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JR品川駅高輪口 新装版 の商品レビュー

3.2

30件のお客様レビュー

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2024/08/28

高校生の百音は形だけの家族との生活、形だけの友人関係に生きている価値を見出せなくなる。毎日の日課は自殺願望を持った人たちが集う掲示板サイトを見ることだ。 百音は心の中での話し方は淡々としており、自分の気持ちなのにどこか他人事のようだ。 生きているのに、生きている実感がないよう...

高校生の百音は形だけの家族との生活、形だけの友人関係に生きている価値を見出せなくなる。毎日の日課は自殺願望を持った人たちが集う掲示板サイトを見ることだ。 百音は心の中での話し方は淡々としており、自分の気持ちなのにどこか他人事のようだ。 生きているのに、生きている実感がないように感じる。 物語の特に冒頭部分だは、百音の耳をすり抜ける電車内のアナウンスや周囲の人たちの会話が羅列されており、百音の孤立感がさらに読者にも迫って感じられる表現となっているように思う。 百音のように自殺願望を持ったことはないが、私自身も小学生の頃クラスメイトにハブられた経験があり、生きている意味、存在価値を考える気持ちや孤独感はよくわかる。 この先も百音の苦しみは続きそうだ。 自殺を考える人は日本には多く存在する。 電車の人身事故も絶えない。 こんな思いを誰にもしてほしくないと切におもった。

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2024/08/25

『自殺の国』を改題して刊行された作品。 山手線シリーズ。 前作が全米図書賞受賞ということで読んでみたけれど、ちょっと難解で難しく感じられた。 今作は身近に感じられた。 自殺願望みたいなものは、私自身にもあって、別に今作みたいに掲示板とかで募集して…とかいうつもりは無いけれど、...

『自殺の国』を改題して刊行された作品。 山手線シリーズ。 前作が全米図書賞受賞ということで読んでみたけれど、ちょっと難解で難しく感じられた。 今作は身近に感じられた。 自殺願望みたいなものは、私自身にもあって、別に今作みたいに掲示板とかで募集して…とかいうつもりは無いけれど、どこかぼんやりそんな気持ちがある。 “わたしは、生きたい人は普通の人で、死にたい人は普通じゃない人だと思っていたのかもしれない。でも、死にたい人と生きたい人は実は同じ人で、生を突き飛ばして死にしがみつくか、死を突き飛ばして生にしがみつくか、だとしたら、生にも死にもしがみつかないで生きていける人が、普通じゃない人なのかな? 生も死も、よくわからない。 死ぬのは最終的には死んでみなければわからないとしても、生きるのがわからないのはどうしてなんだろう” この言葉が印象的だった。 生きていてもいなくても変わらない毎日を生きている気がして。 百音みたいな環境では無いけれど、それでも何か生きることへの絶望みたいなものから抜け出せない。 ぐるぐる回る電車の中で、そんな思いに駆られている人は一体何人いるのだろう。 その循環から抜け出すために、飛び出してしまう前に、何か、何か。

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2024/07/09

年間3万人を数える日本国内における「自殺」。本書は作家、柳美里が一人の少女を通して問いかける「生と死」の意味。圧倒的なリアリティを持つ電車のアナウンスや、車内や女子高生同士で語られる「会話」が秀逸。 本書は作家、柳美里さんが1998年以降、 自殺者連続3万人の日本社会に問...

