酬体系への作用は画期的であり、「平穏」を意するサラームと名付けた呼称通り、【薬物が抜けた清明なる意識】なやや甘さすら感じさせる行き辛さの概念を突き抜けた呪術めく宗教色の世界であった。 穏やかに過ごして行けたはずの岬の秘地が思いがけず日の目にさらされたのはノーベル賞作家の愚挙とも言える結果。 崩壊があっという間に進み、薬類規制の強い日本と大きく異なる海の外から利権に長けた輩の濁流がなだれ込む。 金原がいみじくも語った通り「あの地に神無き信仰の境地を作り上げてしまった」ことは最早、これまでと悟った結果だろう。 中東やヨーロッパに見られる独立型修道院に見られるほど強健な精神の持ち主は日本では難し過ぎたのだ。 近未来、2029年という、執筆後10年先で結ばれる情景は決してディストピアの様なものではなく、イスラムテロ、大陸間弾道ミサイル、北鮮とロシアの協働など「自分に関係ない」と思う神経が優位な我が国の明日を暗示している。 白頭山爆発のラストはなんか、ぴったりくるなぁ。 最近、村上氏の未来小説を再読してきたこともあって、彼や辻村氏の世界観とは異なった篠田氏。桐野氏と同じ系列に属する匂いが強くした。 どちらも読み手を堪能させ、考えさせてくれる。

Posted byブクログ

2023/07/20

話が長過ぎる。そのなかでテーマが少しづつ変わっていく。 これを書く作者のエネルギーに驚かされる。 後半は、飛ばし読みになってしまった。 この小説のように世界は恐ろしいものになっていくのか?世界の過去に恐ろしいものがあったと作者はこれだけいっているのだから世界の将来もおなじになるの...

話が長過ぎる。そのなかでテーマが少しづつ変わっていく。 これを書く作者のエネルギーに驚かされる。 後半は、飛ばし読みになってしまった。 この小説のように世界は恐ろしいものになっていくのか?世界の過去に恐ろしいものがあったと作者はこれだけいっているのだから世界の将来もおなじになるのか。

Posted byブクログ

2023/07/17

3分の1くらい読んで脱落。 話が遅遅として進まず、ファンタジーな香り。 うーん。 ハッピードラックにハマる話??

Posted byブクログ

2023/04/30

前半あたりまでは徐々に岬の謎が分かってくる感じが面白く読み進められたが、終盤はダレた。編集者が聞き取っていく過去の証言には紙幅を使いすぎだと思う。読まされ感あり。設定と導入部が面白かっただけにもったいない。

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2023/04/14

北海道の岬での薬草栽培を巡る近未来小説。 物語は三つに分かれているように思う。 前段としては岬に消えてゆく人の関係者視点でのミステリアスな現代の物語。 メインはノーベル賞作家が失踪したことで岬での真相を暴く編集者の近未来のエンターテイメント的な物語。 最後は編集者が岬の歴史をた...

北海道の岬での薬草栽培を巡る近未来小説。 物語は三つに分かれているように思う。 前段としては岬に消えてゆく人の関係者視点でのミステリアスな現代の物語。 メインはノーベル賞作家が失踪したことで岬での真相を暴く編集者の近未来のエンターテイメント的な物語。 最後は編集者が岬の歴史をたどり現代社会の問題に対する哲学的な解を求める戦中~戦後の回顧録。 近未来の日本の立ち位置が現在と変わっていないこと、むしろじわじわ悪化していることがリアルっぽくて怖かったです。 それにしても不穏で不安な骨太な小説でした。

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2023/03/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

最初はごく自然を愛するやれハーブだの持たない暮らしだのから始まり、徐々に宗教チックな物語化と思ったらすごく壮大な話だった。 戦時中~近未来までの話がまさか、ここまでつながっているとは。 あと岬って何のことだろうかと思ていたら製薬が関係していたなんて…とか とにかく予想以上にスケールがでかい。 薬物中毒等でもう人間として終わってると言ってしまっても過言ではない人々が 欲望を全て失う代わりに聖人のようなある種の廃人間になっていく様、という言葉がぴったりなのかもしれないけれど。 読み進めるうちに、ふと原作版ナウシカの「清浄と汚濁こそ生命だ」というセリフと読みながら思い出した。 人間ってまさに清浄と汚濁だ。

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2023/02/17

松浦美都子の友人・栂原清花が北海道に転居後「岬に行く」と言い残し失踪。 美都子より四歳年上で人間的に尊敬していた友の突然の変貌。 かたや20年後ノーベル文学賞を受賞した日本人作家が「もう一つの世界に入る」と授賞式の前日に失踪。 彼らが向かう北海道の僻地に佇むカムイヌフ岬に一体...

松浦美都子の友人・栂原清花が北海道に転居後「岬に行く」と言い残し失踪。 美都子より四歳年上で人間的に尊敬していた友の突然の変貌。 かたや20年後ノーベル文学賞を受賞した日本人作家が「もう一つの世界に入る」と授賞式の前日に失踪。 彼らが向かう北海道の僻地に佇むカムイヌフ岬に一体どんな秘密が隠されているのか真相を知りたい一心で読み進めた。 カルト、怪しい薬草、不老不死、人を襲うヒグマ、次から次へと不穏な単語が登場するたびに怖気立つ。 前半はミステリー色が濃く面白いが終盤は壮大さが増し難解に。 世界の終末を予感させる読後。

Posted byブクログ

2023/01/06

600頁弱の分厚い本。カルト教団の理解不能な教理が面々と綴られるのかとお思いきや、後半は一辺して薬物問題。追いかけてきた人たちがあっという間に表舞台から去り、編集者たちが謎を掘り下げていく。物語というより、郷土史のような側面があり、個人的には後半は長かった。ラストも特段に何事もな...

600頁弱の分厚い本。カルト教団の理解不能な教理が面々と綴られるのかとお思いきや、後半は一辺して薬物問題。追いかけてきた人たちがあっという間に表舞台から去り、編集者たちが謎を掘り下げていく。物語というより、郷土史のような側面があり、個人的には後半は長かった。ラストも特段に何事もなく、なんだか物足りない幕切れ。ここまで追いかけてきた岬はなんだったんだろうと、失われたのは時間だったかも。

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2022/11/17

戦争前から過去にわたる長い期間、岬にまつわる生薬の謎を解いてゆく長編。 冒頭はサスペンス的に後半は薬の開発について。 将来の日本の様子や諸外国の様子の描かれかたが篠田さんらしい批判を映したものになっておりとても共感した。 欲が抑えられないのは不幸だけど、何も欲しなくなるのも不...

戦争前から過去にわたる長い期間、岬にまつわる生薬の謎を解いてゆく長編。 冒頭はサスペンス的に後半は薬の開発について。 将来の日本の様子や諸外国の様子の描かれかたが篠田さんらしい批判を映したものになっておりとても共感した。 欲が抑えられないのは不幸だけど、何も欲しなくなるのも不幸に見える。どちらも病に思えてしまう。 欲深い大国によって今現在侵略戦争が起きているけど、これもまた欲が抑えられない病なんだろうな。 人間って愚かだな。 前半の神秘的な話が(大変面白い) 後半は記者が取材して得た情報のみになる。後半が主な説明なのだけど長いうえに知りたかったことがかかれなかったので★3つ

Posted byブクログ

2022/09/16

高潔な女性が人知れず北海道に隠棲する。そんな些細な始まりは予想もしなかった展開とスケールの大きな広がりに発展。ミステリでもないのに、久々にページを貪りました。秀作です。

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