つまらない住宅地のすべての家 の商品レビュー
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*とある町の、路地を挟んで軒の家が立ち並ぶ住宅地。 そこに、女性受刑者が刑務所から脱走したとのニュースが入る。自治会長の提案で、住民は交代で見張りをはじめるが……。住宅地で暮らす人間それぞれの生活と心の中を描く長編小説* 今作は、とぼけた味わいの津村節は控えめです。 そして、登場人物、と言うか登場「家」が多いので、最初の方は少々ややこしくて読みにくいかも。 が、言い換えれば、それぞれの家庭の問題がバラエティ豊かで飽きさせない上、それぞれの小さな関わりがパズルのように組み合わさって展開していく様が巧みで、どんどん物語に入り込んでしまいます。なるほど、この展開にはこれだけの人数(家)が必要かも。 面倒がらずに、巻頭の住宅地図や人物説明を見返しながら丁寧に読むのがお勧めです。 とにかくこのお話は、キーである「人との関わり」の距離感が絶妙過ぎます。 直接問題解決になるわけではないけれど、閉じていた思考や行動に微風が通り、ふわりと新しい空気が流れてくれるような、さりげない関わり。 とかく敬遠されがちなご近所付き合いも悪くないな、と思わせてくれます。 そして、極めつけのラスト。 二度と訊ねることのない場所でも、二度と会うことのない人でも、こんな風に誰かの微風になれたら…余韻の残る情景に、しばし浸りました。
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「サキの忘れ物」を読んで、続けて読みました。地図をノートに書き写し、名字を書き年を書き、名前を書きとノートが埋まってくると不思議に登場人物の顔まで見えてくる様でした。 出だしは、刑務所の脱走者のニュース。 それに加え不穏な空気をはらんだ人々。 …この家の人にとって自宅は鎖国した島みたいなもので、通行人や近隣はすべて遠い国のようなものなんだろう…… 近所の人々から「真っ暗な家」と言われていた家が、元凶だった、とは。 大柳さんが、門灯をつけ、自転車を敷地に入れているから、良い人? ウーン? ……ポスターを眺めた後、…ならば自分は、彼女に恥じない人間でいるべきなんじゃないだろうか。自分が罪を犯すようなことを、彼女に共有させてはいけないのではないか。 ウーン? 25歳になるまで、誰もいなかったの? でも、良かった、松山さんや笠原さんと知り合えて、良かった。 千里ちゃんが、これから自分が家に帰ったら門灯を点けようと思ったのは、良かった。 みづきちゃんが、山崎さんと知り合えて良かった。 矢島家と長谷川家の元凶は、それぞれのおばあちゃんか! 毒親か!そして被害者の娘が今度は加害者として二代目毒親か! ただ、みづきちゃんと千里ちゃんが気づきと成長があって、救われた。 この本、イヤな感じの話しなの?といつでも止めよ、と思いながら読んでいて、最後は良かった、良かった。が数知れずの本でした。
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なんか不穏な空気が漂ってるなぁ…怖いなあ…と思っていたら、独特のユーモアでクスクス笑わされ、読み終わる頃にはなんだかんだ皆さん悪い人ではないんだなぁという妙な安心感を得る。 何か起こりそうだけど不幸でもない世界観が好きです。
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津村さんは好きな作家。 個性的な登場人物が多い。地図と見比べながら、出来れば地図に家族の名前も入れて欲しいとか思う。 内容的にはきっと面白いのだけど、だれの話なのかわからなくなったりして整理しながら読むのがちょっとしんどい。 いつものようにさらっと読むには適さない。
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群像劇がジワジワ収束していく快感。子どもたちに希望の持てるラストで良かった。あの甘やかされてる末弟だけは、好かん。
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最初は人物の名前やそれぞれの家庭の家族構成があまり把握できていなかったのでやや難しかったです。 しかし、逃亡犯をきっかけに住宅地のご近所さんのことが少しずつ分かってくる。 近くに住んでいても近所の人ってなにをしている人で、なにを考えているかなんてさっぱり分からないなぁと思いました...
最初は人物の名前やそれぞれの家庭の家族構成があまり把握できていなかったのでやや難しかったです。 しかし、逃亡犯をきっかけに住宅地のご近所さんのことが少しずつ分かってくる。 近くに住んでいても近所の人ってなにをしている人で、なにを考えているかなんてさっぱり分からないなぁと思いました。 こんなに登場人物が多いにも関わらず静かなミステリーを書ける津村さんはすごい!
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題名を見て、自分のご近所のことを考えてみたら、 ほぼ全く知らないことに気がついた。 同じ場所で、同じ時間の中を"こんなに近く"で過ごしておきながら、 家屋という"大きなブラックボックスの中"にどんな人たちがいて、どんな生活が営まれているのか、 全くわからない。 この物語には 一...
題名を見て、自分のご近所のことを考えてみたら、 ほぼ全く知らないことに気がついた。 同じ場所で、同じ時間の中を"こんなに近く"で過ごしておきながら、 家屋という"大きなブラックボックスの中"にどんな人たちがいて、どんな生活が営まれているのか、 全くわからない。 この物語には 一本の路地に面した10軒の家が出てきて、 それぞれの家庭状況が、まず語られる。 どの人がどこの家族で、どこの家の話か、 巻頭にある地図を何度も見返して 「ほうほう」と思いながら、理解していった。 どこの家も、ご近所さんには見せてない"秘密?の顔や心情"があった。 そこに刑務所からの脱獄犯が逃げ込んでくるとの事件がおきて、 自治会長の提案により、10軒順番に、夜の見張りをすることになる。 それにより この10軒の家族の関係性がどう変わっていくのか? 気になって一気に読んでしまった。 私の住む地区でも 事件とか災害とか、何か事が起こったら ご近所さんともう少し知り合うことができるかしら? 協力しあうことができるかしら? そんなことを思いながら読みました。
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サッカーのサポーター達の小説もそうだったがこういった群像劇の人物描写が本当に上手い。小さな住宅地の一角に住む普通に見える家族の普通でない日常が脱獄犯が現れることによって綻び露わになっていく。まるでパズルをするように人物が関わり物事が収まっていく爽快感、お見事です。
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実家の近くや今の住まいの近所など、どこにでもあるような住宅地。最初に住宅地図と家族構成の記されたページがあり、何度もそちらを再確認しながら読んだ。どこの家にも様々な事情があって、本当に追い詰められていたりする。けれどほんの些細な事がきっかけで、状況が変わる事もある。自分を苦しめている途方もない壁は、実は自分で築き上げたものかもしれない。自分には絶望的に辛くても、それを何とも思わない他者がいて、意図せず通気孔を開けてくれたりすることもある。登場人物全てが、どうか少しでも明るい先へ辿り着きますように、と願わずにはいられなかった。
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登場人物はたしかに多いけれども、それぞれの特徴があり、家族があり、誰の話かがわかるとどんどん先を読みたくなった。 当の犯罪者の結末より、周りの人たちの救われ方に心がほっとした。 近所付き合いなんて、今時ほぼ無いのだろうけど、やっぱり人間同士、大事なことだよなぁと思う。
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