青空と逃げる の商品レビュー
安定の辻村深月、とても面白かった。あらすじを読んで不穏な話かな?と思ったが、主人公の母親とその息子が各地を転々とする中で、その土地の特色や住民との触れ合いが暖かく描かれておりほっこりする場面も多かった。特に主人公が「砂かけさん」に勤しむ姿は楽しそうで、自分も別府温泉に行ったらやっ...
安定の辻村深月、とても面白かった。あらすじを読んで不穏な話かな?と思ったが、主人公の母親とその息子が各地を転々とする中で、その土地の特色や住民との触れ合いが暖かく描かれておりほっこりする場面も多かった。特に主人公が「砂かけさん」に勤しむ姿は楽しそうで、自分も別府温泉に行ったらやってみたいと思った。 解説を読んで、確かに辻村深月は自分自身のライフステージに合わせて作品を描いているのだなとハッとした。子供が産まれた後に描かれた作品(朝が来る、クローバーナイト、本作など)のほうが日常っぽくて個人的に好き。
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読み始めて最初に思ったのは、この感じで本当にこの本の厚さ分のストーリー展開があるのかってこと。 結果的に、事件は一つだけ。 それに対して、親子が逃げる先々でのストーリーが展開。でも大きく物事が動くわけではなく、そこで人と触れ合い、どう思い、どう行動するのかがメイン。 おもしろくないわけではない。 最後まで読み切れたし、悲しい展開はない。 (その土地の人との別れは悲しい) 思春期少し前の息子と、母親の葛藤はあれど、なんとなく解せないのは、彼らが悪いわけではないのに、ここまで怯えて逃げる必要があるのかどうか。 旦那を庇って隠しているわけでもない。 被害者といえば被害者なのに、まるで殺人を犯した人が逃げているような心理描写が、なんだか最後までよくわからなかった。
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季節の変わり目か、やたらと眠くて読書のペースが落ちている。 月1のカウンセリングの時に、”先月は眠れなくて困ってたのに最近は眠すぎて困る”と話したら、”何か力が抜けたからでは”と言われて、個人的には「夏物語」のレビューで色んなことを吐き出せたことや、ブクログでたくさんのフォロワー...
季節の変わり目か、やたらと眠くて読書のペースが落ちている。 月1のカウンセリングの時に、”先月は眠れなくて困ってたのに最近は眠すぎて困る”と話したら、”何か力が抜けたからでは”と言われて、個人的には「夏物語」のレビューで色んなことを吐き出せたことや、ブクログでたくさんのフォロワーさんと、コメント欄を使って話せたことが大きいのでは、と思っている。 ストーリー:深夜に交通事故に遭った夫・拳(けん)が、失踪。しかも、夫が乗っていたのは助手席だった。では、運転をしていたのは…?妻・早苗(さなえ)と息子・力(ちから)にじりじりと迫る追手。逃げる母子。高知、兵庫、別府、仙台へと転々としながらも、その先々で人情に触れながら真相に近づいてゆく母子の、力強く勇気をもらえる作品。 ブラック辻村ファンとしては、ちょっと刺激が少なめ。 もちろん、起きている事件としてはブラックなのだけれど、母子が逃げる過程で描かれている場面の一つ一つは、まるで旅行先で見るような美しい風景と心温かい人達の描写で、この母子の身に降りかかっている事件そのものを忘れてしまいそうになる。 そんな旅行のような気分でぽやぽやと読みすすめていると、突然物語がぐ、と動く。次の街へ行く瞬間、その街を出る瞬間だ。 この瞬間、ぽやぽやとした気分は一掃され、半分を過ぎたあたりから一気読み。あれ?読書のペース落ちてたんじゃなかったのか自分! 家族に振り回される力と、息子を振り回して申し訳ないと思いながらも、力と共に必死に生きようとする母・早苗が交互に語り手となって物語がすすんでゆく。見知らぬ土地と、その土地の見知らぬ人の温かさに、何度も泣きそうになる。 そういえば、学生の頃。