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月まで三キロ の商品レビュー

4

169件のお客様レビュー

  1. 5つ

    50

  2. 4つ

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  3. 3つ

    41

  4. 2つ

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2024/08/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

理系特に地学の知識が盛り込まれた短編集。ミステリー、というか、それぞれに悩める人物の心情の揺らぎや変化を描いていく作品で、どれも優しかった。無理に鼓舞するというよりは寄り添ってそっと励ますような物語。 家庭に疲弊した主人公が、家をこっそり抜け出して昔好きだった登山に来る「山を刻む」が特によかった。お母さんみたいになりたくないという娘や、人生にいろいろ失敗して詐欺まがいの道に堕ちかけている息子にかける言葉を探しながら山を登るが、結局「山っていいでしょ」っていう、自分が本当に楽しんで自分の人生を生きている姿を見せればいいんだ、って気づくあたり、役割を離れて一人の人間としての生を取り戻すことが、結局役割を果たすことになるんだなぁというのが、なんだか沁みる。闇雲に心頭滅却して仕事するのがいいのではなくて、自分の人生を楽しむ姿を見せることが、誰かに良い影響を与えられるとしたら、幸せな関係だなと思う。

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2024/08/17

読書初心者ですが、大変読みやすく、のめりこみました。お守りのルーペ、「わかる」と「わからない」の話…この二つが、心に大きく響きました。これからも大切にしたい感覚です。

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2024/08/07

生物の美しさもいいけど、月や雪、山、宇宙という無機質な美しさを愛しく思うと、今生きていることに感謝できて心が軽くなる。 深く観察して、世界の広さを知ること。 そんな題材を散りばめたそれぞれの人生の温かい短編。 どの作品でも科学的な知識が自然と流れ込んでくるので勉強にもなるし今まで...

生物の美しさもいいけど、月や雪、山、宇宙という無機質な美しさを愛しく思うと、今生きていることに感謝できて心が軽くなる。 深く観察して、世界の広さを知ること。 そんな題材を散りばめたそれぞれの人生の温かい短編。 どの作品でも科学的な知識が自然と流れ込んでくるので勉強にもなるし今までにない本でした。

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2024/08/01

この作品は一話完結の短編集になっている。 各短編は、簡単なウンチクや科学的知識を絡めてストーリーが進行するので、知識が身に付くと同時にストーリーも楽しめる一石二鳥タイプ。 またウンチクは、友人とかに気軽に披露できるレベルでほど良い。 「月まで3キロ」は、月に関するウンチク。 「...

この作品は一話完結の短編集になっている。 各短編は、簡単なウンチクや科学的知識を絡めてストーリーが進行するので、知識が身に付くと同時にストーリーも楽しめる一石二鳥タイプ。 またウンチクは、友人とかに気軽に披露できるレベルでほど良い。 「月まで3キロ」は、月に関するウンチク。 「星六花」は、気象や雪の結晶に関するウンチク。 「アンモナイトの探し方」と「天王寺ハイエイスタ」は、化石や地層に関するウンチク。 「 エイリアンの食堂」は、素粒子に関するウンチク。 「 山を刻む」は、火山に関するウンチク。 ストーリーは難しい言い回しが無く分かりやすく、心温まるものになっている。 この作家を初めて知りましたが、他の作品も読んでみたいと思いました。

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2024/07/29

乗り越えられない深い悲しみはやっぱり世の中にあるのですね。いつかそういうものがやってきた時の気持ちの備えになりました。

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2024/07/26

はじめの月を読んでると暗い話かなと思っていたが ステキなストーリーでした。 最後の締めくくりに感動する。 人の心情がすごく伝わる。 私が興味がある素粒子の話が、エイリアンの食堂にでてきたのは良かった。 また、読みたい。今年の夏の思い出。

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2024/07/25

新潮文庫の100冊をきっかけに。 ままならない人生を送っている、いろいろな年代の主人公の日常に科学との出会いがあり、人生に光が見え始める…という短編集。 科学は日常の中にさりげなく出てくるので、理系小説といっても、とても読みやすかったし、科学がいいスパイスになっていたように思う。...

新潮文庫の100冊をきっかけに。 ままならない人生を送っている、いろいろな年代の主人公の日常に科学との出会いがあり、人生に光が見え始める…という短編集。 科学は日常の中にさりげなく出てくるので、理系小説といっても、とても読みやすかったし、科学がいいスパイスになっていたように思う。 ミステリー要素もあって楽しめた。 どの話もすごく好きだったけれど、「山を刻む」が一番好きだった。 表題作の「月まで三キロ」は比喩表現が素敵でとても印象に残った。 いつか看板、見に行きたい。 ✎︎____________ 子育てって、月に似てると思うんですよ。親が地球で、子どもが月(P43) 赤ん坊の月は、地球のそばにいるじゃないですか。幼いころは、無邪気にくるくる回って、いろんな顔を見せてくれる。うれしい顔、悲しい顔、すねた顔、楽しい顔、さびしい顔、全部です。でも、時が経つにつれて、だんだん地球から離れていって、あんまり回ってくれなくなって、とうとう地球には見せない顔を持つようになる。裏の悪い顔って意味じゃないですよ。親には見せてくれない一面っていうのかな。月の裏側みたいに(P43~P44) この世界で、美を誇っているのは、花や鳥や人だけではない。雪の結晶、雲や空が垣間見せる、無機質の美。見つけられることを望んですらいない、ただそこにある美。潔く、はかない美。(P100) わかるは、わけるだ。正しくわけるというのは、人が思うほど簡単ではない(P140) わかるための鍵は常に、わからないことの中にある。その鍵を見つけるためには、まず、何がわからないかを知らなければならない。つまり、わかるとわからないを、きちんとわけるんだ(P143) そばにはおられへんでも、大事に思うことはでける(P210) 人生に後悔はつきものや。でもそれでええやないか。そのために、ブルースがある。(P212) 人との出会いというのは、つくづく不思議なものだと思う。人生というルートの分岐点は、初めから地図の上にあるのではない。人との偶然の出会いが、気まぐれにそこに分岐を作るのだ。(P326) 目標なんてのはね、達成できてもできなくても、人生に影響しないようなものにしときゃいいの。(P345)

