疼くひと の商品レビュー
一人で颯爽と生きている70歳。現代の70歳のリアルってこんな感じかもしれない。娘や孫と適度な距離を置いて経済的にも独立している。しかし、性に関してはどうだろう。たった一人のリアルとアンケート調査などで垣間見えるリアルは大きな隔たりがあるかもしれない。体の手入れも欠かさない主人公に...
一人で颯爽と生きている70歳。現代の70歳のリアルってこんな感じかもしれない。娘や孫と適度な距離を置いて経済的にも独立している。しかし、性に関してはどうだろう。たった一人のリアルとアンケート調査などで垣間見えるリアルは大きな隔たりがあるかもしれない。体の手入れも欠かさない主人公に不快感を感じるかもしれない。でも、だからこそ50男を受け入れても逡巡がなかったのかもしれない。
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時代によって、男女の性の描き方というものも変わっていくのだな…と思う。 もちろん私自身も、年老いてきて、自分の性に対する興味、生活の中でのとらまえかた、も変わってきているのだが… 確か新聞誌の書評欄で、私が冒頭に書いたような、「性の描き方」、に着眼してとりあげられていたように...
時代によって、男女の性の描き方というものも変わっていくのだな…と思う。 もちろん私自身も、年老いてきて、自分の性に対する興味、生活の中でのとらまえかた、も変わってきているのだが… 確か新聞誌の書評欄で、私が冒頭に書いたような、「性の描き方」、に着眼してとりあげられていたように思う。紋切型の言い方をあえてするならば、「高齢の女性による…」、「奔放な…」、「日本社会が抱える問題を…」、というようなキーワードと共に。 作者はもともと映画の脚本家であったとの事で、本格的な書き下ろし小節は今回が初めてであったように思われる。この小説の主人公と同年代、また同じような職業とのことであり、緻密に描かれた主人公の日常生活には、潔癖さと決して貧しくはない清貧さ、高齢だが健康に過ごしている一人暮らしのほのぼのとした毎日がことこまかに描かれている。 物語、男女の出会いはまあ、今時な手順を経て始まる。もっとも、その出会いからふたりがお互いを知り合い、会い、合い、愛し合う…、といった一連の流れが情熱的ではあるけれども極めて客観的に、冷静に、描かれており私はその物語を違和感なく同じように客観的に、また感情移入しつつ、楽しむことができた。この辺りは作者の脚本家としての素養がいかんなく発揮された部分ではないかと思う。 巡り合った男女と言ってもお互い高齢(70台と50台)で、先に書いたような今時な手順を通じての出会いである。私は絶対に終わるという確信を持ちつつ、どんな落としどころになる(する)のだろうか…と楽しみに頁をめくっていったのだが… 具体的には書かないが、不快感無く、かといって…いや、書かずにおこう。これから読まれようとする方、おひとりおひとりが、その物語を楽しみながら(平易な文体で読みやすい)、結末まで読んで決して損のない、充足感あふれる物語であると私は思う。
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美しくて賢くて強い女主人公の赤裸々な恋愛。いかにもフランス映画的な。 金も名誉もある主人公の、それゆえの年老いてからの孤独や疎外感や不安や後悔と、そこに突然登場する思わせぶりな怪しい年下中年男性。 主人公たちの行為の描写自体は嫌悪感は感じないし、むしろぶっ飛んでてイケイケで面白お...
美しくて賢くて強い女主人公の赤裸々な恋愛。いかにもフランス映画的な。 金も名誉もある主人公の、それゆえの年老いてからの孤独や疎外感や不安や後悔と、そこに突然登場する思わせぶりな怪しい年下中年男性。 主人公たちの行為の描写自体は嫌悪感は感じないし、むしろぶっ飛んでてイケイケで面白おかしくもあり。 ただ肉体労働者で知的、謎めいてるけれど正直、頑丈な体格に綺麗な肌、恵まれない生い立ち等々、、恥ずかしくなるほどこの種の作品に出てきそうな理想なカレシ像で、この話ひょっとしたら主人公の妄想が繰り広げるファンタジーかホラーなのかもとも思った。ならばと斜め上の残酷な結末も覚悟と期待していたら、予想外に普通の纏まり方で肩透かしをくらった気分。
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映像の方が書かれたのです、ね。 納得。 更年期少し勉強になったり。 美味しいし。羨ましいぃと、感じてしまう。 女性が自身の性を語るタブー。 最初の男で決まる…。 70になって年下男性との恋愛。 ずっしり後押ししてもらえる‼︎
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一気に読んだ、という意味では十分面白かったのだけど、燿子と蓮ふたりのメッセージのやりとりが、フランス映画の男女のささやき声のモノローグのような感じで、でも日本語で文字化されているとなんだか薄っぺらく感じてしまい(というよりふたりの行為が詩的なものからどんどん俗物的になるせいで、物...
