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大阪 の商品レビュー

4.3

39件のお客様レビュー

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2022/01/26

 柴崎友香さんが育った街は、私の伯母が住んでいる。子どもの頃、数回遊びに行ったから少しだけ街の空気を憶えている。  しかしそれは上っ面で、大阪の芯の部分は何も知らない。そこで生まれて、生活して肌に染み込んでくるものは、私にはわからない。  街は少しずつ変わるけれど、その街が自分を...

 柴崎友香さんが育った街は、私の伯母が住んでいる。子どもの頃、数回遊びに行ったから少しだけ街の空気を憶えている。  しかしそれは上っ面で、大阪の芯の部分は何も知らない。そこで生まれて、生活して肌に染み込んでくるものは、私にはわからない。  街は少しずつ変わるけれど、その街が自分を作ってくれたことは変わらない。  

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2022/01/09

・私たちは自分というものに対して、憧れを持つことができない。自分自身に憧れる、ということは、たんに実際に難しいというだけでなく、どこか「文法的に不可能」なところがある。(218) ・私たちの散歩には、終わりはない。私たちは永遠に満たされない憧れを抱きながら、西九条や江坂や堺東や放...

・私たちは自分というものに対して、憧れを持つことができない。自分自身に憧れる、ということは、たんに実際に難しいというだけでなく、どこか「文法的に不可能」なところがある。(218) ・私たちの散歩には、終わりはない。私たちは永遠に満たされない憧れを抱きながら、西九条や江坂や堺東や放出や布施を歩き続けるのである。

Posted byブクログ

2021/12/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

大阪生まれの柴崎友香と、大学入学とともに大阪在住となった岸政彦の二人が交互に綴る大阪をめぐるエッセイ。 柴崎パートは大阪で育った具体的な思い出が語られ、大阪の街が柴崎の人間形成に濃厚に影響したことが溢れている。この人の原点は大正区にあり、やがてミナミを包摂するようになり、東京に住む今でもそこから時代と社会を見通している。 自分と同じ人文地理学専攻と知って親近感を抱いた。大阪出身とはいえ自分は郊外の方なので、柴崎の書くことはやや遠い街の出来事である。しかし、大阪の過去が積み重なるのが現在の街だというビジョンに深くうなずけた。 岸の視点はやはりよそから来て面白がっている人のものだ。岸はそのポジションがとても気に入っているのだと思う。生粋の大阪人に憧れて、でもそうではない自分を生きている。 大阪愛に溢れる良い本で、大阪嫌いなんですよね、という人にもぜひ読んでほしい。

Posted byブクログ

2021/10/13

岸政彦/柴崎友香「大阪」https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309029375/ 大阪での半生をそれぞれ振り返りながら。こういうのって一般的にはどの土地だろうと中身には作用しないしどこだろうと成立するエピソードになると思うんだけど、そう...

岸政彦/柴崎友香「大阪」https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309029375/ 大阪での半生をそれぞれ振り返りながら。こういうのって一般的にはどの土地だろうと中身には作用しないしどこだろうと成立するエピソードになると思うんだけど、そうならないところが大阪なんだなあと思う。あと岸さんの文はいつも胸に迫るのよ(おわり

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2021/10/08

勝手に小説かと思っていたが、エッセイだった。 何気ない日常について語られているが、その中にハッとさせられる部分があった。

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2021/10/02

21/10/02 私は大阪で生まれ育ったあと、京都で学び東京で働いている。もう郷愁を覚えることもないし、好きとも言い切れず、愛着も薄くて、岸さんや柴崎さんの語る大阪は知っているようで知らないような、不思議な距離感だった。ただ、大事ではあるしよいまちであってほしい、くたびれていくと...

21/10/02 私は大阪で生まれ育ったあと、京都で学び東京で働いている。もう郷愁を覚えることもないし、好きとも言い切れず、愛着も薄くて、岸さんや柴崎さんの語る大阪は知っているようで知らないような、不思議な距離感だった。ただ、大事ではあるしよいまちであってほしい、くたびれていくところはみたくないなぁと思ってる

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2021/09/20

大学から大阪に住み出した岸政彦さんと、 大阪に生まれ育ち東京に出た柴崎友香さんの、 大阪にまつわる共著エッセイ。 交互に語られる各々に流れた時間や思い出から自然と立ち上る、紛れもない大阪。 耳に心地よいメロディーをくゆらせるように 適度な音量で肌で感じる大阪がすごく良い。

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2021/09/20

この本は読みやすそうだと思ったこと、また、新神戸オリエンタルホテルのロビーで起こった宅見若頭射殺事件(228P)のことまで書いている男気溢れるエッセイだと思い購入しました。この事件、近くに座っていた歯科医師の方も流れ弾に当たり亡くなっています。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。 ...

