紅蓮の雪 の商品レビュー
うおーーーん!慈丹、君はええ人や!!ザ・ドラマチック。これは面白かった。男女の双子の重すぎる運命の物語。両親から冷遇され寄り添うように生きてきた双子の姉弟、朱里と伊吹。20歳の時朱里が自死してしまう。朱里は生前、ある大衆演劇を観ていた。伊吹もその大衆演劇に足を運んだところ、看板女...
うおーーーん!慈丹、君はええ人や!!ザ・ドラマチック。これは面白かった。男女の双子の重すぎる運命の物語。両親から冷遇され寄り添うように生きてきた双子の姉弟、朱里と伊吹。20歳の時朱里が自死してしまう。朱里は生前、ある大衆演劇を観ていた。伊吹もその大衆演劇に足を運んだところ、看板女形の慈丹に才能を見出される。大衆演劇=富美男ぐらいの知識だったが、演劇系の小説が好きなのでのめり込んで読んだ。展開的に昼メロのようになりそうなのにチープな感じは全然しない。双子の両親が酷すぎて絶句。慈丹の存在が光。伊吹に幸あれ。
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出自で悩む主人公たちの思いは計り知れない。ましてや自分が近親相関の両親の間にできた双子(姉弟)であり、親から汚れていると云われ愛情を受けずに育ったのであれば。 冒頭から、双子の姉はその事実を知り、弟の伊吹に「ごめん」という遺書を残して飛び降りる。伊吹は遺品に大衆演劇の雑誌と入場券...
出自で悩む主人公たちの思いは計り知れない。ましてや自分が近親相関の両親の間にできた双子(姉弟)であり、親から汚れていると云われ愛情を受けずに育ったのであれば。 冒頭から、双子の姉はその事実を知り、弟の伊吹に「ごめん」という遺書を残して飛び降りる。伊吹は遺品に大衆演劇の雑誌と入場券の半券を見つけ、自殺の原因を探ろうと大阪の大衆演劇「鉢木座」の公演を観に行く。逆に、伊吹は大衆座若座長の慈丹にスカウトされ、新人女方としてデビューする運びとなった。 大衆演劇にかけられる舞台演目『一本刀土俵入』『三人吉三廓初買』『八百屋お七』『牡丹灯籠』などの濃いどろどろとした情念が、まるで本作を引っ張っていき、引きずり込まれそうだ。その重い情念に耐えきれず、一旦は読むのを止めたが、とにかく読了して伊吹の行く末を見守ろうと気を取り直して再びページを繰った。理由は、劇団の若座長・慈丹の存在と、私も演劇部に所属していたから。 双子の母親・映子を何とか分かろうとしたが、最後まで理解できないキャラクターだった。実の兄を愛し子を身籠り周囲の反対を押し切り産む決意をし、兄と共に家族を作り双子を成人するまで育てたのに。外目では仲の良い夫婦を演じ続け、生んだ子には人の道を踏みはずしてできた子供と恥じている。外れた生き方を選択したのであれば責任持ってつき進んで欲しかった。その強さがなければ子供まで巻き込む生き方を選ぶべきではなかった。生まれた子供たちが自らを肯定して幸せになれるはずがない。自己憐憫に陥り、自分のことでいっぱいいっぱいの映子は憐れすぎた。仲立ちに入った慈丹が「伊吹の前に今後現れないように」と、親子の絶縁状を言い放った時には、当然のように思われた。一欠けらの同情すら覚えないのは非情だろうか。 出自は簡単に笑い飛ばせるものではないだろう。平野さん著『ある男』で、殺人事件を犯し死刑となった父を持つ息子が、戸籍を買い別な人物になりすます件が或る。自分が両親の嫌いな欠点を受け継いでいると感じる時でさえ、嘆きたくなるのだから、彼らの苦しみは筆舌に尽くしがたいだろう。『血は争えない』は充分人を傷つけてきたはず。クローンで生まれた子供たちを違う環境で育て、異なる性格に成長したという話もある。 伊吹君、人は変われる、自信を持ってこれからの人生を歩んでいって!
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伊吹の双子の姉の朱里が20歳の誕生日に自殺する、朱里の死に納得できない伊吹は、死の真相を知るべく遺品を手掛 かりに大衆演劇の世界に足を踏み入れ、「女形」として入団し人気を得ることになる… テーマは「因果」、物語が進むに つれて伊吹と他の登場人物との関係性がだんだんと明らかになって...
伊吹の双子の姉の朱里が20歳の誕生日に自殺する、朱里の死に納得できない伊吹は、死の真相を知るべく遺品を手掛 かりに大衆演劇の世界に足を踏み入れ、「女形」として入団し人気を得ることになる… テーマは「因果」、物語が進むに つれて伊吹と他の登場人物との関係性がだんだんと明らかになってくる。最終章の入口は「紅蓮の雪」というタイトルからか、やや不吉な予感がしたが、読後感はよかった。遠田さんの作品は安定しておもしろい。
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何とも重いストーリー。 双子の姉•朱里の死の真相を探ろうと大衆演劇の世界に入った牧原伊吹。両親に愛されず育った二人はお互い支えあい生きてきた。だが出生の秘密や朱里の秘めたる思いなど、彼等に罪はないのに、生まれながらに重たい十字架を背負わされている。せめてもの救いは伊吹が入った...
