わたしたちが光の速さで進めないなら の商品レビュー
頑張って読んだんだけど、イマイチピンと来なかった…まぁ多分頑張って読んでいる時点で、そーゆーことなのだろう。 SFと人の心のお話。多分、私は映像がないとSFの世界観をイメージできないんだと思う。 ただどの短編も女性が主人公で遠い世界の人でもなんだか近いような不思議な感覚になった...
頑張って読んだんだけど、イマイチピンと来なかった…まぁ多分頑張って読んでいる時点で、そーゆーことなのだろう。 SFと人の心のお話。多分、私は映像がないとSFの世界観をイメージできないんだと思う。 ただどの短編も女性が主人公で遠い世界の人でもなんだか近いような不思議な感覚になった。
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韓国のSFは『となりのヨンヒさん』を読んだが、こちらはヨンヒさんと違ってSFガジェット満載のSF。 通訳モジュールとかワープとかディープフリージングとかマインド接続機とかが全ての作品に出てくるので、SF慣れしていないとちょっと厳しいかもしれない。 味わいはケン・リュウにも似ている...
韓国のSFは『となりのヨンヒさん』を読んだが、こちらはヨンヒさんと違ってSFガジェット満載のSF。 通訳モジュールとかワープとかディープフリージングとかマインド接続機とかが全ての作品に出てくるので、SF慣れしていないとちょっと厳しいかもしれない。 味わいはケン・リュウにも似ているが、より現代的というか、フェミニズム的なものが多い。 「感情の物性」で、感情が固体となって売り出されるが、「オチツキ」や「シュウチュウ」だけでなく「ユウウツ」や「フンヌ」「ゾウオ」などネガティブなものもあり、一定の人気がある。それを欲しがるのはなぜか、と主人公が問うと、「ユウウツ」をいくつも買った彼女が、本物の憂鬱は気体に近く、息を吸い込むたび肺が押しつぶされそうになる、悲しみの中で生きる人は自分の憂鬱を撫でたりつまんだりできたら慰められる、というようなことを答える。 物語(小説とか映画とか漫画とか)というものは苦しみ悲しみや恐怖を含んでいても、その代価を喜んで払う人がいる。涙を流したくて、わざと悲しい物語を読んだり見たりする人もいる。ネガティブな感情をお金を払ってでも手に入れたいという気持ちは、確かにある。そういう人間の不思議な習性を描いて秀逸。 死んだ母を、母親や妻としてでなく、個人として認識しなおす「館内紛失」、赤ちゃんにのみ備わっている力を解明する「共生仮説」も良かった。 ただ「巡礼者たちはなぜ帰らない」で顔にあざがあることを「醜い」と何度も書いているのはいかがなものか。 さらに「蔑み」「忌み嫌いうる烙印」とまで書いてある。顔にあざがある人やその家族は、これを読んだら傷つくと思う。作者がそう思っているわけではないことは、読めば伝わるが、それでも配慮に欠けると思う。
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懐かしさや寂しさ、愛おしさ。孤独だけれどもどこかにある温かさを感じた作品。特に印象に残ったのは「スペクトラム」と「館内紛失」。 ___ 「館内紛失」 読んでて泣いてしまった。私と私の母のことかと思った。自分の名前、社会との繋がりを失った「母親」の話。 私も母親のことを凄く恨んでいる時期があったし、その頃にあった出来事を完全には許せないけれど、フェミニズムを勉強しだしてから、恨むべきは、母親ではなく、社会の構造ではないか?と思うようになった。 そうならざるを得なかった彼女の人生、女性、母親であるが故に失ったもの。私が見てきたのは、母親としての彼女だけど、当たり前だけれども、結婚して子育てする前には、彼女の人生があったけど、あまりに切り離されすぎてきたこと。 今なら私も、母の気持ちがわかる。
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人類が今後どんどん発展しようと、地球にとどまらず宇宙のどこかに住処を見つけようと、私たちはひとりでは生きていけなくて、寂しくて、誰かを恋しく思う気持ちを持て余す。科学が進歩すればするほど違和感が生まれるのと同じようなもので、広い世界を知ることで孤独感は増していく。実際には起こり得...
人類が今後どんどん発展しようと、地球にとどまらず宇宙のどこかに住処を見つけようと、私たちはひとりでは生きていけなくて、寂しくて、誰かを恋しく思う気持ちを持て余す。科学が進歩すればするほど違和感が生まれるのと同じようなもので、広い世界を知ることで孤独感は増していく。実際には起こり得ていないことなのに、どうしてこの物語に登場するヒロインたちの気持ちが手に取るように分かってしまうのだろうか。宇宙に行けたら素晴らしい、人間をゼロから生み出せるほど科学技術が発展すれば、人間は次のステップに進めると私たちがなんとなく夢見ていることは、もし現実となればその身を滅ぼす要因になるような、そんな気がしているからだろうか。 途切れ途切れに読んだひとつひとつの物語が円を描くように繋がっていて、それぞれ広大な宇宙空間ですれ違う。交わらないことはこんなにも寂しい。自分の手のひらすらも見えないような暗闇でも、自分にとっての真実を見つけようと手を伸ばし、問う。明確な答えなど見つけられなくても、それがたとえ正解からズレていたとしても、手を伸ばし掴み取ろうともがく人間はとても美しい。その手に、温もりの宿った別の誰かの手が触れることを切に願う。
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『巡礼者たちはなぜ帰らない』 デザイナーベイビーとして遺伝子操作されあらゆる悲しみから開放された子どもたちが,この世界の負の側面に触れることでおとなになる.おとなになるということは世界の辛く悲しい現実を目にしながらもそれを含めて愛すということ. 『スペクトラム』 色彩を言語として持つ異星人との遭遇.たとえ異なる言語でコミュニケーションが困難でも通じ合うことは不可能ではない. 『共生仮説』 人間性と思われる性質が実は地球外生命体によってもたらされているということを発見する。誰しもが感じたことがある郷愁という感情や幼年期の不思議を大胆にSFの解釈を行なっている。 『わたしたちが光の速さで進めないなら』 宇宙の広大さと人間の哀愁を感じた。 『感情の物性』 人間の感情の複雑さと、物性が人間に及ぼす影響。 『館内紛失』 死者のシナプス結合をアップロードした図書館での死んだ母の失踪。知られざる過去を知って新たな関係性を結ぶ。 『わたしのスペースヒーローについて』 今は亡き人の意思を思いながら新たな宇宙へと到達する人の心象風景。
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美しい短編SF。意図して作られた差別のない世界。数万年前に消えた惑星に題する郷愁。宇宙の彼方に取り残された人々…。 地球は宇宙の中の小さな星の一つにすぎないのだと思う。いつか宇宙に行ってみたい気持ちになった。
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『わたしたちが光の速さで進めないなら』キム・チョヨプ 話題の韓国SF。SFというか宇宙を舞台にした小説集、というような感じだろうか。 繊細で切ない世界観がよい。 けれどしっかりと、何かと向き合おうとする意思を感じる。他者と分かり合おうとする意思。 でも特に女性問題など政治色は強...
