紅蓮の雪 の商品レビュー
双子の姉弟・牧原朱里、伊吹は、両親に愛されず育った。"お互いを守る"と誓った二人だが、二十歳の誕生日に、姉・朱里は、自殺してしまう。 伊吹は、朱里の遺品から大衆演劇「鉢木座」の 半券を見つけ、朱里の死の真相を探る為、大阪の劇場へ向かう。 真相は分からずじま...
双子の姉弟・牧原朱里、伊吹は、両親に愛されず育った。"お互いを守る"と誓った二人だが、二十歳の誕生日に、姉・朱里は、自殺してしまう。 伊吹は、朱里の遺品から大衆演劇「鉢木座」の 半券を見つけ、朱里の死の真相を探る為、大阪の劇場へ向かう。 真相は分からずじまいだったが、鉢木座の若座長・鉢木慈丹からスカウトされ、劇団に入団する。 伊吹は、稽古と雑用に追われ、やがて、女形として人気を得るようになる。 舞台、稽古の明け暮れだったが、朱里と伊吹が背負った、禁忌の秘密が明らかになる。 こんな運命を背負った人生もあるのだろうな。 慈丹の愛により、辛い運命を乗り越え、伊吹が又、舞台に立つ勇気を得て、良かった。
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遠田さん、こんな作品も書くんだなぁ、というのが第一声。 勿論、遠田潤子作品に欠かせない、断ち切れたない血の話は脈々と流れているのですが、いつも(あえていつもと言わせて貰います)よりずっと砕けていて読みやすい。 それは、この話を牽引していく慈丹を、遠田さんが明確に、もっと言えば自身...
遠田さん、こんな作品も書くんだなぁ、というのが第一声。 勿論、遠田潤子作品に欠かせない、断ち切れたない血の話は脈々と流れているのですが、いつも(あえていつもと言わせて貰います)よりずっと砕けていて読みやすい。 それは、この話を牽引していく慈丹を、遠田さんが明確に、もっと言えば自身も慈丹にぞっこんで描いたからだと思います。 とにかく慈丹が格好いい。酸いも甘いも噛み分け、その捌けた人柄と芸で人を惹きつけて止まない色男。 主人公、伊吹くんの存在が霞むほど、惚れずにいられない。 遠田潤子さんが慈丹を思う気持ちが溢れていて、楽しそうなのが最高!なんですが、やっぱり上手い書き手でなければ、ファンアートに傾くでしょう。流石です。 これは、おかわり期待したいなぁ(笑)。
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黒川博行氏の画家の奥様雅子さんの舞妓の絵よりも、この表紙は、なんとも悲し気であり、物思いの妖艶な感じである。 読んでいて、女形の姿と理解。 小説は、双子の女・男のふたり姉弟。 姉が、婚約破棄をして、20歳の誕生日に、飛び降り自殺。 遺品整理で、見つけた大衆演劇の半券と雑誌を不思...
黒川博行氏の画家の奥様雅子さんの舞妓の絵よりも、この表紙は、なんとも悲し気であり、物思いの妖艶な感じである。 読んでいて、女形の姿と理解。 小説は、双子の女・男のふたり姉弟。 姉が、婚約破棄をして、20歳の誕生日に、飛び降り自殺。 遺品整理で、見つけた大衆演劇の半券と雑誌を不思議に思った弟の伊吹は、姉の朱里が、何を思ったのか? そして、自殺の原因を知りたくて、演劇を見に行く。 そこで出会った慈丹との話で、劇団の一員になってしまう。 幼き日に、双子の伊吹たちは、母親から無視され、父親からは、憎悪の眼を向けられて育った。 教育と食事は、普通に与えられたが、精神的に「汚い」という言葉が、心に刻み込まれて、2人は育っていく。 つい先日、摂津市の3歳の子供が、熱湯をかけ続けられて火傷で、命を絶った虐待とは違うけど、小説の中のふたりは、心傷つき他人に触れる事に異様に反応していく。 劇の中の劇目も 「三人吉三」の十三郎とおとせの双子の物語りも、この伊吹と重なるような・・・ 舞台で、伊吹が、誕生日ケーキを目にして、産まれて初めて、ケーキを貰い、自分の誕生日を祝ってもらうのに、戸惑いと嬉しさとで、言葉に出ないシーンは、涙を誘う。 みんな、当たりまえのように、自分の誕生日は、祝ってもらえるものと考えていたのだが、唯一の親からも祝ってもらえない人が、居るのだと、気付かされた。 さして、話の後半 伊吹は、自分と姉の関係が、両親の近親相姦で、誕生した事に衝撃を受ける。 自分を産んでくれた母を殺そうと思うほど、憎悪を感じている。 親が、子供を愛せないなんて、・・・・ そして、子供も、親の愛を感じないで、成長して行くなんて、・・・・ 残酷な話である。 ただ、慈丹が、優しさと叱咤で、愛情深く包んでやっている姿が、なんとも言えない。 平凡に、親の愛を一杯に育った私は、なんて幸福なのだろうと、・・・・ そして、この年になっても、未だ、綺麗な花を送られてお誕生日を祝ってくれる人達に感謝しないと、・・・と、思われる日であった。
