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密やかな結晶 新装版 の商品レビュー

4

164件のお客様レビュー

  1. 5つ

    47

  2. 4つ

    58

  3. 3つ

    39

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    1

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2024/02/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この本で初めて小川洋子さんの作品を読みました。 子供の頃の憧れのような、キラキラした言葉で紡がれていて、大事に読みたくなるような文章だなと思いました。 しかし物語が進むにつれて、分かり合えない壁や閉塞感に惹き込まれていきました。

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2024/03/06

左足が失くなるところはゾッとした〜。 読んでて自然と地下室などのイメージが頭に浮かんできて、本当に物語の世界に入り込んでいた。そのくらい面白かった! 読み終わった後、なんかどっしりず〜んとした重みみたいなものが残り、すっきりする内容ではないけど大切なことに気づかせてくれる本で...

左足が失くなるところはゾッとした〜。 読んでて自然と地下室などのイメージが頭に浮かんできて、本当に物語の世界に入り込んでいた。そのくらい面白かった! 読み終わった後、なんかどっしりず〜んとした重みみたいなものが残り、すっきりする内容ではないけど大切なことに気づかせてくれる本です。

Posted byブクログ

2024/02/05

一つずつ物が消えていく島のお話。 ミステリー小説やSFなどではありませんので、謎を残したまま物語が終わります。 登場人物のその後はどうなったのか、島は、住民は……そういったことは、ある意味では「ご想像にお任せします」というところなのでしょうね。 小川洋子さんの作品は ・薬指の...

一つずつ物が消えていく島のお話。 ミステリー小説やSFなどではありませんので、謎を残したまま物語が終わります。 登場人物のその後はどうなったのか、島は、住民は……そういったことは、ある意味では「ご想像にお任せします」というところなのでしょうね。 小川洋子さんの作品は ・薬指の標本 ・博士の愛した数式 ・猫を抱いて象と泳ぐ ・妊娠カレンダー ・琥珀のまたたき に引き続いての読破です。 私は『薬指の標本』が上記の中では最も好きで、今回読んだ『密やかな結晶』はどちらかというと、想像とは違ったなという印象でした。 理由としては、 私がミステリーを読むことが多いというのもあって、「謎が解き明かされないまま終わってしまうことにモヤモヤした」というところが大きいのだと思います。 ・秘密警察とは何だったのか ・R氏はどうなったのか ・そもそもなぜあの島は謎の現象が起こるのか といったようなことは、一切秘密の明かされないまま終わってしまいます。 謎を明らかにしたい読者にとっては、モヤモヤしたまま終わってしまってスッキリしない展開だと思います。 しかし、裏を返せば、抽象的な事柄を通して様々なことを我々読者に考えさせる小説です。 「消滅」「秘密警察」といった要素から、我々の心の中に起こる化学反応を感じることそのものが、小説の価値ですよ、と著者が言っているようにも思えます。 また、この作品には、イヤというほど擬人化表現が登場します。物体が俯いたり、しょんぼりしたり、悲しんだりします。それは小川洋子という作家が擬人化を好んでいるからというよりも(好んでいるとは思いますが)、「モノにはモノの記憶がある」ということを表すためではないかな? と感じました。 徹底抗戦することもなく、人々は唯唯諾諾と消失に従っていく世界(行ってみればディストピア)が描かれています。 これは小川洋子版の1984年だな~、と感じました。

Posted byブクログ

2024/02/04

一つずつ消えていく記憶 けれど、人間の心や感情まで、誰も奪うことは出来ない。 素晴らしい本です。一気に読んでしまいました。 全ての言葉に無駄がなく、完成されていると感じました。 生きる事、誰かを想い大切にすること、今の時代にこそ読むべき本だと思います。

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2024/01/30

失われていく物語。失われていくことをただ受け入れるしかない恐ろしさ。おじいさんの死さえもあのタイミングで死ねてまだ幸せだったと思えるくらい最後は虚しく辛い。全てが消えてやっと安心できたと思う。何も疑問に思わない人は楽だなと思う、色々考え気づいてしまうと人生辛い