この本は読みやすそうだと思ったこと、また、新神戸オリエンタルホテルのロビーで起こった宅見若頭射殺事件(228P)のことまで書いている男気溢れるエッセイだと思い購入しました。この事件、近くに座っていた歯科医師の方も流れ弾に当たり亡くなっています。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。 私自身、昭和63年4月~平成4年3月まで、大阪と奈良の境の奈良県王寺町という所に住んでいたため、大阪には買い物やアルバイトなどで頻繁に出かけていました。その当時を思い出しながら読みました。特に柴崎さんは私より4歳下のため、難波などで出会っている可能性もあると思いました。 懐かしいのはナンバブックセンターです。(141P)私が難波のプランタンデパートでバイトをしていたため、その帰りにはナンバブックセンターに寄り、本を読んでいました。細長い本屋だったイメージがあります。 私が感銘を受けたのは、部落解放運動の活動家のYさんの優しさです。タイ人の中学生の娘さんが平仮名も書けないほど日本語が出来ず不登校となっているのを見かねて自宅で日本語を教え、その結果公立学校に合格したという話を聞いて涙が出そうになりました。このようなことを地道に地味に地に足をつけて活動している人に敬意を表したいと思いました。(125P) 柴崎さんは言います。「今になって振り返ってみると、あんなふうに、ミニシアターが次々できて、小劇団が注目され、百貨店でも美術館並みの展覧会をよくやっていたこと、地上波のテレビで深夜に外国やミニシアター系の映画をやっていたこと、三角公園でただしゃべってるだけでお金がなくても楽しく過ごせたこと、そのこと自体が、好景気の時代で、世の中の豊かさだった、と強く思う。」(151P)私も同感です。 岸さんは言います。「大阪も90年代は、学生が週に3日もベースを弾けば、それで何とか飯を食うことができた、そういう街だった、しかしいまはもう、その大阪は、どこにもない。あのとき私たちが酒を飲んだり、音楽を演奏したり、付き合ったりフラれたりした大阪は、いまでも変わりなく同じ場所にあるけど、あの大阪はもう、どこにも存在しない。」(182P) 柴崎さんは言います。「東京に初めて来たとき、驚いたのは木の大きさだった 表参道の立派な欅並木を見て、道端にこんな巨木が生えているなんて、と感動した。」(191P)私も6年7ヶ月、東京都杉並区高井戸に住んでいたのですが、人見街道沿いに大きなけやきの木があり、とても嬉しかったことを思い出します。 柴崎さんは言います。「雲一つない青空で、数年ぶりに乗った近鉄奈良線の生駒へ上る車両からは大阪の街が一望できた。この風景は死ぬほど好きだ」(251P) 私も時折、近鉄奈良線を利用していたのですが、電車から見える大阪の夜景は特に美しかったです。 この本は大阪に住んでいる方、住んでいた方、そして大阪に全く縁のない方も楽しめる本です。 私にとって一生、大切に持っておきたい本となりました。 素晴らしい本を出版してくれた岸政彦さん、柴崎友香さん及び河出書房新社様に深く感謝いたします。ありがとうございました。 生かされていることに感謝して。

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2021/09/07

わたし出生地が江坂で、大阪には計8年くらい住んでたんだけど、通天閣は旅行で行くまで見たことなかった。 やっぱあれは観光客が行くやつなんだな〜と思って、わたしにも大阪のエキスが少し残っているみたいで、うれしかった。(両親とも九州出身だけど) だからわたしは大阪が嫌いとかももちろんな...

わたし出生地が江坂で、大阪には計8年くらい住んでたんだけど、通天閣は旅行で行くまで見たことなかった。 やっぱあれは観光客が行くやつなんだな〜と思って、わたしにも大阪のエキスが少し残っているみたいで、うれしかった。(両親とも九州出身だけど) だからわたしは大阪が嫌いとかももちろんないし、東京が一番偉いとも思わない。 むしろこの一極集中型はよくないと思うし、もっといろんな街にいろんなことが分散したらいいのになって、柴崎さんみたいに思ってる。 2人の人生が少し垣間見えたようで、それがなんか、道ですれ違った人それぞれにも見えないだけでこんなふうにいろんな人生があるんだなと思わせてくれて、なんか人って尊いなって。 人の営みの積み重ねで街ができて、いろんなことが決まっていくなら、いまを生きるわたしたちはやっぱり投げやりに生きちゃいけないんだ。 過去この場所で懸命に生きてきた人たち、声をあげられない人たちのために、わたしたちは毎日をちゃんと生きて、主張していかなきゃいけない。

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2021/08/29

 大阪で生まれた私にとって(東京を知らない私にとって)そんなふうに大阪のことをみんな思っているんだと、今まで気づかなかったようなことがたくさんあり面白かったです。  外国人の方が日本人はみんな着物を着ているみたいな感覚と同じようなことを、大阪の人はと思っておられることがたくさんあ...

 大阪で生まれた私にとって(東京を知らない私にとって)そんなふうに大阪のことをみんな思っているんだと、今まで気づかなかったようなことがたくさんあり面白かったです。  外国人の方が日本人はみんな着物を着ているみたいな感覚と同じようなことを、大阪の人はと思っておられることがたくさんあるのでしょうね。大阪人は嫌いという人も多いということには(それを口に出される人もいるということには)びっくりですが。  なんでも東京が1番なのが良くわかりました。でも私を含め大阪人は1番でなくてもいいんです、人を楽しませたいんです。そんな感じでしょうか。 そんなことを考えさせてくれるエッセイでした。

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