何とも重いストーリー。 双子の姉•朱里の死の真相を探ろうと大衆演劇の世界に入った牧原伊吹。両親に愛されず育った二人はお互い支えあい生きてきた。だが出生の秘密や朱里の秘めたる思いなど、彼等に罪はないのに、生まれながらに重たい十字架を背負わされている。せめてもの救いは伊吹が入った劇団の若座長が好人物であり、これからの心の支えになってくれるであろうという事。
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他人にはわからない苦しみを抱え、お互いを頼りとしながら生きてきた双子の姉弟、朱里と伊吹。二十歳の誕生日に自殺した朱里の足取りを追い、大衆演劇に足を踏み入れた伊吹は、女形として舞台に立ちながら、姉の死の真相に迫ることに。美しくはあるのだけれど、何とも言えない悲しみと苦しみが充満し、...
他人にはわからない苦しみを抱え、お互いを頼りとしながら生きてきた双子の姉弟、朱里と伊吹。二十歳の誕生日に自殺した朱里の足取りを追い、大衆演劇に足を踏み入れた伊吹は、女形として舞台に立ちながら、姉の死の真相に迫ることに。美しくはあるのだけれど、何とも言えない悲しみと苦しみが充満し、しかし読後は希望を感じさせられる物語です。 過去のトラウマから他人との関りが苦痛で仕方ない伊吹の苦悩があまりに痛々しくてたまりません。魅力的な人物であるがゆえに彼は好かれ、愛情を向けられることが多いのにそれが苦痛であるというあまりに皮肉な状況。何故そんなことになってしまったか、という理由もあまりに過酷で。誰にもどうしようもない、背負わされてしまった因業の重さもまた凄絶としか言いようがありません。だけどきっと誰にも悪意があったわけではないのだと思うと……。一見独りよがりで自分勝手にしか見えないように思えた和香も、実は一途で純朴な子だったのかも、と思えばやりきれないばかりです。 そんな中で、慈丹の存在にはとにかく救われました。いいなあ、彼。そして朱里が死を選んだ理由も、実は彼女の弱さでなく強さであったのだと思うと救いになるのかもしれません。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
初めての作者さん Twitterで見かけて気になり読んでみた 謎にせまるというよりは、なぜそうなったのかを考える話だった 子供を産んではいけない人間はいる ただ、それは兄妹だからという理由では無い 愛情を持って子に接することができない人間のことだ 朱里と伊吹の母親もそう 子供を良次を繋ぎ止める道具に使ったことが最も醜悪な罪 子供が使えないから愛せないというのは如何なものか 心中する覚悟をしていたのに、子供ができたからといってそれを反故にされた二人の生物学上の父親はずっと罪の意識を背負って生きたんだろうなと 堕ろしてくれというのも最低な言葉だけど そもそもなぜ避妊をしなかったのかもよくわからない 昭和の終わり頃にはコンドームもあったはず、貧困で使えなかったのだろうか? なんだかなぁという気持ちがついて回った そもそも近親相姦はいつから駄目になったのだろう? 遺伝子的な問題はあるんだろうけど、そこまで嫌悪の対象になる過程には何があったのか… ところどころ、鉢木家族の暖かさが伊吹を包んでくれて感情移入し泣いてしまった p55-56で木戸を壊してしまった伊吹に気を使わせないためか鉢木親子が軽快な演技をして場を沸かせたところや p97で伊吹が人と触れ合うことが辛いことに慈丹が気づいてくれた時、慈丹自身も旅芝居の一員として各地を回り、転校してその場その場で人当たりのいい人物を演じていたから自分自身に嘘をついている伊吹のことを気づいたのかなと 最後、朱里が伊吹を守るために飛んだと知った時の伊吹の心境 気持ちに応えられないけど、生きていて欲しかった 悲しい矛盾 母親を殺して自分を死ぬという結末に至った時、そうだよねそれが一番幸せな道だよね…と思っていたので慈丹が助けに来た時は、殺してやってよ…頼むよと思ったが 最終的に、慈丹が来てくれたことで本当の意味で救われたのかなと思うと慈丹の人間性がすごすぎて少し怖いが伊吹が慈丹のもとに産まれたかったといった気持ちはとてもよくわかった あんな誠実な人間のもとで愛されて育てたら、どんなにいいか 親が味方じゃ無い気持ちがわかる側なので、寧々ちゃん羨ましいなと思った 最後まで飽きずに読めた
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牧原伊吹の双子の姉の朱里が20歳の誕生日に「伊吹ごめん」と書置きを遺して飛んでしまいます。 伊吹はこの世でただ一人本当の心の内をみせることができる姉の死の真相を知ろうと、姉が亡くなる1週間前に観に行った、芝居を観に行きます。 そこで若座長の鉢木慈丹に出会い、そのルックスを見初め...
