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失われた岬 の商品レビュー

3.5

34件のお客様レビュー

  1. 5つ

    2

  2. 4つ

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  3. 3つ

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  4. 2つ

    2

  5. 1つ

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2022/05/13

な、長かった。そして重かったです、物理的にも、内容的にも。 ほんの十数年先の近未来から戦時下まで。時間軸も長くて、なかなか歯応えのあるお話でしたが、倦まずに読破できました。ただね、読んでて楽しくなる内容ではなくて。落ちぶれて、近隣諸国からカツアゲ的に略奪されまくっている日本が日...

な、長かった。そして重かったです、物理的にも、内容的にも。 ほんの十数年先の近未来から戦時下まで。時間軸も長くて、なかなか歯応えのあるお話でしたが、倦まずに読破できました。ただね、読んでて楽しくなる内容ではなくて。落ちぶれて、近隣諸国からカツアゲ的に略奪されまくっている日本が日常の世界なんですよね。北海道とか、土地も外国人に買われちゃってて。なんか、近いうちにこうなっちゃいそうで、もしかしたらすでになっちゃってるかも、みたいな暗澹とした気分に陥りつつ、タイトルの「失われた岬」の謎を追っていく。 岬で秘密裡に栽培されていた違法薬物。「違法」ってことになってますが、なんというか、効果は明らかなのに、西洋の薬学のようにはエビデンスがとれないために許認可の流れに乗せられない代物。「サラーム」と名付けられたこの薬は、覚醒剤など違法なものから処方薬のような合法のものまで、薬物依存で不可逆的に器質的変化を来した患者の脳をリセットできるという夢のような薬。だがなぜか、原料の植物がこの岬でしか育たないが、ヒグマや植生によって、この岬には容易に近づけない。長年、守られてきた岬だったが、ノーベル文学賞を受賞した作家が関わったことで、その存在が明らかになりやがて外資に目をつけられてしまう。 いや、あらすじをまとめるのもニコには荷が重い。 そして、結末もひたすら暗いです。文字通り、暗雲が垂れ込めてきます。 だがオススメです。根性すえてどうぞ。

Posted byブクログ

2022/04/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

友人夫婦、若手実業家の恋人、ノーベル文学賞受賞作家が次々に謎の失踪。 彼らは北の、「とある岬」に向かったことがわかる。 どんな理由で、なぜ北海道のこの岬だったのか、その真実を追うストーリー。 子供は親を若手実業家は恋人を探しに岬へ向かう。熊がでるこの土地は地元の人でも近寄らない。 ハイマツだらけの獣道のような一体を歩き、必死に探しに行く家族や友人。筆力のある著者の緊張感のある描写は、若手実業家が熊に襲われるシーンでは、リアルで思わず本を閉じてしまいたくなるほどだ。 時代は20年後、ノーベル平和賞を受賞した作家もこの岬へ向かい行方不明に。 この岬に何があるのか、謎が更に増していく。 やがて、この岬は特殊な力がある風土で動植物から新薬を作っていることがわかる。 そこは、静寂な不老長寿の死の国だった。 岬へ向かい「向こうの世界」へ足を踏み込んだ人、その人を助けたい人、 戦時中の薬剤会社、研究者、恋人を救いたい男、それぞれの思いと欲望が歴史や文化、哲学とともに複合的に絡み、約20年の時を経て謎が少しずつ紐解かれていく。 人や社会に役立てたい個々の思いは、時の流れと共に歪んだ物欲や保身に変わっていた。それは人の命を奪い、自然や産業を壊し、領土の奪い合いにもなることも。 物語の終焉は、隣国との緊張感が更に高まっている近未来だ。 謎の岬から国家間の緊張状態が深刻化するまで、時代を大きく渡り物語は展開される。 生きることの辛さや、生きるために闘う、その思いの先にあったものとは、、、 ここに描かれる人々の「欲」や「念望」「苦しみ」を通して人間的に生きるとは?今、その時代を生きることは?を根底から考えさせられる長編大作。

Posted byブクログ

2022/04/17

前半は緊張感あふれるミステリーやったけど、後半になるにつれて説明的に時系列が語られるだけになり、面白くなくなっていった。

Posted byブクログ

2022/03/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

嫌な未来がいっぱい描かれていて 暗い気持ちになったが。 物語自体は謎が多く、冒険心がくすぐられ 楽しく、グイグイ読めた。 苦痛を取ろうとしたら人間性も 失わなければならないとしたら…… 難しい選択やなー。

Posted byブクログ

2022/03/19

前半は「これは宗教にハマっちゃう話だ」と思わせるのだけれど、読み進めていくとそんな単純ではなくて「いったいどんな結末が?」という感じで惹きこまれていくお話でした。 あらゆる欲が消えて悟りの境地に達するのが幸せか、はたまた、いろいろなものを抱えながらもそれを一つでも乗り越えること...

