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灰の劇場 の商品レビュー

3.1

149件のお客様レビュー

  1. 5つ

    17

  2. 4つ

    26

  3. 3つ

    60

  4. 2つ

    19

  5. 1つ

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2021/03/05

これは“事実“に基づく物語。帯の文句にそそられて購入。 新聞の三面記事にあった、女性二人の飛び降り事件。その記事にもやもやした記憶だけが長い間残っていて、どうしてその記事が気にかかるか、を焦点に小説を書こうと思ったそうです。 期待していた内容と違いました。作中でも書かれています...

これは“事実“に基づく物語。帯の文句にそそられて購入。 新聞の三面記事にあった、女性二人の飛び降り事件。その記事にもやもやした記憶だけが長い間残っていて、どうしてその記事が気にかかるか、を焦点に小説を書こうと思ったそうです。 期待していた内容と違いました。作中でも書かれていますが、五年前十年前に描いたとしたら、全く違ったものになっただろう、と。たぶん、二人の関係を静かながら緊張感に満ちたサイコサスペンスのようなものとして描いていたはず。 そう、それを期待して購入したんですよ。 期待は裏切られたけれど、つまらないというわけではないのが嬉しいです。 嬉しいという感情が持つ明るい感想ではないのだけど、なんだろう。共感というか、現在の自分が感じている不安や無力感というものの、一端を見せられたというか。 二人の女性と、自分が同世代の年齢であることが、また共感してしまったのかも知れない。共感より協調? 読後感で言えば、いいものではないです。 自分がいつの間にか抱いてしまっている暗い部分を、曝け出すほど強い衝動でもなく、振り切るだけの力が湧くわけでもなく、そこに寄り添う優しさがあるわけでもない。 同じものを見つめてしまったという後ろめたさかなぁ。

Posted byブクログ

2021/03/02

どこからが本当の話でどこまでが小説だけの話なのか… むしろ最初から最後までが作り話なのか。 恩田さんがずっと心の底で気になっていた中年女性が飛び降り自殺をしたと言う新聞記事を担当編集者さんが見つけてきた所からこの話はスタートするけれども、そもそもそれは本当に恩田さん自身なのか? ...

どこからが本当の話でどこまでが小説だけの話なのか… むしろ最初から最後までが作り話なのか。 恩田さんがずっと心の底で気になっていた中年女性が飛び降り自殺をしたと言う新聞記事を担当編集者さんが見つけてきた所からこの話はスタートするけれども、そもそもそれは本当に恩田さん自身なのか? 恩田さんだと思って読み進めていたけれどもそうでもない気がする。 なんだか全てが曖昧で不安定… 本当に灰色のモヤの中に包まれて見通しが悪い。 ダークな恩田ワールド全開の1冊だった。

Posted byブクログ

2021/02/28

現実と虚構とが入り交じる不思議な小説。いや虚構も現実の投影なのかも。 絶望を感じる瞬間は自分でコントロールできるものではないと常々思っていました。その瞬間が生々しくて、本当に絡めとられそうになる。 死に理由が必要なのは残される人のためなのかもしれない。理由を残さないというのも...

現実と虚構とが入り交じる不思議な小説。いや虚構も現実の投影なのかも。 絶望を感じる瞬間は自分でコントロールできるものではないと常々思っていました。その瞬間が生々しくて、本当に絡めとられそうになる。 死に理由が必要なのは残される人のためなのかもしれない。理由を残さないというのもひとつの遺書のようなもの。わからないものに恐怖や怒りを感じてしまうのが人間なのか。 すぐそばにある平穏な絶望。恐ろしいのに美しくもある。

Posted byブクログ

2021/08/03

久しぶりに文学的な作品に触れた、そんな気がした。 心を揺さぶる劇的なことが起こるのではなく、 淡々と語られる「現実のようなもの」と「虚構」の世界。 実際に起こった事件と、 それを物語にしていく過程を記す “私” は「現実のように」思われる。 そして、そこで語られる物語は「虚構」。...

