ある男 の商品レビュー
人は、過去に引きずられる形で現在があって、そしてそれは誰しもが必ず受け入れなければならない生き物としてのサガでもあって、ただ過去を過去として消化しきれず、それゆえにいまを生きることができない人も確かに存在している。その事実に直面したとき、諦観や甘受といった選択をする者もいれば、異...
人は、過去に引きずられる形で現在があって、そしてそれは誰しもが必ず受け入れなければならない生き物としてのサガでもあって、ただ過去を過去として消化しきれず、それゆえにいまを生きることができない人も確かに存在している。その事実に直面したとき、諦観や甘受といった選択をする者もいれば、異なる選択をする者たちもいる。いずれにせよ、私たちは過去の山積の上に日々を連ねていくことから逃れることはできない。これは「生き方」の物語だ。
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愛した相手の過去が偽りだったとき、その愛の所在はどうなる? 分かち合えた気がしたあの悲しみは、いったい誰のものだったのか? 偽らずには生き続けられなかった彼らのことを思うと、とても非難する気にはなれない。 そして自分の特権性を感じた。 恭一がうんざりするほど嫌な奴だったので、 ...
愛した相手の過去が偽りだったとき、その愛の所在はどうなる? 分かち合えた気がしたあの悲しみは、いったい誰のものだったのか? 偽らずには生き続けられなかった彼らのことを思うと、とても非難する気にはなれない。 そして自分の特権性を感じた。 恭一がうんざりするほど嫌な奴だったので、 正直であることを他人に強いてしまいそうなときには思い出そう。 里枝は亡き夫との思い出を宝物のように仕舞い込み、 城戸は開けたくない疑惑の蓋をそっと閉じる。 同じ人生を続けるための、それぞれのやり方。
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別人… そもそも誰かと知り合って友達になる、 恋人になる、 結婚する、 どんな時もそれほど過去を気にしないし もちろん生い立ち云々を聞こうと思わないし 実際聞いたこともない 長い付き合いのなかで幼少期の思い出話の中で初めて知ることもあれば、未だ知らないこともたくさんある それは...
別人… そもそも誰かと知り合って友達になる、 恋人になる、 結婚する、 どんな時もそれほど過去を気にしないし もちろん生い立ち云々を聞こうと思わないし 実際聞いたこともない 長い付き合いのなかで幼少期の思い出話の中で初めて知ることもあれば、未だ知らないこともたくさんある それはきっと私が普通に生まれてきて、 普通に家族がいて、 普通に育ってきたから そして、今まで関わってきた人たちが普通だったから… 二度くらい出てきた【普通】って言葉がすごく印象に残ってる 犯罪者家族である原誠が辛い経験を経て他人として生きたいと思うのはなんとなく理解できるが、 谷口大祐が偽ってまで他人として生きていく意味が私には理解できなかった そして、どうでもいいことだけど 私は香織が嫌いだなと思った…
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推理小説らしい「大どんでん返し」の様なものは 無かったが「愛」「差別」「善行」とは何か、 とても深く考えさせられた。 自分が今愛している家族や友人、恋人は、 果たして何を持って愛しているというのか、 何を持って愛されているのか。 一見非現実的な事のように思えるが、きっと 誰もが一...
推理小説らしい「大どんでん返し」の様なものは 無かったが「愛」「差別」「善行」とは何か、 とても深く考えさせられた。 自分が今愛している家族や友人、恋人は、 果たして何を持って愛しているというのか、 何を持って愛されているのか。 一見非現実的な事のように思えるが、きっと 誰もが一度は考えた事のある事で、 大祐の起こした行動を考えると「恐怖」と「羨望」 を感じた。 ただ、この私の「羨望」は自分の道がまだ見えていない若さ故だと思う。
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愛したはずの夫はまったくの別人だった。 このフレーズから想像したのは、どのような別人だったのか? きっと思いもよらない展開に吸い込まれるんじゃないかと期待してましたが… 推理小説のようなヒネリなんかは特に感じらませんでしたねぇ… 残りのページが少なくなってくるほどに、きっと最...