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2024/07/14

伊与原さんは「宙わたる教室」からの2冊目 よかった。短編6話 どの話も全然違うけれど、月とかアンモナイト、地層や素粒子など天体・地学の視点を媒介にそれぞれが抱えている躓き、不安、心の支えが心地よく解かれていく。 親と子の関係性や、人と人との繋がりなどがマクロな天体やミクロの素粒子...

伊与原さんは「宙わたる教室」からの2冊目 よかった。短編6話 どの話も全然違うけれど、月とかアンモナイト、地層や素粒子など天体・地学の視点を媒介にそれぞれが抱えている躓き、不安、心の支えが心地よく解かれていく。 親と子の関係性や、人と人との繋がりなどがマクロな天体やミクロの素粒子の世界観で表現されていく。 夢中になれる〝何か〟を持っている大人の姿の 引力を感じた。そういう大人でありたいなと思えた。 「月まで三キロ」 「アンモナイトの探し方」 「エイリアン食堂」 が特に印象に残った。 よかった所 1話目 「月まで三キロ」 死に場所を探す男と心に傷を負っているタクシー運転手の話 子育てにおける親と子の関係の表現に心をつかまされる。 3話目 「アンモナイトの探し方」 両親が別居中の中学受験生。 心に変調をきたしいったん受験勉強から離れ東京から北海道へ。 そこでアンモナイトを探している戸川というお爺さんに出会う。 わけるとは、わかるとは。 いい大人とはなんだろうと 戸川がよかった 4話目 「天王寺ハイエイタス」 哲おっちゃんの 〝人生に後悔はつきもの それでええやないか〝 がよかった。 5話目 「エイリアンの食堂」 素粒子 水素原子 宇宙の話 亡くなった人はどこへ行くのか 母を亡くした小学生の女の子と素粒子の研究に没頭する女性の話。 とても心温まる 6話目 「山を刻む」 自分の好きを周りに伝えることの大切さ 何かに夢中な人はその『気』が周りに伝播する 心地よい短編だった

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2024/07/13

伊与原 新さんの短編小説 『月まで三キロ』 収録は以下6つの物語で関連性は無く、 扱うテーマが潔いほど明確に分かれている。 月まで三キロ 星六花 アンモナイトの探し方 天王寺ハイエイタス エイリアンの食堂 山を刻む 作者の伊与原さんが地球惑星科学を専攻されていただけあって、理...

伊与原 新さんの短編小説 『月まで三キロ』 収録は以下6つの物語で関連性は無く、 扱うテーマが潔いほど明確に分かれている。 月まで三キロ 星六花 アンモナイトの探し方 天王寺ハイエイタス エイリアンの食堂 山を刻む 作者の伊与原さんが地球惑星科学を専攻されていただけあって、理工系の科学の専門知識が随所にみられる作品。 それも地質工学や天文学、気象学や宇宙工学など扱う分野が豊富でバラエティに富んでいる。 にもかかわらず、専門知識が分かりやすく自然に小説に馴染んでいるので、不思議なほど読みやすくて勉強にもなった。この力んでない匙加減が秀悦だと思う。 久しぶりに科学の図鑑なんかを引っ張り出したい衝動に駆られた。笑 特に私は『月まで三キロ』と『エイリアンの食堂』『山を刻む』が印象的だった。 どの短編も、科学とヒューマンドラマの融合がバランス良く絶妙なタッチで描かれていて、とても新鮮だった。それでいて、ミステリー要素も感じられるので先が気になって夢中になってしまう。 これは文系の方にも是非オススメしたい。

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2024/07/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

短編集。専門的な話でも読み込ませる端的な説明の上手さと、雰囲気づくりの巧みさがあって気持ちの良い短編集だった。 ・月まで三キロ 表題の作品。介護に疲れ、自殺しようと思い立つ男と、樹海に向かいたがる男を乗せたタクシーの運転手の話。 どちらも抱えるものがありながら、見ている世界が異なっていて素敵な話だった。 ・星六花 合コンに参加した男女の話。 結ばれないからこそ恋愛したくなる話だった。 ・アンモナイトの探し方 化石を掘るおじいさんと少年の話。 雰囲気つくりがとても上手。

Posted byブクログ