年間3万人を数える日本国内における「自殺」。本書は作家、柳美里が一人の少女を通して問いかける「生と死」の意味。圧倒的なリアリティを持つ電車のアナウンスや、車内や女子高生同士で語られる「会話」が秀逸。 本書は作家、柳美里さんが1998年以降、 自殺者連続3万人の日本社会に問う長編小説です。よく彼女はツイッター上で、電車への飛び込み自殺で、運休を見合わせる旨を示すツイートを「……」というメッセージを添えてRTしていることがあるのですが、これを読みながら3万人もの人間が「消えて」行っていることを思い出し、なんとも複雑な思いがいたしました。 物語は冒頭から「2ちゃんねる」を思わせるような掲示板に、延々と記される「自殺」「逝きたい」の文字から始まります。電車の中、携帯電話を手にその画面を見つめる少女は、本作のヒロインである市原百音・高校一年生です。 彼女は自分の志望した公立高校に落ち、第二志望の私立にも落ち、どうにかして入学した高校で「サゲサゲ」の入学式を向かえ、「スカイソーダーズ」という形だけの友人関係と、父親が会社の部下と不倫関係を持ち、母親はそれを知りながら弟の関西の学校受験に血道をあげる。しかし、弟自身は関西には行きたくない…。そんな家庭で暮らしております。 作品全体のほとんどは彼女の限りなく続くモノローグと、電車内の描写があるのですが、ゴシック体で記されるアナウンスや、彼女の耳にいやおうなく入っていく乗客のほとんど無意味な、人々の会話が、無機質のBGMとなって圧倒的なリアリティを持っております。 僕も品川駅はよく利用する駅のひとつなので駅の詳細や、電車の中で繰り広げられる会話は文字通り皮膚感覚で理解できるので、頭の中に映像が込みあがってくるのでした。 市原百音などの会話の場面や、「スカイソーダーズ」がハニートーストを食べながらをカラオケに興じる部分の会話もものすごいリアリティがあって、もしかすると柳美里さんは電車の中で「彼女たち」の会話に耳を傾けていたのかもしれません。しかし、そんな日常は百音のグループのリーダー的存在である「日菜子さま」が間違って彼女へ送ったメールから徐々に変わっていきます。 百音は「猶予は2日。決行日は6月19日神奈川です―」と掲示板に書き込んで、ともに死ぬという「目的」を持った人間と会うために、品川発の電車に乗って、彼らとの「約束の場所」へと向かうのだが…というところがクライマックスです。 しかし、彼女は自分の「日常」へと帰り、待ち受けていたものは「仲良しグループ」から自分が排除されたという無残なまでの事実でした。結末は彼女の将来が決して希望にあふれたものではなく、この先も苦労するんだろうなぁ、きっと。と思わせるもので、一人の少女を通して作者が問いかける「自殺」の意味を痛感させられる小説でございました。 ※追記 本書はタイトルな何度か変わっており、2021年2月5日に『JR品川駅高輪口 (河出文庫)』として河出書房新社より刊行されました。

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2024/05/19

本書は、タイトルがコロコロ変わっているらしい。2012年に刊行されたときは『自殺の国』、2016年に文庫化されたときに『まちあわせ』と改題、そして2021年の新装版(本書)で『JR品川駅高輪口』という当初のタイトルに戻した、とのこと。 また、本作は「山手線シリーズ」の第4作なの...

本書は、タイトルがコロコロ変わっているらしい。2012年に刊行されたときは『自殺の国』、2016年に文庫化されたときに『まちあわせ』と改題、そして2021年の新装版(本書)で『JR品川駅高輪口』という当初のタイトルに戻した、とのこと。 また、本作は「山手線シリーズ」の第4作なのだそう。「あとがき」に詳しく書いてあるが自分のメモのためにまとめておくと、1作目から順に 『山手線内回り』、 『JR高田馬場駅戸山口』、 『JR五反田駅東口』(『山手線内回り』所収)、 『JR品川駅高輪口』(本書)、 『JR上野駅公園口』(2020年12月に読んだ全米図書賞受賞作)、 『JR五反田駅西口』(2024年5月現在これ以下は未発売)、 『山手線外回り clockwise』、 『JR常磐線夜ノ森駅』、 の全8作だそうだ。でもご本人のXによると、これらの他に「JR原宿駅竹下口」というのもある。9作になるということか。 さて、『JR品川駅高輪口』。時は2011年6月、主人公は高1の市原百音。学校ではハブられないよう、クラス内のグループ「スカイソーダーズ」のイツメン(イツモイッショデナケレバイケナイメンバー)たちに合わせ、家に帰れば心のバラバラな家族と過ごす毎日。今は亡きおばあちゃんだけが、百音に寄り添ってくれていた。 そんな百音は、自殺志願者が集まるネット掲示板を見ている。ただ見ているだけなのか、それとも書き込みをしているのか、もし書き込んでいるならどれが百音の書き込みなのか、などは途中まで明らかにされない。 百音が見ているもの、聞いている(もしくは聞こえてくる)音声、心の中で思っていること、誰かと交わしている会話などがそのまま文字に起こされているので、臨場感たっぷり。本作ほどではないが『JR上野駅公園口』でも同様の表現が見られたので、このシリーズには共通の書き方なのだろう。 クラス内グループのメンバーとの付き合いの描写がリアルで、自分の学生時代を思い出してどんより重い気分になってしまった。私も友人関係がうまく築けない方だったから、百音の気持ちが痛いほどよくわかってつらかった。 〈生も死も、よくわからない。  死ぬのは最終的には死んでみなければわからないとしても、生きるのがわからないのはどうしてなんだろう?  いまだって生きているし、死ぬまでは生きているのにーー。〉 百音の居場所がたとえ今そこにはなくても、亡きおばあちゃんのことを思うとき、ひとすじの希望が見える。