牧原伊吹の双子の姉の朱里が20歳の誕生日に「伊吹ごめん」と書置きを遺して飛んでしまいます。 伊吹はこの世でただ一人本当の心の内をみせることができる姉の死の真相を知ろうと、姉が亡くなる1週間前に観に行った、芝居を観に行きます。 そこで若座長の鉢木慈丹に出会い、そのルックスを見初められ、伊吹が剣道と日舞をやっていたことを知るとすぐさま旅の一座、鉢木座にスカウトされ、座長に引き合わされ、トントン拍子に入座して慈丹と同じ女形になります。 初舞台は大成功しますが、伊吹は子供の頃から父親に「汚い」と言われて育ち、他人に触れることができないという秘密があります。 それでお客の女子高生が公演後に伊吹に「お花」を付け、触れようとしたのを突き飛ばしてしまうという失態をおかしてしまいます。 それでも、お客の女子高生には謝罪をして、伊吹は慈丹とともに、一座のツインタワーを成す人気役者になっていきます。 しかし、伊吹は途中で鉢木座と自分との古い因縁を知り、自らの出生の謎にたどりつき、姉が何故自殺したのかを知ってしまいます。 とても哀しい痛ましい真実が隠されていました。 でも、伊吹は慈丹と巡り合ったことによって、姉のあとを追うことはせずに、雪は雪でも紅蓮の雪を舞台に降らせ続けながら生きていくことができるのでしょうか。
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双子の姉を亡くした伊吹。姉の死の真相を知りたくて大衆演劇の一座に入ることに。自分たちの出自を知ること、子供時代の親から愛情を感じられなかったこと、大人になっても苦しんでいること。さまざまなものを抱えている。消すことのできないことを知った時に人はどうやって立ち直ればいいのか。絶望し...
双子の姉を亡くした伊吹。姉の死の真相を知りたくて大衆演劇の一座に入ることに。自分たちの出自を知ること、子供時代の親から愛情を感じられなかったこと、大人になっても苦しんでいること。さまざまなものを抱えている。消すことのできないことを知った時に人はどうやって立ち直ればいいのか。絶望したあとにあるもの。血の繋がりという抗えないものとどう折り合いをつけるのか。登場人物たちにたくさんの負荷をかけて読み手にも負荷がかかるような重く苦しい物語だけれど光を信じて読んでいたくなるような作品。
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双子の妹が身投げして死んだことから始まる、親子の因果を辿る物語は、作者らしくじっとりと陰鬱な側面を持ち、それこそべったりした雪のように肩を重くするような感覚を読むうちに持たされていきます。それでも語りが巧いので、するするとその重い物語世界の沼に沈んでいくのです。 そうして序盤か...
双子の妹が身投げして死んだことから始まる、親子の因果を辿る物語は、作者らしくじっとりと陰鬱な側面を持ち、それこそべったりした雪のように肩を重くするような感覚を読むうちに持たされていきます。それでも語りが巧いので、するするとその重い物語世界の沼に沈んでいくのです。 そうして序盤から匂わされる普通ではない家庭環境と過度に他人との接触を拒む主人公、彼の過去は実際、相当な禁忌に包まれたものでした。 ただ、その題材を煽るように使うのではなく、まっすぐに向き合って描いているので、愛情のままならなさがゆえの悲しみを、怒りと憎しみを爆発させる彼らのあいだから感じ取りもしました。 最期の情景が絵としても心象風景としても美しく、印象的でした。また、これも作者の作品らしいと思うのですが、どんなに辛苦を味合わせた登場人物にも、ひとすくいの希望を持たせてくれる、しっかりした明るさが描かれているのが好きだなと思うのです。
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大衆演劇の世界を舞台に描く息詰まる作品だった。これまで何作か読んだ遠田作品の特徴として、“自分の力ではどうにもならないものを主人公が背負っている”というものがある。本作がまさにそれで、主人公の伊吹は冷淡な両親のために心に深い傷を負っている。双子の姉・朱里と助け合って生きてきたが、...
大衆演劇の世界を舞台に描く息詰まる作品だった。これまで何作か読んだ遠田作品の特徴として、“自分の力ではどうにもならないものを主人公が背負っている”というものがある。本作がまさにそれで、主人公の伊吹は冷淡な両親のために心に深い傷を負っている。双子の姉・朱里と助け合って生きてきたが、その姉は自殺してしまう。誘われるまま足を踏み入れた大衆演劇の世界で、彼は何を見つけるのか……。半分ほど読んでわかった気になっていたが、明かされた真実はさらに上をいった。涙なくして読めない感動作だった。
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