月下のサクラ の商品レビュー

柚月裕子(著者)

2021/06/05

志望する部署の採用試験に落ちた女性捜査官、森口泉が、その部署の上司の推挙で特別に採用され、周りの仲間から特別枠と揶揄されながらも、艱難辛苦を乗り越えてその才能を開花させていく物語かと思って読み進めたが、途中からは警察内部の巨悪を上司と仲間とともに暴いていくサスペンスタッチの小説へと変貌していったような感がある。相変わらず、柚月さんの小説は、登場人物の人となりがよく描けていて面白いのだが、本作は筋立てが少し大仰で荒っぽい感じがした。特に終盤は。

2021/06/05

現場の情報を解析する機動分析係。そこに志望してきた森口泉。筆記試験は優秀だったが、実技では失格。しかし係長の強い推薦により、配属されることに。そんな時、警察署内で会計課の金庫から現金1億円が盗まれた。捜査を開始するが、やがて警察組織の闇を垣間見ることになる。

「朽ちないサクラ」という作品の続編ですが、単独でも楽しめました。（ちなみに書いている現在、前作は読んでいません）
柚月さんの作品というと、「孤狼の血」や「慈雨」といった刑事ならではの男臭さや泥臭さが印象的でしたが、今回の作品は比較的あっさりとした印象でした。

そういった刑事はいたのですが、数少なく、地道に足を使って事件解決へ奔走といった類よりも、情報を駆使し、それを元に捜査していくので、意外とあっという間な展開かなと思いました。「足」ではなく、主に「目」がメインで捜査するので、もう少し粘り強さが欲しかったなと思いました。

それでも主人公の女刑事が、何事もめげずに頑張り続ける姿に応援したくなりました。初めは周りの仕事仲間と反りが合わなかったのに段々と一つのチームとして、活躍していきます。その変化も楽しめましたし、上司の過去にも触れることができるので、話の厚みが増していました。

そして、一番厚みがあったのは、現金紛失事件の背景に渦巻く警察の黒い闇でした。それが垣間見れて、驚きとともに「正義」のためなら致し方ないやり方に憤りを感じました。

あまり大したことないと思っていた現金紛失事件が、まさか壮大な闇が存在していたとは…どんどん展開が面白くなっていったので、あっという間に読んでいた自分がいました。

前に前に突き進む森口。今後も期待したいと思います。

2021/06/02

同期と黒幕がやや期待外れだったがスリルはあった。タイトルに付けるほどサクラは重要でなかったかな。読了後に唸るようなタイトルが良かった。信義伝承、とか？

2021/05/29

「朽ちないサクラ」の続編。
前作では警察の一般職だった泉は、警察官採用試験を受け、刑事試験にも合格し、念願の機動分析係に配属される。
実際の採用試験は不合格だったものの、試験官の黒瀬の計らいで課員になった泉は「スペカン」と揶揄される。
記憶力と観察眼が優れているとされるが、全編を通して、泉のその良さが分かるような場面はなかった。
機動分析係という、これまでにない設定の部署だが、扱う事件は警察署内で起きた強盗事件。
金庫に保管されていた大金を誰が盗んだのか、盗んだ金はどこへ消えたのか…事件を追っていく泉たちだったが、事件を追ううちに警察の闇にたどり着いてしまう。
事件そのものは警察官の汚職隠しであり、泉の特殊な能力も、機動分析係の設定の意味が全く機能してなく、この作家さんにしては珍しく面白くなかった。

2021/05/24

プロローグからハラハラドキドキ。主人公の泉をはじめ、黒瀬や市場などもキャラが立ち、面白要素はあるのだが、機動分析係という地味さや、著者の他の刑事モノと比べてしまうと、ちょっと物足りない...。
ただ、どこまでもまっすぐな泉には、これからも突き進んで欲しい。続編に期待！

2021/05/23

次第に引き込まれてはいったし、一気読みしてしまったし、つまらないことはないんやけど、なにか物足らん。柚月ファンとしてはちょっと残念。

2021/05/23

『私は自分を裏切りたくありません』という泉ちゃんの言葉はとっても大きく重い！

起承転結
その中での“結”が少しばかり、いえ、多大に大きく重すぎてページをめくる手があれよあれよ～と。あと、このページ数しかないのにどう決着つける？と別な意味でのハラハラドキドキさせられました。

前作の『朽ちないサクラ』を直前に読んでいたから泉ちゃんの心意気的なモノ分かっていたけれど、じゃなければどうしてこんなにまで…という疑問いっぱいなストーリー展開。
分かる人は分かるけど、わからないひとを置いてけぼりにする勢いの泉ちゃんのガンバリなのです。

それにしても…冒頭部分の捜査（？！）には進むにつれ関心をひかれました。さすが上手い！と。グイグイでしたね。

続編、続々編などこれからもあるのでしょうか？楽しみ。
「サクラ」その本性・正体もいつかもっとわかるのでしょうか？

2021/05/23

森口泉は実技試験に失敗したものの、係長黒瀬の推薦によって機動分析係に配属されます。
メンバーからは特別扱いと揶揄されますが、自分の能力を最大限に発揮していきます。
会計課の金庫から約一億円が盗まれていることが発覚、機動分析係で捜査を開始しますが、やがて殺人事件へと発展し、その奥には深い闇が・・・。
相変わらず読ませます。