羊は安らかに草を食み の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『つかえ』をとるために認知症を連れ立った高齢3人での旅。それぞれの人生のお終いに向け、最後はスッキリ終わる。凄惨な戦後の満州でのことがリアルだからこそ胸に迫るものがある。残酷であるけど、カヨちゃんの謎が旅の行方が気になりスラスラ読めてしまった。悲しい、辛い経験から知恵をつけ、強く逞しく溌剌と生きる姿を描いているところが良い、読んでいてワクワクした。
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一気に読みました。満州のこと、中国戦線のこと、掘り起こしながら、現代の私達の問題とも地続きで、読み応えがありました。
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満州からの引き揚げの話はとても重く、国の無謀な計画を信じて開拓事業に参加した人たちを待っていた運命の悲惨さに、なんとも言えない気持ちになる。子供時代にこんなに過酷な経験をせざるをえなかった人たちや、真面目に懸命に生きてきた人生の先で酷い死を迎えざるを得なかった人たち…「戦争」を実...
満州からの引き揚げの話はとても重く、国の無謀な計画を信じて開拓事業に参加した人たちを待っていた運命の悲惨さに、なんとも言えない気持ちになる。子供時代にこんなに過酷な経験をせざるをえなかった人たちや、真面目に懸命に生きてきた人生の先で酷い死を迎えざるを得なかった人たち…「戦争」を実体験した人たちが減っている今、こういう話を読めることはたいへん意義のあることだと思う。同じ災禍を繰り返さないために、私たちは過去をきちんと知り、向き合い、自分達の頭で考え、より良い未来を選択していく責任があると思う。それが、亡くなった大勢の先人たちの死を無駄にしないために、せめてもできることだと思う。 女性同士の友情や夫婦・親子の絆、人生の締めくくり方など、色々考えさせられ、とても胸に沁みる良い話ではあったけれど、個人的に、最後の島谷を巡る一連の展開はあまり好みではなかった。もっと違う展開の仕方があったのでは?なんとなくそこだけ唐突で、それまでの話とは異質な感じがしてしまって、少し現実に引き戻された感があって、残念だった。
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自分も50を過ぎて、人生の終わりが段々と見えてきた今だからこそ、余計に心に刺さるものがあった。 私の生きてきた人生なんて、なんて事ない とても平凡でとても平和な人生だったとつくづく思った。 毎日の生活を送る中で、ちょっとした事でイライラし 面白くなくて、、、何を贅沢言っているのか...
自分も50を過ぎて、人生の終わりが段々と見えてきた今だからこそ、余計に心に刺さるものがあった。 私の生きてきた人生なんて、なんて事ない とても平凡でとても平和な人生だったとつくづく思った。 毎日の生活を送る中で、ちょっとした事でイライラし 面白くなくて、、、何を贅沢言っているのかと、この本を読んで反省した。 家族を、大切にしよう。歳をとっても、しっかりと逞しく生きよう。
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満州からの引き揚げ時の回想と、現在の益恵の人生を逆から辿って行く旅が、俳句と共に交互に入り混じる。 満州からの引き揚げは筆舌に尽くし難く壮絶。こんな壮絶な旅をしたからか、人にどこまでも優しい益恵。そんな益恵が認知症になったのも、苦難故か。 おばあちゃん3人旅は、おばあちゃんあるあ...
満州からの引き揚げ時の回想と、現在の益恵の人生を逆から辿って行く旅が、俳句と共に交互に入り混じる。 満州からの引き揚げは筆舌に尽くし難く壮絶。こんな壮絶な旅をしたからか、人にどこまでも優しい益恵。そんな益恵が認知症になったのも、苦難故か。 おばあちゃん3人旅は、おばあちゃんあるあるな感じで優しいが、全てにそこはかとない死が漂っていて、全話通して、人生の終焉に向かう、覚悟や静謐さが感じられた。
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『私達の近い先祖が狂人となってしてきたことを覚えておかなければならない』 誰かの言葉を思い出す。 物語は認知症の友の過去に向かって旅をする、現在から過去へ遡る時間軸と、満州から生きながらえて本土を踏むまでの時間軸を交差し、最後は長崎の離島で結びつきます。 私達が過去と呼ぶべき時...