Posted byブクログ

2024/04/07

自分が生きる世界が全てで、そこから抜け出すことは決してできず、その世界で認められなかったら全て終わり。 この感覚は苦しいくらいわかる。わたしも病気になり、何度も死にたいと思い、死に近づこうとした。今も終わった世界の延長線を生きている感覚。それでも、こんな自分でも他人や自分に対し...

自分が生きる世界が全てで、そこから抜け出すことは決してできず、その世界で認められなかったら全て終わり。 この感覚は苦しいくらいわかる。わたしも病気になり、何度も死にたいと思い、死に近づこうとした。今も終わった世界の延長線を生きている感覚。それでも、こんな自分でも他人や自分に対してどこかでわずかな期待を抱き、そしてそれが叶うことはないと感じてはしんどくなり、それでもとまた少し前を向き、でもやはり結局は死という形で全ては失われる、とまた無力感に襲われる。 主人公は最後にクラスメイトの優しさにほんのわずかな生きる価値を見出した。 それでも人生はその一つの経験だけで乗り越えていけるほど甘いものではないだろう。幾度となく、死と向き合い、その都度、ほんのわずかな微かな喜びや価値にすがりつきしがみついて耐えていくものなんだろうなと思う。 自分は情けないほど弱い人間で、いつか耐え切れなくなるかもしれない恐怖に怯えて生きている。支えてくれる家族、自分の敬愛するアーティストが奏でる音楽、物語、絵画、好きな風景など、いろんなところにわずかでもしがみつける場所、引っかかりがある場所を作っておき、口を開けている大きな落とし穴に落ちないようにしておくことは大事だと思う。自分一人の心など、簡単にくずれ落ちてしまうものだとわかっているので。

Posted byブクログ

2023/08/01

ノリのいい語り口調。それとは裏腹に、 お話の内容は、友達付き合いも真底楽しめず周りと同調しないとやっていけない。あきらめなのか。 家族とも心を通わせられない女のこのお話。

Posted byブクログ

2023/07/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「もしかしたら、自分が死への背中を押した人がいるかも」 16歳が背負うには重いよね。 たぶん、恋をしても結婚しても、子を成しても付いてくるよ。 どうか。いま「死にたい」と思っている若い子がこれを読んで、少しでも死へのリアルを想像できますように。そして、願わくば若い子の自死が減りますように…。

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2023/06/29

JR上野公園駅を読んで山手線シリーズを読んでみようと買ってみたものの、重たく暗いテーマなのであろうと勝手に思い込み積読になっていた。最近の女子高生をうまく描かれているとは感じたが自殺という重たいテーマに対して描かれる若者言葉やファッションが邪魔をして感情移入できないまま読み終えて...

JR上野公園駅を読んで山手線シリーズを読んでみようと買ってみたものの、重たく暗いテーマなのであろうと勝手に思い込み積読になっていた。最近の女子高生をうまく描かれているとは感じたが自殺という重たいテーマに対して描かれる若者言葉やファッションが邪魔をして感情移入できないまま読み終えてしまった。同年代で同じような境遇であれば感じ方が違ったかもしれない。

Posted byブクログ

2023/05/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

妙にギャル言葉?というのか、と〇〇だお、などの語尾が気になり、やっぱり話に集中できず。 途中からは流し読み。 百音は死にたかったのか。 どうして決行の時、自分だけ薬を飲まなかったのか。 飲んだ上でよろけながら祖母の声を感じて、車外に出た、ならわかるけど。 うーん、ちょっとわからなかった。

Posted byブクログ

2023/02/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 柳美里「JR品川駅高輪口」、2021.2、新装版に際し改題。もとは、「自殺の国」(2012.10刊行)→「まちあわせ」(2016.11文庫化)。17年にわたるシリーズ「山手線シリーズ」の第4作に位置づけられる作品。電車内の雑談と構内アナウンスのオンパレード。高1の少女市原百音が主人公。自殺がテーマ。自殺する人、しない人、その違いは何か。駅のプラットフォームという断崖絶壁(生き死にの瀬戸際)に立つ登場人物たち。「危ないですから黄色い線までお下がりください」

Posted byブクログ