一気に読んだ、という意味では十分面白かったのだけど、燿子と蓮ふたりのメッセージのやりとりが、フランス映画の男女のささやき声のモノローグのような感じで、でも日本語で文字化されているとなんだか薄っぺらく感じてしまい(というよりふたりの行為が詩的なものからどんどん俗物的になるせいで、物語が薄っぺらく感じたのかもしれない。)、著者が元々ご所望だった映像作品ならよいのかもしれないな、と思った。 もう少し問題に踏み込んだ話に期待していたのだが、ラストの展開で、官能小説にとどまってしまった感じ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
70代になって主人公が現役世代に対して疎外感や「まだ自分も何かできる」という焦りを持つ、その感じは自分も割と理解できました。その辺りの機微を「疼く」と表現しているようにも思います。 ただ後半になると、その焦りの様な気持ちから少し目を逸らして、性愛の世界へ邁進。ちょっと目線が変わりすぎて問題なのは年齢ではなく、リア充か非リア充か、だったのかな?とやや興醒めしてしまいました。 お相手があまりに都合よく「歳上女性大好き・テクニシャン・別れたら美しく死ぬ・不倫に寛容な奥様」のフルコンボ過ぎたのも物語を薄くしたような。70代でこんな体験できたらいいねという夢の物語かなと考えました。
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装丁が美しかった。 華やかな衣装とは裏腹に、墨絵のように描かれているのはどこか線の崩れた女性。儚げなタイトル文字。 松井久子は初読。(というか小説は初らしい) 主人公は70歳を迎えた女性脚本家。 「自分をどこまで解き放てるか。あるがままの自分の、完全なる自由。それが、いつの頃か...
装丁が美しかった。 華やかな衣装とは裏腹に、墨絵のように描かれているのはどこか線の崩れた女性。儚げなタイトル文字。 松井久子は初読。(というか小説は初らしい) 主人公は70歳を迎えた女性脚本家。 「自分をどこまで解き放てるか。あるがままの自分の、完全なる自由。それが、いつの頃からか彼女が求めるようになったものだ。」p3 古稀を迎え、これまでの人生で満たされずにきたものへの焦燥と諦め。 なるほど、それらとどう折り合いをつけていくのだろうかと読み進むと、どんどん話はエスカレートしていき、主人公と相手役とのSNS上の会話は、まるでシェークスピアを読んでいるかの如く難解でついていけず。 相手役の幼少期の環境や、そこから生じた性癖やらが、主人公にとって(70歳の女性にとって)都合が良すぎる。 仕舞いに「いつの間にか~母か姉になったような気持ち」p261 「私は、またひとり生きていく。自由に、寂しさを友としながら、私自身のままで。」 うーん、なんか、単に婆さんとオジサンの癖が強い恋愛を見せられただけな気がして、読了後しばし呆然。 「私たち団塊世代にとって、「身体感覚」は、長いこと蓋をしたまま置き去りにしてきた大切な問題」p265 と、あとがきで明かす作者にとっては意欲的な作品だったのかもしれないが、作者も主人公と一緒になって盲目的になりすぎている気がして、読んでいるこちらは冷めてしまった。
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私も同い年。好きな人もいます。 短い間でも良いからこんな濃厚な恋が出来たら…と!女は何才になっても女なんです。何才になっても恋はしたいと思っている人もいる、恋をする事を後押ししてくれる様な内容でした。
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いつまでも綺麗でいたい。女として見られたい。そんな思いになったのはなぜだろう。個人として見られたい思いが強かったのに。 隠してた部分なんだろうか。そこを解放できる相手を探していたんだろうか。 嘘のない姿を見せてくれていると思っていた男に妻がいたというラスト。何が嘘で何が本当なのか...
いつまでも綺麗でいたい。女として見られたい。そんな思いになったのはなぜだろう。個人として見られたい思いが強かったのに。 隠してた部分なんだろうか。そこを解放できる相手を探していたんだろうか。 嘘のない姿を見せてくれていると思っていた男に妻がいたというラスト。何が嘘で何が本当なのか。目の前にいる男の姿だけを信じるというのは強がりか? もし、性行為が生殖の役割とはっきり分断されて、純粋な愛情表現や快楽の為に行われるものだったら、女性はどれだけ自由で幸福だっただろう。 本当は彼を独占したい。あれほど信頼していた男が妻に偽り、彼女にも究極を求めず、涼しい顔で不倫関係を続けていることに以前の様な信頼感が抱けなくなっていく。 男性との間で求めることは安心と信頼。本当の完全なる解放。引け目なくありのままの自分でいられること。 人は皆生まれる時も死ぬ時も1人。人の人生で絶対的なものは死だけ。だから生きているうちの今を思い切り生きる。 自分がその男を必要と思えるかどうか。プライベートのことは何一つ知らないが、重要なのはそれだけ。 人が心に思うことは誰にも止められない。 幸せの条件。愛される。褒められる。役に立つ。必要とされる。 小説は個人プレイ。コストがかからない。この言葉と70歳からの性愛のadvancedに惹かれて読んだ。
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70歳すぎての恋愛事情。 いくつになっても恋愛するのは自由だと思うが、性が絡んでくるとどうなんだろうか。。 まさしく身も心も溺れてしまうことになるのだろうか…。 ある程度の年齢になると「年相応」に生きることを大事にしながら、確実に訪れる死に向かって、それぞれの日常を紡いでいく...
70歳すぎての恋愛事情。 いくつになっても恋愛するのは自由だと思うが、性が絡んでくるとどうなんだろうか。。 まさしく身も心も溺れてしまうことになるのだろうか…。 ある程度の年齢になると「年相応」に生きることを大事にしながら、確実に訪れる死に向かって、それぞれの日常を紡いでいく。 多分、ある程度の年齢になると大半がそう思うだろう。 ただ恋愛できるということは自由であり元気であるからだろうとも思う。 恋愛するというよりも知らない間に恋におちてるというのが正しいのかも知れないが…。
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