伊坂幸太郎が好きすぎて一人仙台へ旅立ち、仙台で先行上映された「アヒルと鴨のコインロッカー」を観に行って、ロケ地を巡ったり、伊坂さんがよくいると言われているスタバへ行ってみたり、した。東京へ戻る日、方向音痴のわたしはちっともバス乗り場へ辿り着けなくて、やっと辿り着いた時にはバスは出たばっかりで、数十メートル先を曲がってしまった。諦めようとしていたら、バス乗り場のおじさんに「まだ間に合うよ!」と言われて走っていたら、今度はタクシーの運転手さんに「乗りな!さっきから見てて間に合うかなって気になってたんだ!」と言われ、信号待ちしてるバスのぎりぎりのところまで行ってくれた。お金を払おうとしたら「いいからいいから!」って言って降ろしてくれて、バスが信号待ちしてる路上でなんとかわたしはバスに乗ったわけだけど、運転手さん的にはやってはいけないことだったらしく、渋い顔をしていて。だから東京着いてから、お客さんが全員いなくなるのを待って、運転手さんに、ちゃんと謝罪とお礼をしたんだよね。 その時のことをふと思い出した。未だにエモい。 旅って一時的なものだし、この時に助けてくれたおじさんたちのことははっきり言って顔も覚えてないし、たぶんもう会えないだろう。それでも、これほど強烈に残ってる。 この母子がしていたことはもちろん旅じゃない。でも、見知らぬ土地の、見知らぬ人からの好意というのは、たぶん見知った土地でのものとは別格で、本当に、ずっと心の中に残ってる。 この二人にとって、特に力にとって、この逃避行がどんなものだったか。どんな風にそれが彼の中に残るのか。 この作品のタイトルは「青空と逃げる」 青空「と」、となっているのが、最後にすごく効いてくる。 辻村さんの作品「朝が来る」が「朝が来た」ではないように、このちょっとした言葉一つに、物語の大きな希望が込められている。 帯にある「大丈夫、あなたを絶対悲しませたりはしない」 このメッセージは、誰から誰へ向けたものなのか。最後にまた違った捉え方ができる。 解説P456 「ただおもしろいだけじゃない。辻村深月という小説家は、自らにとって切実なテーマと常に対峙し続けている」
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タイトルがいいですね。 タイトルで即買い。 夫の遭った交通事故がきっかけで、母と息子が高知→兵庫→大分→仙台と逃避行する物語。 男の子の母親はキュンとくるストーリーなんじゃないかな、と勝手に想像。 毎度のことながら読ませる。ページを繰る手がなかなか止められない。 けど、いささ...
タイトルがいいですね。 タイトルで即買い。 夫の遭った交通事故がきっかけで、母と息子が高知→兵庫→大分→仙台と逃避行する物語。 男の子の母親はキュンとくるストーリーなんじゃないかな、と勝手に想像。 毎度のことながら読ませる。ページを繰る手がなかなか止められない。 けど、いささか冗長かなぁ、とも思った。 それぞれの地での人々との交流は温かく胸を打つんだけど、全体的にばらっとするというか…統一感が少なく別々の短編を読んでいるような気がした。 それだけに後半の収束、いつもの巻き返しを期待したけど、この小説は残念ながらピンと来なかった。 第四章にデジャヴを覚えたが、そういえば「傲慢と善良」にこの写真館出ていた。繋がってスッキリ。
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早苗と力の心理描写や登場人物の優しさに心打たれる。 他の方のレビューにもあったけど、母と息子という組み合わせが絶妙で、母と娘だったらまた違ったストーリーになりそう。 何より旅がしたくなる。 いつか別府温泉で砂かけやってみたいなと思った。
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深夜、夫が交通事故に遭った。病院に駆けつけた早苗と息子の力は、そこで彼が誰の運転する車に乗っていたかを知らされる。夫は何も語らないままいつの間にか退院し、失踪。残された早苗と力に押し寄せる悪意と追及。追い詰められた二人は東京を飛び出した。高知、兵庫、大分、仙台…。壊れてしまった家...
