灰の劇場 の商品レビュー
二人で同居していた女性どうしの心中事件を題材に、著者と思しき小説家が小説を書きそれが舞台化されてゆく過程と、小説の中身が同時進行で描かれていく。きっちりしたストーリーはなく、著者の内面が綴られたりして最初のうちは読みづらかったが、中盤からは面白くなった。 二人はなぜ同居を始めたの...
二人で同居していた女性どうしの心中事件を題材に、著者と思しき小説家が小説を書きそれが舞台化されてゆく過程と、小説の中身が同時進行で描かれていく。きっちりしたストーリーはなく、著者の内面が綴られたりして最初のうちは読みづらかったが、中盤からは面白くなった。 二人はなぜ同居を始めたのか、どんな生活を送っていたのか、そしてなぜ心中を決めたのか。大きなドラマがほとんど起こらない人生の日常の積み重ねで、人間がふと絶望する瞬間を著者は見事にえぐり出す。これは20代の頃に読んだら間違いなくピンと来なかっただろうが、人は老いていくのだと身をもって理解した今は心に刺さる話だった。この著者と同時代に生きていてよかったと思う。
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最近読んだ新書『映画を早送りで観る人たち』に、YouTubeなど「情報過多・説明過多・無駄のないテンポの映像コンテンツ」に慣れた現代人は、とにかく「わかりやすい」エンタメ作品を好むようになった、という説があった。 そんな時代において、作家が小説を書く前の構想段階、小説、その小説が...
最近読んだ新書『映画を早送りで観る人たち』に、YouTubeなど「情報過多・説明過多・無駄のないテンポの映像コンテンツ」に慣れた現代人は、とにかく「わかりやすい」エンタメ作品を好むようになった、という説があった。 そんな時代において、作家が小説を書く前の構想段階、小説、その小説が舞台化された世界線が交錯しながら進み、はっきりした説明やストーリーもない本書は、めちゃくちゃ異端だ。 だけど、すごく面白い!!こんなの書けるの恩田さんしかいない!!! 今までの作品でも、死の予感を漂わせたり、テーマにすることは多かった恩田さんだけど、この本で満を辞して、自分の身近な現代の「死」に真っ向から向き合われた印象。 主人公の2人の女性が、最後には心中を選ぶのが分かっているので、物語の最初から最後まで、どんどん灰色の羽が心に降り積もっていって、息が詰まるような感覚だった。 「まだまだこれから先も、いろいろなものを調達して暮らしていかなければならないと気付かされた時。 「ついていけない」「やっていけない」「未来がない」という現実が身に染みて感じられた時。 その両者が、あるタイミングで絶望という言葉で暗く結びついても不思議ではないような気がする」 上記の文章に、特にハッとさせられた。 何気ない不愉快や不安が、この先日常としてずっと続いていくんだという思いが、思考の幅を狭くし、死という選択肢しか見えなくなること、怖いけれど、決して自分からかけはなれたことじゃない。そのことを突きつけてくる文章だと思う。 主人公2人が、いかにも普通、中肉中背、平凡な見た目として描写され、最後までちゃんと日常を送っているのも、死はすぐ隣にあるものだ、というメッセージのようで恐ろしい。 本書を読む間、自分の中で、テーマソングとしてジム・マクニーリーの『extra credit』が流れていた。 鬱気味の人には要注意ですが、恩田陸の不穏系な作品を愛する私としては、かなり好きな作品でした。
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新聞の書評で紹介されていた。 新聞記事で見つけた女性二人の飛び降り自殺記事になにか引かれるものがあり、小説化。 読めるが、面白い作品ではない。
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読み始めてしばらくたって、構造に気づく。 恩田陸の私が苦手な方向だと読みにくいかも、、、と内心おののいてた部分もあったけど、意外にも読みやすかった。 白い砂が静かに降り積もって全てを覆い隠していく舞台を私も静かに客席から眺めてみたかった。
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新聞記事の二人の女性に託した、恩田陸流の私小説かも。メタであることは間違いないが。MはTに引き摺られたのかな。Tが結婚とかで出て行っても、Mは一人でやってゆけそうな気がするもの。絶望はあくまでTのものって気がする。 遺書を残さなかったということは、二人の遺骨はそれぞれの実家の墓に納められたのか。無縁仏扱いでも構わないって思ったのかな。子なしの女は負け犬って酒井順子的価値観。恩田さんがそう思っているとは思わないけど。
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同居していた2人の中年女性の心中事件を3面記事で見た作家がそれを題材にした小説を書こうとして思い悩む気持ちを綴り、フィクション自体も同時進行で進んでいく、という二重構造の物語。章立てに使われている数字の0と1の意味はとうとう最後まで分からなかった。書くことの意味を自問する小説家の...