『私達の近い先祖が狂人となってしてきたことを覚えておかなければならない』 誰かの言葉を思い出す。 物語は認知症の友の過去に向かって旅をする、現在から過去へ遡る時間軸と、満州から生きながらえて本土を踏むまでの時間軸を交差し、最後は長崎の離島で結びつきます。 私達が過去と呼ぶべき時代を生きてきた人たちがいて、今があることを再確認した。今もやがて過去になっていく。積み重ねた道が、未来の人にとって歩きやすい道になるように、と考えさせられました。名作です。
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国策として多くの日本人が満州へ渡り、戦争、敗戦によって取り残され引揚者となった人々の想像を絶する過酷な惨状に目を背けたくなるほどだった。しかし、リアルだからこそ理解が深まるというもの。 益恵が満州引揚げの辛い記憶をもとに詠んだ俳句と共に、ほんの11歳の少女が日本へ戻る為に必死に生...
国策として多くの日本人が満州へ渡り、戦争、敗戦によって取り残され引揚者となった人々の想像を絶する過酷な惨状に目を背けたくなるほどだった。しかし、リアルだからこそ理解が深まるというもの。 益恵が満州引揚げの辛い記憶をもとに詠んだ俳句と共に、ほんの11歳の少女が日本へ戻る為に必死に生き延びた姿に心を打たれ、涙が自然と込み上げた。 教科書では教えてくれない満州引揚の事、中国残留孤児の事、虐殺した事された事、、知らなければならない事は沢山ある。 最後の展開は、若干期待外れではあったものの、認知症となった益恵と共に旅をする友人の老女達がそれぞれ背負っているものがありながら旅を進め、益恵の過去が少しずつ明らかになって行くにつれ、自身の老いを見つめ、残りの人生を思う姿も良かった。
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初めましての宇佐美まことさん。装画は私の大好きな牧野千穂さん。 益恵86歳、アイ80歳、富士子77歳…3人は俳句教室で仲良くなった二十年来の友人どうし。アイと富士子は認知症を患う益恵を、益恵がかつて暮らした土地を巡る「最後の旅」へと連れ出すことに…。 実は益恵は満州からの引揚...
初めましての宇佐美まことさん。装画は私の大好きな牧野千穂さん。 益恵86歳、アイ80歳、富士子77歳…3人は俳句教室で仲良くなった二十年来の友人どうし。アイと富士子は認知症を患う益恵を、益恵がかつて暮らした土地を巡る「最後の旅」へと連れ出すことに…。 実は益恵は満州からの引揚者で、11歳で家族を全員亡くし、たった一人で敗戦の過酷を生き延びてきたのでした。物語は現代の旅と、益恵の詠んだ俳句にまつわる満州での体験とが交互に描かれていきます。 この満州での益恵の体験が、とにかく凄惨で読んでいて辛かったです。戦争自体は終わったはずでも、戦争がもたらした爪痕は長く長く続いて人々を苦しめます。命の瀬戸際にいると人間の本質があらわれますね。益恵は本当に「生きる力」のある子どもですごかったです。 実は私の母は満州生まれ。2歳の時に終戦を迎え日本へ引き上げてきました。私にとっての祖父はこの戦争で亡くなったそうで、母は顔も覚えていないとのこと…。この物語の益恵ほど悲惨ではなかったと思いますが、無事に帰国できたのは本当に幸運なことだったでしょうし、この時、命を落としていてもおかしくなかったと思います。 今この瞬間にも世界ではまだ戦争が行われているんですよね…。なぜ人間は、歴史から学ばないのでしょうか。一日でも早く、世界中の子どもたちが命の心配をせず、安心して生きられる平和な世界になりますように、願わずにはいられません。
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その時が来たら、受け入れるだけ 満州からの引き揚げ こんなに過酷な状況でも、日本に帰る 生きて帰る 強いおもいで前に進んで行く。
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ちょっと読んでみようと軽い気持ちで手に取ったのですが、感無量の一冊でした。特に、満州での情景は深く読み込み、当時を生きる人々の心情を思い、胸が痛くなりました。老いた女性の弱さと強さ。そんなメッセージ性を感じる作品です。
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