久しぶりに文学的な作品に触れた、そんな気がした。 心を揺さぶる劇的なことが起こるのではなく、 淡々と語られる「現実のようなもの」と「虚構」の世界。 実際に起こった事件と、 それを物語にしていく過程を記す “私” は「現実のように」思われる。 そして、そこで語られる物語は「虚構」。 両者が交差しながら話が展開していく。 「虚構」のなかで天井から降って来る白い羽根。 演じられる舞台の上では白い砂になり、 それは亡くなった二人の灰となった骨のようだと語られる。 そういえば、この中で演じられたはずの作品のタイトルは何だったのだろう? 「稽古」「上演」「初日」という言葉は確かに読んだが。 恩田陸のドキュメンタリーのように見える小説。 恩田さんの引き出しはいくつあるのだろう。 本を開くとまず1のチャプターから始まる。 タイトル名をつけないでチャプター番号で進むパターンかと思う。 すると次は0になる。時間を戻すということ?  でも、次からは1、0、1、0、(1)になる。 そして、途中で納得する。 そういうことか!言葉でなく、あえてコンピューター言語のような0と1で綴る。 題名の「灰色」に呼応したような無機質なチャプターの名付け方も面白い。 ただ、コロナ禍の今、読書で明るい気持ちになりたい人にはお勧めできないかな。

Posted byブクログ

2021/02/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 僕はミステリーというジャンルに、謎解きだけでなくすっきりした読後感も求めているのだと思う。本作を読み終えて、最初に考えたのはそんなことだった…と、何度か書いたような気がする。  恩田流ミステリーを読み終えて、何度も味わった感覚を、また味わうとは。一応一通りの説明はされても、何だかもやもやや曖昧さが残り、すっきりしない。過去作品を挙げると、『ユージニア』や『中庭の出来事』が該当するだろうか。  だがしかし、である。世の中は漠然とした不安に満ちている。何の不安も抱えていない人はいない。新型コロナ禍の現在、差し迫った不安に駆られる人も多いだろう。  同居していた2人の女性が、自ら命を絶った。当面、経済的に困窮しているわけではない。そんな理由で? と感じる読者もいるかもしれない。しかし、彼女たちには十分な動機だったのだ。遺書が残っていない以上、真相は当人たちにしかわからない。  その自殺の記事が頭に引っかかっていた作家は、2人をモデルにして作品を書き、さらに舞台化もされた。だが、結局は作家の創造の産物でしかない。視点人物が自殺した2人だったり作家だったりと変わるが、読み進むほどに境界が曖昧になっていく。これは2人の独白か、作家の作品の中か?  長さは手頃だが、楽しい作品ではないし、新型コロナ禍の読書にはお薦めしにくい。『灰の劇場』というタイトルは、内容はもちろん、苦境に喘ぐ演劇界を指しているようにも思えてくる。固定ファンなら、恩田陸らしいと受け止めるだろうけど。  明るいニュースが少ない昨今だけに、なるべく楽しいことを考えましょうという声も多い中、恩田陸という作家は、河出書房新社は、冷徹にこんな作品を送り出した。『蜜蜂と遠雷』を書いたのも恩田陸なら、『灰の劇場』を書いたのもまた、恩田陸。  それにしても、ラストの節をこのように演出するとは。作家恩田陸は、根っからの演出家でもある。いかにして読者をえぐるか。覚悟して読むべき1冊だ。

Posted byブクログ

2021/02/23

恩田陸らしいメタフィクション。どこが現実と虚構の境界線かわからなくなるような感じ。 ただし、大きな盛り上がりポイントもなく淡々と話が進むので読む人を選ぶ本ではあると思う。

Posted byブクログ

2021/02/24

大好きな恩田陸の新刊。楽しみだったのだけど期待していたものとは違って当惑気味。 本作自体がなんなのか、よくわからない。 「棘」として刺さってる恩田陸側の話は 個人的には不要で、純粋にTとMの「本」を読みたかった。 恩田さんが書きたかったのは、そーゆーことではないのは理解できるんだ...

