1,800円以上の注文で送料無料

つまらない住宅地のすべての家 の商品レビュー

3.6

183件のお客様レビュー

  1. 5つ

    26

  2. 4つ

    67

  3. 3つ

    61

  4. 2つ

    15

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/10/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読了2021.12.13 横領で服役中の女が脱獄した。付近に居るかもしれない…事件を契機に関係を結び始める隣人たち。 記号でしかなかった人間が輪郭を持ち、やがて思いもよらぬ縁に繋がる。 鮮やかな人間ドラマでした。 住宅地の均質さ(つまらなさ)を住人たちも無意識に内面化しているんだけど、各家庭の事情は当然異なっていて、実は全然均質じゃない。 裏テーマ(と、勝手に思っているんですが…)の「疎外」があらゆる関係で"発見される"のが面白かった。 金持ちで大きな家の末息子、ガキ大将ワナビーでやかましいんだけど(家では母親だけが構ってくれる)、だからと言って別にガキ大将になれる訳でなく、気に食わない奴をいじめて己のプレゼンスを高めようと画策しても学校では誰もノらない…というあたりのエピソードは切れ味が良くて爆笑してしまった。

Posted byブクログ

2022/01/17

路地を囲む10軒ぶん+αの登場人物それぞれが抱える問題が独立したようで絡み合っていてなかなかにややこしかったけれど、人物描写が丁寧で書き分けがしっかりしているので、(ときどき家の配置図さえ確認すれば)混乱なく読めた。人となりを表すちょっとしたエピソードや描写が本当にうまい。 静か...

路地を囲む10軒ぶん+αの登場人物それぞれが抱える問題が独立したようで絡み合っていてなかなかにややこしかったけれど、人物描写が丁寧で書き分けがしっかりしているので、(ときどき家の配置図さえ確認すれば)混乱なく読めた。人となりを表すちょっとしたエピソードや描写が本当にうまい。 静かな住宅地に逃亡犯が近づいているニュースが入って…という話なのだけれど、逃亡犯以上に各家庭の問題がとにかく不穏で、重い気分で読み終えるタイプの作品なのかと思っていたら、そうではない結末を迎えて驚いた。人というものを辛辣な切り口で描きつつ、温かさも感じる物語だった。

Posted byブクログ

2022/01/11

益田ミリさんが新聞の連載で、津村記久子さんの本はおもしろいと書いていたので、津村記久子さんの本を探して読むようになりました。津村さん独特の物語の世界に惹かれて、今まで何冊か続けて読んでいます。 津村さんの物語は、始めは少し読みにくさを感じますが、くせになります。この本は、住宅地地...

益田ミリさんが新聞の連載で、津村記久子さんの本はおもしろいと書いていたので、津村記久子さんの本を探して読むようになりました。津村さん独特の物語の世界に惹かれて、今まで何冊か続けて読んでいます。 津村さんの物語は、始めは少し読みにくさを感じますが、くせになります。この本は、住宅地地図のページに紐の栞を挟んで何回も見ながら読んだせいか、今まで読んだ津村さんの本の中で一番わかりやすかったし、登場人物のイメージがわきやすく、ぐいぐい引き込まれて読んでしまいました。 津村さんの本に惹かれてしまうのは、津村さんの物語の中に、人の汚さや弱さを描きながらも、最後には人の美しさやよさを信じる愛を感じるからかも…と感じています。まだ読んでいない作品を読んでいきたいです。

Posted byブクログ

2022/01/11

つまらない住宅地のすべての家 津村記久子さん。 10軒ある住宅地の 一軒一軒の家の内情を、読み進めていく。 1番前のページ、 住宅地地図。家族構成。が載っているので、 読んでで、 こんがらがってしまうのを、 そのページに戻りながら、 読み進める。 最後まで読んで、やっと、着地...

つまらない住宅地のすべての家 津村記久子さん。 10軒ある住宅地の 一軒一軒の家の内情を、読み進めていく。 1番前のページ、 住宅地地図。家族構成。が載っているので、 読んでで、 こんがらがってしまうのを、 そのページに戻りながら、 読み進める。 最後まで読んで、やっと、着地。 良い感じで終わる。 もう一度、読んだら、もっと、よくわかるかも。

Posted byブクログ

2022/01/07

津村氏の作品は とにかく平凡なそのへんの市井の人々(つまり私のような人) の内面が 特別なことみたいじゃなく 描かれてて そこが好きな人と退屈な人に分かれそうなんだけど 本作は その津村節で推理モノ? という珍しさ 残念ながら わたしは一気読みをしなかったため ただでさえわか...

津村氏の作品は とにかく平凡なそのへんの市井の人々(つまり私のような人) の内面が 特別なことみたいじゃなく 描かれてて そこが好きな人と退屈な人に分かれそうなんだけど 本作は その津村節で推理モノ? という珍しさ 残念ながら わたしは一気読みをしなかったため ただでさえわかりにくかった このご近所さんたちの相関図が 最後まで頭に入らなかった… これから読む人 巻頭の相関図とは別に 自分でも相関図書いたほうがいいかもですよ

Posted byブクログ

2021/12/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

津村記久子さんの推理小説?と不思議だったけど,推理小説だったし,津村さんの本だった。面白すぎて速攻で2回読んだ。津村さんはいろんな人に優しいけど受刑者にも優しいのか,と泣ける。「ヤングケアラー」という言葉ができる前から津村さんはヤングケアラーのことを書いてたよな,とも思う。 読み終わってしまった,という益田ミリさんの気持ちに深く共感する。早く次の話を読みたい。

Posted byブクログ

2021/12/05

ある地方住宅地のある一画での出来事、その舞台設定は面白いのだが、しかし人間関係の設定にはかなり無理があるので途中で冷めてしまう。ここまで複雑にしないでもよかったのではないか。

Posted byブクログ

2021/12/03

登場人物が多すぎて人間関係を理解するのが難しかった。作者が何を伝えようとしているのだろうか?全般的に内容が散漫になっている感がある。

Posted byブクログ

2021/12/13

『これらを判断せずに放置し続けると、うちもごみ屋敷と言われるものになるんだろうか。ミシンの箱とみりんのボトルに挟まれて、おかっぱの日本人形は、ふくよかなほっぺたをふくらませて、そうかもね、と言っているように見える。「怖いよね」正美はうなずき返しながら、自宅での義務から逃げるように...