愛したはずの夫はまったくの別人だった。 このフレーズから想像したのは、どのような別人だったのか? きっと思いもよらない展開に吸い込まれるんじゃないかと期待してましたが… 推理小説のようなヒネリなんかは特に感じらませんでしたねぇ… 残りのページが少なくなってくるほどに、きっと最後は何か思いもよらないどんでん返し的な展開を期待してましたが、撃沈… 全体的に思い返せば、クライマックスは別人だった理由ですかね。 でも、小説としてはシンプルな理由に思える。 ドキドキ感もないし。 後の大半は、それぞれ登場人物の生活が淡々と語られているという印象でした。 自分には合ってなかったのか? 求めていた物と展開が違ったので気持ちの問題ですかね…
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自分の人生を脱ぎ捨ててしまいたい──そう思ったことはありませんか? どうやっても剥がしきれないレッテルから逃れる方法があるとしたら、あなたはそれを選びますか? 私ならたぶん歩かない人生を読み、人を測るための自分の中の物差しについて考えさせられました。 「幸せは自分の心が決める」と...
自分の人生を脱ぎ捨ててしまいたい──そう思ったことはありませんか? どうやっても剥がしきれないレッテルから逃れる方法があるとしたら、あなたはそれを選びますか? 私ならたぶん歩かない人生を読み、人を測るための自分の中の物差しについて考えさせられました。 「幸せは自分の心が決める」という価値観の底知れなさに震えます。
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「マチネの終わりに」が面白かったので、読んでみた。ある死んだ男が実は別人で、その妻から依頼を受けた弁護士が、男が本当は誰なのかを探すミステリー。結末が気になり、一気に読んでしまった。自分とは何なのか考えさせられた。
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「戸籍問題」「差別問題」などの社会的問題が重くのしかかってきた。 「犯罪者の子どもだから」「在日だから」という偏見は現実社会にも存在するし、「出自は関係ない」というのは綺麗事にすぎないのかなとも思ってしまう。 苦しんできた原誠が最後は幸せになれて何よりだし、里枝も悠人も救われた...
「戸籍問題」「差別問題」などの社会的問題が重くのしかかってきた。 「犯罪者の子どもだから」「在日だから」という偏見は現実社会にも存在するし、「出自は関係ない」というのは綺麗事にすぎないのかなとも思ってしまう。 苦しんできた原誠が最後は幸せになれて何よりだし、里枝も悠人も救われたのかなと。
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東野圭吾『手紙』にも通底する殺人を犯した親族の負わされた、あまりに重い運命。本書の主人公「ある男」Xは、その重さから逃れるために戸籍ロンダリングに手を出す。Xは九州で林業に就職し、そこで出会った女性と結婚し、そして4年足らずで死亡してしまう。その女性の離婚調停にかつて関わった弁護...
東野圭吾『手紙』にも通底する殺人を犯した親族の負わされた、あまりに重い運命。本書の主人公「ある男」Xは、その重さから逃れるために戸籍ロンダリングに手を出す。Xは九州で林業に就職し、そこで出会った女性と結婚し、そして4年足らずで死亡してしまう。その女性の離婚調停にかつて関わった弁護士・城戸が狂言回しの役回りだ。罪を犯す者の生得的、環境的要因に立法、行政府は不作為で、その結果の犯罪に対してだけ司法が断罪するという国家運営の欺瞞が著者の主題だったのだろうと思った。気になっていた本書。文庫化されて読めて良かった。
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もしも、あなたの愛する人が、 名前も違う、生い立ちも違う、語ってくれた思い出話も全部作り話だった…としたら、どうしますか? 愛した夫は、全くの別人だった。 亡くなってから明らかになる衝撃の事実を、どう受け止めるのか。 ー愛にとって、過去とは何だろうか? 文学的な美しい文面を...
もしも、あなたの愛する人が、 名前も違う、生い立ちも違う、語ってくれた思い出話も全部作り話だった…としたら、どうしますか? 愛した夫は、全くの別人だった。 亡くなってから明らかになる衝撃の事実を、どう受け止めるのか。 ー愛にとって、過去とは何だろうか? 文学的な美しい文面を味わいながらも、社会問題に触れつつ、ミステリ要素に引き込まれ、追い求めているうちに、気づいたら哲学者のように、過去とは何か?愛とは何か?思考を巡らす。 考えさせられ、心を揺さぶられ、泣かされる。 ページをめくっている間、読み終え本を閉じた後も、深く濃く、多方面からやられます。 作中の主人公が辿りついたもの。それを見て自分が思い至ること。 気になる方は、ぜひ〝ある男〟に手をのばしてみてください。
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