レストラン「ドイツ亭」 の商品レビュー
ベストセラー『朗読者』を彷彿とさせるノンフィクション小説。1960年代の「アウシュヴィッツ裁判」で裁かれたナチス戦犯の中に父母を発見した女性主人公。崩壊する絶望の家庭と希望。(e-honより)
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ひどい話がこれでもか、と押し寄せ、ざわついて収まりません。映画では苦手ジャンルでなかなか見られないのですが、小説でも胸が苦しくなるほど。ドイツ人がドイツ人を裁く、よく知らない裁判でしたが、えぐられるような思いに包まれました。情報ダダ漏れの現在と異なり、全く知らないでいられる当時の...
ひどい話がこれでもか、と押し寄せ、ざわついて収まりません。映画では苦手ジャンルでなかなか見られないのですが、小説でも胸が苦しくなるほど。ドイツ人がドイツ人を裁く、よく知らない裁判でしたが、えぐられるような思いに包まれました。情報ダダ漏れの現在と異なり、全く知らないでいられる当時の状況がひしひしと伝わります。過去の記憶が蘇り、動かずにいられなくなるエーファの心情が胸に迫りました。家族ですらこうなのに、そこにいた人、関わった人の胸の内はどうなんだろう、と強く思いました。そっち側の人なのに、平然と市井に生きていられるものなの?自分はやってないと言い張れるものなの?と疑問が湧きどおしでした。彼らの行い、生死があって今の我々が生きていられるんだな、としみじみ感じました。二人が前を向いて幸せに生きられるのを願わずにいられません。一方でアネグレットのエピソードいる?とは思いましたね。でも、そっち側思考の人間、として描かれたのかもしれないです。
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ドイツ人自身によるナチスの戦争犯罪を裁いた「フランクフルト・アウシュビッツ裁判(1963年12月-65.8月)」を主題に、古傷には触れたくない忌わしい記憶をもつ人々、何も知らなかったとの贖罪の意識から遠ざかる人々の凄まじい葛藤を描き、過去の過ちと真摯に向き合い克服することの大切さ...
ドイツ人自身によるナチスの戦争犯罪を裁いた「フランクフルト・アウシュビッツ裁判(1963年12月-65.8月)」を主題に、古傷には触れたくない忌わしい記憶をもつ人々、何も知らなかったとの贖罪の意識から遠ざかる人々の凄まじい葛藤を描き、過去の過ちと真摯に向き合い克服することの大切さを謳った、ドイツ人女性作家による長編小説です。アウシュビッツから生還した証言者のポーランド語通訳を務める主人公エーファをとおして、婚約者や家族を巻き込む息詰まる非難の応酬の裏に、戦争の計り知れない罪の深さを思い知らされます。
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アウシュヴィッツ裁判の開廷前から判決後を背景に、24歳の主人公エーファ、彼女の家族、恋人、裁判関係者の姿が描かれている。 読み始めは、全くの第三者目線だった。でも、読み進めるうちに、「私だったらどうしていたか」と、問われているような気がした。 エーファの両親は戦争時、アウシ...
アウシュヴィッツ裁判の開廷前から判決後を背景に、24歳の主人公エーファ、彼女の家族、恋人、裁判関係者の姿が描かれている。 読み始めは、全くの第三者目線だった。でも、読み進めるうちに、「私だったらどうしていたか」と、問われているような気がした。 エーファの両親は戦争時、アウシュヴィッツのすぐ横に住み、コックである父親はナチス親衛隊の人たちに料理を出していた。 彼らの残虐非道を知った時には、引き返すには遅すぎた。 エーファはそんな両親に「どうして、何もしなかったのか」と問い詰める。「人を殺してはいないけれど、それを許した」と責める。 もし、自分があの時代にあの場所に生きていて、事実を知るのが遅すぎて、引き返すことが、自分や家族の死に繋がると分かったら、どうしたか。 全てを承知でそこに留まるか。 そんな悪には荷担できないと、死を覚悟するか。 エーファにも分からない。 本も答えていない。 エーファの恋人ユルゲンの父親(元共産党員で、戦時中拷問を受けた)が、エーファに「人間であることはつらいものだ」と語りかける場面がある。 その言葉通り、つらいものがあるのは確か。だけども、私たちは歩いていくしかない。 そんなことを思った。
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産経新聞2021314掲載 評者:高橋秀寿(立命館大学文学部教授,ドイツ現代史) 朝日新聞2021314掲載 評者:松永美穂(早稲田大学文学学術院教授,現代ドイツ文学,日本翻訳大賞選考委員) 朝日新聞2021417掲載 評者:藤原辰史(京都大学准教授,農業史,環境史,食の思想史e...
産経新聞2021314掲載 評者:高橋秀寿(立命館大学文学部教授,ドイツ現代史) 朝日新聞2021314掲載 評者:松永美穂(早稲田大学文学学術院教授,現代ドイツ文学,日本翻訳大賞選考委員) 朝日新聞2021417掲載 評者:藤原辰史(京都大学准教授,農業史,環境史,食の思想史etc) 読売新聞20211226掲載 評者:長田育恵(劇作家,脚本家,『流行感冒』ギャラクシー賞奨励賞etc) 日本経済新聞20221119掲載 評者:都倉俊一(文化庁長官,作曲家,東京ゴルフ倶楽部チャンピオン3回,HC3,ドイツ語)
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1961年のアイヒマン裁判のあと、1963年に行われたアウシュヴィッツ裁判を素材にした小説で、ナチスが行ったユダヤ人虐殺に向き合うドイツ人の真摯な姿が活写されている。 過去の「苦い思い出」を忘れ去りたい世代の苦悩、その一方でそれを知らずに移民を攻撃する若い世代の姿もしっかり織り込...
1961年のアイヒマン裁判のあと、1963年に行われたアウシュヴィッツ裁判を素材にした小説で、ナチスが行ったユダヤ人虐殺に向き合うドイツ人の真摯な姿が活写されている。 過去の「苦い思い出」を忘れ去りたい世代の苦悩、その一方でそれを知らずに移民を攻撃する若い世代の姿もしっかり織り込んである。 これを読んでいると、彼我の差に、またしても強い思いがこみ上げる。 アウシュヴィッツのような大規模な虐殺収容所を持たなかった日本でも、「試し切り」と称して中国民間人の首をはね、それを記念写真にしていた日本人兵士、それを敗戦後慌てて焼却して隠した日本人もいる。中には遺品にそうした写真を見つけた遺族は身内の恥を隠すために焼却したものもあったに違いない。さらに、敗戦後に俺は虐待・虐殺はしなかったよなと、口止めに走り回った特高警察官たちは、その後当たり前のように平気な顔をして警察官に復帰していて、日本では咎められることはなかった。 戦時中の記憶が生々しい1945年以降に中国等への贖罪の念から経済復興に手を貸した日本人たちが、きちんと戦争犯罪を明らかにして罰するところまで至らなかったことが、この差を生んでいるのだろう。 なお、この小説の著者は1967年生まれ。
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ドイツっぽい描き方の小説だなぁと。 ただ、アネグレットなど、話の本筋とあまり関係のない人物も深く描かれており、そこに筆力が対応していない感があり…ちょっと不完全燃焼だったかな。 もっと焦点を絞ってほしかった。
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重厚な話。1950年代のドイツ人、特に若い戦後世代は、アウシュビッツの存在を知らなかったということを初めて知りました。 アウシュビッツの裁判の通訳を通してそのことを知る女性と、その家族。
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