Posted byブクログ

2024/01/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「その島では、記憶が少しずつ消滅していく」 という世界で、ものや考えの消滅が描かれている。消えていないとは思いつつも、「前にここにあったお店はなんだっけ?」のように、前の記憶がなくなることだったり、コロナ禍の間になくなった何かだったり。消えてしまったものを思い出すのはとても難しい。それでも、何者にも奪えない個々人が持つひとかけらの結晶がある。解説にあるように、「消滅」の話だけれども「消滅しないこと」を描こうとしているのだなと思えた。読後感含めて考えが良い意味でもやもやしてきた。 ====  バラのないバラ園というのは寒々として味気ないものだった。副え木がしてあったり、肥料がまいてあったり、そういう手入れの跡が残っているのを見ると、余計に淋しげだった。栄養の行き届いた土は、サクサクと柔らかい音を立てた。ここまでは川べりのざわめきは届いてこなかった。わたしは両手をポケットにしまい、無名者墓地をさ迷っているような気分で、丘を歩いた。  しかし、どんなに棘や葉や枝の形を見つめても、種類を説明した立て札を読んでも、もう自分がバラの花の形を思い出せないことに、わたしは気づいていた。(p.76) 「謝ることなんてない。消えてしまった物のことを思い出すのは、とても難しいからね」  彼は“こうすい”の引き出しを元に戻し、まつげを伏せた。 「僕には分るんだ。エメラルドの美しさも、香水の匂いも。僕の心からは、何も消えないんだ」(p.100)  とうとう最後の一冊が手を離れていった。図書館は次第に建物の輪郭が崩れはじめていた。時折大きな音がして屋根が落ち、壁が崩れた。受付けのカウンターも閲覧室の椅子も燃えていた。  わたしは頬づえをつき、最後の一冊が舞ってゆく曲線を目でなぞった。ふと、その本の姿が何かに似ている気がした。昔この窓辺に父と並んで、同じようなものを眺めたことがある。わたしは深く息を吸った。胸の奥の底無し沼に、火の粉が一粒迷い込んできたような、微かな痛みを感じた。 「鳥だわ」  わたしは思い出した。鳥もあんなふうにして羽を広げ、遠くへ飛んでいった。けれどその記憶もすぐに炎にかき消され、あとにはただ夜が広がるばかりだった。(p.301) 「記憶は目に見えないから恐ろしいのです。消滅の打撃をどんどん受けていって、手遅れになってもまだ、本人はその重大さに気付かないんです。これを見て下さい」  机の上に束ねてあった原稿用紙の束を、彼は手に取った。 「これは間違いなくここに存在しています。ますめの一つ一つに言葉が存在しています。そして書いたのは、君だ。目に見えない心が、目に見える物語を創り出したんだ。小説は燃やされたかもしれないけど、君の心が消えてしまったわけじゃない。だって君はこうして僕の隣に坐っているんだから。あなたたちが僕を助けてくれたのと同じように、僕もあなたたちを救いたいんだ」(p.372) (解説)「密やかな結晶」とは、なにをもって結晶なのか 小川洋子さん:「人間があらゆるものを奪われたとしても、大事な手のひらに握りしめた、他の誰にも見せる必要のない、ひとかけらの結晶が合って、それは何者にも奪えない。そういうもの、秘密警察にもナチスにも奪えないものが誰にでもあるんです。心の中にある非常に密やかな洞窟のような場所に、みんながそれぞれ大事な結晶を持っているというイメージですね」(pp.444-445)

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2024/01/26

話を全て理解できるわけではない。 でも、小川洋子さんの静謐な世界観が強烈に心に残る。 消滅する世界に順応していく人。 消滅せずに狭い部屋に潜む人。 この奇妙な世界に、秘密警察の存在が輪をかけて恐怖心を煽る。 ところで消滅がやってきたら、記憶も消える。そして残された世界で生活する。...

話を全て理解できるわけではない。 でも、小川洋子さんの静謐な世界観が強烈に心に残る。 消滅する世界に順応していく人。 消滅せずに狭い部屋に潜む人。 この奇妙な世界に、秘密警察の存在が輪をかけて恐怖心を煽る。 ところで消滅がやってきたら、記憶も消える。そして残された世界で生活する。となると、私にもこれまで消滅は起こってるのかな。記憶に残ってないだけで。

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2024/01/28

ときどき私にとって理解と想像がむずかしい場面もありましたが、文章ひとつひとつが繊細で美しく、小川洋子さんの描く世界観に引き込まれ、時が静まりかえったかのように読んでいました。

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2024/01/23

この作品の読書感想文を書くには、私の文章力はとても足りない。 それくらい圧倒されるのです。 小川洋子さんの紡ぐ言葉たちは小川さんが作り出す物語同様、優しくて繊細で儚い。 一文字も逃したくない洗練された文章。 この物語の世界はとても寒くて淋しくて不安で切ないけれど、そんな状況下で...

この作品の読書感想文を書くには、私の文章力はとても足りない。 それくらい圧倒されるのです。 小川洋子さんの紡ぐ言葉たちは小川さんが作り出す物語同様、優しくて繊細で儚い。 一文字も逃したくない洗練された文章。 この物語の世界はとても寒くて淋しくて不安で切ないけれど、そんな状況下で蝋燭の火をぽっと灯したような、懐かしい温かさがある。 それは登場人物たちの優しさや気遣いであったり、私自身の思い出を思い起こさせてくれる力があったりするからなのかな。 ハッピーエンドではないしどうしたって哀しくなってしまうけど、その温もりを感じたくて、何度でも読んでしまう。

Posted byブクログ

2024/01/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

不倫してる人の自己陶酔がものすごく苦手なので、例外なくこの小説の登場人物(主人公とR氏)にも嫌悪感を抱いた。(そこじゃないだろと突っ込まれそう) 恋愛面を除けば、唯一無二で、考えさせられる内容だった。読み進めるにつれ、心にずしんと重たいものがのしかかっていく感覚が強くなり、読了後は私の中の何かがひとつ喪失したような気がした。

Posted byブクログ