同居していた2人の中年女性の心中事件を3面記事で見た作家がそれを題材にした小説を書こうとして思い悩む気持ちを綴り、フィクション自体も同時進行で進んでいく、という二重構造の物語。章立てに使われている数字の0と1の意味はとうとう最後まで分からなかった。書くことの意味を自問する小説家の煩悶-それはおそらく恩田陸本人-を空から降り注ぐ無数の灰色の羽根というメタファーで表現したのだろう。ただ、心には響かなかった。
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エッセイなのかわからないが中年の女性2人が心中した記事が頭にありそれを題材にして小説を書こうと思いながら書き出すまでのエッセイを書いて徐々に小説を仕上げていく話。2人の死が謎で記事にも載っていないので空想で仕上げていく過程や、1人は結婚を経験して別れたのを機に2人で生活してやがて...
エッセイなのかわからないが中年の女性2人が心中した記事が頭にありそれを題材にして小説を書こうと思いながら書き出すまでのエッセイを書いて徐々に小説を仕上げていく話。2人の死が謎で記事にも載っていないので空想で仕上げていく過程や、1人は結婚を経験して別れたのを機に2人で生活してやがて歳を取り何もできなくなったらという不安、仕事、など考えをまとめていく過程に加えて母親の死は恩田陸の事??と途中でフィクションかノンフィクションか分からなくなる。でも何故か読むのはやめられない。
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同級生の女性が一緒に転落死した。原因が何だったのか、遺書もなく、小さな事件は謎のまま。 小説家である主人公が見つけた小さな三面記事を書いたものが舞台化される。 ふたつの世界が描かれていて、MとTに持って行かれそうになる。女の友情ってやっぱり難しい。 ふたりの顔はわからないまま、違和感のままに舞台化は進む。 ラスト、ふたりが逝こうとする場面は静かで、まるでいつもの一日のようなのに、最期に向かっていくところが、言い方変だけど、とても好きだった。愛でもなく、普通のことのように過ぎていく感じ。
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共に自殺した女性二人と、作者の視点から描かれた物語。いつもの作者が書くような特異性はなく、ごくごく普通の二人の女性が書かれる。そしてその女性たちを、様々な視点から、どんな女性で、どんな風に生き、どんな風に死んだのかを夢想する。終わりもあっさりと爽やかで、心中ものとは思えないものだった。
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小説家がある新聞の小さな記事から、中年の女性2人が橋の上から心中したと言う事件から インスパイアされた物を舞台化すると言う 話しから、自殺した女性2人の日常を小説家 の目線から描き主人公の小説家、自殺した2人の 女性全てが顔の無い、虚無の中で繰り広げられ 互いに同時代を生き時が経...
小説家がある新聞の小さな記事から、中年の女性2人が橋の上から心中したと言う事件から インスパイアされた物を舞台化すると言う 話しから、自殺した女性2人の日常を小説家 の目線から描き主人公の小説家、自殺した2人の 女性全てが顔の無い、虚無の中で繰り広げられ 互いに同時代を生き時が経った今、自殺した2人の 女性と小説家がの人生が交差し、時間とはいつの間にか過ぎ去り老いと共に時間から取り残され 無に帰して行くと言う、最初から最後まで不穏で 不安定で読み終えた後も、何故か心の中が ざらついた感じにさせる。
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