深夜、夫が交通事故に遭った。病院に駆けつけた早苗と息子の力は、そこで彼が誰の運転する車に乗っていたかを知らされる。夫は何も語らないままいつの間にか退院し、失踪。残された早苗と力に押し寄せる悪意と追及。追い詰められた二人は東京を飛び出した。高知、兵庫、大分、仙台…。壊れてしまった家族がたどりつく場所は。 愛してやまない辻村深月さんの新刊。 スキャンダルを起こし失踪した夫。その追及に苦しめられる母子の逃避行。 読み終わった感想としては、さすが辻村深月さんの作品。悪人が出てこない。いや、悪人も全員救う。それが辻村作品。 マスコミというか、相手側の事務所の関係者から常に追われる不安を感じながら、最初は高知の四万十、兵庫の家島、大分の別府温泉、、と場所を変えてそれこそ「大空と一緒に」逃げていく。 その土地土地の情景がきれいで、聖地巡礼したくなった。そして出会う人たちの優しさに心が温まり、ぶち当たる壁に苦しくなる。 母と息子という組み合わせなのが一つポイントで、お互いの視点が交互に描かれるのだが、お互いがなんとなく相手に遠慮していて、そこがまた物語のキーになっていく。小5という絶妙な年齢で、何かにつけて「別に」という力くんが微笑ましい。解説で早見さんも書かれていたが、これが母と娘の組み合わせだとガラッと展開が変わっていただろうと思う。 後半、どうなるんだろうという気持ちのまま残り数十ページになったところで怒涛の伏線回収が心地よかった。そして、未来に希望を持たせる、ほっとする読後感もさすが辻村深月さん。「こんなうまくいくわけないだろ!」という感想を抱く人もいるかもしれないけど、私はフィクションなのだからうまくいってほしいと思うので、やっぱり辻村深月さんの作品が大好きだなと改めて痛感しました。
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父親と有名女優が起こしたある事故によって、妻子が騒動に巻き込まれて逃亡、その行く先々で出会う人々の優しさに触れながら、親子ともども成長していく物語。 著者の作品は3作目。 自身のブクログの記録によれば、今から8ヶ月14日前、前読の「鍵のない夢を見る」でレビューに綴った通り、私的...
父親と有名女優が起こしたある事故によって、妻子が騒動に巻き込まれて逃亡、その行く先々で出会う人々の優しさに触れながら、親子ともども成長していく物語。 著者の作品は3作目。 自身のブクログの記録によれば、今から8ヶ月14日前、前読の「鍵のない夢を見る」でレビューに綴った通り、私的に全く感情に響かなかった。それ以降、正直著者から遠ざかっていた。避けてきたのだ。 そんなある日、書店で平置きされている本作を発見。 完全に表題名と装丁に惹かれ手に取るに至った。 逃げる。佇んではまた逃げる。逃げる。 繰り返す逃避行の先で描かれる人との触れ合いは、方言も相まってとてもリアルで繊細で微笑ましく、ひとの温かさが伝わってきて心地が良かった。 特に息子の各独白章は、読み進めるごとにどんどん逞しくなっていき、息子の父親である私としてはエールとともに感情移入した。 しかしながら、そもそも母子が逃げなければならない根本的理由が腹落ちせず、肝心の父親の不甲斐なさが美談化されている設定は、とても残念に感じてしまった。 ただ、今回の作品で「ツナグ」を読んだときに感じた、ひとの心理描写の巧みさには再度好感が持てた。 他の作品も読んでみようかなと。 何より、旅がしたくなった。 四万十川でテナガエビが食べたい。 別府で砂湯に入りたい。
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2021.09.01 自分のためよりも誰かのための方が強くいられるし、 自分のために生きるよりも誰かのために生きた方が楽になる場合もある、良くも悪くも
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’21年9月4日、中断。第二章の2まで、で。 なんか納得いかない… 夫が有名女優と事故を起こして、失踪。女優は死亡、とのこと。女優のプロダクションとマスコミの執拗な追跡から母が息子と逃げまわる、という話らしいのですが…マスコミはともかく、プロダクションの怖い(?)男達から追い...
