空芯手帳 の商品レビュー

八木詠美(著者)

2024/09/23

職場で雑用しか任されず愛想をつかした主人公が妊娠したと嘘をつくところから始まる。
一度嘘をつくとさらにそこから嘘を重ねなければならなくなる。
どんどん苦しくなっていく主人公を見届けることになるのかと構えたが、妊婦を演じるべく健康的な食生活を心がけたりと意外と楽しんでいる様子。
罪悪感一切なしに平然と嘘を貫く様には少しホラー味を感じた。
終盤エコー写真に胎児が写ってたりと、結局本当に妊娠しているのか混乱する場面がちらほら。
わだかまりが残ったまま終わりモヤモヤするが、逆にそれが印象的で忘れられない作品になった。

2024/08/20

男性は同性とは理解出来るが、異性とは協力しか出来ない、と何かの本で読んだことがある。

他者を理解しようとすること、理解されようとすること、どこまでいっても交わることはないのだろうな。

終盤の怒涛の独白には思わずたじろいでしまうほどだった。

2024/07/19

会社で女である自分だけに名前のつかない雑用をまかされていることに嫌気がさして、偽装妊娠をすることになった30代柴田の妊娠記録。ちゃんと母子手帳アプリに記録もする程に本気のマタニティライフ。最初のころこそお腹に詰め物を仕込む時など苦戦してるけど、後期にいくにつれて、あれ、いつの間にか本当に妊娠した？と勘違いするほどにリアルな妊婦さんの記録になっているのが面白い。妊娠をすることで周りも本人も変化していくのが興味深い。マタニティビクスで知り合ったマタ友さん達を通してリアルな声とか、先駆けて出産した人の育児の(夫の)悩みを盛り込んでいるところも良い。何よりも聖母マリア様に思いを馳せるところも。
タイトルの付け方がナイス。会社のことや子供の名前も関連している。
嘘で、空っぽなのに、明らかに新たに何かが生まれていくような物語でした。
ちょっと謎があったのに種明かしが無いのがモヤっとしました。でも面白かったです。

2024/06/02

部長以外の全員がコーヒーを出せるようになったのは良かった......が、私は何を読ませられたんだ。出産までしたぞ。一体何が起こっているんだ......

2024/05/31

妊娠したと自称するOLさんのお話で、妊娠週が章となっている。妊娠したと偽ったお話として流れているのだが、胎児が蹴った感覚を味わったり、本当に妊娠しているのかな、とかよくわからんようになった。まあ、どっちでもいいんだけどね。まったりした語り口でとても良かった。

2024/03/14

男性が多い職場での女性の扱い、妊婦仲間のやりとり、夕方のゆったりした時間がリアルで、実際のあるあるもあるしリアルに書くのが上手だと思った。なにか大きな展開があるわけではないがすらすら読めて好き。この本を読んでる間は「偽装妊娠、意外といけるんだ、、、」と思ってしまった(現実ではいけません)

2024/02/22

妊娠しているふりをする、という話に興味を持って読み進め、一体どうなっていくのか？とても引き込まれて、一気に読んでしまいました。途中、え？本当に妊娠したの？と思いましたが、どうやらそれも違うらしく、生まれたあとまでふりを続けていてビックリ笑 何とも不思議な話で面白かったです。ところどころ散りばめられているシュールな表現が気に入りました。でも残念ながらまだ作品がほとんどないみたいですね。これからのご活躍を期待します！

2023/11/26

初めての作家さん。

職場での不条理に嫌気がさし、偽装妊娠をする。偽装ではあるが、とても丁寧に妊婦の生活を送る姿は、怖さもあるが、なんだか愛おしく感じてくるから不思議だ。

すごく共感したり、途中、ちょっとどうなってるかわからなくなったり…
他の方の感想を読んで、あっ、やっぱりそうなんだな…と少しモヤモヤが取れた。

雪の日の29週目。
夜の細野さんとの37週目は特に良かった。

今村夏子さんと少し系統は似ている感じがしたけれど、やはり誰とも違う個性が光っていた。この作家さんの文章がとても気に入った。他の作品も読んでみたい。ちょっと、きちんと意味がわかるか不安はあるけれど…

津村記久子さんが、「何が起こっているかわからないうちであっても読むこと自体に楽しみを感じられる」と太宰治賞の選評に寄せたらしいが、まさにその通り！と津村さんのぴったりな表現に歓喜した。

2023/10/28

友人からのおすすめ。
いやーすごい。すごい本だった！
言葉をつらねて、ここまで表現できるんだな！と感動した。

妊娠した、と嘘を会社に言って過ごした３５週間。
まめに妊娠アプリに記入し、ゆっくり過ごすし、マタニティビクスに行くし、マタ友は作る。
淡々としてる。マリア様との対話？や夜途を行くシーン、出産後の友人の叫びをきくシーン、静と動どちらの迫力もしみる。
いやあ、うまいなーーーとずっと思って読んだ。
(ブクログでの評価の低さにびっくり)

読みながらずっとハラハラするし、ラストにはエッと驚くし、読み終えたら、こういう感想をもっていいのか、と思ってしまうし、だれかと読後に語り合いたい本。

罪悪感いっさいなし。
しばたっつぁん、格好いいぞ。

2023/09/24

何なんだろう、この、近くで起きていたら「うわぁ…」と思ってしまいそうな空気は…。
嫌悪感というか、驚異というか、それらともちょっと違うような…。
不思議だ…。