大好きな恩田陸の新刊。楽しみだったのだけど期待していたものとは違って当惑気味。 本作自体がなんなのか、よくわからない。 「棘」として刺さってる恩田陸側の話は 個人的には不要で、純粋にTとMの「本」を読みたかった。 恩田さんが書きたかったのは、そーゆーことではないのは理解できるんだけど・・・。 「白の劇場」を読めばすっきりするのだろうか。

Posted byブクログ

2021/05/31

「飛び降り2女性の身元わかる」という三面記事。 私は確かにそのふたりを知っていた。もっとも、 私はそのふたりの顔も名前も知らない…。 恩田陸の新境地となる、”事実に基づく物語”。

Posted byブクログ

2021/02/20

小説家の‘私‘は、今まで誰かをモデルにした作品がなく、今回初めてモデル小説を書こうと思った。それは私が小説家になったばかりの頃に見たある三面記事。一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたという記事。短い記事なのにどこか私に「棘」として刺さった。 書き始めていくうち...

小説家の‘私‘は、今まで誰かをモデルにした作品がなく、今回初めてモデル小説を書こうと思った。それは私が小説家になったばかりの頃に見たある三面記事。一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたという記事。短い記事なのにどこか私に「棘」として刺さった。 書き始めていくうちに様々な違和感が重なっていく。 大きな盛り上がりはなく、淡々としているのにどことなくじわりじわりとなんとも言えない違和感や恐怖っぽい空気が漂ってくるので、ちょっと不思議な感覚がありました。 物語は、基本的に2つの物語が軸となっています。「0」パートとなる小説家の私の物語、「1」パートなる同級生MとTの物語です。 最初、行間に意味不明な数字があったので何なのかなと思いましたが、それぞれのパートを意味しています。 「1」のパートは、私が書いた小説の中の物語なのか?MとTの事実の物語なのか?はっきりとした提示はされていません。自分の場合は、小説の中の物語として読んでいたのですが、どことなく不思議でした。 言葉では表現しにくいのですが、小説の中の小説なのに‘私‘が存在する世界観と同じところにいるような感覚があり、リアルさが際立っていました。 また、「0」や「1」だけでなく、「(1)」や「0〜1」といった変化球のパートも登場します。これも想像ですが、「0」や「1」の世界であって、そうでないどこか異空間なのではと思いました。現実とは違った描写だったので、全体的に夢を見ている感覚もありました。 帯に書かれている「事実に基づく物語」。どこが嘘で、どこが本当なのか。ちょっとでも似ている構想があれば、それは事実を含むことといった文が書かれているのですが、改めて聞くとなるほどと思った部分もあり、新鮮な気持ちになりました。たしかにメディアで見る「事実に基づく物語」は、ほとんどが本当だと思って信じていましたが、ほんの一部でも本当があれば、それも「事実に基づく物語」として解釈されるということので、ちょっと複雑になりました。 そう考えると、この作品、ほんの一部分だけ事実があるのではと興味をそそられました。 小説という全てフィクションなのにちょっとでも真が入っていると、なんでこんなにトゲが刺さるような感覚になるんだろうと思ってしまいました。 ちなみに小説家の‘私’は、作者の恩田さんと類似している点が多くあり、モデルは多分恩田さんだと思います。 なので、私のパートはドキュメントを読んでいる感覚がありました。 そして、読み進めていくと、段々と全ての物語がジワジワと混じり合うかのような感覚に陥るので、読み終わった時には、現実?夢?フィクション?といった不思議で宙に浮いたような感覚でした。 ホラーとは違ったゾワっとしたライトな恐怖にちょっとクセになりました。

Posted byブクログ