『わたしたちが光の速さで進めないなら』キム・チョヨプ 話題の韓国SF。SFというか宇宙を舞台にした小説集、というような感じだろうか。 繊細で切ない世界観がよい。 けれどしっかりと、何かと向き合おうとする意思を感じる。他者と分かり合おうとする意思。 でも特に女性問題など政治色は強めでよい〜 * 表題作『わたしたちが光の速さで進めないなら』 超高速航法のパラダイムがシフトしたその時、経済効率だけを重視する政府の施策によって断絶された家族。いくら待ってもバスが来ないバス停。数百年以上も昔に亡くなっているであろう家族。 宇宙の距離は時空をも捻じ曲げるからより切ない。 表紙カバー絵がなんともまた。 『スペクトラム』 未知との遭遇もの。言語が通じない相手との交流とは。生命体がなんとなくほのぼのした感じに描かれていてほっこり。 『感情の物性』 感情そのものを造形化した商品。「キョウフ」「ユウウツ」「オチツキ」と名のついた雑貨たち。 ポジティブな感情はまだしも、ネガティブな感情をみんな所有したがる、というのが面白かったな。「みんな実際には使わなくても、ただその感情を所有したいんじゃないですかぁ?いつでも手の届く所にある、コントロールできる感情みたいなものですよね」 自分のネガティブな感情を触ったり、手のひらにのせてみることができるなら。 『館内紛失』『わたしのスペースヒーローについて』はどちらもかつて「物語の主役」であった母という女性の役割を掘る側面があってよかった。 「ジミンのお母さん」、ではなく、「キム・ウナ」と呼ばれていた母のこと。
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SF作家会議に出演していたのを見て、読んでみた。発想、設定が面白く、人種やマイノリティにも触れていて、考えさせられた。
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初めて韓国のSFを読みました。93年生まれ(若い…!)、化学で修士を取った作家による短編集。 テクノロジー寄りではなく、着想のユニークさが根幹でしょうか。あたたかい感じの、人が真ん中にある短編が7編。非常に読みやすく、SFと取るよりもファンタジーの方が適切とも思えるような印象です...
初めて韓国のSFを読みました。93年生まれ(若い…!)、化学で修士を取った作家による短編集。 テクノロジー寄りではなく、着想のユニークさが根幹でしょうか。あたたかい感じの、人が真ん中にある短編が7編。非常に読みやすく、SFと取るよりもファンタジーの方が適切とも思えるような印象です。 本著をキッカケに未来の世界の在り方を考えると言うよりは、未来の人と人との繋がりに想いを馳せるという感じでしょうか。 夜更かしに最適な1冊かも。お酒を飲みながらのんびりページをめくりたいものです。穏やかに、安心して読める1冊。 短編7編は、それぞれ全く別の世界を描いていて、著者の幅の広さを感じさせます。 読んでいて、シンプルさゆえか寂寥感に似たものを感じます(ある意味無印良品的と言うか)。刹那的、感傷的な感じはするけれど、悲しいものではない。 読んでいてその発想が面白くて、「館内紛失」については、人の人格をコピーして…というところまでは様々なアプローチが既に為されている中、あぁこういうやり方があったんだなぁと感心させられました。 ちなみに、解説はなぜかマイノリティーにフォーカスしていて、個人的には同意しかねました。本著の登場人物たちは、そんな定義に関係なく自由に生きていただけで、居場所を希求していた訳でもなかったと思うのですが。
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普段SFを読まないでよく分からないが、SFとしては多分素人的なのではなかろうか。訳者解説では他者やマイノリティが主題化されている点が指摘されていたが、そんなSFも既に沢山あるだろう。それでもSF素人の僕にはなかなか面白い一冊だったし、「共生仮説」は特に楽しめた。設定にゾクゾクした...
普段SFを読まないでよく分からないが、SFとしては多分素人的なのではなかろうか。訳者解説では他者やマイノリティが主題化されている点が指摘されていたが、そんなSFも既に沢山あるだろう。それでもSF素人の僕にはなかなか面白い一冊だったし、「共生仮説」は特に楽しめた。設定にゾクゾクした感覚は瀬名秀明の『BRAIN VALLEY 』以来だ。訳者が日本人ではない(ひとりは日本生まれでもない)ことも印象的だった。村上春樹は英語を日本語に訳すが、この分野で日本語を英語に訳すことができる日本人はそんなにいないと思うから。
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