『これらを判断せずに放置し続けると、うちもごみ屋敷と言われるものになるんだろうか。ミシンの箱とみりんのボトルに挟まれて、おかっぱの日本人形は、ふくよかなほっぺたをふくらませて、そうかもね、と言っているように見える。「怖いよね」正美はうなずき返しながら、自宅での義務から逃げるように、徒歩で十分のスーパーマーケットに出勤した』 例えば「カラマーゾフの兄弟」の登場人物が一覧になっていても、読んでいる途中で見返したりしない。馴染みのないロシア人の名前に戸惑いつつも読み進むことは出来る。けれど、津村記久子の「つまらない住宅地のすべての家」の最初に記された小さな路地を囲む家々の地図と詳細を省かれた各家の家族構成の説明は、何度も見返さなければならない。それどころか、住宅地地図を拡大コピーして登場人物の名前や特徴を書き込み、各々の関係を線で結んで記してみたりすることになる。 はじまりは淡々と、一軒ずつ登場人物たちの現在が記される。意図を持って焦点を当てる風ではなく、偶然目にしたある家の日常をほんの少し垣間見るように「つまらない住宅地」に住む人々が順次紹介されていくのだが、一人称で語る人物が誰なのか直ぐには特定できない。もちろんどの家の住人なのかは徐々に判明するのだけれど、その一瞬の目くらましが不穏な空気の濃度をより濃いものにする。そうだ、観察されるのはいたって普通の人々の交わす日常会話(あるいは思案)であるようでいて、どれも何かしら不穏な雰囲気に満ちているのだ。じわじわと小さな路地内の人々、及び、その関係者の中で進行する事件性に満ちた謀(はかりごと)や揉めごとは、没交渉を基本とする都市の隣人たちの引き籠る闇の深さを浮き彫りにしていく。誰もが周囲の人々は自分とは無関係だと思いながら暮らしていた筈なのに、輻輳する関係性は横溝正史が描く古い日本の村社会のように悉く新たな関係性で結ばれ得ることが炙り出され、更に刑務所を脱走した横領犯を巡って意外な展開を見せる。 推理小説ではないけれど(殺人事件が起こった訳でもないし、逃亡中の横領犯以外には何か事件らしい事件が起きている訳でもないにもかかわらず、終始不穏な雰囲気は漂っている)謎解きの要素はあるし、自ら書き込んだ住宅地地図を改めてみるとそれがこの本の醍醐味の一つであることがよく判る。それは連載された媒体(小説推理)が関係しているのかも知れないし、思いつきを記した無関係のメモの小片群を元に書くという津村記久子の小説作法が元々同時進行する複数の物語を志向するものだったからなのかも知れない。際立った主人公が存在しない中で全ての登場人物が狭い路地の中で蠢いているのを感じる不思議な味わいの小説。

Posted byブクログ

2021/11/22

タイトルからイヤミスかと思ったがそこは津村記久子。と言ってすごく温かい気持ちで読了という訳にもいかないけど。この作者にこそ「世界の片隅で」という言葉が似合うのではないか。日本のどこにもありそうな、都会ではないけど田舎すぎるところでもない市井の人々を描かせたら今一番ではないのか。ど...

タイトルからイヤミスかと思ったがそこは津村記久子。と言ってすごく温かい気持ちで読了という訳にもいかないけど。この作者にこそ「世界の片隅で」という言葉が似合うのではないか。日本のどこにもありそうな、都会ではないけど田舎すぎるところでもない市井の人々を描かせたら今一番ではないのか。どの家の家族(独り者も含めて)の描写も、(いるよなぁ、こんな感じの人)と言った人が集まっているとある路地に起こった数日間の出来事。過去とも絡みながらそれぞれの暮らしや関係にもたらす変化。上手い構成だった。悪意のある人もいるけど完全な悪人としては出てこないのでそこはホッとする。ただ途中までは読みづらくて何度も最初の各家の配置図と最初の各家のあらましが書かれたパートに戻って苗字と名前と置かれた状況を確認した。文庫化する時には登場人物一覧をつけたほうがいいと思う。名前が漢字で書かれていることに逆に違和感を感じたところも。カタカナでもいいです、津村先生。名前の表記の規則は読み取れなかったけど(例えば恵一がノジマだったり恵一だったりするのは何故なのかわからなかった)。 津村作品にはほぼ必ず笑ってしまう表現があるんだけど、本作で一番笑った箇所は、洗濯物が盗まれたことを尋ねる山崎正美の描写を丸川明が例える箇所ー「病院で働いている男の人が着てるような、医療用の白いユニフォームの上下とかは届いてませんでしょうか?」「いえ、いや、来てないですよ」山崎さんの指定はとても具体的で、まるで「元号が変わったことをご存知でしょうか?」とでも言っているようで、自分がそんなものの行方を一切知らないことに疎外感を覚えるほどだった。(p.193) 津村作品では登場人物にタイトルを言わせるのがお約束なんだろうか。「…つまらない住宅地のすべての家の人がここに訪れた様な気がした。」(p.201)。ところでこういう路地って町内って言わないのかな。自治会という描写は出てきたけど。

Posted byブクログ