’21年9月4日、中断。第二章の2まで、で。 なんか納得いかない… 夫が有名女優と事故を起こして、失踪。女優は死亡、とのこと。女優のプロダクションとマスコミの執拗な追跡から母が息子と逃げまわる、という話らしいのですが…マスコミはともかく、プロダクションの怖い(?)男達から追いかけられ、職場にも毎日来られて、嫌がらせを仕掛けられる、なんて、あります?なんで?なんのために、プロダクションがそんなことするのかが、全く理解出来ない┐( ˘_˘)┌ 「旦那さんも一緒なのでは?」と尋ねられるが…夫を捕まえて、どうするの?借金があるならまだ理解できるけど(この後、夫の借金が明らかになるのかな?)、夫の所属するプロダクションでもないようだし、それは無いよな…なら、捕まえて殺す?拷問する?ホワイ乁( •_• )ㄏ 損害賠償なんか、請求できませんよね?誘拐した訳じゃないし、女優さんも自分の意思で車に乗ったんだろうし。(僕が無知なだけで、このケースだと、損害賠償を求められるのかな?) 以上の理由が全く理解できません。「フィクションなんだから、細かい所のリアリティは、不要」なのは理解してるつもりですが…なんか、納得ができなくて…。もちろん、辻村深月さんは、大好きな作家さんですが…これはちょっといただけない、かなぁ。 時間をおいて、また再開するか考えます。
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※このレビューにはネタバレを含みます
とても辻村深月さんらしい。上質で丁寧な小説を読んだという感想。全体を通してやんわりとミステリ要素というか謎は残されていながらも、伝えたいのはそこではなくて、人を介して強くなっていく親子の成長の話。親子もそうなのだけど、読みて手側としても、「ああ、人ってこんなに温かいんだなぁ」と感じさせてくれる。自分じゃどうにもならないような打ちひしがれてしまった時には、隣に居る誰かに助けを求めても良いんだな、と思わせてくれた。同時に、助けを求めてきた誰かに気付ける懐の大きさと心の余裕を常に持ちたいと思った。 力が母のピンチの時に買う飲料水に、スポーツ飲料が良いだなんて意識すら至らないところだとか、端々に小学5年生の等身大が描かれていてとてもよかった。 心は大人になりたい、なのにできないことへのジレンマも、ちょっとした反抗心も、かと思えば滲み出る母親への無垢な愛も。 あの力が、頑張って声を上げられたその経験は、これからずっと大人になっても自信になって残っていくんだろうな。子どもにそういうことを教えてあげられる、そういう経験をいくつさせてあげられるかが、 私たち大人や親としての役割だろうな。 拳は表立ってその人間性を描かれることは少なかったけど、ほんの少しの言葉で、とても良い父親で、夫だったのだろうということが伝わる。 母に関しても、物語全体を通して、控えめで前に出て行くタイプでは無い彼女の姿がよく描かれており、その彼女が守りたいものをはっきりと見据え決断した時との変化がよくわかった。 彼女と、彼女の夫だからこそ、力のような優しくて真っ直ぐで聡明な子どもに育ったのだということがすごく伝わる。納得する。お似合いの夫婦で、親子で、家族というような感覚。だからこそ最後に3人揃い青空の下で手を繋ぐ描写には、何の不穏な空気も淀みもなく、ただただ希望のみを感じて幸せな気持ちになった。
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