前半は「これは宗教にハマっちゃう話だ」と思わせるのだけれど、読み進めていくとそんな単純ではなくて「いったいどんな結末が?」という感じで惹きこまれていくお話でした。 あらゆる欲が消えて悟りの境地に達するのが幸せか、はたまた、いろいろなものを抱えながらもそれを一つでも乗り越えることに小さな達成感を得るのが生きる意味なのか、なかなか深いテーマでもあり。 岬に関するダイナミックかつ静かな描写は、昔、行った北海道のいくつかの岬を連想させます。知床なんかはまだまだ未開の地だったなあ、と。 それにつけても、今のウクライナ侵攻を予見したかのような時代背景の設定に驚愕。スゴイ本です。

Posted byブクログ

2022/02/19

薬草の方薬をトリガーとして、大東亜戦争前から2040年代までの時間を行き来しながら、人の生き方を問い直した作品。 訴求力に欠ける。いかんせん長すぎる作品。 (内容紹介)  以前から美都子が夫婦ぐるみで付き合ってきた、憧れの存在である友人・清花。だが近年、清花夫妻の暮らしぶりが以...

薬草の方薬をトリガーとして、大東亜戦争前から2040年代までの時間を行き来しながら、人の生き方を問い直した作品。 訴求力に欠ける。いかんせん長すぎる作品。 (内容紹介)  以前から美都子が夫婦ぐるみで付き合ってきた、憧れの存在である友人・清花。だが近年、清花夫妻の暮らしぶりが以前とは異なる漂泊感を感じさせるようになり、付き合いも拒否されるようになったのち連絡がつかなくなった。  清花たちは北海道に転居後、一人娘・愛子に「岬に行く」というメッセージを残し失踪したようだ。彼女の変貌と失踪には肇子という女性が関わっているようだが、その女性の正体も分からない。  時は流れ約二十年後の二〇二九年、ノーベル文学賞を受賞した日本人作家、一ノ瀬和紀が、その授賞式の前日にストックホルムで失踪してしまった。彼は、「もう一つの世界に入る」という書置きを残していた。担当編集者である駒川書林の相沢礼治は、さまざまな手段で一ノ瀬の足取りを追うなかで、北海道のある岬に辿りつくが――。  やがて明らかになる、この岬の謎。そこでは特別な薬草が栽培され、ある薬が精製されているようで……。  近未来から戦時中にも遡る、この国の現実の様相。

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2022/01/31

北海道の謎の岬へ向かう人々。 消えた友人の娘と彼女を探す美都子の章。 肉体も精神も損傷して、AIロボットとだけ心を通わせた岡村陽の章。 それぞれが探し求めた肇子とは? 近未来の日本では今危惧される隣国との関係を悪化させていた。その中で岬の謎を追う相沢は何を見つけたのか。人間の求め...

北海道の謎の岬へ向かう人々。 消えた友人の娘と彼女を探す美都子の章。 肉体も精神も損傷して、AIロボットとだけ心を通わせた岡村陽の章。 それぞれが探し求めた肇子とは? 近未来の日本では今危惧される隣国との関係を悪化させていた。その中で岬の謎を追う相沢は何を見つけたのか。人間の求める欲は自然界に何を及ぼすのか。 近未来サスペンスとして面白かった

Posted byブクログ

2022/01/28

読み始めて、暗い先行きを感じ気がおもくなった。 途中でやめずになんとか読了。明るい未来を目指したいと思った。

Posted byブクログ

2022/01/21

いつものことながら篠田先生は取材力がすごいなと感心してしまう。 読みながら「これってノンフィクション?」と思う。この事実が実際にあったのではないかと疑ってしまう。 嘘くさい部分が全くない。 本を読み終わると、自分の中で新しい知識の扉が開くような感じがする。賢くなったような気がする...

いつものことながら篠田先生は取材力がすごいなと感心してしまう。 読みながら「これってノンフィクション?」と思う。この事実が実際にあったのではないかと疑ってしまう。 嘘くさい部分が全くない。 本を読み終わると、自分の中で新しい知識の扉が開くような感じがする。賢くなったような気がする。自分が感じたことを検証していく過程がまた楽しい。 だから篠田先生の小説はいつまでも心に残り続けるのかなと思った。

Posted byブクログ

2022/01/06

北海道の日本海に面した小さな岬。ハイマツに陸路を絶たれたその場所へと消えていった者たち。 その岬を巡って、2007年の夫婦失踪から始まり、終戦間近から2029年の近未来までを描く壮大な物語。 600ページに届こうかというその物語は、それぞれのエピソードが散発的で半ば中弛みしかけ...

北海道の日本海に面した小さな岬。ハイマツに陸路を絶たれたその場所へと消えていった者たち。 その岬を巡って、2007年の夫婦失踪から始まり、終戦間近から2029年の近未来までを描く壮大な物語。 600ページに届こうかというその物語は、それぞれのエピソードが散発的で半ば中弛みしかけていたところ、終盤になって一気に引き込まれた。 過去の戦争と、近未来のディストピアが対比するように描かれ、その姿があまりにも似通っていることに暗澹とする。 文明を発展させる事は、破壊に向かっていくことでもあり、欲望はさらなる欲望を生み、他者を苛み、自らを引き返せない場所へと連れて行く。 人生の意味とは。人生に意味を求めることが間違っているのか。人が生きることとは。 作中の登場人物の意見は拮抗し、そのどちらの意見にも頷ける。 それでも、今現在の人間のありように少しでも疑問を感じているならば、この物語は強く、鋭く、深く心に響くに違いない。 年の初めに読むにふさわしい胸に残る物語でした。

Posted byブクログ