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道を外れているけれどありえないことだけど覚悟を決めて好きな人の子どもを産んだのならその子どもを愛してほしかった。 伊吹は慈丹に出会えて良かった。朱里の分も幸せになってほしい。
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大衆演劇の世界は、観たことが無いので詳しくはわからないが身内で固めて地方をまわっているのかな…と思っていた。 双子の姉が、突然自殺をした。何故かわからず最期の足取りを追った青年がその世界へはまっていく。 まるでそれは必然のように… 全ては、縁で繋がっていた… 哀しさだけが残る。
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大衆演劇、体験したことないわ〜。 独特の世界観なんだろうなぁ。 こんな複雑な環境で両親と同じ道に進んでしまうのは、もう仕方がないのか。
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遠田潤子先生作品にしては展開が読めたな~~~こういうテーマ扱うならもっと初期作品群みたいにどす黒くても良かった
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ドS作家と思っている遠田順子さん。登場人物へのこれでもかといういじめっぷりと、その先に見える光のせいで読む手が止まらない作家のひとりで有ります。 この作品は大衆演劇を舞台にした、禁忌的な2代に渡る恋愛物語ですが、ギチギチに痛々しいお話で遠田節全開です。ここの所テイストが少し変わっ...
ドS作家と思っている遠田順子さん。登場人物へのこれでもかといういじめっぷりと、その先に見える光のせいで読む手が止まらない作家のひとりで有ります。 この作品は大衆演劇を舞台にした、禁忌的な2代に渡る恋愛物語ですが、ギチギチに痛々しいお話で遠田節全開です。ここの所テイストが少し変わったなと思っていましたが、それもなかなか良かったので器用な人なんだなと思っていましたが、やはりこちらが本性か。 ディープに倒錯した世界観で悪酔いしそうな展開ですが、女形という華やかで倒錯した明るさが中和してくれて読み心地は良かったです。
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朱里と伊吹の出生の秘密が気になりながら読んでいた。途中から大体の予想はついていたけれど、それでも、座長が真実を語り始めると、読んでいる自分も覚悟を持って、ただただ夢中になっていました。そしてその事実は、想像していたよりも過酷な運命で、心が震えました。 過酷な運命を背負い、父と母に...
朱里と伊吹の出生の秘密が気になりながら読んでいた。途中から大体の予想はついていたけれど、それでも、座長が真実を語り始めると、読んでいる自分も覚悟を持って、ただただ夢中になっていました。そしてその事実は、想像していたよりも過酷な運命で、心が震えました。 過酷な運命を背負い、父と母に無視され生きてきて、事実を知った朱里と伊吹の気持ちが、辛いほど伝わってくる。でもそれ以上に、私は、誰にも知られてはいけないその秘密と鉢木座を背負って生きてきた座長の秀太が、どれだけの思いを抱えていたのだろうと思うと、凄く胸が痛みました。 最後は舞台に舞う雪のように真っ白な気持ちになり、その雪に、伊吹と鉢木座のこれからが、愛情いっぱいに包まれたものでありますようにと願い読み終えました。 余韻が覚めない、激しく夢中になった一冊でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
双子の姉の死に悩む青年の愛憎ドラマ。 旅芝居の女形に身を投じた主人公が姉の自殺の真相ひいては自身の出生の真相まで至りつく物語でした。 因果や血の穢れといったどろどろとしたものが旅芝居一座の人情で浄化されていて読みやすかったと思います。 それにしても母親は自らの呪いに縛られて周りを不幸にしてしまう哀れで救いがないと思いましたが、主人公は救われて良かったです。
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